我ながらなんでこんなに加筆できるんだとおもいながら書いてました。
では!
夕方、ボルトやビオラ、ヒナタにヒマワリ、そしてスミレの5人はうずまき家へと帰宅していた。
否、スミレに関しては帰宅ではないのだが、彼女はビオラに手を掴まれたまま放してくれるわけもなくここにいる。
というよりも、ヒナタが招待した形になっている。
「ただいまだってばさー」
「お、お邪魔します」
恐縮したように、スミレは玄関をくぐる。
彼女にとっては反逆した里の長の家、同時にクラスメイトの家でもある訳だが肩身が狭いのは間違いなかった。
それでもこの家に来たのは、ビオラを鑑みたヒナタの一言だった。
アカデミー校舎前で、ようやく暴走が止まったスミレは取り合えず間違いを訂正しようと口を開いた。
「あ、あのね?私はあなたのママじゃ…」
「委員長、それは言わない方が良いってばさ。」
「え…?」
言われてからビオラを見ると、スミレの言葉の先を予測してしまったのか目尻に涙を溜めてスミレを見上げていた。
別に悪い事をしている訳でもないのに、自分でも驚くほどに胸が締め付けられて…なぜボルトが自分を止めたのかを察した。
端的に言えば泣いてしまうから。
そして、それは自分を苦しめる事になってしまうから。
なぜボルトが精神的に今日ずっと疲れていたのか、その気持ちが分かった気がする。
この泣き顔が、信じられない位に罪悪感を埋めてくるのだ。
スミレはビオラの不安が消し飛ぶように左右に首を振る。
「なんでもないよ。あっ…でも私、自分の家に帰らないと」
本当はボルトと一緒に帰りたかったから、というかボルトの事情を知りたかったからこうして共に歩いていたのだが、その理由が判明した以上彼と一緒にいる理由が無い。
というのは建前で、いくら目の前のボルトやナルトが許しているからといって自分が反逆者であった事実には変わりはない。
だからそんな自分が、ボルトの家族の時間を奪う訳にはいかないと思ったが故の言葉だった。
それを受け付けないというか、関係ないのは赤ん坊の特権だ
「いやああ!ママもいっしょ~!!」
と、当人のしがらみなんぞ何の意味もなさずビオラはスミレの膝をがっつりとホールドしたままだった。
自分をママと呼ぶ存在にも思う事は当然あるが、スミレとしては色んな意味で逃げ出したくなってしまった瞬間でもあった。
——自分には、この家族の輪に入る資格がない
そう思ってこその帰宅宣言だったわけだが、ビオラの一言によって全てが瓦解した。
「えっと…あ、あのねビオラちゃん」
「やああああ!!」
「うっ」
全力拒否するビオラに、昨夜のボルトを襲ったものと同じ罪悪感がスミレを貫く。
…あと可愛くて抱きしめたくもなってしまっていた。
そんな言葉に詰まったスミレを見かねて、火影夫人であるヒナタは
「良かったら、家にいらっしゃい。ビオラちゃんもその方が喜ぶわ」
「え…?」
という事で今に至る。
うずまき家にやってきたスミレはボルトの案内でリビングのテーブルの椅子に腰を下ろし、その膝の上にビオラが陣取った。
スミレとずっと一緒にいる事が出来て満足しているのか、ビオラの機嫌はすこぶるよくなっている。
「もう少しでご飯にするから、ゆっくりしていてね」
そんなスミレとビオラを微笑ましく見ながらヒナタは台所へとやって来た。
ご飯を炊いて、その後にビオラに泣きつかれたからこれから晩御飯を作るのだろう。
家にまで招待されて、何もしないと言うのはスミレも思う事があった。
「あの、私も――」
手伝います、と続けようとした所玄関のドアが開く音が聴こえスミレの身体は一瞬にして強張ってしまった。
それも彼女の境遇を考えて見れば当然ではあるのだが
「ただいま!」
現在、木ノ葉の長を務めているボルトの父親が帰って来たのだから。
ボルトは、父にしては珍しい早めの帰宅に驚愕しているがスミレはそれ所ではない。
「ヒナタ、夕飯…」
リビングへ入って来たナルトは、一瞬この家に本来いないはずのスミレを認めて戸惑ったように立ち止まった。
スミレとしては肩身が狭いことこの上ないのだが、如何せん、ビオラが逃がさないとばかりに抱擁を解除してくれない。
「えっと、筧……スミレだよな?」
「は、はい」
「ママだよぉ!」
ビオラの無邪気な追撃に、ナルトの時が止まった。ビオラのママという事はつまりボルトの彼女…というかお嫁さんだ。
