バディファイト×ラブライブ!~鉄の意志、天と花を導いて~   作:巻波 彩灯

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 どうも、巻波です。全然全体が書き終わりません()
 果たして、ストックが尽きるまでに書き終わるだろうか……。

 あ、ちなみに今回のファイト、巻波史上初オリジナルフラッグが登場します。
 まぁ、期待せず見てくださると嬉しいです。

 では、後書きでまた会いましょう。


第4話:勝利への決意

「言葉などいらない、示すは力のみ。ルミナイズ、『フォルティス・カルディア』」

「あらゆる生命の終焉の地。魂を裁き、導くのが私達の役目。ルミナイズ、『終焉裁判』!」

 正成は落ち着いた語勢で、サライは語気を強めて「オープン・ザ・フラッグ」と言う。正反対な二人の掛け声と共に、フラッグが出現した。

「デンジャーワールド」

 正成の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン

 

「霊界裁判!」

 サライの手札:4/ゲージ:3/ライフ:10/バディ:天霊裁判官 サライ

 

 彼女の背後に現れたフラッグは、二振りの木槌が交差し、その上に重なるように本が描かれている。また下部には証言台らしき絵も描かれて、如何にも裁判というの表現していた。壮麗で煌びやかな装飾が目を引く。

 

霊界裁判

フラッグ

■君は<霊界裁判>と<ジェネリック>のカードを使える。

■君の最初の手札は4枚、ゲージは3枚、ライフは10になる!

「人間やモンスターの世界から死んだ者の魂が集う世界。皆が審判の時を待つ」

 

 見た事もないフラッグを目の前にしても正成は動揺しない。「先攻は俺がもらうぞ」冷淡な調子で手札に触れる。

 どのような相手だろうとやるべき事は変わらないという思いが、翡翠の瞳からヒシヒシと伝わっていく。

「別に良いわよ。どうせ、せっかちなあなたに譲る予定だったし」

 気を悪くする事なく、余裕の笑みを浮かべるサライ。赤瞳からは侮蔑の色を滲み出している。

 余程、ファイトに自信があるのだろう。けれど、正成は気にしない。向かってくるものは叩き潰せば良いだけだから。

「チャージ&ドロー」

 正成の手札:6→5→6/ゲージ:2→3

 

 右手側に咢を突き刺し、手札を睨みつける。迷う時間は一瞬でも満たない。すぐに動き出した。

「〈如意槍 咢〉を装備」

 と、言いつつも咢を突き刺さったまま放置し、次の行動へ移す。「キャスト、〈裂神呼法〉。ライフ1とゲージ1を払って、カード1枚をドロー」デッキから1枚を無造作に引き、「さらに咢を装備しているから、もう1枚ドローする」続けて、もう1枚を引く。

 

 正成の手札:6→5→4→6/ゲージ:3→2/ライフ:10→9/正成:如意槍 咢

 正成:如意槍 咢/攻6000/打撃1

 

「〈アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン〉をライトにバディコール」

 右手側にドラムが躍り出る。巨大で頑強なドリルと無機質な赤い義眼が目を引く。「ゲージ2払って、デッキの上から1枚をソウルイン」ドリルは軽く回転するだけで、唸りを発し、どんなに堅牢なものでも打ち砕きそうだと思わせる。

 

 正成の手札:6→5/ゲージ:2→0/ライフ:9→10/正成:咢/ライト:アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン(ソウル:1)

 ライト:アーマナイト・ドラムバンカー・ドラゴン/サイズ2/攻8000/防2000/打撃2/[貫通]/[ソウルガード]

 

「さらに、マサがアイテムを装備しているから、オイラは[移動]を得るぜ」

 正成のライト:アーマナイト・ドラム/[移動]

 

 背中のブースターを吹かし、調子の良い事を示す。砂塵が僅かに舞い、少しだけ視界を遮るが、気にも留めとない。

 ただ一点だけを見つめて、正成は口を開いた。「アタックフェイズ」静かだが強く紡がれた言葉が響く。

「ドラムでファイターにアタック」

「おっしゃ! ぶっ壊していくぜ!!」

 意気揚々にブースターを点火、そのまま突貫。右腕のドリルも高速で回転し、甲高い音を立てる。突き出されたドリルは、サライの瑞々しい肉体を抉らんとばかりに迫った。

「受けるわ」

 ドリルを躱しながら、サライは宣言する。ふわりと跳躍する回避する様は、まるで羽の如く。軽やかなステップを踏み、ドラムに空を切らせた。攻撃を直接受けていないが、バディファイトのルール上、ダメージは入っている。

 

 サライのライフ:10→8

 

「何で避ける?」

 攻撃を避けた事に疑問を感じた正成は問いかける。「そのまま当たっても問題ないだろ?」平坦な調子だが、語気は強い。ファイトシステムに則っていれば、与えられるのは衝撃だけだ。なのに、彼女は避けた。些かおかしいのではないか。

