今回は猪鹿蝶線までです。リメイク前とは所々当然変えているので楽しんでいただけたらなと思ってます!
では!
休日の時間を終えて、ねむねむなビオラを連れて帰って来たボルトとスミレ。
ビオラは帰って来ると今度はヒマワリの膝で寝てしまい、ボルトとスミレもそれぞれの時間を過ごす事にした。
といっても、ここ数日ではありふれた光景のボルトは庭で螺旋丸の、スミレはヒナタと共に夕餉の手伝いを申し出たのだ。
「ただいまー」
時計の針が6を過ぎたころ、スミレがお味噌汁の味見をさせられていた時にナルトが帰宅した。
「お帰りあなた。今日もシカマル君に?」
「ああ、ビオラを見て来いってよ」
「じぃじ!」
「おっ、どうしたビオラ?」
ナルトの帰宅によって目覚めたビオラは、嬉しそうにナルトへトコトコと歩いていく。
なんだかんだでナルトも状況自体は既に受け入れてしまっているのか、楽しそうにビオラと戯れを始めた。
その絵面は完全に親子と言った方が良いのだが、カラスキの言う通りならば祖父と孫だ。
そして…この3日間、共に夕餉やお弁当を作っているヒナタが祖母になるのだろうが…義理の娘が自分かもしれない事に、彼らはどう思っているのだろうとスミレは内心不安に思った。
「よし、スミレちゃん。ボルト呼んできて?」
「あ、はい!」
若干集中が乱れたスミレに、ヒナタは庭にいるボルトを呼ぶようにお願いする。
慌てて返事をしたスミレは、エプロンを畳み、ナルトとヒマワリ、そしてビオラの後ろを通って庭へ通じる窓辺へ向かう。
庭では、大量の汗を拭きだしたボルトがゴムボールと睨めっこしているところだ。
「あっ…くそ、またやっちまった」
そのボルトは、また昨日と同じように雷遁を思わず出してゴムボールを割ってしまった所だった。
アカデミーでは天才のボルトも、こうして苦戦をしているところを見ると自分達とあまり大差がないと身近に感じる。
もちろん間違いなく彼は天才で、自分よりも真正面からなら間違いなく簡単に勝てない。
けど…里に来た頃、写真で見た時の彼はどこかボンボンでこれまで大した苦労もしてこなかったのだろうと思っていた。
ゴースト事件を経て、そんな考えはとっくにないけども。
「ボルト君」
「ん、委員長?あ…もしかして」
「うん、晩御飯出来たから一度切り上げて食べよう?」
「分かったってばさ」
そう言ってスミレと一緒に家の中に戻ったボルトはヒナタに言われ軽く身体をタオルで拭く。
その間にスミレはヒナタやヒマワリと共にテーブルへ並べていく。
本日のメニューは鳥皮の甘辛揚げとサラダ、それから野菜たっぷりのお味噌汁だ。
因みにビオラには別の物がちゃんと用意されている。
「お、美味しそうだなビオラ」
「おいちそう!」
眼をキラキラさせるビオラに一同は微笑を浮かびながら、いつものようにテーブルの席に座る。
ボルトも洗面所から戻って来ると、夕餉の時間が始まる。
ボルトとスミレに挟まれたビオラは、スミレが差し出すスプーンを幸せそうに含む。
「でボルト、今日はどこ行ってきたんだ?」
お話のおかずは当然、今日里に遊びに行った3人だ。
朝からはファイヤーパークに行ったこと、お花屋に行ったこと、そして千手公園でのんびりしたこと。
「良いなあ、私も行きたかったなあ」
「うつ」
今日はゴムボールだけボルトに貸して、お留守番となってしまったヒマワリが口を尖らせて不満を露にする。
ボルトは今日ボール借りる時にも同じ事を言われて肩身が狭く感じたのを思い出して言葉に詰まる。
「ご、ごめんね?今度なら一緒に行こう?」
「ほんと?!スミレさんも一緒に?」
「うん、私と一緒で良いなら」
「やったぁ!」
この3日間で、スミレとヒマワリの仲も深まっていた。
女性らしいスキルの数々を持っているスミレを、ヒマワリは尊敬しているし、スミレはスミレでヒマワリの可愛さに少しずつ打ち解けていたというのが実情だ。
それに、これまで兄と同い年の女の子がこんなに長く泊まりに来ることなんて無かったから親近感のようなものも感じていたのかもしれない。