別にボルトにそういう人が出来るのかを不安に思っていた訳ではないが、なぜかチートみたいなこの状況でスミレがそうだと知らされてネタバレ気分を味わったのは想像に難くない。
しかし、ナルトとしては色んな意味で安堵もしていた。
だからこそ
「そうか。良かったな」
にかッと、笑う太陽のような笑顔がスミレにはボルトと重なった。
(あぁ…間違いない。ボルト君は、七代目の息子だ)
そんな今更のような事を再確認し、いたたまれなさに苛まれる。
ビオラが自分をママと呼ぶからといって、まだ彼女が本当に未来からやって来た自分とボルトの子供とは限りはしない。
でも…もしもそれが正しかったら、元反逆者を迎え入れた里の長になってしまう。
そんなのはスキャンダルどころではない。
だから、ビオラの事がどうであれ、自分はうずまき家に深く込み入ってはいけないとさえ思う。
(なのに…)
ビオラが自分をママと呼んだ瞬間、恥ずかしさと戸惑い、そして…その事に幸福を感じていた自分がいた。
(そんなの·····ダメなのに……)
心の中で呟き、それが自分の身に余るものだと再確認する為にナルトと話しているボルトを見つめ…
「ママ泣いてうの?」
唐突に、ひざ元からどっかの誰かによく似た優し気な言葉に、スミレは自分の視界が歪んだことを自覚した。
自覚すればするほど、スミレの涙は止めることが出来ずに流れ続けた。
そんなスミレを、ヒマワリは訳が分からなくてヒナタを見上げる。
ヒナタはそんなヒマワリの頭を撫でナルトを見て、その事にナルトは頷き声をかけようと動いた。
「あれ? どうして…止まらないの?」
ビオラのお腹に回していた手を、自分の眼がしらに当てて涙を止めようとするが…この短時間で得た幸福に、抗う事が出来なかった。
それでも自分には泣く資格がないと、押さえつけようとするスミレを動かしたのはナルトでもボルトでもなかった。
スミレを不思議そうに見ていたビオラは、その小さな手をスミレの眼もとに触れさせ…ハッとスミレが見開くとそこには無邪気な笑顔なビオラがいた。
そうして…
「泣きたい時は、ないていいんだってママ言ってたよぉ!」
「あ……ああ」
それは、未来のスミレがビオラに教えた言葉なのだろう。
どれだけの修羅場を超えて、ボルトとどう結ばれたのかは分からない。
それでもスミレは…この子が自分の子供だと、理屈ではなく感情で理解してしまった。
この子が未来でどれだけの愛情を注がれて、愛されているのか…それが嬉しいほどに伝わった。
それは今の自分でさえ、ビオラの事が大切に想ってしまうほどの愛だと気がついて…スミレはビオラの事を抱きしめながら嗚咽を漏らし始めた。
スミレはまだ子供だ。
でも、スミレ自身は子供らしさとは程遠い生活をしていた事をナルトは分かっていた。
父親によって女の子らしい事なんて何一つ出来ず、あまつさえ兵器だなんて考えすらも植え付けた。
自分だって生まれて間もない頃、九喇嘛を封印されたがあれは自分を信じてオビトを止めてくれると信じてのものだった。けど、スミレのそれは全く違う。
スミレを信じていなかったから、兵器として育てた。
彼女の父親が信じていたのはスミレではなく、スミレに飼いならせようと思っていた鵺の方だった。
けど、こうして彼女は自分自身の道を歩み出した。
それがどれだけ大変な事かはナルトはよく分かっていた。
その涙の意味も、また。
「ボルト、少し話がある」
スミレの嗚咽を微笑んで見たナルトは、次にそのスミレをどこか優し気な眼で見ていたボルトへ声をかける。
彼は気がついて一瞬スミレを見たが、直ぐにリビングを出て行ったナルトの後を追った。
玄関前の廊下で、親子は向かい合った。
「で、何だってばさ父ちゃん」
「ああ、ビオラが元の世界に戻れる目処が立った」
「ほんとうか?!」
一瞬、ボルトはようやく解放されると思って喜色を露にしたが…なぜかそれが消失感へと変貌した。
もちろん、ビオラが自分の子供かどうかは関係なく、親の元に帰れるのは良い事だ。
これで彼女から駄々をこねられる事も、罪悪感に駆られる瞳に晒されることももう無くなる。
それが良い事である筈なのに、どこか心の中でぽっかりと穴が開いた…そんな感覚すらも感じる。
複雑そうな息子を、同じく複雑な顔で見ていたナルトだが伝えるべき事は伝える。
「あのビオラと一緒に落ちてきた亀、カラスキって言うそうだが大筒木の道具だった」
大筒木…其の名は聴いたことがある。
大筒木カグヤは忍の祖にして第4次忍界大戦の黒幕。
