へびつかい座の回診   作:サンダーボルト

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名探偵コナンはアニメで見てたけど、漫画は読んでなかったんですよね。

話を作るためにコミックスをレンタルしてきました。

この話と、ラベンダー屋敷の事件は返す前に書きたいですねぇ。


マッドドクターは助手が欲しい

 俺とおっちゃん、蘭の三人はゴールデンウィークの真っ只中に霧のかかった海の上を小さな船に乗って進んでいた。行き先は伊豆沖の月影島という小さな島だ。

 この島に来た目的は旅行ではなく、おっちゃんの元に届いた怪しい手紙と電話で依頼されたからだ。

 

 

「それにしても何なんだ?『次の満月の夜 月影島で再び影が消え始める 調査されたし』って…何を調べりゃいいのかサッパリ分かんねえじゃねえか」

 

「何かの暗号かもしれないわよ?あ、でも依頼なのにそんなややこしい事する理由なんてないよね…。ね、コナン君はどう思う?」

 

「うーん、僕にも分かんないや。夜に何か良くない事が起こりそうなお手紙ってことぐらい…」

 

「そっか…。あの、先生は何か気づいたことはありませんか?」

 

「興味ないな。謎を解くのはお前たち探偵の仕事だ。僕には関係ない」

 

「達って…探偵なのはお父さんだけですよ?コナン君のは探偵ごっこなだけで…」

 

「大人だろうが小学生だろうが、僕に益があるならどうでもいい」

 

「アハハ…(相変わらずだなこの人は)」

 

 

 そして何故かアスクレピオス先生も同行している。おっちゃんが依頼で月影島へ行く事をどこからか聞きつけて、無理矢理ついてきたらしい。

 

 

「こんな仕事に先生が来るこたぁないでしょう…。自腹切ってついてくるっていうから許可はしましたがねぇ…」

 

「良いじゃないか、お前たちと一緒ならどこでも事件事故に遭う確率が飛躍的に上がり、僕が患者を診る確率も上がる」

 

「(そんな理由でついてきたのかよ)」

 

「しかも場所は離れ小島ときた。きっと米花町とは違う傷病が出るに違いない。ああ、期待が膨らむな…どんな患者が発生するのか…」

 

「(もう事件起こるって確信してるし)」

 

 

 月影島に付いた俺達四人は、依頼者である麻生圭二さんの情報を村役場に聞きに行った。

 だがそこで分かったのは、彼は12年前に自分の家に火をつけて、自分の家族もろとも焼け死んだという大事件を起こした事。そして、燃え盛る炎の中で力尽きるまでベートーベンのピアノソナタ『月光』を弾き続けていた事だった。

 依頼料は振り込まれていて、送られてきた手紙の消印がこの月影島だったのでただの悪戯とは思えず、俺達は麻生圭二さんの事をもっと詳しく調べるために彼の友人だったという村長に話を聞きに行く事になった。

 

 途中で道を教えてもらおうとして出会った浅井成実さん。彼女は若い女性ながらきちんとしたドクターだった。

 

 

「毛利、お前探偵の癖して医者と看護師の区別もできないのか?」

 

「め、面目ないっス…」

 

「その若さで大したものだ。僕はアスクレピオス。主に米花町で活動している医者だ」

 

「え、わぁ、同業者さんだったんですか!?」

 

「ああ。米花町は良いぞ?連日連夜あらゆる傷病者が担ぎ込まれてくる。あの傷害事件てんこ盛りの町に来れば、お前の医者としてのスキルにも更に磨きがかかるだろう」

 

「え、患者が多いのは医者としては嘆くべきでは…?」

 

「?何故だ?事件が起きるのは僕達のせいじゃないだろう。患者を治し、それを医術の進歩に役立てる。それが僕達の仕事であり、使命だ」

 

「は、はぁ…」

 

 

 当然ながら、同じ医者でも話が噛み合わないアスクレピオス先生と浅井先生。

 その浅井先生の話によると、今夜はこの村の前の村長、亀山勇さんの三回忌が行われるようだ。それにはもうすぐ行われる村長選挙の候補者、清水正人さん、黒岩辰次さん、川島英夫さんも参加するとのこと。

 公民館で現村長の黒岩さんに話を聞くために待たされていた俺達は、大きな部屋に置かれたピアノを見つけた。そこで村長秘書の平田和明さんから、このピアノは麻生さんと亀山さんが死んだ事件に関わっている呪いのピアノだという話を聞いた。両方の事件で弾かれていたピアノソナタの月光…なんだかキナ臭くなってきたぜ。