そんな2人の様子を、ナルトとヒナタは後方面して微笑んでいた。
「そう言えば、アカデミーはもう少しで卒業だけれどスミレちゃんはどうするの?」
「はわ、わ、私は…この里で忍者になるつもりです」
「そうか、スミレならきっといい忍になれる」
なぜか火影と火影夫人に対して面談のような事をしてしまう始末。
現火影の、お墨付きまで貰って恐縮してしまうスミレ。
しかし、ナルトはお世辞じゃなくて割と真面目にスミレの評価をしていた。
元々復讐の為とはいえ隠されていた身体能力は既にアカデミー生の域を出ているし、彼女の冷静な判断力は暗部をも出し抜くほどだ。
それは元反逆者とか関係なく、評価されるべき点だ。
「あ、ありがとうございます、七代目」
「そうだぜ父ちゃん、なんたって、明日は俺と委員長、それにミツキであっさりと勝負に勝つんだからな」
「明日?」
「え、えっと…実は明日」
ボルトがスミレを褒められて何故か鼻高々に言った明日の実戦形式の試験の事を、なぜかスミレが説明する羽目になる。
「なるほどな、それにしてもスミレとミツキ、そしてボルトのスリーマンセルか。中々面白いじゃねえか」
かなり訳アリの2人と息子が組むスリーマンセル。
純粋な興味がわいたナルトだった。
そして、別の事に興味を持ったのはもう1人。
「あちた、ビオラもいくッ!!」
「ええっ?!い、いやダメだってばさ。ビオラは家で大人しくしててくれよな、な?」
「いやー!」
「はわわ」
今日が楽しかった分、また離れ離れは嫌なのだろうかビオラいつにもなく反抗的だった。
その反抗模様が、まさかボルトみたいだなんて言えないヒナタだった。
「んー、まあ良いんじゃねえか?」
「父ちゃん本気かよ?!」
なぜかナルトまで援護してしまう始末にボルトの困惑は最高潮に。
スミレもまさか許可が出されるとは思っていなかったのもあって眼を開きっぱなしだ。
ビオラの存在は今の所、里の中でもかなり極秘扱いにされているし、本当はというと今日の3人のぶらぶらも木ノ葉丸が見張っていた。
一応、上層部でも未知のビオラに対する懸念が存在していたからだ。
だけど、そのビオラをアカデミーに堂々と連れて行ってしまってはこれまでの苦労は何だったのかとなる。
しかし、これはこれでナルトにはしっかりとした理由が存在した。
「本気かって、本気に決まってるだろ?それに」
言葉途中で区切ったナルトはボルトとスミレを見渡して、小さく笑いながらこう告げた
「最後にカッコいい所を見せたいだろ?」
「「…っ」」
容姿、チャクラの性質から言ってナルト達火影の周辺では既にビオラがボルトとスミレの子供という事は確定していた。
どんな経緯があったのか、どんな戦いがあったのかは知る由もないが少なくともボルトやスミレが成人するまで里は無事であること、それが分かったのがビオラがやってきたことで分かった収穫だ。
もちろん、だからと言って日々の対処を疎かにする訳でもないが、なにが歴史に影響を与えるか分からない以上ある程度は寛容にしようというのがナルトやシカマルの判断だった。
それに、子が親の背中を見たいのは何時の時代も変わらない。
自分はそうできなかったように、ビオラにはそうさせたくないのがなるとの考えだ。
ボルトはナルトの言葉に、思わずスミレと顔を見合わせ…何となく、目線だけでお互いの答えを確かめ合って頷いた。
どこか照れたように頭を掻いたボルトは、ビオラの頭をわしゃわしゃと撫で
「たく、しゃーねーな。んじゃまあ、俺達が大勝利するとこ、見せつけてやろうぜ委員長」
「うん、ビオラの前で恥ずかしい戦いは出来ないね」
そうして明日の実戦で、負けられないワケが出来た2人なのであった。
*
結局…というか、既に諦めたようにボルトとスミレは、相も変わらず同じ部屋で、同じ布団でビオラと川の字になりながら横になった。
