⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!
「またなー委員長!」
そう金髪の少年、うずまきボルトが手を振って別れを告げる。委員長と呼ばれた少女、筧スミレも久しぶりに再会した同期との別れを惜しみつつも振り返す。
そしてボルトと彼の班員のサラダ、ミツキ。更に科学者のカタスケや忍犬の茶丸も新たな任務場所まで向かった。見えなくなるまで彼らを見送ったスミレは一息つく。
「大丈夫かな……ボルト君達」
そんなスミレの肩を先端技術研究所の所長、犬塚アキタの手が置かれる。
「大丈夫じゃないと困るわよ。茶丸の命も預けてるんだから」
それもそうかと考えスミレはボルト達が走った方を一旦向いた後、研究所の中に戻った。また元気なボルト達と会えるように内心で祈りながら。
★★★★★
翌日、スミレは今日も研究所に出勤していた。鵺を口寄せし暴走をコントロールする為の科学忍具を作る。と言ってもまだスミレが出来ることはしれている。だけどそれで良い。一歩一歩進んだら良いのだ。
(ボルト君達、昨日のあの後どうなったんだろう?)
まだ任務を継続している可能性はあるが何となくもう終わっていると思った。ただ、まだ茶丸が帰ってこないのでなんとも言えない。
そんな時電話が鳴ってアキタが電話に出た。
「カタスケ先生、無事で良かったです」
どうやらカタスケからで無事に任務を達成出来たようだ。スミレはホッとした。今頃ボルト達も任務を達成出来て喜んでるんだろうなぁとスミレは思っていた。
アキタは2、3言話すと電話を切った。
「茶丸を連れて来るって言ってたわ。ただ、カタスケ先生は向こうに残らないとダメみたいだから代理の人が来るって。スミレちゃんも一応覚えておいて」
「分かりました」
そんな会話をして約2時間後、スミレは実験で廊下に出て再びゴーグルをつけて鵺と視線を共有して暴走をコントロールしようとするがやはり上手くいかない。
やはり見ている景色を共有するだけではダメなのだ。スミレは頭を捻らせる。そんな時、不思議と少しだけ風を感じた。ゴーグルを外し鵺を捕まえた所で小さな生き物が走ってくる音が聞こえ廊下の方を見た。
「茶丸!」
「ワン!」
走ってきたのは件の茶丸だった。茶丸はスミレに突撃してきたがスミレはゴーグルと鵺で手がいっぱいなのでしゃがんで抱え込む形で茶丸も抱っこした。見た所怪我はしてない様子だ。それにホッとしながらスミレは茶丸が走ってきた方を見る。
そこから結構目立つ金髪が見えスミレは昨日の今日だが挨拶した
「昨日ぶり、ボルト君」
「お……おう。昨日ぶりだってばさ」
そんなボルトの様子をスミレは訝しげに見た。何故なら任務は達成した筈なのにボルトの表情は嬉しさとは真逆だったからだ。言うなれば悲しそうな顔だ。スミレの中のボルトは基本的に笑っている事の方が多い。辛そうな顔を見せたのはゴースト事件終盤にスミレが犯人だとバラした時、そして下忍試験と中忍試験の時くらいしか思いつかない。
最も水月に気絶させられていたから知らないがその時も悲しげな顔はしていたが。スミレはどうしたのかと聞こうと口を開きかけた時
「じゃあ茶丸を届けに来ただけだから俺帰るわ。またな委員長」
有無を言わさずにそう言った。何時もなら確かに「うん。またね」と言うのだが今のボルトはどう見ても様子がおかしかった。
だから帰ろうと背を向けたボルトの手を鵺と茶丸を離した手で掴んでしまったのかもしれない
「……委員長?」
スミレは割と無意識にしてしまった行動に内心パニックになりながらも口を開いた
「この後時間ある? 科学忍具の使用感とか聞きたいな」
そう結構咄嗟に思いついた理由を言った。勿論止めたのはそれが理由ではない。この理由は手を掴んで1秒後に作った。
本当の理由は今のボルトを1人にしてはいけない……そう漠然と思ってしまったからだ。ボルトはスミレを少し見てたが科学者だもんなと思い直して
「おう、良いぜ」
スミレの内心を知らずにそう言った。スミレは鵺との実験を中止してお茶を用意するついでにアキタに訳を話し許可を貰った。ボルトを応接室に案内してお茶を出した。
その間にボルトは何やらゴソゴソしてると思ったら昨日渡した科学忍具を出した。
「悪ぃ、持って帰っちまう所だったってばさ」
そう先程茶丸を送り届けそのまま帰ろうとしたのを思い出し言った。スミレは首を振って
「いいよ、ボルト君が持ってて。邪魔じゃなかったらだけどね」
ボルトはそれを聞き科学忍具達を見る。昨日、ここに来る前までのボルトなら却下していたかもしれない。と言うよりした。しかし今は科学忍具に対する苦手意識はそんなに無い。
「じゃあ……サンキューだってばさ」
そう言ってまたカバンに入れた。
(やっぱり元気が無い。どうしたんだろう?)
