ボルトとスミレ 基本的にif   作:レオ2

13 / 51
てなわけで、ビオラのリメイクになります。
といっても殆ど流れは変わりません。
4、5年近く前の自分が書いたのを加筆、修正したVerになります。
これだしても前のは残しているので、暇な方は見比べてどっちがいいか感想もらえたら幸いです。
だってボルトとかだってばさbotになっちゃってたんですもん()。
ただ、流石に3万6千字を一気にリメイク出来なかったので小出しにしていきます。
では、いざ尋常に!


ビオラ Remake Part1

木ノ葉隠れの里、始まりの里であり数多の忍者が守り、作って来た五大国の里の1つ。

 今の所、7代に渡って収められている木ノ葉隠れの里の長はうずまきナルト。

 その身に強大な尻獣を宿し、膨大なチャクラから放たれる術の数々は忍界最高峰だ。

 10年以上前の忍界大戦、その終戦の立役者でもある。

 木ノ葉隠れの里と言えばうずまきナルト、これが思い浮かばれるほどだ。

 

 そんな神格化されているナルトだが戦闘においては確かなのだがいかんせん、事務作業などは少し不得意だ。

 どんな英雄でも万能ではない事を証明するナルト。

 だがナルトには頼もしい補佐がいる。だからナルトは今までやってこれたのだ。……仕事のやりすぎでの残業などで家族には寂しい思いをさせてはいるが。

 しかし、どんな修羅場をくぐって来た2人でも予測不可能なことは当然ある。

 この物語は、たった1人の赤ん坊によって分岐した、世界の話である。

 

 *

 

 戦乱の時代が終わり、五大国が融和を結び平和な時代が続いていた。

 その平和に貢献し、そんな世界を望み続けて来たうずまきナルトは今日の里を見渡しながら二カッと微笑んでいた。

 

「最近は平和でいいってばよ! この前みたいな事もないみたいだしな」

 

 それに苦笑いしながらシカマルは返した。

 

「当たり前だ。あんな事がしょっちゅう起きてたまるかっての」

 

 シカマルの言うあんな事とはこの前ナルトやシカマルの息子、うずまきボルトや奈良シカダイが通っている忍者アカデミーで初めて他里に修学旅行に行った時の事。

 ナルトが根気よく頑張って交渉した果てに実現した修学旅行である。

 ナルトの時代ではそもそも、他の里とは戦争状態か、或いは臨戦態勢な事が多い時代だった。

 そんな状態の時に修学旅行など、出来る訳なかったというのが実情だ。

 

 しかし、その修学旅行が無事に終了したという訳ではなかった。2人とも、霧隠れの里の長である長十郎から届いた嘆願書に頭を抱えたのは記憶に新しい。

 簡単に言えば、霧隠れで置きかけたクーデターを、うずまきボルト、うちはサラダ、結乃イワベエの3名が喧嘩と称して止めてくれた事を称賛するものだった。

 だが、アカデミーとしては当然罰則ものなので彼らに処罰を与えないで欲しいという類のものだった。

 

「あの時は頭を抱えたってばよ」

「まあな」

 

 ボルトは友達を助けるために、”喧嘩”をしたと担任であるシノとかには話しているらしい。

 そのこと自体は、ナルトには誇らしかった。

 経緯がどうであれ、彼は友達の為に危険を冒しても喧嘩しに行った。親としては当然心配するが、反対にボルトの気持ちも分かるが故に褒めたら良いのか、怒ればいいのか分からなかった。

 …そもそもで、まだ修学旅行後のボルトに会っていないから、そんな事を言う機会も当然ないわけだが。

 父親として、自分はボルトに一体何をしてやれているのか…ナルトには分からなかった。

 一瞬ナルトの表情に影が落ちたのを見逃すシカマルではなかったが、その前に火影室へノックの音が響いた。

 

「入れ」

 

 シカマルの声と共に、扉が開かれる。

 慌てたようにやって来ていたのは、木ノ葉隠れの上忍である木ノ葉丸だ。

 額に焦りによる汗を垂らしながら、彼は報告した。

 

「7代目、大変です!」

「どうした木ノ葉丸?」

 

 ナルトとシカマルは緊急事態か? と思い顔を引き締めた。

 だが木ノ葉丸の報告は沢山の疑問符を浮かばせただけだった。

 