 訝しげに眉を顰め、吊り上がっている目尻はさらに吊り上がって鋭さを増す。口元もへの字に曲がり始めていた。

「だって、それ本物でしょ?」

 惜しげもなくサライは披歴(ひれき)する。「私は、人間の作ったシステムに則ってないもの」手元にある光の球体を動かし、「本物である機械の竜とあなたの槍だけは受けたくないわ」軽く叩いて人間とは違うという事を示していた。

「ドラムのは本物じゃないし、俺のも痛くないぞ?」

「槍の方は嘘でしょ。私、それで頬を切り裂かれたわよ」

「今度は肉を抉ってやるさ」

 僅かに口の端を吊り上げ、正成は不敵に微笑む。言っている事がかなり物騒だが、それで臆する相手ではないだろう。

 むしろ、こちらが弱気の姿勢を見せる訳にはいかない。強がりも交えて、冗談か本気か分からない言葉を口に出した。

「安心しろ、丁重に扱うようには心がける」

 傍らに突き刺した咢を引き抜き、竜の顎にも似た穂先をサライへ向ける。「だから、次は避けるなよ?」翡翠の双眸は、純粋な闘志だけを宿していた。

「嫌よ。私、痛いのは嫌いなの」

 当然ながらサライは断る。「例え、人間より頑健でも度を過ぎれば、私だって死んでしまうわ」皺一つなかった眉間に、再び皺が生まれた。鮮やかな赤が映える唇は、への字を作って不満そうである事を示す。

「なら、当てにいくまでだ。ターンエンド」

 正成の手札:5/ゲージ:0/ライフ:10/正成:咢/ライト:アーマナイト・ドラム

 

「ホント、節操のない男。ドロー、チャージ&ドロー」

 サライの手札:4→5/ゲージ:3→4

 

 サライは光の球体からカードを引き、形の良い眉尻を上げる。

「まずは、〈天霊獣 コンチェルト〉をレフトにコール」

 鋭い爪を持つ二足歩行型の獣が姿を現した。狼のような顔立ち、水色の体毛からワーウルフを彷彿させる。

 高らかに吠え、自身の存在を誇示。周囲には光の粒子が散りばめられていく。

 

 サライの手札:5→4/レフト:天霊獣 コンチェルト

 

天霊獣 コンチェルト

霊界裁判

種類:モンスター 属性:裁霊/風

サイズ2/攻6000/防2000/打撃2

■[起動]“天霊協奏曲”君の手札から《裁霊》1枚を捨て、ライフ1払ってよい。そうしたら、カードを2枚引く。「天霊協奏曲」は1ターンに1回だけ使える。

■[起動]“霊爪・崩”君の場にカード名に「天霊裁判官」を含むモンスターがいるなら、君のデッキの上から3枚をドロップゾーンに置いてよい。そうしたら、そのターン中、相手の場のモンスター全ての防御力-3000!

「魂はどこから運ばれるだろうか」

 

「コンチェルトの能力、“天霊協奏曲”を発動」

 丁寧に紡がれる言葉、声音は優美で心地よい。「手札から〈天霊獣 ボレロ〉を捨て、ライフ1払うわ」カード1枚がドロップゾーンに置かれる。「そして、カードを2枚ドロー」細長い指で繊細にカードを引いた。

 

 サライの手札:4→3→5/ライフ:8→7/ドロップ(裁霊の種類):0→1

 

「さらに〈天霊裁判官 アベル〉をライトにコールするわ」

 彼女の右手側に緑色の髪を癖一つもなく整えた青年が現れる。男性としては華奢な体つきをしており、正成と比べて随分と貧弱そうに見えた。それでも彼の周りを漂う風が、近づいてきた葉を切るところを見ると立派なモンスターである事が示される。穏やかそうな微笑みで、覿面(てきめん)の相手を見つめていた。

 

 サライの手札:5→4/レフト:コンチェルト/ライト:天霊裁判官 アベル

 

天霊裁判官 アベル

霊界裁判

種類:モンスター 属性:裁霊/風

サイズ1/攻2000/防2000/打撃1

■君の場に「天霊裁判官 カイン」がいるなら、場のこのカードの攻撃力+2000、防御力+2000!

■[起動]【対抗】“天裁幽閉”ゲージ1払ってよい。払ったら、相手の場にいる防御力2000以下のモンスター1枚を相手の手札に戻す。「天裁幽閉」は1ターンに1回だけ使える。

「今は笑い合える。それだけ十分なんだ」

 

「そして、〈裁霊の法書〉をゲージ2払って装備」

 厳かな装いをした分厚い典籍がサライの麗しい手中に収まる。角で殴打するだけでも威力がありそうな厚さだが、本書の真価はそこではない。

 

 サライの手札:4→3/ゲージ:4→2/ドロップ(裁霊の種類):1→3/サライ:裁霊の法書/レフト:コンチェルト/ライト:アベル

 

裁霊の法書

霊界裁判

種類:アイテム 属性:裁霊/光

攻2000/打撃1

■【装備コスト】ゲージ2払う。

■このカードが場にいる限り、君の場のモンスターが能力名に「天裁」を含む能力を発動する時、払うゲージの枚数が1少なくなる。

■君の場にいるカード名に「天霊裁判官」を含むモンスターの効果で、相手の場のモンスターを破壊した時か相手の手札に戻した時、君のライフ+2!この能力は1ターンに1回だけ使える。