教科書では、目の前の父親ともう1人が封印したとなっているが…正直、父親がガチで戦っているところを見たことが無いので本当か?と少し疑っている。
ただ、いないものはいないから信じるしかないのだろう。
しかし、それはそれでなぜ今更そんな厄介者の道具が出るのか分からなかった。
「それで、その大筒木の道具がなんなんだ?」
道具といっても、平気で喋っているがここに言うのはややこしくなるので割愛する事にした。
それに重要なのは喋る亀だということではなく、そのカラスキが語った動機に問題がある。
「カラスキが目覚めたのは今日の昼頃なんだが、やっぱりあいつが未来からビオラを連れて来たらしい」
つまり、ビオラが未来から来たというのは紛れもない事実であると言う事だ。
壮大なような、やっぱりというような…さらっと明かされたせいでどんな反応が正しいのかボルトは分からなくなってしまっていた。
ただ…やっぱり、ストンとなにかが落ちたような気はしていた。
「どうしてビオラを未来から連れて来たんだってばさ?そもそも…その、あいつは俺と委員長の子供なのか?」
だからこそ、一番の問題点はそこになる。
タイムスリップなんて、少年心的には楽しみでしかない訳だが、その当事者が自分の娘であると言うのはどういうことなのか。
というか、そもそもビオラが自分とスミレの子供なのか…長編作品のネタバレを聞いている気分だが背に腹は代えられない。
そこをはっきりしておかないと、これから先どうやってスミレに接していけばいいのか分からなくなってしまう。
ナルトは茶化す事もせず、あっさりと頷いた
「ああ。ビオラは、お前と筧スミレの娘でどうやら間違いないらしい」
かあっ、と訳も分からず顔に熱が宿るのを感じた。
そういう恋愛系のお話は、自分にはまだ遠い未来の話だと思っていたのに…なぜか今事実を突きつけられてスミレに対する感情が色々とぐちゃぐちゃになってしまった。
別に、このアカデミー生活でスミレの事を気にかけたことはあるが、意識したことは殆どなかったはずだ。
なのに、ビオラが自分とスミレの息子だと聞かされて意識するなという方が無理難題だ。
母と似た反応を示すボルトの気持ちを分かりながらも、ナルトは話を先に進める事にした。
「カラスキは、この時代にボルトの未来の結晶を現代のお前に見せることでどうなるのか、それを確かめたくてビオラを連れて来たらしい。」
「んなはた迷惑な?!」
つまり現代のボルトからしたらとばっちりである。
なんなら既にビオラの存在のせいで本来のボルトにはなかった感情が色々湧き出ている時点で歴史変わってるんじゃないかすら思ってしまった。
というよりも――
「なんで俺と委員長なんだってばさ?!」
そうだ、長編作品のネタバレが出来る人間なんてごまんといる。
サラダが火影になったかどうかもネタバレにするのだっていいだろうし、デンキやイワベエ達の将来をネタバレするのだって構わないだろう。
今のはほんの一例だが、これだけでも未来に対する影響は分かるものだろう。
なのに、よりにもよって自分とスミレがターゲットになったのかがボルトには分からなかった。
もちろん、その事はシカマルも疑問に思い問いかけてはいた。
曰く
「カラスキは、どうやら未来のお前から言われたことを実行しているだけらしい。」
「未来の…俺?」
「ああ、未来のお前はカラスキに”やりたい事を探せ”って命令されてこんな事をしたらしい」
未来の自分がきになったり、カラスキの言葉が気になったり、昨日も大概だったが新たな情報もまたボルトを混乱させるには十分だった。
「で、カラスキによると帰る為のチャクラがまだ溜まっていなくて」
混乱しているボルトへ、カラスキの現状を教えようとした時うずまき家のチャイムが鳴り響いた。
ボルトは今日誰とも約束をしていないし、こんな夜にシカマルが仕事を持って来たのかも分からなかったが
(父ちゃん、なんか嬉しそう)
チャイムの音を聴いたナルトが、そのドアの先にいるチャクラを感じた時、ボルトが見たことも無いほど嬉しそうな顔を浮かべたのがやけに印象的だった。
そのままナルトは一度話を中断して、玄関の扉を開く。
ボルトもなんとなく父の背中を追いかけ…運命の出会いが待っていた。
黒髪に黒い外套、まさにさすらいの忍を体現したかのような男が立っていた。
しかし、初めて会ったような気はしない。
どことなく、うちはサラダに似ているからだろうか。
そしてなによりも――
(か、カッケ──ーっ!)