「そ、空からいきなり謎の赤ん坊が降ってきました!」

「「·····?」」

 

 ナンバーワンとナンバーツーは互いに顔を見合わせた。

 

 *

 

 ナルトは報告を受け、業務を一旦影分身に任せ現場である日向邸へ急行した。

 なぜ、彼からしたら義実家のここなのかと言えば単純にこの上空から件の赤ん坊推定、1歳か2歳の子が降って来たからだ。

 幸い怪我はなく、ハナビがキャッチしていたから無事だ。

 ついでになぜか亀のような動物?も降って来たことがさらに事態をややこしくさせる。

 

 ナルトが手慣れたように日向邸へとやって来ると、顔見知りのお手伝いさんが直ぐに居間に案内してくれる。

 まさか赤ん坊が里に仇なす者とは思えないが、空から降って来る赤ん坊など普通ではない。少し気を強めに今に通じる障子を開けた。

 

「はーい、はいはい、こっちだよ~」

「きゃっきゃっ!」

 

 なのだが、どういう訳か目の前に広がっていたのはハナビとヒアシ。

 そしてそのハナビの両手を握って、テクテクと小さく足踏みしている赤ん坊の姿。

 紫色の幼児用の服に、ズボン。

 金髪がメインの中に所々紫髪も見受けられるサラブレッドな髪。

 瞳はどっかの誰かによく似ている青い眼。まるで誰かと誰かを掛け合わせたような姿だが、この時のナルトには分からなかった。

 

「えーっと、ハナビ、その子は?」

「あ、火影様。この子がいきなり空から落ちて来たんです。」

 

 ハナビがだらしなく口元を緩めながら言うと、赤ん坊の方もにぱっと笑う。

 のほほんとした平和な光景の中に、まさか赤ん坊がどっかの敵の変化な訳でもなく、そもそもその事にハナビとヒアシが気がつかないことなんてありえない。

 疑問符全開でヒアシを見ると、厳かに頷いたのだからそれも間違いではないのだろう。

 なぜ空から降って来たのだとか、ヒアシの横で甲羅に引っ込んで寝ているちっさい亀はなんなのかとか、言いたい事は沢山あった。

 しかし、それよりも衝撃的なワードが飛び出してきたのは割と直ぐだった。

 ハナビの両手に捕まっていた赤ん坊が、ナルトを見上げる。

 そうすると、パーッと顔を輝かせてハナビの両手を振り切ってナルトにトコトコと突撃してきて足元に抱きついて――

 

「じいじ!」

「「「えっ?」」」

 

 家族そろって仲良く素っ頓狂な声を上げ、皆で赤ん坊の言葉を咀嚼して

 

「え、えー〜っ!」

 

 真昼間の日向邸から、凄まじい絶叫が鳴り響いたのだった。

 

 *

 

 同日、ナルトの息子であるうずまきボルトは居残り罰を終え帰宅する所だった。

 

「シノ先生ったら、なんで俺だけ罰が多めなんだよ!」

 

 数日前に起きた霧隠れの里であった喧嘩、そのこと自体は水影の嘆願書によってお咎めは無かったのだがシノや校長のイルカに問い詰められた時に嘘をついたのが不味かった。

 これ幸いと罰を受けさせられ、サラダと喧嘩しまくったのが最近の話。

 しかしそんな罰も今日で終わり。愚痴を言うよりも楽しい事をするというのはボルトの良き点だ。

 シノの事なんて忘れて、帰ってゲームでもしようとルンルン気分で帰路につき始めようとすると

 

「あっ」

 

 同じくアカデミーの門を出ようとしていたクラスメイトを見つけ、つい嬉しくなって駆け寄って意気揚々声をかけた。

 

「委員長!」

 

 委員長と呼ばれた少女は、特徴的なロングヘアな紫髪をふわりと揺らしながら振り返る。

 そのままボルトの姿を見ると、どこか会えたことを嬉しそうに笑みを零し駆け寄って来るボルトを見ていた。

 

「ボルト君」

「こんな時間まで委員長が残ってるのなんて珍しいな」

 

 ボルトや、他のいたずら小僧たち。それにボルトと同じ罰を受けていたサラダとかなら兎も角基本的に優等生な彼女が残っていたのは意外にも思う。

 しかし、スミレは柔和な笑みを浮かべて種明かしをする。

 