ボルトが元気を無くす時は大概誰かが絡んでいる。ゴースト事件の時はスミレが、下忍試験の時はクラスメイト達が、中忍試験の時は殆ど自爆だからあれだが。
今回は誰が絡んでいるのだろうか。まさかサラダやミツキか?
スミレは昨日の戦いをボソボソと話してくれるボルトを見ながら考える。そしてある所まで来たらボルトは隠しているつもりなのかもしれないが1層悲しげな顔をした。それは洞窟で敵に襲われた時ら辺の話だ。何故かそこら辺の話は彼にしては珍しくボカして飛ばした。
(ここかな、元気がない理由は)
ボルトが元気を無くした出来事の時系列を決定した。その洞窟の時に何かがあったのだ。それも立ち直りが基本的に早いボルトが今も立ち直れない位の出来事が。
「チャクラ刀はやっぱり使い方次第だったってばさ」
そう無理矢理笑顔を作ったボルトをスミレは心配な顔で見ていた。ボルトはその顔に気が付き
「ど、どうしたんだってばさ委員長?」
「ボルト君、無理してない?」
ただそれだけをズバリと聞いた。ボルトはスミレの言葉に面をくらい少しだけ呆然としていた。そんなボルトをスミレはまた心配な顔で待つ。そんなスミレの表情に少し耐えられなかったのかボルトは慌てて返す
「な、何でも無いってばさ。どうしたんだいきなり?」
あからさまに動揺しているのが分かる。しかしスミレはボルトが何で元気が無いのか知らない。だからこれ以上踏み入った質問が出来ない。それでもボルトの力になりたくて少し声を震わせながら言った。
「何時もより元気が無いよ。それに少し上の空みたいだし……私で良かったら話を聞く……」
「なんでもないってばさ! 」
ボルトは何かトラウマ的な出来事を思い出していたのかスミレの心配の声を思わず叫んで遮ってしまった。ボルトは自分の行動にハッとしてスミレを見た。スミレはボルトが叫んだ事にびっくりして口を開けていた。ボルトは申し訳なさそうな顔になり俯いて謝った
「すまねえ……大声出しちまって」
スミレは首を振った。
「私も……ごめんなさい」
ボルトに何があったのか知らないのに踏み入ろうとした事に対しての謝罪だった。スミレの言葉にボルトも首を振って立ち上がりボソボソと言った。
「悪い委員長、俺もう帰るわ」
何かあったと分かっているスミレといれば何もかも吐き出しそうで……しかし男が女の子の前でそれはダサいとボルトは思っているので帰るという選択肢を選んだ。
スミレは何となくボルトが思っている事が分かった。だけどやっぱり放っておくことは出来なかった。自分を救ってくれた人のこんな顔を見ていたくなかった
「ボルト君!」
応接室を出ようとしたボルトの名を呼んで止めた。ボルトは覇気がない表情でスミレを見た。
「私も久しぶりに里に帰る日なの。一緒に帰ろ?」
スミレは今基本的にはこの先端技術研究所で寝泊まりしている。木の葉からだと電車に乗ってこなければならず往復が時間がかかるという事でそうなった。それでも木の葉にある自分のアパートはまだ契約したままなので帰ろうと思えば帰れるのだ。スミレが壁にかけてある時計を見ると夕方に迫っていた。ボルトはそんなスミレを見てやはり元気なさげな顔で言った
「おう。良いってばさ」
許可を貰った所でスミレはアキタに帰る旨を伝え定時は過ぎてた事もあり帰る準備をして出入口で待っているボルトの元まで走った。
ボルトは建物に背を預けぼーっとしていた。