ボルトの中にあった憧れの人物像が、この男にジャストフィットした瞬間目を輝かせた。
「久しぶりだな、サスケ」
「ああ、そうだな。ん?」
ナルトに向けて、一瞬柔和な笑みを浮かべた後すぐにボルトに気がついた。
ボルトはその視線に当てられて、反応するよりも前に身体が直立していた。
かつてのライバルによく似ている容姿に、サスケは過去のナルトを投影した。
「お前がナルトの息子か」
「そ、そうだってばさ」
そして、サスケはそれ以上なにかをボルトに聞くことも無くナルトへ向き直った。
「それでナルト、大筒木の道具が現れたというのは本当か」
昼間、カラスキの素性が判明した時点でサスケは里への帰還を決めた。
カラスキを調べる為、ではなくカラスキを取り返しに大筒木一族が取り返しに来るかもしれない。
その防衛のために、帰る事を決めたという。
「ああ、今は火影屋敷でビオラを返すためのチャクラを溜めている。どうやらあちこち回っていた影響でチャクラを使い過ぎてしまったらしいからな」
「奴らの罠、という線はあるのか」
「いや、それは無いだろう。カラスキは自分が道具であることに徹している。一応交代でカラスキを見張らせているが、今の所ただ寝ているだけだそうだ。」
だからこそ、ボルトにさっき伝えたかったのはビオラを未来へ返す為の猶予だった。
「だからビオラと未来のお前達には悪いがもう少し待ってて欲しい」
「わ、分かったよ」
内心、ビオラを未来に返したいのか、まだ一緒にいたいのか自分でもよく分からないが首を縦に振る。
自分の気持ちがどうであれ、未来の自分達からいつまでもビオラを奪う訳にはいかない。
ボルトの返事を聞いたナルトは安堵したかのように笑い、少しの間サスケの調査結果で談話を始めてしまった。
仲睦まじい…自分とシカダイのような関係性。
けど、自分とシカダイとはなにかが決定的に違う…そう思えるやり取りをしている2人。
(これが父ちゃんの親友でライバル·····)
かつて大筒木カグヤを、2人とサクラ、そしてカカシの四人が共闘し封印した伝説の1人。
そこまで思った時、ボルトの脳裏に修学旅行での事が頭をよぎった。
自分の力不足だったばかりに、友達を敵に回しかけたあの戦いを。
そして、敵になりかけたクラスメイトを。
あんな思いをもう二度と、したくない…そう思っていたボルトは無我夢中に親友の会話へ乱入した。
「さ、サスケのおっちゃん!」
唐突の乱入者に、2人は揃って視線をボルトへ向ける。
忍界最強の2人に視線を合わせられたら恐縮の1つもしそうなものだが、生憎とボルトにそんな感傷は持ち合わせてはいない。
だからこそ、予想外な言葉すらも言えるのだ。
「俺を弟子にしてくれってばさ!」
「ええ!?」
ナルトの顔に”なんで俺じゃないんだってばよ?!”と出ているが、ボルトの視線には今サスケしかなかった。
サスケはナルトと違って、あくまでも冷静に問を投げた。
「何故だ?」
当然聞かれるのは動機、なぜ自分に師事をこいたのか、それを聞くのは当たり前の事だ。
ボルトは頭の中に描いた修学旅行、そしてゴースト事件を思い出しながら答える
「俺は……俺が弱かったばかりに友達が……敵になっちまったんだ。だから……もうそんなことが無いように強くなりたいんだってばさ!」
ボルトの語った動機に、2人は内心穏やかではなかった。
ある意味2人のこれまでの歴史に重なってくることでもある。
力を求めて里を去ったサスケと、サスケを取り戻す為に強くなったナルトの歴史に。
もしも自分に力が無かったから、かぐらは屍澄真へついて行ってしまった。
その後の喧嘩がなければ、本当に彼は取り返しのつかない事をしていたかもしれない。
心のどこかで、自分が強かったらかぐらのクーデター側につくという選択をさせずに済んだかもしれない。
これから先も、友達や仲間にそんな選択を指せないために
「俺は、強くなりたい!」