「この本には、審判を公平公正に下すために、様々なルールが書かれている」

 

「これで、天霊裁判官の能力が、さらに発揮できるわ」

 実に余裕綽々といった様子でサライは不敵な笑みを零し、強い語調で告げた。紙をめくり、探し当てたページに辿り着くと口を開く。

「アベルの“天裁幽閉”を発動」

 静かに宣言し、「本来はゲージ1払うけど」と付け足しながら、能力を説明する。

「裁霊の法書の効果でゲージ1減らして、実質ノーコストで発動よ」

 能力を発動するコストがかからないという事はどういう事か。つまり、重くて使いづらい能力を気兼ねなく使えるという事だ。当たり前の事かもしれないが、かなり重要な事柄。場の緊張が加速する。

「防御力2000以下の相手モンスター1枚、手札に戻すわ。さぁ、お帰りなさい、機械の竜!」

 力強く言葉を吐き出すと同時に、アベルが纏ってた風の障壁が崩れ、突風が吹き荒れた。何かにしがみついてないと、吹き飛ばれそうだと感じる程の勢い。観戦している少女達の悲鳴が響く。

「ソウルガードだ」

 正成は咢を地面に突き刺し、体が飛ばされないように踏ん張りながら冷静に言葉を発する。強風により、目が開けられる状態ではなく、細めて覿面(てきめん)を睨みつけていた。ドラムも装甲が幾分か削がれていく。

 風が吹き止んだ後、機能しないものを切り離し、デッドウェイト化を防いだ。しかし、身を守るものは少ない。

 

 正成のライト:アーマナイト・ドラム(ソウル:1→0)

 

「もう一つの法書の能力を発動よ」

 壮麗な装丁が際立つ書架が淡い光を発する。「アベルが相手のモンスターを手札に戻したから、私のライフ+2」彼女の白皙に一筋走った裂傷も修復していき、本来の姿へと元に戻していく。

 

 サライのライフ:7→9

 

「続けて、コンチェルトの“霊爪・崩”を使うわよ」

 光の球体に手をかざし、スライドする。「デッキの上から3枚をドロップゾーンに置くわ」宣言した枚数分だけドロップゾーンに置き、「そして、相手のモンスター全ての防御力を-3000」彼女の言葉と共にコンチェルトの遠吠えが響き渡った。

 すると、ドラムの装甲がみるみる砕けていき、コードが露出。苦虫を噛み潰したような表情で、使いものにならなくなった装甲はパージする。パイプが破損したのか、オイルも流れ出ており、血のように足元を茶黒く染めていく。

 

 サライのドロップ(裁霊の種類):3→4

 正成のライト:アーマナイト・ドラム/防2000→0

 

「アタックフェイズに入るわ」

 本を閉じ、サライは緩やかに笑みを浮かべて言う。「コンチェルトでライトにアタックよ」彼女が言葉を発した後、コンチェルトは一吠えして、ドラムに飛びかかった。しなやかな筋肉から生み出される剽悍(ひょうかん)な動き、人間はおろかドラムさえ追いつけない。

「すまん、ドラム。無理だ」

「別に問題ないぜ。マサ、信じているからよ」

 僅かな会話。一瞬間後にはドラムは胴体を切り裂かれ、光となって消失した。コンチェルトの嘯き声が響き渡る。

 しかし、正成の表情から悲しみに暮れる様子も落ち込む様子も見られない。ただ無表情に見つめていた。

 

 正成のライト:アーマナイト・ドラム 撃破!

 

「次はアベルでファイターにアタック」

 風が奔る。目に見えない刃が、正成の首を狙って飛来。システムを通した攻撃ではない為、受ければ間違いなく首と胴体は分かれるだろう。

 ドラムの時は正成のデッキケースのシステムが作動していた為、ファイトが始まった瞬間に生身と幻像を入れ替え、肉体は別の場所に移していたのだ。だから、ボロボロになっていたドラムの姿は、幻影にすぎない。

 しかし、正成の場合はそうもいかず、相手がシステムを介していなければ生身で受ける羽目に。自動的に出力を下げるように設定されているが、システムに則っていない以上、調整できないのは明白。

「受ける」

 音だけを頼りに正成は左手側に体を投げ出し、転がるように避ける。真空の刃は、正成の傍らを通過すると霧散した。

 どうやら、それなりに威力は調節された模様。だが、それでも人間の肉を切れる程には切れ味があったのは確かだろう。

 

 正成のライフ:10→9

 

「あら、どうして避けるのかしら?」

「俺も痛いのは嫌いだからだ」

 転がった事により服に土汚れが付いてしまっているが、気に留めず立ち上がる。吊り上がった目尻をさらに吊り上げ、眼光鋭く覿面のサライを睨めつけていた。声音は至って冷静を保っている。

「そう……私達、意外と気が合うかもね」

「俺は仲良くできる気なんてしないけどな」

「同感、私もせっかちな男と仲良くできる気がしないわ」

 一拍置いた後、サライは左手を開いたまま突き出し、光を集めていく。「最後は、裁霊の法書でファイターにアタックよ」放たれたのは、何もかもを溶かしていく熱線。人間の目では捉えらる事など到底不可能だ。