「ナミダとワサビの訓練を手伝ってたの」

 

 アカデミーでは放課後に訓練などをするのも自由だ。ボルトはあまりしないが·····。

 友達の為に、自分の時間を惜しみなく使う。

 そのこと自体が、スミレにとってかけがえのない時間の使い方だという事をボルトは知っている。

 

「今日でようやく罰も終わりだってばさ」

「ふふ、お疲れ様。ボルト君達のおかげで校舎綺麗になってたよ」

「ま、まあな。俺にかかればそれぐらい楽勝だぜ」

 

 そう1人でウンウン言ってるボルトに微笑んでいるスミレ。

 そのまま2人は分かれ道まで一緒にある事にした。

 彼女とこうして帰り道を歩くなんて、何時ぶりだっただろうかと思いながら他愛のない話をする。

 直近の卒業試験の事、鵺の事、そして趣味の話。

 何でもない事のようにスミレは料理や裁縫が好きだと言う。

 

「へぇー、委員長料理と裁縫得意なのか」

 

 それに照れながら頷くスミレ。

 

「う、うん。·····ボルト君は私の昔を知ってるよね?」

 

 それを聞いたボルトは、一瞬返し方に迷いながらも頷いた。

 スミレの父が、スミレを平気として育ててきた事。自分達を迫害し続けた里への復讐の為に、牛頭天王をスミレの身体に植え付けたこと。

 父から怨念のように刷り込まれた宿命を、ボルトが打ち砕いた。

 たった1人で生きられるように育てられたスミレにとって、忍の技術の他にも料理や裁縫は必要なスキルだった。

 それから単純に、1人暮らしするようになってからは節約をする必要もあったからだ。

 

「そう言えばスミレの弁当美味しそうだったもんな」

「はわわ、そ、そうかな。ありがとう」

 

 スミレは照れながらお礼を言う。

 アカデミーの生徒は購買で食べることが多く、スミレも偶にサラダやチョウチョウに付き合って買う事がある。

 それでも、節制の為に手作りの方が多い。

 彼女が教室で自分で作った弁当を食べている姿は度々目撃されているし、ボルトも見ていた。

 シカダイなどの悪友と違う所で食べることが多かったから、そのことについて反応したことがこれまでなかったのだがこうして話題に出たことで口に出したのだ。

 

「一度いいから食べて見てえな委員長の弁当」

 

 その事を思い出していたからか、ボルトはよだれを出しながらそんな事を呟く。

 もちろん彼とてスミレの家事情を知っているので、作ってくれとは言わないが食べてみたかったのは本当だった。

 普段から雷バーガーを食べている彼にしては珍しく、スミレの節制と健康志向の弁当を食べてみたかったのだ。

 

 スミレはそんな作る側からしたら嬉しい言葉を聞いてつい――

  

「えっと、それなら明日作ってきてあげようか?」

 

 口が勝手に動いていた。

 気がついた時には既に遅く、遅れて顔に熱を感じながらも取り消そうとしたが遅かった。

 

「良いのか!? サンキューな委員長!」

 

 何度も、何度もこのアカデミー生活で向けられてきた太陽のような笑顔を見せられたら断る事なんて出来なかった。

 

(はわわ!! ぼ、ボルト君にお弁当って···お弁当って)

 

 かあっと頬を赤くしながらフリーズしていると、ボルトが鞄を探っている事に気がつき…その鞄から必要十分な金銭が飛び出て来た。

 なぜそんなものを出すのか、そんなの答えは1つしかない。

 

「じゃあこれが弁当の材料費な。これで俺とスミレの分を作ってくれよ!」

「え、で、でもお金はいいよ」

「良くねえよ。作ってもらうんだから払うのは当たり前だろ?」

 

 まごう事なき正論を噛ましながら、スミレの手にそれらを握らせる。

 金を渡された事ではなく、手を握られた事に心臓の鼓動が早くなる。

 弁当を作る事は構わない。

 というよりも、既に引き受けて、こうしてお金も渡されてしまった以上は望むところでもある。

 しかし、それはそれとしてスミレにも退けない部分がある。

 

「えっと、私の分のお金はいいよ。ボルト君のお弁当の分だけで」

 

 そう言って一部返そうとしたが、押しはボルトの方が強かった。

 