その為のきっかけがここにあるのなら、それを掴まないことの方が愚かであある事を、ボルトはよく分かっていた。
一度目はスミレが、二度目はかぐらが、もう三度目なんて御免なのだボルトは。
かつて、同じ理由で師を仰いだ自分達の姿をナルトやサスケは幻視した。
まるで少年時代のナルトの生き写しのようなボルトに、サスケは課題を出す事にした。
「お前は螺旋丸は出来るのか?」
「え?」
「螺旋丸だ。それが出来なきゃ弟子入りは認められないな」
螺旋丸、影分身と並んでナルトの代名詞とも言える会得難易度Aランク忍術。
チャクラを圧縮し、留める事で爆発的な破壊力を伴うまさに必殺技とも言うべき術だ。
本来なら、アカデミー生が出来るような忍術ではない事は確かだ。
だが、何事もやってみなきゃ分からない。
おまけに、やる前から諦めるなんてボルトにとってはダサいの極致とも言えるだろう
ボルトの視線は、直ぐに隣の父親を見上げた
「父ちゃん! 螺旋丸を教えてくれってばさ!」
いつもの、修業をやる気なさげな面ではない…本気で強くなりたいと願ってる面を見てナルトはかつての自分を重ねた。
「おう! けど、簡単には出来るようにはならねえぞ」
「そんなの上等だってばさ!」
話を纏めた2人をサスケは微笑を浮かべたが、直ぐにいつもの表情になり外套を翻す。
「出来るようになったら見せに来い。まだしばらくは、里にいるだろうからな」
「分かったってばさ!絶対に出来るようになってやるからな!」
「ふっ…親子そろってウスラトンカチか」
そう言って、サスケは姿を消した。
久方ぶりの帰宅なのだろう。
去って行ったところを見つめていたボルトだったが、ハッとした後ナルトへ向き直った。
幼き日に遊びに誘っていた時のように、どこか照れくさそうに
「父ちゃん早く螺旋丸教えてくれよ!」
ナルトは、ボルトから教えを乞うられるのはいつが最後だったろうかと思った。
(父親らしいこと…か)
そのらしさが分からなかったのが、これまでだった。
けど、どういう因果かまたその時がやって来た。その事に郷愁のような思いを感じながらナルトは自室へ戻って来た。
自室の棚に置かれている少年時代の写真、そして師である自来也との写真。
その隣には、彼が執筆したイチャイチャシリーズとあの修業の日々の思い出として置いておいた水風船。
「父ちゃん、エロ仙人、いよいよ…ボルトにも教える時が来たみたいだってばよ」
それらを手に取り、次世代へ受け継がれていく螺旋丸の先人達へと黙礼し庭へ向かった。
途中リビングを通り抜ける際、スミレの様子を見ると嗚咽を終わらせて、今はヒナタの隣で腕を振るっている様だった。
ちらりと見た感じだが、ヒナタと料理トークでなにやら盛り上がっているようだ。
ビオラはヒマワリとなにやら楽しそうに遊んでいる。
ただ、庭に出たボルトに引き続いて水風船なんて持って来た気になったのか2人して庭を覗き見た。
ボルトはなぜか水風船を持って来たナルトを訝しげに見るが、彼はその水風船をボルトへ手渡す。
「螺旋丸習得のためには、3つ行程がある。これはその第一段階、この水風船をチャクラを回転させることで割ってみろ」
「そんなの楽勝だってばさ」
聞いているだけなら何がそんなに難しいのか分からないボルトは、意気揚々と水風船を受け取り掌にチャクラを集める。
しかし、水風船はうねるばかりで一向に割れる気がしない。
僅か3分、ボルトは額に汗を流しながらこんなはずではないとばかりに狼狽した。
「な、何だこれ。全然出来ねえ」
正直甘く見ていたボルトは、自分の認識が甘かったと痛感するしかなかった。
そんな息子を苦笑い気味に見たナルトは、もう一個の水風船を手に持ち見本を見せてやる事にした
ナルトはそれに苦笑いをしながらもう1つ水風船を出してきて見本を見せた。
「4代目火影、つまりお前のもう1人のおじいちゃんが開発した術だ。会得難易度Aランク。そんなに簡単じゃない」