「これも受ける」

 大きくバックステップをして、距離を取る正成。熱線は彼が先程までいたところに直撃し、地面を焦がす。蒸気が上がり、黒く染めていく。即身で受ければ……間違いなく蒸発していたに違いない。

 

 正成のライフ:9→8

 

 焼けた地面の跡を見て、正成はおもむろに口を開く。表情は険しい。

「アイテムじゃなくてお前自身で攻撃するのか」

「その方が映えるでしょ?」

「俺は純粋にファイトを楽しみたいんだがな」

「さっき、肉を抉ってやるなんて言ったのは、どこの誰かしら?」

 サライは優艶な笑みを浮かべて返した。やはり勝利を絶対に掴み取れる自信があるのか、余裕は崩さない。

「どこのどいつだろうな?」

 平然とした態度で正成は言い返す。「もしかしたら、お前が嫌いなせっかちな男かもな」落ち着いた語調で言葉を継いだ。相好は厳しさを保っているが、焦っている様子も怯んでいる様子もない。

「分かっているじゃない。ターンエンドよ」

 サライの手札:3/ゲージ:2/ライフ:9/サライ:裁霊の法書/レフト:コンチェルト/ライト:アベル

 

「ドロー、チャージ&ドロー」

 正成の手札:5→6/ゲージ:0→1

 

 無言のままじっと手札を見つめる。相手の現状は防御力を下げ、一定の数値以下で手札に戻すという戦法。数値に偏りがあるモンスターを扱う正成にとって、頭の痛い問題だ。それでも彼は決して恐れを見せない。

「キャスト、<超力充填>。ライフ1払って、ゲージを+3」

 正成の手札:6→5/ゲージ:1→4/ライフ:8→7

 

 枯渇していたゲージが一気に増え、少しだけ余裕が生まれる。その代わり、ライフを削っているのだが。

「続けて、キャスト、〈裂神呼法〉。ゲージ1とライフ1を払って、カードを1枚ドロー」

 再びライフが減る。先程増えたゲージも消費させて。「さらに咢があるから、もう1ドローする」相変わらず無造作な手つきでデッキからカードを2枚引いた。

 

 正成の手札:5→4→6/ゲージ:4→3/ライフ:7→6

 

「ライトに〈アーマナイト・イーグル〉をコール」

 正成の手札:6→5/正成:咢/ライト:アーマナイト・イーグル

 ライト:アーマナイト・イーグル/サイズ0/攻4000/防1000/打撃1

 

 装甲を纏った巨大な鷹が戦意高々と翼を羽ばたかせ、声を立てる。しかし、無情にも彼の望みは叶わない。

「レフトに〈アーマナイト・アスモダイ〉をコール」

 この瞬間、アーマナイト・イーグルはぎょっとした表情で正成を見つめる。が、彼は構わず続けた。「アーマナイト・イーグルをドロップゾーンに置いて、ゲージ1払う」特に感情が込められていない声音で告げられた言葉は、あまりにも無情としか言えないだろう。

 悔しさと悲しみが織り交ざった断末魔が響いた後、アーマナイト・イーグルは姿を消し、代わりにアーマナイト・アスモダイが雄叫びを上げて登場した。

 

 正成の手札:5→4/ゲージ:3→2/正成:咢/レフト:アーマナイト・アスモダイ/ライト:アーマナイト・イーグル→なし

 レフト:アーマナイト・アスモダイ/サイズ1/攻5000/防1000/打撃1

 

「アスモダイの登場時効果で、お前のレフトとライトのモンスターを破壊する」

「なら、【対抗】アベルの能力を使うわよ。アスモダイをあなたの元へ返すわ」

 砲弾、銃弾の暴雨が降り注ぐ。対抗して、強風が吹き荒れ、場は混沌していく。周囲が見えなくなる程、濃い粉塵が視界を遮る。そして、晴れた頃には、モンスター1体もいなくなっていた。

 ほんの僅かだが、凝縮された一瞬。場を無に帰した後は寂静が訪れる。

 

 サライのドロップ(裁霊の種類):4→6/レフト:コンチェルト 撃破!/ライト:アベル 撃破!

 正成の手札:4→5/レフト:アーマナイト・アスモダイ→なし

 

「〈アーマナイト・ゴーレム〉をライトにコール」

 機械の巨人兵がけたたましい駆動音を立てながら、一歩一歩を踏みしめ出現。手に持っているランスは、かつて敵だったものから奪い取ったものだろうか。真相は分からない。

 

 正成の手札:5→4/正成:咢/ライト:アーマナイト・ゴーレム

 ライト:アーマナイト・ゴーレム/サイズ2/攻5000/防8000/打撃2

 

「アタックフェイズ」

 冷たく淡々とした口調で告げる。「ゴーレムでファイターにアタック」言葉を言い終わる頃には巨人兵は動き出していた。緩慢で鈍重な歩みだが、確実に距離を詰め、手に持っているランスをサライの頭上から振り下ろす。速さはないが、ずっしりとしたスピアーヘッドが迫り立てていく。相手の足を止めるには充分な迫力。

