ポケどま!   作:よすぃ

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【Season6】過去との邂逅
孤島の探検家


 ヨロイ島には、ステーションがあった。

 マッシュの考案した鎧島に向かうためのエクステンションパスは、通称ヨロイパスと呼ばれており、ブラッシータウンから線路でワイルドエリアを北に向かい、マスターの孤児院に隣接するステーションから、アーマーガアタクシーによる空路となる。

 空路を経て、ここヨロイ島に到着したのだが、降り立った場所はガラル鉄道のそれとよく似た建物だった。

 その外観を見上げ、マッシュはやはり首を傾げる。

「どうにも、変だよなァ」

 タクシーの客車の中で固くなった筋肉をほぐすように、マッシュは肩や首をパキパキと鳴らした。

 彼の言うとおりだ。そもそも、孤島のはずである。大陸から分離されたこの地に、なぜ、ガラル鉄道と同じ構造のステーションがあるのか。変な話である。

 

 変といえば、と思い出す。

 先ほど降り立った直後に、私のマスターは、変な紫のコスチュームを着込み、ハット帽の周りにモンスターボールを浮かべたトレーナーにポケモンバトルを挑まれていた。

 マスターが繰り出したのは私である。変なハット帽の手持ちとレベル差が開きすぎていたこともあり、それを見抜いたガラルチャンピオンはハンデのつもりもあったのか、私に何のアイテムも持たさず、一体目のケーシィも、二体目のガラルヤドンもすべて、サイコキネシスの一撃だけで葬り去った。

 ……が、それがあまり良くなかった。私のサイコメトリーで読み取ったところ、彼はマイナーリーグのエスパージムのジムリーダーの血族であり、由緒正しいサイキッカーだったのだ。だから、ハット帽の周りにボールが浮いていたのか。

 対戦後、マスターはエスパータイプである私をあえて手持ちから外すことに決めた――

 

【あのサイコ野郎、サナたんが強すぎるとかエスパー使い同士は次は闘えないとか言い訳してたから、あえて格闘タイプだけで攻めるわ……それに、これから行くのは道場だしね?】

 

 指をパキポキ嬉しそうに鳴らしていたマスターが印象的だったのを覚えている。

 妙なハット帽の男は今回この島が出現するよりも前から存在している道場の門下生であるらしく、マスターは単身、道場に乗り込み、情報収集を行うことに決めたようだった。ガラルチャンピオンとしての実力があれば、何処にいっても心配はない。

 一方、私はそういったサイキッカー絡みの事情からマスターとは別行動をすることになり、マッシュのフォローを行うことになった。 

 

【マッシュはちょっと頭が弱いから、サナたんがフォローしてやってね】

 

 ここは小さな島だ。拠点を道場に置けば、密に連絡を取り合うことも可能である。ワイルドエリアと同じく広い。分散する方が遥かに効率も良いとの判断だった。

 

【あ、そうだ。ほらこれ、おまもり!】

 

 マスターはマグノリアに貰った指輪を、チェーンに通す。できあがったのは即席のネックレス。そっと、私の首に掛けてくれた。

 

【うん、よく似合ってる。さて……あたしは今から人生初の道場破りか……腕が鳴るわ!】

 

 そう言って、マスターは方向性をやや違えた状態で、格闘道場へ走り込んで行き、今この場に私はマッシュと共に居る――というわけである。

 長い回想終わり。恐らく、ヨロイ島の道場に私は本筋で絡まないだろうと、未来予知する。私には私の目線の物語があるのだ。

 

「なあサナ、どう思う? 何のために駅があったんだろうな?」

『……可能性としては、元々は鉄道としてどこかと繋がっていたんじゃないかと思います。ガラル地方なのか、他の地方なのかはわからないけど』

 そうとしか推測できない。いつからここにあるのかはわからないが、線路が先に延びていて途中で切れているのだ。

「そうだよな……ん」

 電子音が鳴り、マッシュはスマホロトムを取り出した。メールの内容を読み上げると、マッシュは駅の正面の浜辺から続く海を見渡した。

「ルリナがひとり、援軍よこすってよ……お、あれか?」

 間髪を入れず、海からジェットスキーに乗った女性が見えた。だんだんと近づいてくるにつれて、それがノエルであると理解した。

 幽霊船騒動のとき以来だ。

 

「やっほー。お待たせしました!」

 バウのスタジアムのコスチュームに身を包み、身軽に浜辺に降り立つノエル。華奢に見えるが、引き締まった体からはしっかり鍛えられている様子が伝わってきた。

 