言いながらチャクラの回転が、水風船内の水を荒々しく回転させ、終いには呆気ないほど簡単に弾け飛ぶ。
はじけ飛ぶ水を、ボルトはハッと見開いて見つめる。
その水の先に、ナルトは不敵な笑みを浮かべていた。
「どうする? 諦めるか?」
そう言ったらナルトの思い通り反抗的な目になり否定した。
「んな訳ないってばさ! もう1回やる!」
言い返しながらボルトは今ナルトがやった事を見本に再び水風船に向き直った。
まだ彼らが何をやっているのかがよく分かっていないビオラは、縁側にちょこんと座りながら首を傾げている。
その隣でヒマワリは、この光景が嬉しいものであるかのように笑っていた。
きっと他の家ではよくあるような、父が子に自分の何かを託す光景は…きっとボルトにとっては憧れだったのだとヒマワリは知っていたから。
修業を開始して、ほんの20分後。
修業を見るのに飽きたビオラがヒマワリと再びじゃれていると、庭へスミレが顔を出した。
彼女が見たのは、額から大量の汗を流し、手の中で暴れまわる水風船を割ろうとするボルトと、そんなボルトを微笑んで見ているナルト。
「…っ」
かつての、父タヌキとの修業の日々が蘇った。
ただ木ノ葉への復讐の為に、自分を鍛え上げた根の生き残り。
あの修業の日々は決して無駄ではないと、思っているがそれが親子の時間なのかと言われると…今なら違うと分かる。
自分が本当にしたかったのは、このうずまき親子のような時間だと…今ならよく分かる。
「あ、ママ!」
懐かしい感傷に浸っていると、スミレに気がついたビオラの声によってボルト達もスミレに気がついた。
ビオラはとことことスミレに抱きつく。
その事に、スミレははにかみながら次に親子へ目線を向けた。
「ボルト君、七代目、その…夕餉が出来ました。」
「もう出来たのか?サンキューな、スミレ」
「はわ…うん」
そうして、一同はリビングへと戻る。
スミレから引っ付いて離れないビオラには先に席に座っててもらい、ボルトは物置からお客さん用の椅子を持ってくる。
机の配置としては、時計回りにボルト、ナルト、ヒナタ、ヒマワリ、そしてスミレ、ビオラだ。
ビオラをボルトとスミレが挟み込んだ形になっている。
「ふふーん、ママも一緒!」
ビオラは心底嬉しそうに天使の笑みを浮かべ、スミレの隣の椅子で両手を広げている。
なぜか二日連続で増えた人数に、色んな事を思いながら一同は手を合わせた。
スミレも慌てて手を合わせ、合掌する
「「いただきます!!」」
摩訶不思議な二日目、その晩さんが始まったのだった。
*
夕陽が完全に沈み込み、もう数時間もすれば日付も超える時刻へ変わっていく。
夕餉を共にしたスミレも、流石に夜になると帰ろうとしたのが止めたのは言うまでも無くビオラ。
「いやああ!」
「はわわ…び、ビオラちゃん」
帰ろうとしたのを察したのか、ビオラにとってはいつも一緒に寝てくれる母親がどこかに行くなんて我慢出来るはずもなく全力でハグをして引き止める。
ボルトはどこかそうなる予感があったので苦笑い、ナルトやヒナタも昨日までのビオラからそんな気はしていたし、そもそももう既に辺りは暗い。
アカデミー生とは言え、それにスミレが強い事を知っているとはいえ女の子1人帰らせるわけにもいかない。
なにより、ビオラの為にもそれはやめておいた方が良い。
という事で
「スミレちゃん、ビオラちゃんの為にもしばらく泊ってあげて?」
というヒナタの援護射撃により、スミレのうずまき家滞在があっさりと決まってしまった。
あれよあれよとお泊りが決まり、スミレとビオラ、そしてヒマワリは入浴を済ませる。
途中まで螺旋丸修業をしていたボルト達も、女性陣の入浴が終わると入浴を済ませ、ビオラは早めの就寝時間と相成ったのだが…
「ママもパパも一緒に寝るのー〜!」
「はわわわわわわ!!」
こういう訳だ。
最初、ビオラがボルトとスミレどっちについて行くにせよスミレはヒマワリの部屋での宿泊の予定だったのだが案の定ビオラの甘えん坊が炸裂した。
