ポケどま!   作:よすぃ

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ロンギヌスの槍

 カイトとシャケの乗った古代兵器ヱヴァンゲリヲンを追って、私たちは小型機メーヴェでワイルドエリア上空を飛ぶ。

 眼下に見えるのは、ガラル鉄道の走る鉄橋だ。その周囲に赤い柱が立っており、薄ら砂塵の向こうにもそれは幾つも見える。レイドである。

 現在地はナックルシティの辺りのはずだが、砂塵のせいで鉄橋の先も見えない。見えたとしても、瓦礫の山が広がっているだけだろう。

 

「居た、カイトだ!」

 マッシュはナックルシティとワイルドエリアを繋ぐ門の付近に紫色の人型兵器を捉えた。

 そして、近づこうとし進路をそちらに向けた瞬間、大きな衝撃と音が響き渡る。

「なっ!?」

 声にならない声をあげ、マッシュが急に舵を切る。反動で機体が大きく揺れる。

 何かが私たちの乗るメーヴェの右翼を貫いたのだ。まるで矢のように天から落ちたそれはそのまま、ワイルドエリアに落ちたのだろう。砂塵の隙間から見える大地に小さなクレーターが見えた。

 続けざまに天から稲光が幾度となく落ちてくる。まるで放たれた光の矢のようなそれは何度も私たちは目掛け、凄まじい速さで残像を残す。

 それを避けようとするマッシュだが、次の一撃は今度は尾翼を貫き、ついにはメーヴェは飛行不可能となった。

 地面に向かい落下し始め、メーヴェを前方で引いているマッシュのアーマーガアが途方に暮れたように大きな鳴き声をあげた。

 

「くそっ、攻撃された! まだ狙ってきやがる! お前ら、これを持て!」

 

 慌てるマッシュだが、冷静にパラシュートのついた救命具を私とホップに放り投げる。

 私にはこの程度の高さは問題は無いのでパラシュートの類は不要である。だが、メイちゃんはそういうわけにはいかない。着せ方は袋に描かれたイラストを参考に直感で着せていく。ホップも手間取りながらも無事に装着できていた。

 説明なんて聞いている暇もなければ、マッシュにもそんな余裕はとてもではないがありはしない。

 

「飛び降りるぞ、このままあの光の矢が降ってこないことを祈るしか……」

 

 マッシュの掛け声で私たちはメーヴェを捨て、外へとジャンプする。マッシュはしっかりと、ロープでメーヴェに固定されたままのアーマーガアをボールに戻すことも忘れてはいない。主を失ったロープは宙へと解け、最後の動力を失ったメーヴェはいよいよ落下の速度をました。

 

「このまま、落ちるぞ!」

 

 再度アーマーガアを繰り出す余裕はやはりなく、マッシュは声を張り上げ、自身のパラシュートを開いてみせた。マッシュに続きホップも順調にパラシュートを開く。

 私もメイちゃんのパラシュートを操作しようと躍起になった。上手く開け、メイちゃんを抱えたまま共に空から大地へと降りていく。私の体重は超能力で宙に飛躍させているため、羽根のように軽い。そのままメイちゃんの負担にならないように慎重に地面を目指す。

 私とメイちゃん、マッシュとホップは緩やかにワイルドエリアの大地へと向かっていく。

 

「あれは……ヱヴァ!?」

 

 ホップの言葉は風にかき消され、音としては拾えなかったが、私はその意思をテレパシーで読み取った。

 カイトとシャケの操るヱヴァンゲリヲンは虚空から槍のようなものを生み出し、ワイルドエリアの西を目指し、地を蹴りひた走っていた。

 

「あれは、伝承にあった、ロンギヌスの槍? 全てを貫くという……」

 

 ホップはどうやらヱヴァンゲリヲンの紫の手に持たれた槍について言及しているようだった。槍はワイルドエリアの柱と同じ赤い輝きを放っている。エネルギーは恐らくはガラル粒子だ。

 

「そうなると、さっきの天から放たれた矢は……! 旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火。ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えられているという!?」

 

 ホップがまたも驚いたように口にする。何かと映画などで、解説があると便利なシーンで突然語り始めるキャラが居るが、その役割を見事こなしていた。

 ホップが口にしたそのフレーズは、以前、ガラルのマスターがガラル王に即位した際の演説でやたらと口に出していたので、私もよく覚えている。あのとき語っていたあれはただのデタラメなどではなく、確かな知識だったのだ。