「お待たせ、ボルト君」
「おう。じゃあ行くか」
そう言ってボルトは電車の駅まで歩き始めスミレもボルトの隣を歩き始めた。その間何時もならボルトから何か話しかけてくるのに今日は無言だ。
何も話さないまま電車に乗って木の葉へ行く。
「……ボルト君」
「……ん、なんだ?」
一応声をかければ返事はしてくれるが上の空だ。そしてスミレは少しだけ勇気を振り絞り聞いた
「昨日何があったの?」
戦いの内容では無い。気持ちの面でスミレは聞いたのだ。ボルトはスミレを少し見ていたがやっぱり思い出すのも辛いのか
「悪い……余り話したくないってばさ」
そう言ったボルトから無理矢理聞き出す訳にも行かずスミレは少し胸が苦しくなった。そしてまた無言の時間が過ぎ電車は木の葉へと到着した。電車から降りると外は暗くなっていた。普段なら綺麗な夜空に立ち止まって見る所だがボルトとスミレは改札を過ぎた所で
「じゃあ、ここで」
別れようと言ってズボンのポケットから手を出した時、何かが一緒に落ちた。
「ボルト君、何か落ちたよ」
「あ……!」
ボルトはその落ちたものを拾った瞬間、大きく目を見開き一瞬動きを止めた。その瞬間ボルトがした思考は分からない。スミレはボルトじゃないからだ。少し動きが止まったボルトはその落ちたものを掴みもう一度ポケットに入れた
「じゃあまたな委員長」
そう有無を言わさずにボルトは踵を返した。スミレはまた駆け出しそうになってしまったが止まった。これ以上ボルトに迫ったらボルトが怒る可能性も考えたのだ。そして理由を話してくれないかもしれないと。
(それに……私なんかが聞くの)
嘗て目の前のボルトも殺そうとした自分にボルトの悩み事を聞く権利はあるのだろうかと考えてしまったのだ。そんな逡巡をしている間にボルトは夜の里に紛れ歩いて行ってしまった。スミレはそんなボルトを見送る事しか出来なかった。スミレは少しの間ボルトが歩いた方向を見ていたが気分を紛らわせようと今日の晩御飯の材料を買いに向かったのだった
★★★★★
ボルトはスミレと強引に別れた後、1件のアパートに来た。家主がもう居ない部屋を先程ポケットから落とした鍵を使い入る。
もしかしたら本当は生きていて「遅いぞボルト!」とか言うアニメ的な展開を1割でも期待していたのだがそんな事は無かった。それが更にボルトの気分を重くさせる。
扉横の電気のスイッチを押したが電気はつかない。それでこの部屋には電気が来ていないことを思い出した。ボルトは窓から窓から射し込む月光を頼りに机の隣の水槽を見る為にしゃがんだ。そしてポケットから買っておいた餌をその水槽の中の亀にあげながら言った
「お前は……これからどうするんだってばさ」
そんな質問に亀が答える訳もなく亀はゆっくりと餌を食べる。
この亀を買っていたこの部屋の部屋主はもう居ない。ボルトはポケットの残りの餌を机の上に置きこの部屋のたった1つの窓をボルトは開けた。射し込んでいた月光を直に浴び思わず目を少し閉じる。そしてまたゆっくりと目を開ける。そこにあった光景は歴代火影の顔岩が……もっと言えば3代目火影の顔岩がよく見える。
部屋主が一番尊敬していたのが三代目火影と聞いている。ボルト自身は会った事はないが今自分の家で居候している男を居候させる事は三代目の事を思い出したからと父親で今の火影のナルトが言っていた。