「いいってばさ、それとも明日委員長は購買にするのか?」

「う」

「じゃあ明日の弁当楽しみにしてるってばさ!」

 

 ボルトは結局お金を押し切り、分かれ道なのもあって走り去ってしまった。

 

「あ…」

 

 去っていくボルトの姿を、スミレは残念そうに見送った事は本人にも気がついていない。

 しかし、次には手の中にある彼の温もりを感じるお金を見て急いでお財布代わりにしているポーチを取り出した。

 その中に彼から預かった大事なお金を入れ、家に帰ろうとしていた足を市街地の方へと向けた。

 早くしないと行きつけのお店が閉まってしまうからだ。

 

「ボルト君に、お弁当…はわわ」

 

 ボルトにお弁当を作るというこのシチュエーションに、スミレはリズミカルに響く鼓動を感じながら歩みを進めるのだった。

 

  *

 

 一方で、ボルトは自分からお弁当を食べてみたいと言った時らへんから訳も分からない心臓の音を誤魔化す為に走った。

 家までの距離がもう少しという所で、ようやく鼓動が平常に移行して歩きに変わった。

 

「何で俺、委員長に弁当作ってくれって·····」

 

 彼女が作るお弁当が気になったのは事実だ。

 だからその事については問題ない。問題なのは、作ってくれ…って愛妻弁当じゃないかと思ってしまったのだ。

 けどそれはそれとして

 

「でも委員長の弁当楽しみだな」

 

 そう言ってボルトは残りの家までの道を辿った。

 

 *

 いくら現役の火影の家と言っても、そんな豪邸という訳ではない。

 一般的な家と比べたら広いが、様相は一般のそれだ。ここがうずまきナルトの家だと言われても、それを信じることが出きる人間がどれだけいるだろうか。

 そんな家に、ボルトは帰宅してきた。

 

「ただいま」

 

 普段なら、ここらでヒナタかヒマワリが出迎えてくれるのだがどういう訳か今日はない。

 どうしてだ?という疑問符を感じたままボルトが靴を脱ごうとすると、玄関に大人の男物の靴が置いてあった。

 それはここしばらく帰って来なかった、父の靴だ。

 ボルトがその事に気がつき、短い距離を走った。

 なにやら途中でヒナタでもナルトでもヒマワリでもない声がした気がするが。

 

「父ちゃ·····」

 

 ここしばらく帰って来なかったナルトにどんな事を言ってやろうかと思いながら開けたリビングの戸。

 しかし、言葉途中で止まってしまった。

 誰だって、この家の子供じゃない子がいたら止まってしまうだろう。

 そう、なぜかヒマワリの手を握って歩こうとしている存在を見つけたからボルトは動きが止まってしまったのだ。

 なんなら、その存在は何故か推定1歳から2歳の――

 

「……って誰だってばさこの子?!」

 

 思わず出してしまった声に、赤ん坊はびくりとしてボルトを見上げた。

 赤ん坊を見ているボルトも、つい赤ん坊を観察してしまう。

 金髪の中に混じっている紫髪は誰かを思い出させる。

 それ以外の要素も――ナルトのような髭線が入っていたり、青い眼だったり――この子供が他人のような気がしない事だけは確かにあった。

 ボルトはこの赤ん坊の説明を、ヒマワリを見守っていたナルトへ目で問いかけた。

 元々ナルトも隠す気が無かったのか、あっさりと言い放った。

 

「今日の昼間、この子が日向邸の上空から落ちて来たんだ。」

 

 一瞬何を言っているんだこのクソ親父はと、自称天才のボルトでも数秒固まった。

 ようやくナルトが何を言っているのかを飲み込めると、目を見開きながら

 

「はぁ?!落ちてくるわけねえだろ?!」

「ボルトがそういう気持ちも分かるけどな、受け止めたのはハナビだしお義父さんもそれは認めている。俺がそんな嘘つくメリットなんてねえだろ?」

「それはそうだけど…」

 

 ボルトの戸惑いをよそに、赤ん坊はジーっとボルトの事を見つめて――大切な何かを見つけたかのようにヒマワリの腕を振りほどきボルトへダッシュしながら――

 

「パパ──ーっ!」

 

 太陽のような笑顔と共に、赤ん坊は絶句しているボルトの膝へハグした。

 