「受けるわ」

 今度はホログラムと見切ってか、サライは動かない。ランスは彼女の体をすり抜け、地面と衝突する。衝撃波が生まれるが、先程吹き荒れていた強風よりも大人しく、濃紫のドレスを軽くはためかせるだけ。

 

 サライのライフ:9→7

 

「次は俺でアタック」

 言葉は後ろに流れ、正成は紺色の弾丸となって肉薄。右手で握っている咢を前方へ突き出し、渾身の一突きを放つ。

 肉を貫き、内臓を抉り出そうと赤い槍の咢が開く。翡翠の瞳は眼前にいる相手を逃すまいと睨めつけている。

「これも受けるけど……ッ!」

 言葉尻が荒れたのは、サライが目にも止まらぬ速さで飛来する赤き一閃を躱す事に神経を尖らせたからだ。濃紫のドレスが切り裂かれ、下にある瑞々しい白皙を覗かせる。皮膚まで到達したのか、横一文字に赤が走り、血が滴り落ちていく。

 

 サライのライフ:7→6

 

 苦虫を噛み潰したような顔つきを浮かべながら、サライは切り裂かれた脇腹を可憐な手で繊細に触れる。

 指先に付いた血を舐めて、「お気に入りのドレスだったのに」心底悲しむような語調で残念がっていた。

「弁償はしないからな」

「酷いわね。そっちがやった事なのに」

「熱線を飛ばしてくる女は嫌いなんでな」

「私も槍を振り回す男は嫌いよ」

 気を持ち直して、微笑みサライ。蠱惑(こわく)的な笑み、絵画のような美しさは人の範疇を超え、見る者を圧倒させる。

 けれど、彼女の美貌に目を奪われる事なく、正成は極めて冷淡な口調で返した。

「やはり、仲良くできそうもないな。ターンエンド」

 正成の手札:4/ゲージ:2/ライフ:6/正成:咢/ライト:アーマナイト・ゴーレム

 

「だから、こうして争っているんでしょ。ドロー、チャージ&ドロー」

 サライの手札:3→4/ゲージ:2→3

 

「まずは、〈天霊獣 ハーモニル〉をレフトにコール」

 サライの手札:4→3/サライ:裁霊の法書/レフト:天霊獣 ハーモニル

 

天霊獣 ハーモニル

霊界裁判

種類:モンスター 属性:裁霊

サイズ0/攻2000/防2000/打撃1

■【対抗】“霊牙・壊”相手のターン中、君の場にカード名に「天霊裁判官」を含むモンスターがいるなら、場のこのカードをドロップゾーンに置き、ゲージ1払ってよい。そうしたら、そのターン中、相手の場のモンスター1枚の打撃力-2。

「このモンスターが持つ牙は、すべてを噛み砕く」

 

 現れたのは小型の四足獣、頑健そうな犬歯を覗かせ、如何なるものも噛み砕けると思わせる。白の毛色は、触れる事を躊躇わせる程、麗しい。左右で違う色の瞳が、正成に敵意を向けていた。

「続けて、〈天霊獣 ボレロ〉をライトにコールよ」

 サライの手札:3→2/サライ:裁霊の法書/レフト:ハーモニル/ライト:天霊獣 ボレロ

 

天霊獣 ボレロ

霊界裁判

種類:モンスター 属性:裁霊/火

サイズ0/攻3000/防2000/打撃1

■[起動]“霊牙・崩”君の場にカード名に「天霊裁判官」を含むモンスターがいるなら、このカードをレストしてよい。レストしたら、そのターン中、相手の場のモンスター全ての防御力-5000する。

「天霊獣は、天霊裁判官たちと共に逃げ出した魂を追いかける霊獣たちのことだ」

 

 右手側に小さな獣が召喚される。炎を彷彿させる真っ赤な体毛と瞳が目を引く。牙は剥き出し、闘争心を全面に出して、獰猛な唸り声を立てていた。

「そして、〈天霊裁判官 サライ〉……私をセンターにコールするわ!」

 ヒールを高らかに鳴らし、前へ出る。「ゲージ1払って、デッキの上から1枚をソウルインよ」流麗な眉尻を上げ、不敵な笑みを浮かべ、強気な態度で佇む。背中に翼を顕在化し、蠱惑(こわく)的な美貌も相まって、天使という言葉が似合うと言っても過言ではない。

 

 サライの手札:2→1/ゲージ:3→2/サライ:裁霊の法書/レフト:ハーモニル/センター:天霊裁判官 サライ/ライト:ボレロ

 

天霊裁判官 サライ

霊界裁判

種類:モンスター 属性:裁霊

サイズ2/攻5000/防2000/打撃3

■[コールコスト]デッキの上から1枚をソウルに入れ、ゲージ1払う。

■君の場に「天霊裁判官 アブハム」がいるなら、このカードのサイズを2減らす!