ビオラは昼間あれだけ寝ていたのに、ボルトとスミレの袖を掴むとあっと言う間に夢の世界へ旅出た。
ボルトとスミレも、この3日間は日課のようになってしまった眠る前の会話をする。
というか、2人とも変なプレッシャーがかかってしまったせいで寝れなかったというのが正解だろうか。
「明日、ビオラが来るのか…取り合えず、パパとママは言うの止めさせねえと」
「あはは…そうだね。今日サラダにあんな事言っちゃったし」
サラダには任務で離れている正体不明の忍の娘を預かっているという体にしてしまった以上、間違いなく明日ビオラがパパママ発言をしてしまった暁には色んな意味で酷くなってしまうのが眼に視えている。
明日はビオラはヒナタやヒマワリが同伴で、何故かボルトだけ授業参観になってしまうがもうそこは諦めた。
兄の授業見に行けると言う事で、ヒマワリも何故か大喜びしてしまうし、明日は色んな意味で大変だ。
しかし…そんなハチャメチャだったこの3日間も、明日の4日目でいよいよ終わりを告げる。
自分達が勝つにせよ負けるにせよ、ビオラは明日の夜に旅立ってしまうのだから。
「委員長は…さ、寂しいか?ビオラが帰ったら」
ボルトは自分の中に燻るこの正体不明の感情の答えを求めて、同じ出来事を経験しているスミレへと問いかける。
スミレはボルトの問いかけが意外だったのか、暗闇の中で紫色の瞳見開いて…何秒か経って答えた。
ビオラのお腹を優しく撫でて、愛おしそうに…その表情が子を見守る母親のようだとボルトは思った。
「寂しい…かな。私、この子を知らない筈だったのに…ずっと、ずっとこの子の事を考えちゃうの。どんな未来からやって来たんだろう、本当に私と…ボルト君の子なのかなって」
まだ…好き合ってもいない男女の間に、未来から子供がやって来るなんて経験…きっと誰もしたことがない。
初めてビオラに出会った時、他人のような気がしなかった。
まるで初めからビオラの存在が、自分という魂に刻まれているようですら感じた。
そんな事ない、自分が誰かの母親なんてなれないと…心のどこかで思っていた。
だから彼女から言われる”ママ”も、自分には荷が重すぎるとさえ最初は思っていた筈なのに…今はそれすらも嬉しいと感じている。
「委員長」
「家族がいたら…こんな感じなのかな?子供に元気をもらって、笑って…一緒にご飯食べて、こうやって一緒に寝るの」
今は亡き母との思い出も、そう沢山覚えている訳ではない。
今でも父・タヌキの方が強く覚えているくらいには家族としての時間は本当に少なかった。
こうやってうずまき家で共に過ごして、暖かい家族の仲で、これが本当の家族の形なんだと…感じ取ったスミレは無意識のうちに羨望を抱いていたのかもしれない。
これまではそんな機会が無かったから感じていなかった筈の、”家族の時間”に。
「良いなぁ、未来のわたし」
それは筧スミレの、心からの本音だったんだろう。
未来の自分に嫉妬して、今の時間をくれた未来の自分とボルトに感謝する。
言葉にならない位の感情を抱いて、スミレは穏やかな寝息を立て始めていた。
「委員長、寝ちゃったのか?」
ボルトが少し身体を起こして問いかけるも答えはない。
代わりに、心底幸せそうにビオラを抱いて眠るスミレの表情がボルトの頭の中で焼き付いて離れなかった。
「委員長…そんな時間で良いならいくらでもくれてやるよ」
毒気が抜かれたように笑ったボルトは、ビオラを巻き込むようにしてスミレの背中に腕を回した。
ビオラは少し窮屈そうに唸ったが、直ぐに両親に挟まれている事を幸せに思ったのか笑った。
ボルトも幸せそうに笑う母娘を見て、どこか満足そうに…ビオラとの最後の夜を超えたのだった。
*
翌日、2人は極力いつも通りを意識して目覚め、朝食を食べ、スミレはヒナタとお弁当の用意をしてアカデミーへ向かった。
今日は早めに2人に会えると分かっているからか、ビオラは機嫌よく見送ってくれた。
アカデミーへの通学路への道も、この3日間の間で変わった事は無くボルトはゴムボールに夢中で、スミレはそれを微笑んで見ているだけだ。