「はわわ〜、パパ~!」

 

 聞き覚えの在り過ぎるワードが飛び出たが、それ所ではなかった。

 ボルトは絶句した口を、反射的に否定に揺らした。

 

「い、いや俺はお前のパパじゃないってばさ」

 

 その言葉を見上げる赤ん坊、言葉が分かっているのかは正直分からなかった。

 しかし、その答え合わせは直ぐに行われた。

 うるうると溜めた涙を見て、ボルトが反射的になにか言う前に

 

「パパじゃ·····ないの? うわああああああ!!」

 

「えっちょっおい!」

 

「パパなのにパパじゃないって言った!! うわああああん!!」

 

 そしてボルトは絶対零度の視線に気がついた。ヒマワリだ。

 ボルトが帰ってくるまでの間、とっても可愛がっていたのはさっき見た通りだ。

 そこに生まれた情は、赤ん坊>ボルトの比較式が簡単に出来てしまっていたのだ。

 その視線が、過去に白眼で殺されかけた時の事を思い出させ赤ん坊を抱き上げる。

 

「わ、悪かったってばさ! ほ、ほらパパだぞ?」

 

 正直周りの視線が痛いからやめたいのだがこのまま泣き続けられたら困るなんてものじゃない。

 下手したらしばらくヒマワリに口を聞いて貰えなくなる。いや、白眼の刑になってしまう。

 もうあの日みたいな目にはあいたくない。

 そんな自己保身のための行動だが、それを聞いた赤ん坊は溢れていた涙を引っ込めながらボルトを見つめ

 

 「ぐすん、ほんと?」

 「あ、ああ」

 

 肯定すると、今度はとびきりの笑顔になりボルトに抱っこされたまま全力ハグした。

 ぎゅーという音が聴こえそうなくらい、赤ん坊の全力のハグだった。

 

「えへへ、パパ〜」

 

 ボルトはほとほと困り果てた顔になってナルトを見た。

 

(どうすんだってばさこの状況!)

(悪い、しばらくそのままで)

 

 ナルトは手を合わせ、念じる事で意思疎通した。

 結局、謎の赤ん坊はボルトを離してくれず晩御飯の時までそんな調子だ。

 赤ん坊の席を、ヒマワリが生まれた時に使っていた食卓台を引っ張り出す事で用意し5人で晩餐。

 言うまでも無くボルトは赤ん坊のキラキラ笑顔にどんな反応をすればいいのか分からず、相手を殆どヒマワリに任せていた。

 晩餐が終わり、出来上がったお風呂にヒナタとヒマワリ、赤ん坊が行ったのを見計らいボルトはようやくナルトに詰め寄る事が出来た。

 

「で、父ちゃんあの子はなんなんだ? 俺をパパって絶対おかしいだろ?」

 

「それには同意するしかないが、かといってあの子には悪意が無い。無邪気な赤ん坊そのものだ」

 

 誰かの変化である可能性はないということだ。

 深く椅子に座りなおしたボルトは、疲れたように肩を落とした。

 

「じゃあ誰の赤ん坊なんだよ」

「それが分かれば苦労はしない·····と言いたい所だが」

 

 ナルトの視線が、細められるのを見てボルトは言い訳するかのように叫ぶ

 

「いやいやそれはねえだろ父ちゃん! あの子が俺の娘とか絶対!」

 

 さっきのやり取りをナルトが真に受けたと思い言った。さっきのはあの子を鎮める為にやったのにすぎない。

 徐々にあの子には自分はパパじゃないと教えなければならないしというかそもそもボルトは赤ん坊の出来方すら知らないのだ。

 オマケにボルトには彼女と呼べる人すらいない。

 それなのに赤ん坊が居るわけない。それと大人達に言わせればボルトの歳で赤ちゃんがもういたら倫理的にアウトだ。

 それでもナルトは微妙な顔をしたままだ。理由は――

 

「ボルト、お前あの子が俺やヒナタを呼ぶ時何て言ってるか知ってるか?」

 

「えっと……」

 

 そう言えばさっきの晩御飯の時はずっと自分に顔を向けてパパを連呼していたからナルトやヒナタへの反応は知らない。

 帰って来た時の状況だけ見るなら仲は良さそうだったが·····ナルトの答えは斜め上を行った。

 ただし、なぜか予測できてしまった。

 

