ポケどま!   作:よすぃ

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【Season13】いつか終わる夢
いつか見た風景


 私たちはマッシュのアーマーガアタクシーで、バウタウンに辿り着いた。

 マッシュ、ソニア、ホップ。シャケ、私。定員オーバーかと考えたが、乗り物を見てすぐに考えが誤っていたことに気づいた。

 

「すごい乗り物だったニャ! ニャーは割とメカには強いニャ。そんなニャーでも唸るほどだったニャ!」

「乗り心地もあまり揺れず、良かったわ」

「さすがだぞ、空を飛ぶことのすごさをばっちりわかっているんだな!」

 

 シャケとソニアはそれぞれ機体を褒め、ホップもそれに続くが、それぞれ浮かない表情をしていた。マッシュは愛機を褒められてやや得意気な様子だったが同様だ。

 ナックルでの一件は、それぞれの胸に暗い影を落としている。

 

「ワイルドエリア・オークションで稼いだ資金でいざという時のために購入したんだ。名前は“メーヴェ”ってんだ。アーマーガア自身の能力と、飛行機の動力を組み合わせ、円滑な飛行が可能になるってわけだ。かがくのちからってすげー、だろ?」

 

 虚勢を張るように胸を張ったマッシュは、バウタウンのジムの前に着陸した小型飛行機“メーヴェ”をジムの脇へと移動させた。計測器を確認することも忘れない。その一部が時計になっており、これもまた時を止めないでいる事に一役買っている。

 

「問題なし、だな」

 

 計器類を確認し、マッシュは頷く。

 しかし、そもそも、なぜ時計の針が存在する場所は時が流れているのか。それを破壊し、時を止めようとしてくるコレクレーと呼ばれる存在は何なのか。未だに分からないでいる。

 

「ようやくの到着ね、ソニア」

 

 ジムから姿を表したのは、ナイスなプロポーションのモデル兼バウタウンのジムリーダー。水タイプの使い手ルリナだ。

 

「ルリナ、無事で良かった!」

 

 ソニアはルリナを抱きしめると、しばし再会を味わう。そして、ナックルで起きたことを報告する。

 

「そう……辛いこともあったのね。でも、その尊い犠牲があって、世界に光は戻ったし、Wエネルギーの供給も再開されて、みんなに希望を与えてくれたわ」

 

 バウタウンのスタジアムを始め、電気系統が復活していた。それは人々に文明の復活を予感させるが、しかし、現実はそう上手くはいかない。

 

「……けど、時が止まったままなのは変わりはないみたい。止まったままの人は動かないし……ノエルも……」

 

 そう言ってルリナがあげた名前の中にはノエルの名もあった。

 ジョウト訛りの活発な少女を始め、時を止めた人たちはバウタウンのスタジアムに移動させ、安全を確保しているという。

 

「たぶん、物理的な干渉を、表面上は一切受けないみたいなの。極端な話、試したことはないけど、剣で貫かれても、体表に傷ひとつつけることは出来ないと思うわ」

 

 ルリナはそのようなことを述べた。

 

「あんた、実験したんじゃないでしょうね?」

 

「とんでもない! 時の止まったときに居た場所が悪く、家屋の崩壊に巻き込まれた人が居たんだけど、傷一つなかったのよ」

 

 ソニアが言うと、ルリナは慌てて否定する。

 

「なるほど。ルリナが皆を安全なスタジアム内に移動させた理由って……なるほど、もし何らかの拍子に元に戻ったときに、危険が及ばないようにって配慮ね。さすがはルリナ、あたしの友だけあるわ」

 

「ふふ。まあね。こう見えて、バウタウンを背負って立ってるからね……」

 

 先を見据えて、時を止めた人を安全な場へと移動させた判断はジムリーダーに必要な才覚だろう。思えば、ナックルでもそうだった。

 キバナは時を止めていたが、それでも人々をポケモンセンターの中に誘導させることに成功していた。ジムリーダーとしての責務を彼も果たしている。流石だと思う。

 

「しかし、時を止める存在か……あるとすれば、時の神ディアルガかと思うのだけど。それらしき姿も見てないわね」

 