「おはよー」
「おはよう」
アカデミーへ到着し、いつものように視線を浴びながら2人は昨日一昨日と同じ席へ着席する。
なぜかまたもや異様な甘ったるい光景に、声をかけられる勇者は存在しなかった。
ただ1人、何の脈絡もなく声をかけて来たのはミツキだけだ。
「おはよう、ボルト。今日も調子良さそうだね」
「ようミツキ、調子は良いってばさ」
自然と集まった3人は、この後の実技のフォーメンションや基本戦術を改めておさらいを行った。
時間はあっという間に過ぎるもので、実技の時間がやって来た。
訓練場で、準備運動している生徒達を尻目にボルトの視線は出入り口へ行き来して…やがてそこからヒナタとヒマワリ、そして二人に連れられてきたビオラが姿を現した。
当然生徒達はざわざわと戸惑いの声があがる。
「あの人ってもしかして」
「ボルトのお母さん?!」
「あ、ヒマワリちゃーん!」
ナミダがヒマワリに手をふると、ヒマワリも気がついたのか手を振り返す。
その可愛さに女性陣から歓声が上がるのを聞きながら、ボルトとスミレはビオラを見上げた。
ビオラはボルトとスミレを見ると、今にも”パパ、ママ”と叫びそうになっているけれどヒナタが上手く言わせないようにしていて、内心2人は感謝した。
「今日の実技は見学者もいるが気にするな。なぜなら、見学者がいてもお前達がやる事は変わらないからだ。」
至極真っ当なこと言うシノを聞きながら、イワベエはボルトへ絡んだ
「おいおい、授業参観かボルト」
ニヤニヤとそんな事をいうイワベエに、ボルトは恥ずかし気に振り払う。
「い、いや違うってばさ。ちょっと事情があんだよ」
2人が悪友感漂わせている間に、シノはくじ引きが入った箱を各チームに引かせていく。
引いた番号を確認したシノが、手元のバインダーに挟んだ対戦表へ書き込んでいく。
ボルトもスミレもミツキも、相手自体は誰でも良かったので適当に待ってからくじを引く。
「え、俺が引いていいのか?!」
「うん」
「良いよ」
ボルトは自分がくじを引くことに嬉しそうに笑い、くじ箱へ手を突っ込むと適当に当たった紙を引っ張り上げる。
そこにあった番号は…
「9?って事は」
「俺達だな」
背後から声をかけて来たのは、前回の実技からチームを組んでいた猪鹿蝶の3人だった。
木ノ葉で元来から伝わる猪鹿蝶コンビネーション、それは現代にも受け継がれて、こうして組まれたら一筋縄ではないかない事をボルトもミツキもよく分かっていた。
流石に、”楽勝”とは言えないがそれでも負ける気が微塵も無いボルトは好戦的な笑みを浮かべていた。
「へへっ、上等だぜ。前みたいに簡単に勝ってやんよ」
「そう上手く行くかな? おばさんの前だからって容赦はしないぜ?」
シカダイも存外負けず嫌い、今度は負けないと火花を散らす2人を横目にスミレはミツキに問いかける。
「前もボルト君とシカダイ君達と戦った事あるの?」
「うん、委員長がアカデミーに戻ってくる前にね。その時は僕らが勝ったよ」
「今度はそうはいかないよ」
「もっちー、やられっぱなしも嫌だし〜?」
2人の会話には、シカダイの後ろからやって来たいのじんとチョウチョウが割り込んで火花を散らしていた。
主に2人は、前回ミツキの策略のせいで敗北したようなもの。
どうやらその事を根に持っていたらしい。
ボルト達の出番は第五回戦目、これが実質最後の実技という事もあって生徒達のボルテージも最高潮。
現役のアカデミー生たちの戦いを、ヒナタやヒマワリ、そしてビオラは楽しそうに見ていた。
もう少しでアカデミー卒業の集大成、この1年間の成果を誰もが惜しみなく披露してい。
そして、とうとう最終戦。
ボルトチームと猪鹿蝶が訓練場に降り立った。
今回は前回のように足場を使うようなものはなく、ただ障害物がちらほらと散りばめられているだけのシンプルな戦場。
故に、前回のミツキのような奇想天外な策はしにくいとも言える。