 

「なっ……飛びやがった!?」

 

 マッシュが叫ぶ。

 ヱヴァンゲリヲンはそのことばどおり、跳躍し、天高く飛んでいく。そこに目掛けて天から幾度となく放たれるインドラの矢をロンギヌスの槍で次々と叩き落としていく。

 そして、空中に浮かびながら、ロンギヌスの槍を天高く一直線に放った。綺麗な直線に、槍は飛んでいく。天に何があるのか、地面を目前にした私たちが見ている余裕はない。

 

 そうこうするうちに、メーヴェから半ば投げ出される形になった私たちは、パラシュートのお陰で地面へと到達した。

 多少バランスは崩し転けたが、メイちゃんに怪我はなく、離れたところに見えるホップとマッシュもすぐに起き上がったのでどうやら無事であるらしかった。

 

「助かったぞ……」

 

 ホップはほっと胸を撫で下ろしていた。マッシュも近づいてくる。

 メーヴェは駄目になったが、それぞれ持参している懐中時計のお陰で、時を止めずに済んでいた。

 

「危ねぇところだったぜ……」

 

 マッシュがそう言うと同時だった。空の彼方で轟音が鳴り響き、そちらに視線を移すと、雲間から城が落下していくのが見えた。また、それに弾かれたように、小さな点が見える。それは次第に大きくなり、カイトの乗っていたヱヴァンゲリヲンだとすぐに気づく。

 ガラル粒子で造り上げたロンギヌスの槍で、ナックル城のシールドを破壊したのだ。カイトとシャケの手によって篭絡した天空の城ナックルは、瓦礫を辺りにばら撒きながら、地面へと落ちていき、巨大な衝撃音が辺りに響き渡った。大きな地鳴りが全身に伝わる。

 同時に、ヱヴァンゲリヲンが地面へと衝突する。比較的、私たちの近くに落ちたそれは、そのままピクリとも動かない。

 

「カイトの野郎……! 無茶しやがって!」

 

 マッシュは両手にボールを持つと、ザシアンとザマゼンタを繰り出した。ベーコンとナオミだ。

 メイちゃんも慌てて思い出したようにモンスターボールから緑のサーナイト、多幸のサナを繰り出し、私も千年の盾フォルムのザマゼンタを呼び出した。

 

「ここから先はできるだけ自分の身は自分で守るんだ。メイちゃんのことは、緑のサナ。あんたが責任を持って守ってくれ。ナオミにも好きに指示してくれて大丈夫だ。こいつは賢いからな、言うことは聞いてくれるぜ」

 

 マッシュはベーコンに跨る。

 多幸のサナもそれに倣い、メイちゃんを抱っこしてナオミに乗った。

 

「バッチリわかったぞ。いざとなったらオレがふたりを援護するから大丈夫だ!」

 

 ホップは自身のザシアンを繰り出し、良い顔を見せた。元チャンピオンのダンデと同じ目をしていた。心強い。

 

「いくぜ、ついてこい!」

 

 マッシュが走り出す。

 フォーメーションは、バウタウンと同じだった。ガラルの伝説が4体並び、それぞれの背に私たちは乗り、ワイルドエリアの大地を駆け抜ける。

 元ナックルシティの門前を通り過ぎ、砂塵で視界の悪い中を突き進む。ザシアンとザマゼンタは砂塵の中であっても平気な様子だった。共に鋼タイプを有する伝説ポケモンであるが故の長所のお陰かもしれない。

 瞬間は全く何も見えないくらいの砂嵐であったが、それを超えると、いつものワイルドエリアの草原が広がっており、その先に煙の上がっているのが見える。

 近づくにつれてヱヴァンゲリヲンの落下地点が分かってきた。ワイルドエリア西部、逆鱗の湖である。メイちゃんが以前、迷子になり、多幸のサナと出会うことになった場所だ。

 ナオミに乗るメイちゃんが微かに声をあげ、多幸のサナも同じように反応した。ふたりの出会った、思い出の場所だ。

 逆鱗の湖の前に来て、マッシュの乗るベーコンは足を止めた。私たちもそこで止まる。

 

「ここまでか……ザシアンもザマゼンタも揃いも揃ってこいつら、波乗り使えねえんだよな。犬掻きくらいしてみせろよ。犬だって泳げるんだぞ」

 