 ルリナはシンオウの神話の存在を示唆していた。確かに、心あたるものもある。

 ルヒィがガラル収容所で言っていたことだ。ガラルの周囲の海はそこで終わっている。世界は閉ざされていると。それは同じく、シンオウ神話の存在。空間の神パルキアの所業では無いだろうか。

 

「さ、ソニア。貴方の頭脳も貸して頂戴。そこの見習い博士もね」

 

 異世界のダンデの死が未だ乗り越えられないでいるホップに向けて、ルリナは声を掛けた。ソニアもマッシュもナックルの一件以来、落ち込んではいるものの、特にホップは妙に明るく振舞ってみせたり様子はおかしかった。時々、何か遠くを見て塞ぎ込んでいる様子もあった。

 恐らくルリナはそれを機微に見抜き、あえてホップに目的を作らせようとしていた。目の前の事に没頭できれば、哀しみからも少しは目を背けることが出来るから。

 

 ルリナはソニアとホップを灯台の方へと連れていった。そこに、コサリたちエーテル財団の移動研究所があるのだろう。

 ダイオーキド、コサリ。そして、ソニアにホップ。優秀な頭脳が揃った。灯台の地下に隠され安置されていた紫色の機体が日の目を見る日も近い。

 

「しかし、お天道様の光はやっぱ違うな。浴びてるだけで元気が出てくるぜ」

 

 マッシュはそう言うと周囲に視線を移した。そこにはバウタウンの人たちが洗濯物を干したり、日光浴をしたりしている。長く続く夜の世界では見られなかった光景だった。

 

「ん……コウタロー?」

 

 マッシュの目線が止まり、私もそちらを見ると、そこにはサングラスをかけた警官の服装をした男、コウタローがイヤホンをつけたままリズムを取りながら歩いている。

 マッシュはコウタローの名を呼びながらそちらに近づいていき、取り残された私もそちらに向かった。

 

「よう、コウタロー」

「そういうお前はマッシュか……」

 

 声を掛けられたコウタローはイヤホンを外し、歩みを止めた。

 

「お前に借りたザマゼンタのナオミ、役に立ったぜ。ありがとな」

「ああ、いいんだ……しかし、ナオミはマッシュがそのまま持っていてくれ」

 

 コウタローはそわそわした様子を見せていた。微かな違和感がある。

 

「どうしたんだよコウタロー」

「実は、俺の愛してやまないバンド、ワンオクが解散する……そのラスト・ライブが“思い出の踏切“で開催されるんだ」

「思い出の踏切……? ああ、ワンオクのデビュー曲の“天体観測”に出てくる、今はもう無いっていうワイルドエリアの踏切跡のことか」

 

 コウタローは頷く。

 

「世界がこうなってしまったが、彼らワンオクはロックだ。停滞した時をぶち壊すために、変革を起こそうとしている。破壊は創成の第一歩だ……だからこそ、彼らは解散を宣言した

ちくしょう、ロックすぎるぜ……」

 

 コウタローは天を仰ぎ目頭を抑える。そして、マッシュに止めてくれるな、と言う。

 マッシュも、バウタウンという安全区域を抜けようとする友の歩みを止めることは無かった。たかがバンドの解散の話では無いのだ。コウタローにとって、ひとつの世界が、時代が終わろうとしているのだ。そのことを痛いほど理解し、マッシュはあえて止めようとしなかった。

 

「サナ」

 急に名前を呼ばれ、私は違和感の正体に気づいた。コウタローがコードネームを用いていないのだ。

「もう符号で呼び合う時では無い。そして、時は来ている。何人かはもう、この世界の特異性に気づいている。だから俺も“約束の地”へ向かう。そうだ、“再統合(リユニオン)”だ……」

 

 ライブの誘い文句なのかは分からないが、コウタローはよく分からないことを言う。リユニオンに関しては、マッドサイエンティストのハイブリッドことハイドも述べていたことを記憶している。元ネタは何かのゲームのようだから、同じくゲームをプレイ済みなのだろう。

 