むしろ、シンプルな分猪鹿蝶の方が有利な地形とも言えるかもしれない。
「がんばれ~」
「おう、ちゃんとみとけよビオラ」
降り立ったボルトとスミレに、ビオラからのエールが送られにカっと笑うボルト。
スミレもその隣で、ビオラにカッコいい所を見せるために気を引き締めた。
当然困惑な顔でビオラを見るクラスメイトはいるが、それをツッコまれるよりも前にシノの号令がかかる。
「では、これからボルトチーム対シカダイチームの実戦形式の試験を始める。両者準備は?」
「何時でも良いってばさ!」
「こっちも良いっすよ!」
2人の返事に頷いたシノは一歩下がり、右手をあげる。
今回の試験では、相手のチームが全員戦闘不能になるか、シノが続行が不可能だと判断した場合止める事で勝敗が決まる。
前回のようなフラッグという、取れば勝利という明確な基準がない以上純粋に実力で勝負が決まる。
この場合の実力というのは、文字通りの身体能力、知力、チームワーク、それらを含めた全部だ。
「では、始め!」
号令と共に振り下ろし、試験が開始される。
猪鹿蝶と、火影の息子が率いるチーム戦に試験を終えた生徒達も眼を離せない。
ボルトの実力は言わずもがなだし、ミツキの強さは未だ底が知れない。
唯一委員長であるスミレだけは、これまでの実技などから普通くらいの評価をされている訳だが…その評価が間違っている事を、シカダイたちはよく分かっている。
たった1人で、里に反逆しようとしていたスミレが普通であるはずがない。
「影縛りの術!」
先手必勝、まずはシカダイが印を結び自身の影をボルトへと伸ばす。
当然直線的なその攻撃を躱すのが容易、スミレとミツキは左右に散り、ボルトも横へ飛ぶことで回避する。
しかし、これまでボルトとの付き合いが長いシカダイはボルトの飛ぶときの軸足から先読みし、影を回避先へと伸ばす。
「させないよ」
「——ッ!」
その事に気がついたミツキが、袖の下からクナイを投げつけ躱す為に回避せざる負えなかったシカダイは飛び退いた。
だが、なにもチームの中心を狙ったのはシカダイだけではない。
「部分倍化の術!」
ボルトが着地を決めた先で、チョウチョウが右手を大きく振りかぶっていた。
「影分身の術!」
ボルトは咄嗟に影分身を1人だすと、分身によっていのじんの元へぶん投げられた。
「上手い!回避と攻撃を一緒にやった!」
サラダが素直に感嘆する中、ボルトはクナイを取り出しいのじんの刀と激突した。
いのじんの得意な術は鳥獣戯画、書かせる隙さえなかったら問題ないという作戦だ。
「鳥獣戯画、使えるものなら使ってみろってばさ!」
得意分野が封じられたいのじんは歯を食いしばって刀を振るうが、そもそも体術の成績は元々ボルトが一二を争うほど上だ。
この戦いは基本的に3VS3、つまりどちらが早めに人数を減らせるかで有利不利が決まる。
前回は地形を上手く使う事で勝利を収めたボルト達だが、今回は真正面から行く必要がある以上猪鹿蝶よりも得意分野と言っても過言ではない。
「いのじん!」
チョウチョウがいのじんを助けるために動こうとするが、その前にスミレが立ちはだかった。
「いくら委員長でも、容赦しないんだからね!」
「うん!私も、負けるつもりはないよ!」
言い放ったスミレは、腰を屈めたと思えば素早い動きでチョウチョウの眼前に踏み込んだ。
「早い!」
スミレの本気を見たことが無い他の生徒達はどよめきを起こし、チョウチョウは咄嗟に部分倍化した右腕を強引に振るう事で攻撃を仕掛ける。
しかし、スミレは飛び上がる事でチョウチョウの攻撃を躱すだけではなく、背後まで取る。
「やあ!」
スミレを見失ったチョウチョウの背中に、スミレは蹴りを入れる。
「うわぁ!」
背後からの蹴りにたまらず倒れかけるチョウチョウだったが、ダメージとしては浅かったのか直ぐに立つのと同時に背後を見る。
スミレも着地を決めた後、真っすぐにチョウチョウへ迫った。
(今までの委員長じゃないっしょ?!)