■[起動]【対抗】“天裁処刑”ゲージ2払ってよい。払ったら、相手の場にいる防御力2000以下のモンスター全てを破壊する。「天裁処刑」は1ターンに1回だけ使える

[ソウルガード]

「死んだ者の魂に最後の審判をするのが、天霊裁判官の役割だ」

 

「キャスト、〈天霊の閃き〉。ゲージ+2するわ」

 最後の1枚が消失すると、ゲージが2枚増えていく。「さらに私の手札が0枚になったから、カードを2枚ドロー」大切なもの壊さぬように、柔らかい手つきでカードを2枚引いた。

 

 サライの手札:1→0→2/ゲージ:2→4

 

天霊の閃き

霊界裁判

種類:魔法 属性:裁霊

■君のデッキの上から2枚をゲージに置く。さらに君の手札が0枚なら、カードを2枚引く!「天霊の閃き」は1ターンに1回だけ使える。

「なるほど、この魂はこういう行動をしていたのか」

 

「ボレロの効果を使うにしても、届かないわね……」

 場を検めると優美な指の腹をそっと顎に添える。しばし思索した後、サライは口を開いた。

「このままアタックフェイズに入るわよ」

 語気は強く、自信に満ち溢れている。苦しい状況ではあるはずなのに、余裕な態度を崩さない。

 正成は自分の手札を見る。攻撃を防ぐというだけなら、何とかなりそうだが果たして。少し不安が頭をよぎるが、即座に打ち消し、眼前にいるサライを睨みつける。まだファイトは終わっていない。

「まずはボレロでファイターにアタックよ」

「受ける」

 牙に炎を纏わせ、ボレロは赤い弾丸と化して疾駆する。これまた人間では追いつけないような軽快な動きで翻弄。

 噛みつかれる瞬間、正成は咢の柄を覿面に出し、受け止めた。激しい音が鳴り、硬いものがぶつかり合う。

 並外れた膂力でボレロを払い除け、何とか難を逃れた。だが、火の粉が付着していた影響で、正成の服はあちらこちら焦げている。

 

 正成のライフ:6→5

 

「次はハーモニルでファイターにアタック」

「これも受ける」

 白い疾風が駆け抜け、正成の首を噛み千切らんとばかりに猛烈に迫っていく。剽悍に白の体毛をなびかせ、肉薄する獣をどう受け止めようか。

 ハーモニルが跳躍した刹那、正成は間隙を縫って咢を薙いだ。白い獣の脇腹に柄を叩きつけ、噛みつかれるのを防ぐ。

 システム上、ライフは減る。しかし、半ば命のやり取りと化している為、自分の身は守らなければならない。

 滑稽とも無粋とも取れる正成の行動だが、事情を知っていれば(そし)る事などできようもないだろう。

 

 正成のライフ:5→4

 

「最後は私であなたにアタックよ!」

「キャスト、〈裂帛闘壁〉。お前の攻撃を無効化して、俺のライフを+1」

 本来であれば正成の闘気で作り出した障壁が、攻撃を遮ってくれる。だが、システムに則っていないサライの熱線を受け止めてくれるか甚だ疑問だ。過度な期待はせず、正成は放たれた熱線を右手側に転がって回避。

 短い頭髪の毛先が焦げ、デニムジャケットの袖が熱により、大きく穴を空ける。下に着ているカットソーも焼けてしまい、黄色の肌が露出した。火傷が軽微で済んだのは、僥倖(ぎょうこう)としか言わざるを得ない。

 

 正成の手札:4→3/ライフ:4→5

 

 正成は立ち上がり、自分が元いた場所に目を向ける。地面は焼け焦げ、黒く染まって、蒸気を発していた。

 過信して立ち止まっていたら、姿かたちがなくなっていたのは、火を見るよりも明らか。少しばかり安堵のため息を吐く。

「あら? このターンで決められなかったわ」

「目論見通りに行かなくて、悪かったな」

「でも、さっきのお返しができたから満足よ」

「俺は意地の悪い事なんてしないぞ」

 珍しく辟易とした顔で正成は返す。「やったとしても、ドレスを切り裂いたぐらいだ」不思議なぐらい穏やかな語調で言葉を継いだ。実体化している咢の穂先でサライの脇腹を切ったが、何も殺すような事はしていないとも言いたげ。

 殺してしまうと、今後目的を知る事ができなくなってしまうから、加減はしている。それでも容赦なく槍を振るった事実は否めないが。

「お気に入りのドレスなのよ? ズタズタにされて、怒るのは当然でしょ」

「切れているのは、一ヶ所だけだろ。こっちは穴だらけだぞ?」

「私が気にするとも?」

「しないな。俺もお前のドレスに興味ない」

 一つ息を吐き、正成は続ける。「それで、次は?」興味の対象が変わった。まだサライのターンが続いている為、油断できない。彼女が宣言しない限りは、次に進めないのだ。

「もう、せっかちね。私のターンはこれで終わりよ」

 サライの手札:2/ゲージ:3/ライフ:6/サライ:裁霊の法書/レフト:ハーモニル/センター:サライ/ライト:ボレロ

 

 呆れた様子でサライは終了を宣言。もう少しだけ話していたかったと赤い瞳が訴えていた。

「駄弁っている暇はないからな。ドロー、チャージ&ドロー」

 正成の手札:3→4/ゲージ:2→3

 