ボルトは顔岩を見ながらこの部屋と昨日の任務で起こった事を思い出し心臓の部分を抑え嗚咽を漏らしながら昨日スミレが言った言葉を思い出す。
『ボルト君、あれからいっぱい修行したの?』
修業とは基本的に強くなるためにするものだ。スミレはボルトがサラダと戦った時の身のこなしからボルトが強くなったと感じたのだ。そしてボルトはスミレの送迎会前よりも強くなったと自負していた。だが今のボルトの心中は……
「俺は……全然強くなってないってっばさ」
そう絞り出すような涙声で呟いた
★
スミレは取りあえずの買い物を終えて帰路についていた。しかし頭の中ではボルトについて考えている。あれだけ元気がないボルトをどうしたら元気づけられるのか……或いは自分に慰める権利はあるのだろうかと考えている。
そんな時、昨日ぶりの声がかかった
「スミレ?」
スミレも今のボルトに似た覇気の抜けた顔で振り返ると手提げ袋を掲げ里内だからだろうか額当てを取っているうちはサラダがいた。
2人は近場の公園のベンチに座った。そしてスミレは意を決して言った
「ボルト君の元気がないの」
サラダはそれを聞き自身も少し悲し気な顔になり「やっぱり引きずってたんだ……」と言ってサラダはボルトがああなった理由をスミレに話した。
昨日のあの後、自立型の傀儡の戦いの後の洞窟でボルトと何だかんだ仲良くなったムギノという上忍がボルト達を逃がすために自分を犠牲にして……
「そう……だったんだ」
「昨日別れるときは無理やり笑ってたんだけどね」
(でも……本当にそれだけなのかな)
別にサラダの言葉を疑っているわけではない。確かに目の前でそんな人が亡くなってしまったのなら元気をなくすのはまだ分かる。それでもボルトなら人前では……同期の前なら笑う筈だと思ったのだ。そしてスミレの予想は大体合っている。この前ボルトとサラダがボロボロの状態で帰って入院していた時、第5班の前では無理をして笑っていた。つまりボルトはやろうと思えばスミレの前でも無理やり笑えた筈だ。それも出来ない程に今のボルトは弱っている。
そうなった原因は確かにムギノの死なのは間違いない。でもそれはサラダが思ってたよりもボルトとムギノに親交があったか……大事な約束か何かを果たせなかったか
(ちょっと待って……)
そこでスミレは自分にブレーキをかけた。何かが頭に引っ掛かったのだ。そしてそれに思い当たった
(もしかして……私のせいでもあるかもしれない)
そう思う理由は昨日にある。スミレはボルトに「強くなったね」という旨の言葉を言った。本当にボルトが強くなっていると思ったからこそ言える純粋な言葉だった。
ボルトは中忍試験前は大分自信家だった。しかし紆余曲折があり今はそんなに自信家の面は全部という訳ではないが無くなっている。それでもボルトは自分が強くなった事に多かれ少なかれ誇りを持っていたはずだ。だけど……そんな自分の目の前でムギノが死んだとき、ボルトは何を思うだろう。そしてそれを助長してしまったのは……
「私も同じ所にいたから気持ちは分からないでもないけど……いつまでもグチグチするのはムギノさんが望んでいない」
そんなサラダの言葉を聞きながらスミレの心中は罪悪感で支配されていったのだった
2人は公園前で別れた。サラダが帰ったのを見送った後、スミレは鵺を口寄せしボルトのチャクラを追わせた。ミニサイズなら言う事を聞いてくれ鵺は走り出した。
(少しでも私のせいなら私がやらなきゃ!)