 マッシュが当たり前のように口にした動物の種族名に、微かに違和感を覚えた。忘れていたが、ここに至るまでに何度か動物の名を聞いた覚えがある。しかし今それを気にしている状況下では無かった。

 

「よし、ホップはメイちゃんと一緒にここで待っててくれ。ナオミも居るから野生ポケモン程度なら何とかなると思うが、黄金の巨人みたいな厄介なのが相手だと、逃げた方が良いかもしれねえ。青い方のサナは俺と一緒に来てくれ。いざとなったら、サナ同士、テレパシーで連絡とれるだろ?」

 

 湖まで来て私たちは途方に暮れたが、マッシュはアーマーガアを所持しており、すぐに機転を利かせて次の展開を説明してくれた。マッシュは説明しながらベーコンをボールに戻す。

 流石はかつて、アバランチという組織を率いていただけはあり、そのリーダーシップは確かなものだ。

 

『わかりました。マッシュ、行きましょう』

 

 私も自身の保有するザマゼンタをボールへ戻す。

 

「ああ。天空の城……今は落っこちたから、ただのナックル城か。方角的にはブイズの隠れ里あたりに落ちたんだろうが、そっちは二の次だ。まずはカイトとシャケを助けるぞ。よし、アーマーガア。頼んだぜ!」

 

 マッシュが声をかけると、色違いのアーマーガアは鳴き声をあげ、私たちをその足でしっかりと掴み、大地を蹴りあげ空へと舞い上がった。

 今はあのインドラの矢と呼ばれる攻撃の心配も無い、マッシュはそういう判断だったが、私の予感としてももう攻撃の手は無いだろうと感じていた。

 逆鱗の湖を越えると、すぐに島が見えてくる。そして、煙のあがっているあたりに差し掛かると、地面にめり込み、半壊したヱヴァンゲリヲンが見えた。胴体部分で真っ二つに割れており、上半身と下半身が別々の場所に落ちているようだ。

 アーマーガアをボールに仕舞い、マッシュは慎重な顔をしてこちらを見る。私もそれに合わせ頷いた。

 私たちがまず目に付いたのは下半身だったが、それはブイズの進化に必要な石の取れるエリアに落下していた。こちらはコクピットは無いため、簡単に観察し、私とマッシュは慎重に足を進めていった。

 そして、島の奥へ足を踏み入れると、今度は上半身が地面を抉るようにして横たわっていた。もう二度と機動することは無いだろう。断面からは何本も何かのケーブルのようなものが見え、火花を散らしている。焼け焦げた後の臭いにマッシュは顔をしかめた。

 

「カイト!!」

 

 叫びながら近づくと、人影が見える。しかし、それはカイトではなく、トレンチコートを着込んだひとりの男だった。

 私はその顔に見覚えがあった。以前、ガラル鉄道強奪事件の際に、私とマスターに取り調べをした国際警察の男、ゼニガタ・マサルである。怪盗ルパンという呼称でカイトが呼ばれていた頃から、彼を執念深く追い続ける男――まさか、私たちがカイトを探している今ここではち合わせになるとは思わなかった。

 その足元には仮面が破け、素顔を見せるカイトが血を流し、シャケを庇うようにして抱きかかえたまま地面に横たわっている。カイトもシャケも落下の衝撃と爆発で、全身擦り傷と火傷、外傷だけでも悲惨であるが、内臓や骨もどうなっているのか怪しい。かなり危険な状態だ。

 

「お前は……警官か?」

「いかにも、吾輩は国際警察! ゼニガタと申す!」

 

 マッシュが問いかけると、ゼニガタは、背筋を伸ばし凛とした声をあげる。

 今回ばかりは相手が悪い。ゼニガタは国際警察という世界をまたにかける組織に所属しながら、ガラルという狭い地域に固執している。全てはカイトという怪盗を逮捕するためだけに。

 当事者のカイトは満身創痍で、その足元に為す術も無く転がっている。

 

「俺はテロリストだ。かつて、ブラックナイト騒動に乗じて、マクロコスモス社の研究所を爆破し、何人もの研究者を殺した」

 

 ゼニガタに向かい、マッシュは歩みを進める。

 

「お前が捕まえるべきなのは、コソドロのそいつなんかじゃなく、大量殺戮という大罪を犯したこの俺だ……」

 

 真正面からゼニガタを見つめるが、ゼニガタは無反応だった。

 