 

 法事が終わるまで玄関で待たされていた俺達だったが、アスクレピオス先生が急に立ち上がった。

 

 

「どーしたの、アスクレピオスせんせー?」

 

「患者だ」

 

 

 え?と聞き返す俺達を置いて、先生は公民館の中に駆けていった。慌てて後を追っていくと、さっきのピアノが置いてある部屋のドアを先生が勢いよく開けたところだった。

 

―――――そして、部屋の中には。

 

 

「――――――――え?」

 

 

 ずぶ濡れの川島さんをひきずっている、成実先生の姿があった。

 

 

「あ…」

 

「浅井先生…?」

 

 

 予想外の光景に言葉を無くした俺達の隣で、アスクレピオス先生はいつものように手袋をはめている。

 

 

「患者だな?浅井、横に寝かせろ。速やかに診断したのちに治療する」

 

「………あ、の……」

 

 

 俺達と同じように言葉を詰まらせている浅井先生を見て、アスクレピオス先生は苛立ちを露わにした。

 

 

「おい、動けないならどいていろ。治療の邪魔だ」

 

 

 呆然として距離を取った浅井先生の目の前でアスクレピオス先生の医療行為が始まる。数えきれない現場を経験している先生の手際は見事なもので、早過ぎて俺も何をしているか分からない。

 

 ただ、分かっている事が一つある。

 

 

「チッ、ただの溺死か…つまらん。おい毛利、手を貸せ。患者を蘇生させる」

 

 

 今日も先生は人を一人助けたって事だ。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 息を吹き返した川島さんの証言で、彼を溺死させようとした(というよりさせたけど治された)のは浅井先生だと分かった。警察に連絡して目暮警部が到着した後、浅井先生が何故このような事件を起こしたのかを皆に話した。

 

 

「俺の父は自殺なんかじゃない……殺されたんだ!こいつらに!!!」

 

 

 なんと浅井先生の正体は12年前に死んだ麻生佳二さんの息子、麻生成実(あそうせいじ)さんだったのだ。彼は父親の死に疑問を持っていて、息子だとバレないように女装してこの島に来ていたという。

 2年前、亀山さんに呼び出された時に麻生佳二さんの息子だとバレて、父親が死んだ真相を知った彼は復讐のために犯行に及んだ。

 

 

 川島さん、黒岩さん、亀山さん、そして無職の西本さんと麻生さんを合わせた五人は、麻生さんのピアノの海外公演の機会を利用して楽譜を使った暗号で麻薬を買いつけ、さばいていたのだ。麻薬の隠し場所はあのピアノに隠し扉があり、それを使って取引されていた。

 だが麻生さんはもう協力しないと言い出し、秘密が漏れるのを恐れた他の四人が家族ごと麻生さんを焼き殺した。成実さんは東京の病院に入院中だったので、一人だけ難を逃れていたのだ。

 

 

「そ…そんな話デタラメだ!亀山の奴がトチ狂って、そんな作り話を!!」

 

「何だと!?」

 

「だいいち、そんな証拠がどこにある!?人を殺そうとした奴の話なんか、誰が信じる!?」

 

「――――っ!!」

 

 

 黒岩さんの必死の叫びに、俯いて拳を握りしめる成実さん…。その様子をじっと見ているアスクレピオス先生が、ボソッと呟いた。

 

 

「あいつ、欲しいな…」

 

「は?」

 

 

 思わず素の声が出てしまった。いや、どゆこと?今までの話、なんにも聞いてなかったのかこの人!?

 俺や狙いを付けられた成実先生は勿論、この場全員の何言ってんだこいつと訴える視線がアスクレピオス先生に集まる。

 

 

「常々思っていたんだ。僕の仕事を手伝う人手が欲しいとな」

 

「どうしてそれが今でてくるの!?」

 

「あいつはただの平凡な医者じゃない。親を殺され、その仇がのうのうと生きていると知ってもなお、医者としての仕事をまっとうしてきた。傍から見れば狂気とも言える。気に入った」

 

「気に入ったの!?」

 

 

 先生がグリンッ!とおっちゃんの方に振り向いた。目をギラギラさせて詰め寄る先生にビビるおっちゃん。

 

 

「毛利、僕に雇われろ。この事件の真相を全て暴くんだ」

 

「はぁ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ちたまえ!それは我々警察の仕事だ!」

 

「それはそうだな。だが、僕は僕で最善を尽くすだけだ」

 

「だ、だがそうは言ってもなぁ…警部殿達が来ているのに、俺等のやる事なんて…」

 