 手札とゲージを交互に見やり、状況を検める。確実にこのターンで決めなければ、負けるのは必須。

 劣勢なのは目に見えて分かっていた。だからこそだろうか、正成が微かに微笑んだのは。それも楽しげに。

「キャスト、〈裂神呼法〉。ゲージとライフ1を払って、カードを1ドロー」

 いつもの手を使い、手札を増やしていく。「咢があるから、もう1枚ドローだ」アイテムが破壊されていなかった事が幸いしてか、カードは2枚引けた。

 

 正成の手札:4→3→5/ゲージ:3→2/ライフ:5→4

 

 逆境を覆せる可能性があるカードが手札に。しかし、それを出すには少々厄介な事がある。

 正成に迷いはなかった。躊躇う間もなく、宣言する。

「ゴーレムを押し出して、ドラムをライトにコール」

 声は至って平然、顔も申し訳なさも何もなくただ冷静に前を見ているだけ。「ゲージ2払って、デッキの上から1枚をソウルイン」機械の巨人兵は消え。右腕に巨大なドリルを携えた竜が、再び姿を現した。

 

 正成の手札:5→4/ゲージ:2→0/正成:咢/ライト:アーマナイト・ゴーレム→アーマナイトドラム

 

「大分、待たせたな」

「問題ねえよ。それより、マサ、楽しんでんだろ?」

「状況が状況じゃなきゃ、心置きなく楽しめたんだがな」

「変わんねえな、そういうところ」

 ドラムはにやりと笑い、愉快げに喉を鳴らす。正成の些細な変化を感じ取ったからだろう。逆境を、バディファイトを純粋に楽しんでいる彼にドラムもまた信頼を寄せていた。

「バディファイトは遊びだ。遊びは本気で楽しまなくちゃ、損だろ」

 僅かに声を弾ませ、言葉を継ぐ。「もっとも命を賭ける危険な遊びではないがな」現在の状況に対する皮肉のような物言いで正成は述べた。現状、システムに介していないサライの攻撃は、命を脅かしている。命を賭ける勝負、強者との勝負を楽しむ者であれば、気兼ねなく楽しんでいた事だろう。

 けれど、正成は違った。どんな状況であれ、純粋にファイトを楽しんでいる。場合によっては、心行くまで楽しむ事はできないが、それでも楽しんでしまう。本気で楽しまなければ、損。だから、劣勢だろうと笑っていられるのだ。

「キャスト、〈超力充填〉。ライフ1払って、ゲージを+3」

 正成の手札:4→3/ゲージ:0→3/ライフ:4→3

 

 気持ちを切り替え、改めてファイトと向き合い、魔法を使う。枯渇していたゲージがたちまち潤い、準備が整っていく。

「ドラムの能力を使う。ゲージ2払って、手札1枚捨て、俺とドラムの打撃力を+3だ」

 真紅のオーラがドラムや正成の身を包む。ドラムの筋肉は肥大化し、巨木のような太い手足と変貌。ドリルも調子よく回り、ブースターは空気をさらに焼いて快調を示した。

 

 正成の手札:3→2/ゲージ:3→1

 正成:咢/打撃1→4

 ライト:アーマナイト・ドラム/打撃2→5

 

「なら、こっちも【対抗】でハーモニルの能力を使うわ」

 すかさず、サライは【対抗】を使う。「ハーモニルをドロップゾーンに置いて、ゲージ1払い、アーマナイト・ドラムの打撃力を2点減らすわよ」ハーモニルが消失した後、ドラムのドリルが発する音が先程より鈍くなった。それでも景気良く甲高い音を立てており、そこまで不調ではない。

 

 サライのゲージ:3→2/レフト:ハーモニル→なし

 正成のライト:アーマナイト・ドラム/打撃5→3

 

 打撃力を下げられ、さらに苦しくなる。それでも正成が動揺している様子はなかった。

 まだ手が残っている。やれるならやるしかないと、心に熱き闘志の炎を絶やさず燃やし続ける正成に、「諦める」という言葉はない。

「キャスト、〈暴連撃〉。このターン中、ドラムに[2回攻撃]を与える」

 正成の手札:2→1

 ライト:アーマナイト・ドラム/[2回攻撃]

 

 さらにドラムの筋肉は膨れ上がり、ドリルやブースターも絶好調と言わんばかりに音を発する。真紅のオーラも色濃くなり、光り輝く。

「アタックフェイズ」

 正成は語気を強めて宣言。「ドラムでセンターにアタックだ」指示を受けたドラムは、ブースターを最大限に開放し、突貫する。真紅のオーラが尾を引いて、まるで流星、いや隕石とも呼べる勢いで肉薄していく。

「キャスト、〈光の翼〉。ゲージ1払い、受けるダメージを0に減らして、私のライフを+1」

 サライの手札:2→1/ゲージ:3→2/ライフ:6→7

 

光の翼

霊界裁判

種類:魔法 属性:裁霊/光

■[使用コスト]ゲージ1払う。

■【対抗】そのターン中、次に君に与えられるダメージを0に減らし、君のライフ+1する!