「……だから頼む。カイトを、見逃してやってくれ……こいつは、世界を救ったんだ。今はまだ、この世界はこんなんだけど、必ず良くなる。世界は救われるんだ。少なくとも、ナックル城を落とさなきゃ、この世界が救われることは絶対に無かったはずなんだ……こいつ、傷だらけでこのままじゃ死んじまう。だから、頼む。このとおりだ! 見逃してくれ!!」

 

 マッシュはそのまま、地に膝をつけると、頭を地面に擦り付けた。

 いわゆる“土下座”である。東の国ジャパンに伝わる、服従、反省の意を表明する最上級の所作。

 ゼニガタは恐らく、その名前と風貌からして、東の国ジャパンの生まれだと推測できた。だからこそ、マッシュはこの場で土下座という選択をしたのだ。

 

「世界が形を変えてしまった後、世界がこうなった原因はこの地にあるのでは無いかと思った吾輩は単独でワイルドエリアを捜査していてな。まあ半ば迷っていたわけで……そんな時に遠くで爆音がしてな。妙なものがこの島に落ちていくのが見えたので来てみた次第だが……」

 

 しばしの無言の後、ゼニガタは話し始めた。マッシュはその様子を怪訝そうに伺う。

 

「あいにく、そのときの轟音のせいで耳がよく聞こえんのだ。お前さんが何を言っているのか、さっぱりだ。なんか怪盗の名前を言っていたような気はするが……それに、怪盗カイトは神出鬼没な奴でな。常に仮面で顔を隠していて姿がわからんのだ」

 

 そして、ゼニガタは足元に倒れた傷だらけの、素顔のカイトを見つめる。

 

「この男はよく知らん。傷だらけで倒れていたので、とりあえずあのロボットみたいなものからこっちに引きずり出してきたが……治療の必要があるようだな」

 

 ゼニガタはポケットから何やら布切れなどを取り出し、慣れた手つきで傷を覆っていく。合わせて、私も癒しの波動をかける。

 カイトだけではなくシャケもひとまずは窮地を脱することができたようだ。

 

「応急処置レベルでしかないが、まあマシだろう。ひとまず、この島を離れよう。ロボットが焦臭いからな。爆発してはかなわん」

 

 ゼニガタの提案で私たちは湖をわたり、ホップとメイちゃんの居る場所に向かうことにした。

 怪我人と怪我猫を運ぶのは一苦労だった。行き道はアーマーガアで一飛びであったが、人数が多いとそういうわけにはいかない。客車を備え付けていない状態で、通常、空を飛ぶポケモンは一体で複数人を運べるほどの馬力はない。かろうじて飛べたとして落下の可能性が常に付きまとうため、やるべきでは無いのだ。

 私はザマゼンタを繰り出し、マッシュはザシアンを繰り出す。

 

『私がカイトをザマゼンタの上で支えます。そちらのザシアンの背にはゼニガタさんとシャケを。マッシュはアーマーガアで移動をお願いします』

 

「ああ。わかったぜ。オッサン、頼んだ」

 

「吾輩はこう見えて乗馬クラブに居たことがあるので、馬の類は得意でな」

 

「……どっちかっつーと、犬だろ」

 

 馬や犬というワードを用いながらつまらない会話を広げながらも準備を進め、ゼニガタはシャケを抱えながらザシアンを操り水上を、私は気を失ったカイトを抱えたままザマゼンタと水面を進む。

 空からマッシュの監視のもと何とか落ちないように慎重に湖をわたった。

 

 ※

 

「どうしたんだ!? すごい傷だぞ!?」

 

 私たちを迎えたホップが叫び、メイちゃんは泣き出した。それを多幸のサナが抱きしめる。

 

「うむ。吾輩も応急処置しかできなくてな……」

 

「オジサン誰だ?」

「ただの通りがかりの国際警察だ。ゼニガタという」

 

 ホップが聞くと、ゼニガタは簡単に自己紹介すると、難しい表情で言葉を続けた。

 

「どこか医者か誰か治療の心得ある者のいる町があれば良いが……」

 

 現状、私にある心当たりは、アラベスクタウンしか無かった。ポプラの居るあの町はまだ無事だ。

 

「アラベスクタウン! あそこならまだ生き残りが居る。黄金の巨人の“地鳴らし”の影響も受けていないはずだ!」

 

 マッシュも同じ考えだった。

 

「吾輩の考えではそこを目指すのが最善だな。女子供は吾輩と後から行こう。人数を減らし、可能な限り最速で向かうべきだろう。今ならまだ間に合う」

 