余りのこれまでとの違いに、チョウチョウは狙いを定めて巨大な拳を突きつける。
しかし、巨大化に伴ってスピードは当然落ちている。
パワー自体はアカデミー生であれば一撃必殺に等しいが、当たらなければどうという事は無い。
スミレはスピードを乗せたまま咄嗟にスライディングをして、チョウチョウの空いた両足の間へすり抜けた。
「——っ!」
反射的に振り向いたチョウチョウが腕をクロスさせると、丁度スミレの拳が突き刺さる。
威力自体は無いが、小さなダメージが蓄積すれば当然動きも脆くなる。
チョウチョウの持久力やスピードが無い事を理解しているスミレは、シカダイと分断さえ出来ればチョウチョウの相手が出来ると踏んでいたのだ。
しかし、その猪鹿蝶の弱点をシカダイが考えないわけもない。
当然その状況の覆し方も。
シカダイはミツキと交戦しながら、一瞬の隙を見出しクナイをボルトへ投げつけた。
「ボルト!」
ミツキが声を上げると、ボルトも間一髪後ろへ飛び退くことで回避に成功する。
「うわ、あっぶね!…って、しまった!」
「忍法、鳥獣戯画!」
ボルトが離れた隙をつき、いのじんはあっと言う間に蠍を模した絵を描き上げ今度はシカダイに迫ろうとしていたミツキへ解き放った。
ミツキは咄嗟にその鳥獣戯画を消そうと腕を振るって、視界が墨に染まった。
「へへっ、影真似成功だぜ」
「くそっ!」
猪鹿蝶の常とう手段、目くらましからの影縛りはシンプルながら強力なコンボ術だ。
ボルトはミツキを助けるためにシカダイへクナイを投げつけるが、鳥獣戯画を描き終えたいのじんが先回りして刀で撃ち落とした。
「形勢逆転だねボルト。」
状況の変化に、いのじんがしてやったりとした笑みを浮かべる。
その背後では、前回のようにミツキが口に含んだ針をシカダイへ飛ばそうとするが
「言っただろ、影真似ってよ!」
ミツキがそうするよりも早く、口のものを吹く仕草をするとミツキも連動して仕込んでおいた針が地面へ落ちる。
彼らも、ボルトとミツキが相手と聞いた時点で前回の反省を踏まえて作戦を立てていたという事だろう。
「前と同じようにはいかねえよ」
ミツキを封じられた現状はかなり不味い。
彼はチームの中でもなんでもできる存在、そんな人物が封じられただけでもかなり不味い状況というのは分かるだろう。
それに、シカダイを守るように立ったいのじんとチョウチョウも新世代の中ではかなりの実力。
1VS1なら兎も角、チーム戦においては強敵であることには間違いない。
「やられたね」
「委員長」
チョウチョウが目の前に立っていると言う事は当然スミレも一度退いたと言う事。
隣に降り立ったスミレを一瞬視界に収めたボルトは、すぐさまいのじん達の向こう側へ視線を移す。
ミツキも影真似から影縛りにシフトした術を破ろうとしているが、強引なパワーか術者の気を逸らさなければ破ることは出来ない。
時間をかければかけるだけ、相手のコンビネーションで不利になるのはこちら側だ。
「さて、どうしたものかな」
敢えて気丈に笑うボルト達に、声援が送られたのはその時だった
「がんばれ〜!!」
「あいつ」
「ビオラ…かっこ悪いとこ、見せられないね」
小さな体から出せる最大音量に、ボルトもスミレは呆けた表情をしたが直ぐに声援から力を貰えた気がした。
そうだ、今日ビオラが来ているのは”かっこいい”自分達を見せたかったからだ。
たかが一つの作戦に引っかかっただけで、諦める運命ではない。
…いや元々諦めつもりも無いわけだが。
ボルトはビオラのおかげで緩めた口元を引き締め、隣のスミレを見る。
スミレも丁度ボルトを見つめていて、お互い…この後どうするべきかを相談し合った。
心転身でもなんでもない、ただのアイコンタクト。
クラスメイト達はその2人にあった間を訝しげに見ていたが、シノだけは2人の間で交わした言葉を察して…
「へっ、お前らに勝つなんて簡単だってばさ。ゲームみたいに、あっさりクリアしてやんよ!」
「そんな強がり、いつまでもつかな?」
「委員長には悪いけど、今日はあちし達が勝つよ!」
構える両者、先に動いたのはボルト。
腰からいくつかの煙球を投げつけた。ボンッ!と破裂した音から、辺り一帯へ粉塵が舞い踊る。
「気を付けろ、煙に分身が紛れてくるぞ!」
だが、そこは長年ボルトの親友をやっているシカダイ。彼がとる行動も当然分かっていて注意を促す。
シカダイを守るように陣形を組んだ2人に、彼の読み通りに分身のボルトとスミレが襲い掛かった。
「委員長の方は水分身だ、本体よりも弱い分何とかなる!ボルトも落ち着いて対処すればどうとでもなる!」
チャクラを等分する影分身に、チャクラを水に変化させて使用する水分身。
所詮は分身で、その力は本体には及ばない。
シカダイの背後に現れたボルトの分身を、いのじんのクナイが撃ち落とす。
スミレの方は分からないが、水が無いここでそれ程の水遁が出来るとは考えずらい。
(1…2…3…!?)