「俺は俺の持ち場を守る。そういう宿命だろう。だから、安心しろ。サナ。お前の道は俺たちが作ってやる」

 

 ロックすぎてもはや何を言っているのか理解できなかった。

 

「じゃあな」

 

 そう言って去るその背中もロックそのものだ。コウタローは、ワイルドエリアに向けて旅立ち、私とマッシュはそのロックを尊重した。ただそれだけの、ロックな物語の終わりだった――……

 

「ま、よくわかんねえけど、ワンオクの解散の割には、コウタローが普通だったから安心したぜ」

 

 マッシュはそう言って笑ってみせた。

 そして、バウスタジアムから海の方へ歩き始める。目的地は灯台だろう。そこに皆集まっている。

 

「しかし……あいつがコードネームで呼ばねぇのは、めちゃくちゃ久しぶりだ。どういう風の吹き回しだ?」

 

 マッシュが少し疑問を抱く。

 

『久しぶり?』

「ああ。どれくらい前かな……少なくともダンデ、あ、こっちの世界の方のな。……そのダンデがチャンピオンだった時はまだ普通に名前で呼んでたような気がするんだよな」

 

 ダンデという名を出す時に、死んだ異世界のダンデのことを思い出したのだろう。少し顔つきが変わったのが分かった。

 歩きながら、しばし沈黙が続く。

 すぐに視界が開けたを海が広がる。静かな海だった。ここから見ると、どこにでも繋がっていて。どこにでも行けるような気持ちにさせてくれる。しかし、ルヒィの話のとおりだとすると、あの水平線の向こうに私たちは行けないのだ。

 

「お、あれじゃねえか」

 

 灯台の周囲には研究施設のようなものが簡易で建てられていた。キャンピングカーというべきか、トレーラーというのが正しいのか。未知の私にはよく分からなかったが、移動式の研究施設は現在はバウタウンの地に根差す形で、門戸を広げていた。

 その周囲には何人か見知った顔も見える。

 コサリとカイトだ。隣にはシャケも居る。二人が真剣に話している横で、何やらいっちょ前に難しい顔をしてみせている。しかし不思議なニャースだと改めて思う。

 私のようにテレパシーではなく、人語も操るし、二足歩行も長時間してみせる。単なるニャースの域を超えているとしか思えない。まるで人間のようだ。いや、人間以上に人間くさい一面も持っていて、憎めないのがシャケだ。

 

「よう」

 マッシュが手を上げると、こちらに気づくき、シャケが近寄って来る。

 

「すまないにゃ。マッシュに構ってる暇は無いのニャン。真剣な話をしてるニャン」

「なんだよ、真剣な話って」

 

 天才ニャースのシャケが言うには、今Zoomで繋がっているマグノリア博士も含めて、こちらには優秀な頭脳を持つ者が偶然にも無事に残っており、天空の城への対応策である、汎用人型決戦兵器人造人間ヱヴァンゲリヲンを開発中であるという。

 マグノリアは遠隔でサポートし、現地であるここバウの灯台地下に眠る機体のプログラム、いわゆるソフトウェア部分をダイオーキドが調整している。ストリンダーを模した紫色の機体、ハード面でのメンテナンスのうち、今までコサリが単身で行なっていた作業にソニアとホップが入っているという。

 メンバーが増え、Wエネルギーも確保できたお陰で、コサリの総指揮のもと、研究は飛躍的に進んでいた。

 

「ヱヴァンゲリヲンはオーパーツのひとつニャン。古い文献をヒントに分かったことがあるらしいのニャン」

 

 シャケの理解は早く、この一瞬で語り尽くせるレベルまで飲み込んでいた。

 ヱヴァンゲリヲンは、思春期の少年しか扱えないという。ヱヴァンゲリヲンに乗り操るには神経接続が必要で、シンクロ率が関わってくるとのことで、私にはよく分からなかったが、思春期の頃に一番発達している“A10神経“というものが必要なのだとか。

 

「まあ、理屈はわかんねえけどさ。何でカイトが適性あったんだよ?」

 