「じいじとばあばだぞ?」

 

 それを聞いたボルトは天を仰いだ。理解が少し追いつかない。いや誰でもこんな事になったら追いつかなくなるだろう。ボルトが悪い訳では無い。

 ナルトは普段の激務で少し疲労感がにじみ出ている顔になっている事が多いが、ヒナタに関してはまだ20代と言われても通用するほどの美貌を持っている。

 ナルトは兎も角、ヒナタまでお婆ちゃんと言われることなどまずないだろう。普通なら。

 そんな時お風呂から出る音が聞こえた。赤ちゃんだから短めにしたんだろう。

 ボルトは暫し虚空を見ていたが何か泣く声で我に返りリビングの出口を見ると、大泣きしている赤ん坊を抱いたヒナタがやって来た。

 

「どうしたんだってばさ?」

 

 ヒナタは、困った表情を浮かべ

 

「それがね·····」

 

「ママはどこっ?」

 

 こういう訳である。ボルトはパパと言われた時から覚悟はしていたがやっぱりこの赤ん坊にも母親がいる。

 いくら子供のでき方を知らないとはいえ、流石に父親と母親がいるという常識は知っている。

 その常識に照らし合わせれば、彼女にも母親がいて当然だろう。

 ただし、その相手を知らない訳だが。

 

 赤ん坊はヒナタから降ろされると、真っすぐにボルトへ駆け寄り問いかけた。

 

「パパ、ママどこ?」

 

 正直疲労感自体が半端なかったが、どうしてか強くは出られないボルトは椅子から立ち上がると赤ん坊の目線に合わせ問いかけた。

 

「お前のママって誰だってばさ? ……というか名前は何て言うんだ?」

 

 しかし、聴いている途中で自分が赤ん坊の事を常に”お前”と言っていた事に気がつき名前を聞く。

 それは初対面同士なら当たり前の事なのだろうが、赤ん坊にとっては青天の霹靂だった。

 先程以上に眼に涙を溜め、信じられないとボルトを見上げて――

 

「わたちの名前·····わちゅれたの?」

 

「え、いや、えっと……」

 

 分かるわけない。自分はこの子の事何て知らないのだから。

 でも何故だろう? こう見てたら親近感が湧いてきてるのは否定出来ない。

 しかし、分からないものは分からない。ボルトが返事に固まっていると、本当に忘れられたと思った赤ん坊は破顔しながら喚く。

 

「うえええん!! パパがビオラの事忘れてるー〜!!」

 

 そこでボルトは貴重な情報をゲットした。

 

「あ、ああそうだ。ビオラだったな!!」

 

 赤ん坊のわりに喋るの早くね?とか思っていたが、流石に怪しい人間に名前を隠す知能まではまだなかった。

 幸いにも、彼女自身が答えを話してくれてボルトは助かったと思っていた。

 

「あい! うずまきビオラです!」

((やっぱり))

 

 何となく分かっていた事だが、やはりというかうずまき性にボルトはまた頭を抱えてしまった。

 そんなボルトの頭痛など、ビオラは知ったこっちゃないっようで首を振り振りと振りながら。

 

「ママどこ〜ー?」

 

 どうしようとボルトは数瞬考え、閃いたと顔を輝かせた。

 

「あ、ええとビオラのママは今お仕事に行っているんだってばさ」

 

 ヒナタは専業主婦、しかしこの時代共働きの所も無いわけではない。

 というか時代が進むにつれてその方が多くなっている。

 そんなことを知っていた訳ではないが、取り合えず今いない事は仕方がない事なのだと伝われば何でも良かった。

 ビオラはそれを聞き、今日は母に会えない事を悟り俯いた。

 

「…わかった」

 

 あからさまに落ち込んでいる様は、ナルトに構って貰えなかった時のボルトに似ているとは誰も思わなかった。

 気分が沈んだビオラは、そこに付け込まれるように眠気が襲って来たらしく顔をかくんかくんと揺らし始めた。

 それを見たヒナタは、ビオラを寝室に案内しようとするが、こればかりは譲れないとビオラは最後の気力を振り絞った。

 

「パパとねるのっ!」

 

「ええ…」

 