そう心で言った。鵺に追わせて少し経った時、この夜の中でも目立つ金髪が見えた。鵺にお礼を言って帰ってもらいつつスミレはボルトを見た。ボルトは街灯もない道へ歩こうとしていた。その闇がボルトを誘う様にボルトは歩いている。そして……ここで逃がしたらボルトがいなくなるような気がして……夢中で駆け出してその腕を掴んだ
「……! 委員長?」
あからさまにびっくりしているボルトを見ていたら無我夢中でしてしまった自分の行動に頬を赤くしながら口を開いた
「はぁ……はぁ……ボルト君。私の部屋に来ない?」
そうスミレは少しだけ息を切らしながら言ったのだった。
★★★★★
「お邪魔します」
ボルトは部屋に入ったスミレの後に付いてきてそう言いながら部屋に入った。スミレが電気を点けると明かりが灯り部屋の全貌が見えた。リビングとトイレとバスルーム、そして寝室があるのが分かる。流石に覗き見はしなかったが初めてサラダ以外の女の子の部屋に来たので少しソワソワしてしまう。
そんなボルトの様子に気が付かずにスミレはテーブルにクッションを置いた
「ここに座って」
「あ……サンキューだってばさ」
ボルトはそう言いつつ座った。そして珍しいものを見るように少しだけ見渡してしまう。テーブルの上にはアカデミー時代の修学旅行写真や15班で撮っただろう写真がある。キッチンの場所を見れば恐らくお皿が入っている棚の上にも写真がある。そこにはミツキ里抜け事件の後に皆で撮った記念写真がある。それらの写真はアカデミーまで一人ぼっちで生きていたスミレには正真正銘の宝物なんだろう。
「ボルト君、少し待ってて」
スミレはそう言ってエプロンを着つつキッチンの方に行きお米をとぎ始める。そして小鍋にお米と水を入れ弱火で炊き始めた。ボルトはそれを不思議そうに見る。ボルトの家には炊飯器があるからスミレのやった様な炊き方はしない。野外やキャンプなら兎も角家でもそうする事が少し珍しかったのだ。
スミレはその後、先程買ってきた晩御飯の材料を引っ張り出した。そして少し悩んだがボルトを長く待たせる訳にも行かないので簡単にチャーハンにする事にして準備を始めた。
ボルトはそんなスミレの後ろ姿をじーっと見ていた。女性が料理している場面なんか母親であるヒナタで見慣れている筈なんだがそれとは違った感慨を受ける。後ろ姿からしか推測出来ないが凄い慣れている。ボルトが同じ作業をすればスミレの3倍は時間がかかると思う。
(俺……なんで委員長についてきたんだ?)
ボルトは料理しているスミレを見ながらここに来る事になった経緯を思い出した。ボルトは少しだけ泣いた後痩せ我慢して帰路に着いた。家にはイラつく居候がいるが夜遅くまで任務でもないのに帰らなかったら心配をかけると思ったからだ。だから暗い道を歩こうとした時、突如スミレが自分の腕を掴んで来たのだ。
『はぁ……はぁ……ボルト君。私の部屋に来ない?』
一瞬腕を掴まれた事と少し息を切らしていたスミレにドキッとしてしまった。びっくりの方ではなくドキドキの方の意味で。そしてそんな勢いのあったスミレに思わず頷いてしまった。
……違う。本当は誰かといたかったのかもしれない。家族では無くスミレと。家族の元に帰れば少なからず気にかけてはくれるだろう。でもボルトにはそれが嫌だった。何より今居候しているあいつに自分のかっこ悪い顔を見せたくなかったと言うのもある。
そして一緒にスミレの部屋に向かってた時『良かったらご飯も一緒に食べない?』とスミレは言ってきた。その時スミレの頬が暗かったから分かりにくいが赤くなっていたのは気のせいだろうか?
「ごめんなさい、お待たせボルト君」
流石にお客さんのボルトをほっとくのは気が引けたのかスミレは具材を切り終わらせた。ボルトはその時初めてスミレのエプロン姿を見た。主に紫色だが菫の花柄があちこちにあってスミレにとても似合っていると思った。そんなエプロン姿もスミレが一瞬で取ったおかげでもう拝めなくなったが。スミレはボルトの隣にちょこんと座った。
そして……1分程の静寂が2人を包む。スミレは色々感情よりも口が先走って今の状況になった。そんな自分が恥ずかしく抑えるのに1分かかった。その間何とかボルトの表情を覗き見した。やはり何かを考えているのかぼーっとしている。そして……スミレは意を決して口を開いた
「……ムギノさんの事でしょ? ボルト君が元気無い理由」