「カイトは何故か、ダイオーキド博士の適性テストに合格したそうだニャン。恐らくその性格上、永遠の思春期であるのがひとつの要因でないか、というのがダイオーキドの見解なのニャ」

 

 永遠の思春期。なかなかのパワーワードがまた出てきた。しかし、カイトのことを語りながらも、シャケはうずうずした様子だった。

 

「なんだよ?」

「聞きたいのかニャ?」

 マッシュに急かされると、目尻を下げまくり、鼻の下を伸ばした顔でシャケは聞く。

 

「ニャンと、昔の資料に、バウタウンのヱヴァンゲリヲンを操るのは、思春期のトレーナーとその1番の相棒のポケモンだったそうニャ! 不思議な生き物ポケモンのエネルギーがあって初めて、人類はヱヴァンゲリヲンを使いこなせるのニャ!!」

 

 バウタウンの灯台の地下に、ストリンダーと思われるポケモンの墓碑があったようなことをダイオーキドが言っていた。このバウタウンを救ったというわれる昔話のストリンダーはきっと、そこから来ているのだろう。

 灯台の隣には変わらず、ストリンダーの石像が雄々しく立っていた。今なお、この地を守り続けてくれているのだ。

 

「つまり、ニャーも……ヱヴァに乗るの

ニャ!! あんまり嬉しくにゃいけどニャ? ヤな感じ〜なのニャ!!」

 

 嬉しそうにシャケはカイトとコサリの居る方へ走っていき、二人と一匹はそのまま灯台の方へと歩いていった。

 二人と一匹。その背中のシルエットを見て、こめかみから頭にかけてズキリと痛くなる。男女ふたりと喋るニャース。その組み合わせは遠い記憶の中で見たことは無かったか。

 

「ま、良かったな。何とか踏ん切りがつきそうでよ。やっぱりやることが無きゃ、辛いことは乗り越えられねえよな」

 

 マッシュはそう言って、少し安心した様子だった。ホップにしても、シャケにしても。忙しい間だけは、悲しかった出来事から気を紛らわせられているようだったから。

 

「お、メイじゃねえか?」

 

 マッシュは灯台の先に居る人影に気づき、歩みを早める。一緒に向かうと、メイちゃんと緑のサーナイトが居た。

 

「あ、おねえちゃん」

 

 私を見ると、メイちゃんはぎゅっと抱き締めてくれる。その小さな身体を抱き返し、頭を優しく撫でてやる。

 

「へへ、つい、おねえちゃんっていっちゃった」

 メイちゃんは嬉しそうに顔をあげた。

「どうした? なんか嬉しそうだなおい」

「マッシュにいちゃん。わかる? いいことがあったんだよ」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながらメイちゃんは必死に声をあげる。それを緑のサーナイトは微笑ましそうに見ていた。そして視線をあげ、私と目が合う。

 なぜか、互いに礼をしてしまった。サーナイト同士で対面するのは、あまり経験が無かったように思う。このサーナイトは、ワイルドエリアで瀕死だった、“多幸の証”を持つ、証持ちサーナイトで、確か名前は私にちなんで、サナと名付けられたはず。

 

「いいことって何だよ?」

「おねえちゃんとしゃべった!」

「は? そら見りゃ分かんだろ」

 

 マッシュは私の顔を見てそう答える。

 

「このおねえちゃんじゃないの! イーブイのおねえちゃん!」

「ハルと連絡が取れたのか!? 無事だったんだな!?」

 

 マッシュは身を乗り出すようにして、メイちゃんの両肩を持つ。

 

「いたいいたいー!」

「す、すまん……」

 

 マッシュは平静を装い、根気強くメイちゃんの話に耳を傾ける。

 

「ニットねえちゃんのララァと、あたしのサナがおしゃべりしたんだよ。いまはまたしゃべれないんだけどね」

 

 メイちゃんの説明は幼さから来る拙さがあったが、根気強く聞いていると何点か分かったことがあった。

 ブイズの隠れ里は、世界が暗闇に包まれた当初、孤児院の子供たちが続々と避難してきて、時が静止した後もそのまま問題なく過ごせて居たのだという。メイちゃんは孤児院の地下のダイオーキドの研究部屋に忍び込んでいて、そのまま逃げ遅れていて、ダイオーキドと行動を共にし、今に至る。