「俺の名前はマッシュ。あんたか? ルリナがよこしたトレーナーってのは?」

「はじめまして、ノエルいいます。てか、そのカッコ……ぷぷっ。何なん、そのカッコ?」

「ああ? 別にいいだろ?」

「エースバーンのコスプレて! 何なん? ポケモンごっこなん?」

 その一言がマッシュの逆鱗に触れる。

「取消せよ……! 今の言葉……!!」

「せやかて!」

「うるせー! このばかやろう!」

 そう言って笑い転げるノエルの頭部をチョップする。頭を抑えて転がるノエルを見て、今度は大笑いするマッシュ。

「痛いやないか、アホ!」

 起き上がったノエルはマッシュの股間部分にトウキックをお見舞いした。股間を抑えて本気で転げ回るマッシュを見て、さらに大笑いするノエル。

 

 全く、この二人は何をやっているのか……私はまるでコダックになったような気分で頭を抱え、ふと浜辺を見渡すと、たくさんのヤドンが居た。

 見たことのないフォルムをしているが、その雰囲気は私の知るヤドンと同じで、のんびりとした動作からはマイペースさが伝わってきた。

 どうやら、ヤドンの生態系は全国どこに行っても同じのようであった。

 

「どうしたんや、サナちゃん」

 悶絶するマッシュを放置し、浜辺を眺める私に話しかけてきた。

 ノエルのキャラはこんなのだっただろうか、と思うが、ジムリーダーという目上の前だから、前に会ったときはおとなしくしていたのだと見方を改めた。

 

「ああ、ヤドンなあ。色以外、あんまりカントーやジョウトのと変わらんような気がするなあ。あの頭、ウチのオトンによう似とるわ」

 そう言うとげらげら笑った。

 ヤドンに似てるオトン。ヤドンの姿を人間に合わせると何ともユニークだった。

「このヨロイ島、とりあえず探索してみる? 事前にうちらの調査チームが現地の人から貰った地図があるねん」

 私たちが来る前に、バウタウンのルリナたちがこの島に先に渡っている。そこで仕入れた情報も多い。

 このヨロイ島には、格闘道場があり、2つの塔がある。人工物というと、そのくらいだ。その他は大自然が拡がるばかりである。

 そして、特筆すべきは、ポケモンの巣穴と呼ばれる、赤い光の柱の立つスポットが何十箇所と存在することである。ワイルドエリアと酷似しており、別物とは思えない。

 イメージ的にはワイルドエリアの飛び地といったところであった。

 

「道場の人たちはあまり色々探られるのは好かんらしくてなぁ。道場いうくらいやから、ガラルで一番強い者が行ったら教えてくれるかもしれん」

「それなら心配ないぜ。ガラルチャンプが向かったからな」

 マッシュが胸を張る。

「あんたが得意がることやないやろ」

「……! ぐぬぬぬ」

 言い返す言葉もなく、何やら口を閉じたまま憤怒の表情を浮かべるマッシュだが、この二人どうやら、『火と油』というやつらしく、かなり相性が悪いようだ。

 

「あ、そうや。探検するついでにな? お願いがあるんやけど……ディグダ見つけてくれへん? アローラのフォルムのやつ」

「ディグダ?」

「実は先発の調査隊の中に有志で来てたトレーナーのディグダをな……、ウチがうっかり逃してしもてん……土ん中におるから、おもしろーて、地面掘って引っこ抜いてみよう思ったんがあかんかったんやろな」

「それはダメだろ……しかし、この島の中に1匹のディグダか、見つけられるか?」

「151匹や」

「は?」

「そいつのディグダは151匹おったんや……数字もあれや、初代ポケモン博士の発見したポケモン数にあやかっとる。カレー図鑑と一緒や。こだわりの151なんや……」 

「ディグダマニア……なんか聞いただけでヤベー感じするけど、ポケモン見つけるなら、得意な奴がいるから放っといて大丈夫だろ。“聖母”とかな」

 去り際にマスターがスマホロトム見ながら、「徹底攻略すげー! ディグダの場所全部わかるじゃん!」と言っていたことを思い出す。

 どういう意味かわからないが、何となくマスターなら見つけそうな気がした。

「ほんなら、ディグダは任せといて……ウチらは島を一周してみよか」

 ノエルはそう言うと、地図を示し、「まずは塔のある高台に行って、そこと、島の全景を見てみよう」と発案した。

 地図を見ると、慣らしの洞窟、チャレンジロードと続いており、その先にその『悪の塔』はあった。

 異議もなく、私たちはそこへ向かうことにした。

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