ただそれだけを言ってみせたスミレにボルトは驚愕し思わずスミレをガン見してしまう。サラダの話が正解だった。ボルトは隠すつもりもなく動揺しているのが分かる。
「な……ん」
「サラダに教えて貰ったの」
ただそれだけを言えばボルトは納得した表情になった。そしてほんの一瞬だけゴースト事件終盤に見せた悲しげな表情を見せ直ぐに作り笑いを浮かべた。
「ま、まぁ忍の世界なんだから殉職だってあるってばさ」
『だからしょうがない』、ボルトは言葉には出さなかったが心でそう続けた。しかしそれが作り笑いなのはスミレにはお見通しだ。今の全力を持って作り笑いを浮かべているボルトの顔にスミレは両手を添えた。
「ちょっ! 委員……長」
ボルトは思わず叫んでしまう所だったがスミレの表情を見て止まった。スミレの眼は『話して?』って『抱え込んじゃダメ』と言ってるように見えたのだ。そしてボルトが目を逸らす事が出来ないように顔に手を添えている。
その紫色の眼をボルトは初めてまじまじと見た気がする。そして「綺麗だ」と今の状況に全く関係ない事を思い浮かべてしまった。
「……私にはボルト君がどんな思いをしたのか分からない。でも……辛そうな貴方をほっとくなんて出来ない」
そしてそんな紫色の眼から少しずつ涙が出てきた。
「ボルト君が私にしてくれた様に今度は私がボルト君の助けになりたい」
その言葉から嘘も偽りも感じなかった。本気でスミレは自分の事を心配し話を聞こうとしてくれている。それが分かったらボルトは誰にも弱みを見せまいとしていた壁が崩れ去ったのを感じた。
「昨日……さ」
そこからボルトは先程のサラダと同じ事をボソボソと話してくれた。その間でもスミレは手を添えるのを止めなかった。
そしてサラダが話した事以上の事を話してくれた。
「約束……したじゃねえか」
気がついたらボルトの青色の瞳からも涙が少しずつ出てきた。
約束とは雷バーガーを奢ったツケを返すと言う約束。ボルトはお金を返してもらう欲しさにそんな事を言ってる訳じゃないのは直ぐに分かっている。きっと生きてまた笑って会って欲しかったんだろう。そしてボルトが真に悲しくなっている理由はムギノの死と
「俺が……もっと強かったら」
スミレはボルトが思わず呟いた言葉にボルトの心が疲弊しきっているのを感じた。自分の予想通りボルトは自分の力不足を責めていた。自分が強かったら道ずれなんて道を選ばせず一緒に里に帰る事が出来たんじゃないかと。
ボルトは時々自分の事をめちゃくちゃ責める。スミレが入院した時も自分を責めていた。ボルトは涙を流しているがそれに気が付きスミレの前で泣くのはダサいと勝手に考え必死に止めようとする。しかし止めようとする度に逆にムギノの事を考えてしまい止められなかった。
「……!」
スミレはそんなボルトの顔に添えていた手を頭の後ろに回し少し強引にボルトの顔を体ごと自分に預けさせた。スミレの胸部の部分にボルトの顔が押さえつけられた。ボルトはいきなりそんな事をされた恥ずかしさと情けなさが出てきてしまう。だから離れようとするのだがどこにそんな力があるのかスミレは顔を上げさせなかった。
そしてボルトの頭をゆっくりと撫で始めた。その手つきは少しぎこちない。スミレ自身こんな行動は初めてだ。それでも……今のボルトにはこうしなくちゃいけないと思ったのだ。そんなスミレの撫でがボルトには心地よくて無意識に抵抗をやめた。そしてスミレは撫でながら赤ん坊に語りかけるように言った。
「ボルト君は強いよ」
「違う……俺は弱いんだ!」
そうスミレに撫でながらも半ば叫んだ。そんなボルトの咆哮にスミレはビクともせずに首を振った。
「貴方が弱かったなら私は今頃生きてもいないよ」
そんなスミレの言葉にボルトは震えを思わず止めた。何故そうなるのか全く分からない。そんなボルトに幼い子供に何かを教える口調でスミレは言葉を紡いだ。
「貴方が本当に弱かったなら私はきっと今頃あの異界で死んでた」
ボルトが弱かったら異界の崩壊中にへたり混んでしまったスミレを見殺しにしていたとスミレは言ったのだ。いやボルトが弱かったならそもそも異界にすらついていけたか分からない。
ボルトが弱かったら異界崩壊中に瓦礫を躱しつつスミレの元に辿り着けるかすら怪しい。そして心の面でもボルトは強い。それは直接救われたスミレだからこそ分かる。上手く言葉では言えないがボルトが弱いというのは違うとスミレは思ったのだ。
「私にはボルト君を励ます言葉なんて見つからない。ボルト君と同じものを見たり感じたりした訳じゃないからそんな無責任の事なんて言えない」