 マッシュはすぐにザシアンのベーコンを繰り出し、その背中にカイトを乗せる。しかしどうも不安定だったが、運動神経の良いマッシュがザシアンに乗る際に意識を集中させれば、何とかなりそうな気もする。

 問題はシャケであるが、私同様に自由に外を出歩いているニャースだ。ボールに仕舞おうにもそのボールが見当たらない。しかし、手当を急ぐ必要があった。

 

「アーマーガアで空を移動するのは危険すぎるな……しかしこの人数だ。ちっちゃなメイもいるしな、途中ではぐれても危険だ」

 

 マッシュは悩んだ様子だった。

 

『それなら、最初から2グループに分かれましょう。それなら、はぐれる危険性もありません。ホップ。貴方のザシアンの背中にシャケを』

 

「ん、俺が?」

 

『同種のザシアン同士なら阿吽の呼吸で走れるはず。それに貴方くらいポケモンと心を通わせているトレーナーなら、マッシュと同じで、シャケを落とさず速度を落とすことなく走れると思う』

 

 私はメイちゃんとゼニガタを交互に見たりこの人数で移動すると、どうしても速度が落ちる。運動神経の良いマッシュとホップのふたりならいち早くアラベスクタウンに辿り着けると踏んだのだ。

 

『私はこの国際警察の人と、メイちゃんと、後からいきます。私たちは私たちのペースで向かうので転倒や落下の危険もなくかえって安全です。ナオミだけ、預けてください』

 

 私がそう言うと、ゼニガタも任せろと頷く。

 こちらにはザマゼンタが2体。持ち数からして陸を移動する手段は問題無い。また、ルートとしては以前、ナックルシティに向かったルートを反対に辿ればアラベスクタウンに着く。道もよく知っている。

 

「それしかなさそうだな。いちばん早く二人を送り届けられる。複数人だから乗れるかわかんねえけど、一応、お守り代わりにアーマーガアを預けておくぜ」

 

 ゼニガタはマッシュからアーマーガアの入ったボールを受け取った。

 

『どうか二人とも無事で……』

 

「大丈夫だぞ。そっちこそ道中、気をつけてくれよ。それじゃあアラベスクで待ってるぞ!」

 

 ホップが笑顔で応じる。

 落下したナックル城が気になるところではあったが、カイトたちの治療も含めて、一度体制を立て直す必要があった。

 いずれにしても、天空の城ナックルは落下し、次のステップに進むことができる。ポプラの知恵を借りれば、あるいは良案が浮かぶかもしれない。

 

 マッシュとホップの乗るザシアンたちが遠ざかっていく。その後ろ姿が小さくなり、ゼニガタは、「吾輩たちも行こう」と声をかけた。

 

「よっと。さあ、乗りなさい」

 

 ナオミの方のザマゼンタにゼニガタは乗ると、メイちゃんを抱きかかえた。ゼニガタの背中を守るよに多幸のサナも乗り込む。私は単身である。

 

「道中よろしくな」

 

 ゼニガタはそう言うと不器用に笑って見せた。存外、怖い人では無さそうだ。

 

 目指すはアラベスクタウン。ワイルドエリアを抜けた先にある。何も無く行けることを願いながら、私はザマゼンタに出発の掛け声をかけた。

 

――――――――――

【補足】ロンギヌスの槍とは?

 新約聖書に登場する聖遺物の一つ。ローマ兵がキリストが絶命したか確かめるときにわき腹に刺した槍である。様々な創作物に登場する。

 有名な登場作品に『新世紀エヴァンゲリオン』がある。その作中においては、アンチATフィールドを発生、増幅することで対象の展開しているATフィードを無効化し、刺し貫いて破壊している。また、自動追尾機能も備えているという説もあり、対象が多少遠方にあっても問題はない。

 カイトとシャケの操縦するキョダイマックス姿のストリンダーは、その紫の外観、設定上、エヴァを丸パクリしているとしか考えられず、ロンギヌスの槍も同様である。また、作中において、空を飛ぶナックル城を守る障壁もまたATフィールドと同様の原理であるため、ロンギヌスの槍で貫かれた結果、再び地に落ちることになった。

 ちなみに本編で「全てを貫く」とホップが述べていたが、そちらはグングニルのことであり、既に作中での設定も破綻しており、適当に登場させたくなって出したとの見方が強い。

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