 どこか心の中で予測はしていたが、いざ喚かれたらしんどいものがあった。

 現状、その泣き顔を止める方法は至ってシンプル。

 ボルトは頭を掻きながらビオラを抱っこすると、彼女は嬉しそうにボルトへ腕を回しへばりついた。

 

「ちょっと部屋に連れてくってばさ」

「おう」

 

 ナルトっもそれを止める事は無く、ボルトは自室へとビオラを連れて行く。

 その間ビオラはずっとにこにこしていて、ボルトは段々と彼女のパパ発言を誤魔化すのに罪悪感が必要だと言う事に気がついてしまっていた。

 自室に入り、自分のシングルベッドへとビオラを寝かせる。

 これで自由の身だ…とか思っていたボルトは自分の認識が甘かったことを悟らざるえなかった。

 

「めーっ!」

「ええっ…ああ、もう分かったよ!」

 

 寝かされたビオラは、ボルトの上着の袖を離さずに潤んだ瞳でボルトに抗議をする。

 どういう訳かその抗議に逆らう事が出来ずに、その掴まれている上着を脱ぐ。

 掴んでいた上着が抜けたからか、ビオラは途端に不安な表情を見せる。

 しかしボルトが布団に入って来てくれると途端に機嫌が良くなってがっちりとホールドを決めた。

 

「…」

 

 ビオラは幸福そうな表情のまま、その瞼を閉じると徐々に寝息を立て始めた。

 身体の小ささに見合う、可愛らしい寝息だ。

 目の前で眠るビオラに、ボルトは複雑な顔を浮かべて起こさないように頭の中で色々思索を行った。

 

(何で俺の事をパパって·····それじゃあママは誰なんだよ)

 

 直近且つ、直ぐに考えることが出きるのはやはりビオラの母の存在だ。

 もしも…もしもビオラが本当に自分の娘だった場合、彼女の母はつまり自分のお嫁さんになると言う訳だ。

 正直、お嫁さんといっても今のボルトには余りピンと来ていないが、それでもビオラを見ると自然とクラスメイトの1人が浮かんでくる。

 ビオラの姿が、口癖が、そして笑った時の顔に彼女の面影を感じる。

 しかし、その女性はビオラのように我が強いわけでもなくまた甘えん坊でもない。

 剝離したその性格が、決めつけるのを一歩手前で抑えてくれていた。

 

(…よし、今の内)

 

 悶々とする考えの中、ビオラのハグが緩んだのを確認したボルトは縄抜けの要領でするりと抜けた。

 幸い夢の中のビオラは気にしたような素振りは無く、その事に一安心したボルトは布団をかけなおしてあげた。

 そのまま脱いだ上着を着ながらリビングへ戻ると、ナルトとヒナタが歓談しているところだった。

 彼らはボルトに気がつき、向かいの椅子を勧めた。

 ボルトは冷蔵庫からお茶を出して、勧められたように椅子に座ってお茶を飲んだ後机に突っ伏した。

 

「疲れた」

 

 ヒマワリが小さな頃は、ああして一緒に寝ることもあった筈なのに今は精神的な疲れが半端ではなかった。

 まだ11歳だと言うのに、どういう訳かパパ認定され、泣き喚かれたと思えばもはや自分がタイムスリップしたのではないかと思った方が色々建設的だと思ってしまった。

 

 ——現実逃避なだけだが

 

 それに、まだ自分はマシだと思っている。

 目の前にまだまだ若いのに祖父母認定されてしまった2人を見ながら謎に安堵した。

 それはそれとして、ナルトも家に帰ってきてただだらけていた訳ではない。

 

「ボルト、疲れているところ悪いが聞いてくれ」

 

 正直、さっさと風呂に入って寝たいと思っていたボルトだが、ビオラの事が気にならないと言えば嘘になる。

 正体がなんであれ、まだ年端も行かない赤ん坊という事には変わりはないしパパかどうかに関係なく面倒を見てやる気位にはなっていたからだ。

 それはボルトの人がら故だろう。

 そんな訳で、ナルトやシカマルがどのような結論に至ったのかは聞いておく必要がある。

 

「ビオラは、未来から来た可能性が高い」

 

 やっぱそうなるよなぁと、ボルトは再び机に突っ伏した。

 彼女が嘘をついていない場合、ボルトが父親というのは本当なのだろう。

 けど今のボルトには子供がいないのだから、その結論に至るのは非論理的であると同時に合理的ではあった。

 