ミツキをしっかりと捕まえておきながら、シカダイはボルトの消えた影分身の数を数え3体消えたのを知覚すると勝利を確信するように口の端をあげる。
その時——
ぶわっ!
と、ボルトが出していた筈の煙が一気に風と共に散っていった。
自分が出した有利な状況を、なぜ元に戻すんだと普通なら思ったことだろう。
しかし、この場面を見ている誰もが、ボルトの両手に作られたものを唖然と見ていた。
「嘘、あれって七代目さまの…?」
「螺旋丸?!」
彼の両手で作られた小さな青い球体、大きさこそはナルトに比べると心もとないが螺旋丸そのもので間違いなかった。
今朝までゴムボール修業をしていた彼は、本来ならまだ出来ない芸当だったが…ボルトの隣には彼の影分身がしてやったりとした笑みを浮かべて立っていた。
彼はこの土壇場で、自分の父と同じ方法で螺旋丸を完成させていたのだ。
「だが、当てなきゃどんな術も意味ないぜ」
冷汗一つ流しながら、シカダイは弱点を言い放つ。
どんな螺旋丸だろうと、当てる事が出来ないのであればチャクラの無駄遣いでしかない。
小さくバチバチとなる螺旋丸に、不敵な笑みを浮かべたボルトは自分を守るために立ってくれていたスミレと並んだ。
「当てれば良いんだろ、じゃあ行こうぜ…
「——っ、うん!」
一瞬眼を見開いたスミレは、すぐさま頷き駆け出した。
まずは先行するように残っていた分身へいのじんの鳥獣戯画が襲い掛かる。
螺旋丸ボルトとスミレを守る役目がある影分身ボルトは、あっさりと鳥獣戯画に飲み込まれてしまうがその背後からボルトとスミレがトップスピードで2人に迫る。
「鳥獣戯画にはこんな使い方もあるんだよ!」
だが、いのじんはすぐさまいくつかの蛇を描き上げると、大量のそれらを地面をつたわせてボルトとスミレに放つ。
2人はスピードを乗せていた分、そのまま飛び越えるしかないがそれこそがいのじんの狙い。
「行けデブ!」
「動けるデブだっての!」
いくら早くても、空中では躱しようがない。
そこにチョウチョウの強烈な一撃で2人纏めて放つことが出きるのであればそれはもう必勝と言っても過言ではないだろう。
「これは勝負あったな」
「いや…」
イワベエが瞬間を見て決める横で、サラダが違和感を持つのと同時。
チョウチョウの拳が2人に叩きつけられ、そのまま地面へと倒されいのじんとチョウチョウは2人の動きを完全に止めるために動き出す。
ボルトも既に攻撃を受けたことで螺旋丸はキャンセルされていて、倒れたままだ。
すぐに上体を起こしたボルトへいのじんが、スミレにはチョウチョウがクナイを持って首筋をいつでも刺せるように置く。
「これはもう僕達の勝ちでしょ。」
勝利を確信したいのじんの笑みが崩れたのも一瞬だった。
「はっ、そいつは…どうかな?!」
その瞬間、目の前のボルトが、スミレがそれぞれ煙と水になって消えた。
「「えっ?!」」
完全に本体の2人だと思っていた2人は、完全に虚を突かれた形となって――シカダイが上空を見て2人に叫んだ。
「いのじん俺の上だ!」
演習場の柱から、スミレがクナイを持ちながらシカダイの元へ迫っていた。
シカダイの咄嗟の声に、いのじんは持っていた刀をそのままスミレへ投げつけた。
スミレはその刀をかなり余裕を持って弾き…小さく笑った。
それがスミレの…ボルトとスミレの作戦だったのだと気がついた時には既に遅かった。
別の柱の陰から現れたボルトが、勢いよく手に持っていた螺旋丸をシカダイへ投げつけたのだ。
遠距離で妨害手段を持ついのじんの手を使わせ、ボルトは確実に螺旋丸を投げて当てる。
それは完璧に近い作戦だった…のだが
「ふはは! そんなものが届かないんじゃ世話ないぜボルト!」
なぜか、途中で螺旋丸がかき消えてしまい…最高潮に高まったクラスのボルテージが、一気に笑いに変わる。