 

「でも、そとから、こわいオバケがきたんだって。きっと、マックロクロスケかもしれない……」

 

 メイちゃんは怯えたように言うが、多分、私たちも何度か対面しているコレクレーと呼ばれる存在だ。ポケモンなのか何なのかも分からない。

 

「でー、ララァがおしえてくれたのはー」

 

 巨大イーブイのモロが彼らを守るためにダイウォールを使い、逃がしたという。モロが時間を稼ぐ間に、モロ一族ことブイズは、それぞれその背中に孤児院の子どもたちを乗せて、ひたすら北上し、人の気配のないラテラルタウンを抜けて、アラベスクタウンに到着したらしい。

 そこに着いた途端、ララァのテレパシーの感度が上がり、こうやって、緑のサナと音信が繋がったというわけだった。

 

「それくらいかなぁー」

 

 私はメイちゃんの頭の中を読み取りながら話を理解していたが、マッシュには何が何だかあまり伝わっていない様子だった。

 また、幼女の理解の範囲のことしか私にも伝わって来ないので、結局のところ、なぜ、時を止めることなくアラベスクタウンまで移動できたのかも分からないままであったし、モロが今どうなっているのかも分からなかった。

 何はともあれ、レオンやナギサ、ほかの大勢の子供たちは無事であると知れただけでも良かったと思う。

 

「もっと色々聞けなかったのか?」

「ううん、とちゅうから、それどころじゃなくなっちゃった」

 

 マッシュが問うと、メイちゃんは首を大きく横に振る。その度にお下げ髪がぶんぶんと揺れた。可愛い。

 もうひとりのサナも母性本能をくすぐられているらしく、頬に両手を当て悶えていた。どうやら、パートナーというよりは、良い保護者であるようだ。

 

「途中からそれどころじゃなくなった?」

 

 マッシュが聞くと、メイちゃんは上手く説明出来ないでいたので、代わりに緑のサナが応えてくれる。

 ただ、私ほどのテレパスの性能は無く、マッシュには断片的にしか伝わらなかったようだ。メイちゃんが説明するのと同等のレベルである。

 

「ハルが半裸でニットの火照った身体を舐めていた……? ニットがイーブイの着ぐるみを着ていて……それをハルが脱がして……ふたりで熱く抱き合って……?」

 

 緑のサナがテレパシーで発した内容はそのようにマッシュに伝わったらしい。

 実際には、ラテラルタウンを抜ける道中、木々に引っかかり服が破け、ニットが怪我を負ったらしい。イーブイに育てられたハルはそれをつい、イーブイのノリでペロペロしてしまったのだった。まるでイヌみたいである。

 その後、自身のイーブイの着ぐるみを着せたのだが、アラベスクタウンでは、ポプラから「若い娘がそんな格好をするな、服を着ろ」と叱られ、ニットのサイズの服を貰ったので、ニットにそれを着せようとして、まずは自分のイーブイの着ぐるみをニットから脱がそうとしたところ、ニットがそれをくすぐったくて悶え始めた……とまあ、そんなところだった。イーブイな展開であり、決してエーブイ(あだるど)な展開では無い。

 

「み、みだらな獣と化した二人は、オォンオォンと喘ぎ声をあげ……う、うおおおおおお!」

 

 しかし、勘違いが絶頂に達したマッシュは突然、大声をあげる。かなりベクトルを違えた想像がピークに達したのだろう。いつものエースバーンの衣装を脱ぎ捨て、マッシュは両目には涙を浮かべ、わなわなと震えていた。

 

「し、幸せになれよ……ハル!」

 

 そして、泣きながら叫び、上半身裸のままマッシュは走り去っていった。その光景を見て、脳裏に既視感が過ぎる。どこかでこんな光景を見たような気がする。

 

 走り去るマッシュの背中を見て、メイちゃんは「へんなのー」と首を傾げていた。

 そんな二人を見て、私と緑のサナはお互いに肩をすくめ、思わず、笑い合うのだった。

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