「タイムスリップって…SFの中だけにしてくれってばさ」

「でも、そうじゃないと辻褄が合わない事はお前も分かっているんだろ?」

 

 もちろんナルトとてボルトが寝ている間に何もしていなかった訳ではない。

 ビオラの名前を部下に調べさせたが、どこの病院にも出生記録はない。

 ついでに言うなら、そもそもうずまき一族が今や殆ど存在しないのだからその姓を持っている人間がいるのならナルトの耳にも当然入る事になる。

 結論は、未来からビオラは来たとする方が色々納得の出来るものだった。

 問題はその方法だ。

 

「時を超えるのは、ビオラと落ちて来た亀が関係していると俺達は踏んでいる。まだなにも反応を示さないが、ビオラと一緒に来たのなら必ず関係している筈だ。それまでの間、ビオラはうちの預かりになった」

 

 もはやそんな流れであることは覚悟していたが、ナルトの思い通りになるのは何だか癪に感じたボルトはささやかな抵抗をしてみた。

 

「それで、誰が面倒見るんだよ?」

 

 預かりになったと言う事は面倒も当然見なければいけないと言う事。

 その役目を、ナルトが誰に託すつもりなのかは一目瞭然だがまだ1パーセントの確率で見ないで良いかもしれない。

 淡い期待をナルトは当然のように裏切った。

 

「あの子もお前に懐いてるみたいだし、アカデミーの時以外はお前が見てくれないか?」

 

 そりゃそうなるよなぁと、ボルトは諦めた。

 

「分かったよ」

「ありがとうな、ボルト。それでボルト、仮にビオラが未来のお前の娘だとして母親は誰だと思う?」

 

 少しニヤニヤしながら聞いてきた父に呆れた視線を見せながら考える。

 ナルトの隣ではヒナタがなぜかワクワクしている表情をしていて、自分の中で出て来た予想を話せばからかわれると感じたボルトはとぼける事にした。

 

「さあ、分からないってばさ」

 

 そう言って立ち上がり、それ以上の追及を受けないようにそそくさとお風呂へと向かったのだった。

 

 *

 

 そっと自室へ戻って来たボルトは、自分のベッドで相も変わらない寝顔を浮かべているビオラを起こさないようにベッドに腰かけた。

 自分の娘だなんて、まだボルト自身は認めていない。

 だけど、どこか心の中でその事を認めてしまえと屈服させようとしてくる声も頭に響いていた。

 その声に囁かれるように、ボルトの手はビオラの小さな頭を撫でると、彼女はへにゃりと顔を歪ませる。

 そんな表情に、ボルトの口もつい緩む。

 脳裏に1人のクラスメイトもよぎる

 

(ビオラの母親は·····委員長なのか?)

 

 自分なりに考えて、結論を出したビオラの母の存在。

 ビオラの事を構成する様々な要素が、1人のクラスメイトへと集約されて行く。

 

 委員長--筧スミレ――、ボルト達のクラスメイトにして委員長。

 問題児だらけなクラスを纏める存在であり、柔和でお淑やかな性格は誰からも好かれている。

 既に一度告白を受けたことがある事からも、アカデミーの中でもモテる方なのはボルトも何となく分かっていた。

 

 ボルトも、そんな彼女を違う意味で見ていた一人だ。

 彼女犯した罪と、その彼女を止めるために飛び込んだあの異界は今でもボルトの脳裏にこびりついている。

 崩壊する異界の中で、自らが犯した罪と思い出に涙を腫らしたあの時の姿。

 不思議とビオラを見ていると、それらの事を思い出す。

 

 ドクンッ、と心臓の音が聴こえた気がするのは気のせいだと、そう思いながらボルトの意識も手放された。

 




お疲れさまでした!
まだ前半部分なのに、かなり加筆修正した自覚があります。
執筆を初めて日が立っていない頃に書いたとはいえ、稚拙な表現が多く書き直していて恥ずかしくなっていました。

今回はPart1にしたように、分割投稿していきますのでお願いします。
その後に、ぼちぼち修業回書こうかなと思っています。たぶん(おい)

修業パート誰目線でやる?

  • ボルト&ナルト
  • スミレ&ビオラ
  • 自来也&サスケ
  • 最早全部やれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。