「柔らかい光の翼が彼らの身を守る盾でもある」

 

「と言っても、破壊は免れないから、[ソウルガード]よ」

 サライの背後から出現した光の翼が彼女の身を包み込んで防ごうと試みる。ドリルの切っ先が翼に接触。

 すると、ドリルの勢いは失速していく。それでも彼女の肉体を貫かんと突き進むが、充分な推進力はない。

 構わず突き出すが、サライの体は捉える事はできず、空を切った。けれど、ルール上はサライのソウルはドロップゾーンへ送られる。

 

 サライのセンター:サライ(ソウル:1→0)

 

「もう一度、ドラムでセンターにアタックだ。ぶち抜け、ドラム!」

「おうよ、任せとけ! ドリル・ラム・ブロークン!!」

 ドラムは体を大きく捻り、右腕を極限まで引く。張り詰めた弓の弦から放たれた矢の如く、鋭く突き出されたドリルは唸りを上げ、空気を貫いて破裂音を轟かせる。

「仕方ない、下がるわ」

 今度は身を守るものがないサライは、大きく後退。ドリルの切っ先は僅かにドレスに触れる。一切傷をつけられないのは、ドラムのドリルは実体化していないから。システムにより、ドラムは精巧な立体映像として顕在したに過ぎない。

 それでも衝撃という衝撃は襲ってくる。サライは受ける衝撃が如何なるものだと想像できている故か、嫌って大きく回避していた。だが、モンスターとしてのサライは破壊されるし、ダメージも入る。

 

 サライのライフ:7→4

 センター:サライ 撃破!

 

「なぁ、一つ聞いて良いか?」

 正成は次の攻撃に移らず、今まで一番気の抜けた声で問いかけた。まだ手札が1枚あるとはいえ、前のターンで決める予定だったという節を思い出し、恐らく防御札ではないと見当をつけている。

 だから、ファイトの決着が見えた今、訊ねれてみたのだ。今の今まで、訊くべき事を訊いてなかったのもあるが。

「何かしら?」

 特に憤慨する事もなく、サライは耳を傾ける。手札を見る赤い瞳は、諦観のようなものを宿していた。

「何故、カスミを狙っている?」

「それ、今訊く?」

 呆れたようにため息を吐いた後、サライは返答する。「その子が逃げ出したからよ。私は連れ戻しに来たに過ぎないわ」極めて冷淡な声音。今まで聞いた中で冷たく、聞いている者が凍えそうな印象を覚えさせる。「後は、その子に聞いてみたら?」サライは細長い指でカスミ達の方を指差した。

 視線を示した方へ向けると、花陽の腕の中で震えているカスミの姿を認める。彼女をなだめるように、花陽や凛が優しく声をかけるが、体の震えは収まる気配は一向にしない。カスミの酷く怯えきった顔が目に焼き付く。

「お前、あの子に何をした?」

「別に何もしてないわ。連れ戻しに来ただけよ」

「何もしてねえ訳がねえだろ! あんなに怯えてんだぞ!?」

 話を聞いていたドラムが義憤を爆発させ、声を荒げた。双眸には嚇怒(かくど)の炎が燃え上がり、眼光鋭くサライを睨みつける。

「ドラム、少し黙れ」

「マサ!」

「良いから、黙ってろ」

今にも飛びかかりそうなドラムを制し、「それにしては、手荒な真似をしてたな」正成もまたサライに負けず劣らずの凍えるような冷たい語調で返した。

「だって、交渉が決裂したんですもの。仕方ないわ」

「いきなり引き渡せと言われて、渡す奴がどこにいる」

「素直に他人の言う事を聞けない人は、嫌われるわよ」

「お前に嫌われても問題ない。元々、仲良くする気もないしな」

 容赦なく言い放たれた言葉に対し、サライは肩を竦め、「同感ね。私もあなたと仲良くする気なんてないもの」シニカルな笑みを浮かべて言い返す。「話はそれだけ?」これ以上、話す気はないようだ。

「今はそれだけだ。後でたっぷりと話してもらうからな」

 相好を厳しくし、咢を構える。「俺でトドメだ」地面を強く蹴り出し、疾走する。身に纏った真紅のオーラにより、赤い弾丸そのものと化して、駆け抜けていく。鈍重、緩慢……それらの言葉とは無縁な動きで肉薄。そして、赤い槍を突き出した。一閃は空気を突き破り、そのままサライの肉体も貫かんばかりに(はし)る。

「潮時ね」

 言葉短めに呟かれた彼女の言葉が耳朶を打つ。すると、空間が歪む。

 逃げられる――察した正成は舌打ち。人智を超えた力は、人間である彼の手ではどうする事もできない。

 ライフを削りきったが、肝心の相手は歪んだ空間の向こう側へと遁走してしまった……。

 

 サライのライフ:4→0

 

WINNER:鉄正成




 今回はオリジナルフラッグの初お披露目回でした。
 ……私が回すより他の人が回した方が盛り上がるんじゃね?って、書いていて思ったのは内緒()

 それはさておき、いよいよ物語も佳境に入ってきたなぁ~と思います。
 元々短編1話として流す予定だったので、もうそろそろ終盤です。
 大した盛り上がりを見せている訳ではないですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

 では、今回はこの辺りで筆を休めます。感想や活動報告のコメントもお待ちしています。
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