ボルトはボルトで土壇場でなぜか消えてしまった螺旋丸に拳を握りしめ、いのじんもチョウチョウも露骨に安心した表情を見せる。
だが、スミレだけは信じていた。
彼が忌み嫌っていた修業までして得た、彼の新しい力を。
だから次の為に動き出し――シカダイが唐突に吹き飛んだ
「「——えッ?!」」
動揺は一瞬、戦闘も一瞬。
吹き飛んだシカダイによって影縛りの術は解かれ、自由に動けるようになったミツキはすぐさまに倒れたシカダイへ己の蛇を巻き付ける。
「シカダイ…っ!」
余りの一瞬に、チョウチョウの動きが止まりその隙へスミレが背後に回って首筋にクナイをあてた。
それにより勝負は決した。
「そこまで!勝者、ボルトチーム!」
決した勝負に、ボルトは拳を掲げる。
「よっしゃー! 勝ったってばさ!」
「うん、流石ボルト」
「うん!」
無邪気に喜ぶボルトを、ミツキもスミレも微笑んで見ていた。
一方、やられた本人であるシカダイたちや、何が起こったのかが分からないクラスメイト達は口をぽかーんと開いたままだ。
唯一時間が止まっていないのは、ビオラ位のものだろうか。
「かった~!」
嬉しそうに万歳するビオラに、ボルトもスミレも手を振ると更に嬉しそうに笑うビオラの笑顔がやけに印象に残ったクラスメイト達だった。
と、ボルトは思い出したかのようにスミレへ謝辞を述べた。
「サンキューな委員長、陽動手伝ってくれて」
彼の言葉に、スミレは一瞬残念そうな顔を見せた後首を横に振った
「ううん、どうしてかな…ボルト君の考えてる事が分かったんだ」
「そ、そうか? ははは!」
恥ずかし気に頬を掻くボルトに、スミレも恥ずかしい事を言った自覚があるのか話題を急遽変える事にした。
「それにしても出来たね、螺旋丸。」
「ああ、でもまだ小さいし…っていうか、途中で消えたの凄くね!?」
ボルトですら、あの螺旋丸が消えた瞬間落胆を隠せていなかった。
なのにどういう訳か、あれはしっかりとした威力を伴ってシカダイを吹き飛ばしてくれた。これまで見えない攻撃というのは、マギレの隠れ蓑術位しか知らなかったボルトは、まさか自分の螺旋丸に消える性質があると思っていなかったのだ。
だからこそ、喜色の色を浮かべスミレに同意をとると、ミツキが補足をしてくれた。
「あれは恐らくだけど、雷遁の性質変化が入ってるんじゃないかな?」
「性質変化?形態変化の中に性質変化を組み込むなんて…上忍でも中々出来ないのに」
スミレは素直に感心したのか、驚きでボルトを見ると彼は鼻高々に笑っていた。
実際彼がやって見せたことは、形態変化に性質変化を加えると言う、父ナルトでもかなりの時間、それもほぼチートみたいな手段を使用して出来たことをまだアカデミー生であるこの段階で出来るのは、まごう事なき天才だ。
そうしていると、ボルトは唐突に2人に向けて掌を向けた。
「…?どうしたんだい?」
ミツキが意味が分からなかったのか、純真に首を傾げた。
スミレも初めての事に首を傾げてしまう。
ミツキはともかくスミレにまでそんな反応をされてショックだったボルトは素直にやりたい事を告げた。
「ハイタッチだよハイタッチ!そういうノリなんだよ!」
「はわ…う、うん」
「なるほど」
納得した2人は、パンっ!とハイタッチをして…不思議な感覚に、スミレもいつしか楽しそうに笑っていたのだった。
お疲れさまでした!
という訳でボルトは初手は影分身をだして螺旋眼を完成させました!
またスミレの戦闘シーンの加筆など、所々増えていたのお判りいただけたでしょうか!
次回でリメイクも最後です。
マジで長かった()
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