「でもね」とスミレは言葉を続ける。
「貴方が弱いなんて事は絶対無い。例えボルト君自身がそう思っても私はボルト君の強さを知っている。だって私はボルト君のおかげで救われたから」
ボルトはスミレに顔を押さえつけられているのでスミレの顔は見えない。でも何となく少し泣いているんじゃないかなと思った。
「悲しかったり……苦しかったら私の事を思い出して。私はボルト君のおかげで今を生きていられる。貴方の強さのおかげで今を生きている私の事を思い出して」
ボルトも人間だ。人間なのだから絶対なんかない。ボルトにも出来ないことなんか山ほどあるし救えない命もある。ボルトはそれが自分に近い人ならまたショックを受けてしまうだろう。だけどそれでもボルトのおかげで救われた人も確かにいる。言うまでもなく目の前のスミレだ。父親の復讐の道具として生涯を終える筈だったスミレを救ったのは他の誰でもないボルトなのだ。スミレにとってボルトはメサイアなのだ。
励ます事は出来ない。スミレが言った通りスミレは当時いなかったし赤の他人に等しかった。そんなスミレが励ました所で逆効果だ。だからスミレはこんな少し強引な方法をした。自分はボルトのおかげで生きている。その生きているスミレの温もりを少しでもボルトに分かって欲しかったのだ。
「……スミレ」
ボルトはそう言って自分の顔を子供のようにスミレに押し付けスミレはそんなボルトを受け止めつつ撫で続けた。アパートの一室から結構長い泣き声が聞こえたという
★★★★★
「その……悪い。ダサいとこ見せて」
そう少しだけスミレから離れボルトは恥ずかしそうに言った。その眼の周りには泣いた跡がある。それでもその顔はどこかスッキリしている顔だった。まだムギノの事を引きずっていないと言ったら嘘になるが大分落ち着いた。
スミレは少し首を振った。因みにスミレの服は少しボルトの涙で濡れている。
「気にしないで。私に出来るのはこの位だから」
そのまま2人は少し無言になった。別に話題が無い訳では無い。どちらかというと先程のやり取りに対しての恥ずかしさだ。スミレはしていた時は何にも無かったのに少し離れてしまった時遅すぎる自覚をした。元気づける為とは言え自分でも大胆な事をしたという自覚がある。
ボルトはスミレの胸で泣いてしまったこと等など……大分恥ずかしくそれによる無言だ。
2人とも無自覚なのか顔が赤くなっている。スミレは動いてないと体が変になってしまうと思ったのでお米を炊いている鍋に近づき出来ていたのでチャーハンを作り始め、ボルトはそんなスミレを先程とは別の視点で見ていたのだった。
お疲れ様です。めっちゃ中途半端な所で終わるやーつ。想像におまかせ系。
スミレの告白シーンはアニメじゃカットでしたね。まぁ漫画とアニメのスミレは微妙に違うし緊急の任務前なのに場違いの事を言うのもあれなのでカットは正解だと思います。スミレがわざわざ原作にはない里戻る宣言したのでアニオリでスミレ出そうだし。個人的にサスケ新伝はスミレと重なる事がありまくるのでアニメでやるなら出て欲しい。
184話を見て思いついた話で単品なので続きは多分書かない。最初は親子の日シリーズで書こうかなと思ったけどそっちはもう漫画準拠でやっちゃったので色々整合性おかしいことになるので止めた。
アニメのボルスミの会話の改変は良かったです。スミレの夢が微妙にボルトに似ているのも良き。
さて独自解釈について。ボルトは自分が弱い自分を責めました。アニメでスミレがいっぱい修行したの?と聞いて強さについて考えてしまうんじゃないかなぁと思いました。現にミツキの時のショックはそりゃあ半端無かったし。死んでいないミツキであれだからムギノが死んだ時はこうなっちゃうんじゃね説でやりました。そしてスミレが励ます?みたいな展開でした。
そう言えばアニメのサラダのスミレへの呼び方が委員長に戻ってましたね。送別会の時はスミレ呼びだったのに。
因みにこの話、ボルトが泣く前のスミレ呼びは素です。
(*´∇`)ノ ではでは~
修業パート誰目線でやる?
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ボルト&ナルト
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スミレ&ビオラ
-
自来也&サスケ
-
最早全部やれ