ただのわがままならいざ知らず、ビオラの言葉は夫婦でもカップルでもない年頃の男女が同じベッドで寝ると言う事を意味する。
もちろんボルトとて、ヒマワリと同じベッドで寝たことはあった。
同年代の女の子という意味では、サラダも幼い頃に親同士がお喋りしている隣で寝たこともあっただろう。
けど今回は当然自我が発達している年頃、それもこれまでそんな事をイメージしてこなかった委員長…スミレと同じベッドだなんて色んな意味で頭がオーバーヒートしそうだ。
「い、いやあのなビオラ?俺達は違う部屋で寝るんだぞ?」
「だっていつも皆で寝てうでしょ?」
さらっと、天変地異でも起きそうな爆弾が投下されスミレは菫というよりも薔薇かという位に顔が赤くなって、ボルトも羞恥心から耳まで熱蒸気が出そうなくらい赤く染まっていた。
よく考えてみれば、確かに夫婦なら、それもビオラのような赤ん坊が一緒ならともに寝るのは至極自然なのだがそれは今の2人には関係のない話。
完全外野のナルト、ヒナタは初々しいそのやり取りに微笑すら浮かべているが本人達はそれ所ではないと言うのが実情だ。
「いっちょ!」
結局、ボルトとスミレは娘の我儘と上目遣いに勝つことが出来ずにともに寝ることになってしまった。
ドキドキしながらボルトの部屋で、ボルトのベッドで、ボルト、ビオラ、スミレの順で寝ころぶ。
最初はスミレが外側に寝ようとしたのだが、ボルトが万が一床に落ちたら大変だってばさ、という事でこの状態になった。
ボルトとスミレに挟まれたビオラは、幸せそうに2人へ視線を交互に向け、結局2人の服を掴んで幸せそうに寝息を立て始めた。
その服を掴まれている件の2人は、忙しなく動く心臓音が邪魔で一向に寝る事は出来なかった。
取り合えず、ボルトはビオラの向こう側で寝ているスミレの眼を見ながら小さく頭を下げた。
「すまないってばさ委員長。いきなりあんな事を言われてびっくりしただろ?」
誰だって、身に覚えもない子供からママと言われたら色々な意味で精神的ショックを抱えるだろう。
なんならまだスミレは11歳で、ママと呼ばれる年齢じゃない事だけは確かなのだから。
しかし、スミレは月夜に照らされた顔をボルトに向けてふるふると首を横に振った。
「ううん。確かに、すごくビックリしたけど大丈夫だよ?」
「本当にビオラ、委員長にまであんな事を言って」
自分だけなら兎も角、スミレに対してのママ呼び。
それがビオラにとっては当然なのかもしれないが、直球過ぎる。
けど、スミレははにかんで、ビオラのお腹をぎこちなくさすりながら
「私は……嬉しかったよ?」
「え?」
まさかの肯定に、ボルトは呆けた声を出しながらスミレを見つめる。
スミレも、ボルトの事を頬を染めながら見つめ返していた。
「ボルト君は……信じてない? ビオラちゃんが未来から来たっていう話」
ビオラと出会った以上、そして事情を知らなければこれからの対応に問題が出てくるかもしれないとして、ナルトも当事者であるスミレに対してビオラの説明を行っていた。
未来から来た事、そして未来のボルトとスミレの子供がビオラであると言う事。
自分の夫がボルトだとネタバレされた気分なのだが…その事自体には落胆はなかった。
寧ろ、心のどこかで嬉しさすらも感じてしまう位には幸福を感じた。
「俺は……正直わかんないってばさ。でも……」
「?」
言葉途中で止まったボルトを、スミレは首を傾げながら答えを待った。
その内、彼は恥ずかしそうに
「ビオラと委員長が一緒にいるのを見た時、嬉しかったってばさ」
「……うん。私もなにか上手く言えないけれど、嬉しかったよ」
それ以上、2人は会話をする事なくどちらかともなく寝息が立ち始めた。
ビオラを挟む2人は、どこか慈愛にも似た笑みでビオラを包んでいたのだった。
修業パート誰目線でやる?
-
ボルト&ナルト
-
スミレ&ビオラ
-
自来也&サスケ
-
最早全部やれ