「依頼料は望む額を支払う」

 

「不肖、この毛利小五郎!全身全霊を懸けて隠された真実を解き明かしてみせましょう!!」

 

「お父さん…」

 

「毛利君…」

 

 

 あっさり依頼を受けちまったおっちゃんに蘭と警部の呆れたような視線が突き刺さるが、当人はまるで気にしちゃいねぇ…。

 

 と、思っていたら、先生が俺の肩に優しく手を置いた。

 

 

「あいつが僕の仕事を手伝ってくれて、医術がもっと進歩すればお前も嬉しいよな?コナン君?」

 

 

 俺に対するワイルドカードを何の躊躇いもなく切ってきやがった!!これってつまり、「賛同しないならお前の秘密を皆にばらすぞ愚患者?」って事じゃねーか!!

 

 

「う、うん!僕もそう思うよ!」

 

 

 必死になってそう返せば、先生は満足して笑みを浮かべた。

 

 

「…………どうして」

 

 

 成実先生の掠れた声が耳に入る。そりゃあ、普通は信じられないよな。あって間もない人間が犯罪を起こした自分を助手にしようだなんて。

 でもこの人に一般論なんて通用しない。見境ないって言われりゃそれまでだが、別の言い方をすれば罪を犯した人間に対する偏見も無いって事だ。

 

 

「お前は医者としてまだ伸びそうだからな。医術の進歩のためにも、ここで芽が摘まれてしまうのは惜しい」

 

「先生……で、でも…俺は…」

 

「安心しろ、あらゆる手を使ってでも守ってやる。だからお前は医術に全てを懸けろ」

 

 

 成実先生の返事も聞かず、言うだけ言った先生はおっちゃん達と話し始めた。

 ……しゃーねえ。俺だって、真実が分からないままなのは嫌だからな。この事件、とことんまで付き合ってやろうじゃねーか!

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時から今に至るまでの出来事は全部、夢だったんじゃないかって思う事が今でもある。

 

 公民館の倉庫の中に父が残した譜面の暗号が残されていて、それに一連の犯行の告白文があった。

 加担していた川島、黒岩、西本の三人は逮捕され、ピアノの隠し扉を使って麻薬取引をしてた平田も麻薬密売で捕まった。

 

 俺も殺人未遂の罪で捕まったけど、アスクレピオス先生が連れてきた弁護士が、あの法曹界のクイーンだった時は度肝を抜かれたなぁ。しかも毛利探偵の妻だったなんて。

 

 法廷では自分に殺意があった事も含めて、全部正直に話した。でも妃弁護士の弁論術に加えて、動機が一家纏めて焼き殺された事に対する復讐で情状酌量の余地がある事。毛利探偵と蘭ちゃんとコナン君が村の人達に聞き込みをして、俺が医者の仕事を問題なくこなしていたことを証明してくれて、罪はかなり軽くなった。

 それどころか執行猶予までついてしまって、感極まって法廷で泣いてしまったんだ…。

 

 医者の仕事を続けられるようになり、今は米花町で正式にアスクレピオス先生の元で働いている。先生の言っていた通り、ここでは事件が他の場所よりも多いため、患者もそれに伴って多くなる。

 いやもう、本当に毎日忙しすぎるよ。来た時の最初の頃なんか一日の途中でぶっ倒れたからね、俺。これでも体力には自信があったのに…。

 

 

「さて、出かけるぞ成実。新たな患者が待っている」

 

「はい、先生!」

 

 

 今日もまた俺を救ってくれた憧れの人の背中を追いかける。

 

 父さん。見ててくれよな。

 

 俺、父さんや先生に恥じないような立派な医者になってみせるからな!




FILE.アスクレピオス

コナンではオカルト要素も少なからずあるので、サーヴァントが出てきても不思議じゃない……はず。あまりに死体が多いせいで、もういい僕が治す、みたいな感じで出てきたんじゃないかな(適当


FILE.麻生成実

火事の中から助け出す予定でしたが、それだと殺人罪が成立して即戦力にならないために序盤で犯人バレさせました。
助手になった後も女装は続行中。理由は「女の姿の方が診察を大人しく受ける患者が多いから」だそうです。


FILE.毛利夫妻

過去に小五郎が刑事を辞めるきっかけになった発砲事件に介入。英理の足の傷を痕も残さず綺麗さっぱり治療しました。お礼として夕食に招待された事があるため、二人の別居の理由も薄々察している。娘に理由は(色んな意味で)言えない。はよヨリ戻せ。
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