お姉ちゃんは強いと言うこと。
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六月も終わり、本格的に夏が始まったことで、刀剣類管理局本部の節電キャンペーンも幕を閉じだ。
そのお陰で、わたしたちは今、冷房の行き届いた部屋で過ごしている。
尤も、両隣に居るおねーさんたちは快適に過ごしているとは言い難いが。
「……結芽ちゃーん? 手番回ってるよ?」
「あ、うん。えーっと…ここ!」
「むむぅ。そこに置くかぁ……中々やるねぇ」
わたしの対面に座るお姉ちゃんは、顎に手を当てて考えるような素振りを見せながらも、表情は柔らかい。
初見の人には分かり辛いが、態々、大きいソファを引っ張り出して、六人でボードゲームをやっているのが今の状況だ。
偶に、お姉ちゃんが頭の体操だと言って手伝わされるが、わたしも正直良く分からない。
良く分からないが、言われるがままオセロをしていた。
左を見ると、寿々花おねーさんがチェス盤と、ミルヤおねーさんが将棋盤と睨めっこしている。
そして、振り向くように右を見ると、舞衣おねーさんと早苗おねーさんが、これまた将棋盤と睨めっこをしていた。
今現在、わたし&おねーさんたちVSお姉ちゃんと言う、五対一の構図で戦っているが、余裕の雰囲気がお姉ちゃんから無くなることはない。
天才、その一括りで纏めようが無い程の圧倒的な強さが、両隣の真剣さから伺える。
筆頭指揮官……だったっけ?
その名前は伊達じゃない。
刀使としてへっぽこなお姉ちゃんが、ここに居られる唯一の理由でもある。
きっと、余裕の雰囲気を保っている間にも、頭の中では果てしない数の処理を同時並行で行っている事だろう。
面と向かって言う事はあまりないが、凛として何かを考えている時のお姉ちゃんはカッコ良くて好きだ。
いつもの女神みたいな温かい微笑みじゃなくて、真摯に何かに取り組んでいる姿は凄く綺麗だから。
…今度、つぐみおねーさんに頼んで、無音且つフラッシュなしで撮れるカメラ、見繕ってもらおうかな。
そうやって、わたしが悩んでいる間にゲームは進んでいき。
やがて、終わりを迎えた。
◇
はぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!
わたしの妹、可愛過ぎか?
いや、可愛いな、可愛過ぎてヤバイな。
そんな自問自答をしながら、わたしは次の手を考える。
結芽ちゃんとのオセロは二枚差で勝つのが先程決まったが、他の四人には油断出来ない。
とは言っても、相手が詰んで負けることに変わりはないのだが……それはそれだ。
油断していい理由にはならない。
相手の実力と火事場の振れ幅を予測し、それでも絶対に逆転を許さない一手を打ち続ける。
詰みまでは、早苗ちゃんがあと七手、舞衣ちゃんはあと六手、寿々花ちゃんはあと九手、ミルちゃんはあと十一手…って所かな。
ここまで来ると、みんな自分の詰みには気付き始めるから、そろそろ……
「す、すいません、負けました」
「……私も、負けました」
「舞衣ちゃんと早苗ちゃんは降参ね。……二人は?」
「貴女がそう言う時は、大抵どうやっても勝てない時ですからね、私も降参します」
「私も、降参ですわ。時間を無駄にしたくはないので。ありがとうございます。勉強になる、良い試合でした」
先に舞衣ちゃんが声を上げ、続いて早苗ちゃん。
案外負けず嫌いなミルちゃんに寿々花ちゃんも降参した。
……少し拗ねちゃったかな?
悔しかったのか、落ち着かない様子の寿々花ちゃんは、さっさとチェス盤と駒を片付けて、出ていってしまった。
ミルちゃんは少しため息を吐きながらもまだ残っている所を見ると、わたしのちょっとした批評を聞きたいんだろう。
まだ、結芽ちゃんとのオセロは残っているが……少し待ってもらおう。
「ごめんね、結芽ちゃん。少し待っててもらってもいい? ちょっとお話したいんだ」
「…分かった。終わったら呼んで、ベットでゴロゴロしてるから〜」
何となく察してくれたのか、結芽ちゃんは腰を上げて足早にベットに向かった。
…さて、そろそろお話に移ろう。
「じゃあ、先ずは舞衣ちゃんからだね。正直な話、今回は結構良い所まで行ってたよ。降参する四手前かな? あそこでもう少しだけ違う一手が打ててれば、王様は長生きできたかもね」
「……あぁ! 分かりました。ありがとうございます!」
「次に早苗ちゃんね? 早苗ちゃんは今回、少し読みが浅かったかなぁ。何かを気落ちする事でもあった? ……もしあったなら、しっかり解決して。分かり辛いかもしれないけど、気分って思ってるより影響が大きいから。いつもなら出来ることも出来なくなっちゃう。だから、わたしが掛けた罠に、簡単に引っかかっちゃったの」
「……すいません、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
残るはミルちゃんかぁ。
少しだけ表情を崩しながら、彼女を見る。
面倒臭かった、非常に面倒臭かった。
久しぶりの四面打ちだったけど、まさかここまで引き伸ばされるとは思わなかったよ。
攻め方が非常に陰湿で論理的。
わたしを良く分かってるからこそ、あんな厭らしい手を打てる。
やっぱり、実際に現場に出て指揮を執る経験の多い彼女は、一味違う。
舞衣ちゃんも早苗ちゃんも、指揮は執っているが経験の差がある。
たかが数年、されど数年。
数年の重みが一手一手から伝わってきた。
一言言う事があるなら……
「攻め方が厭らしい、変えて」
「…分かりました。燕摘花はあのやり口が苦手なのですね、今後の参考にします」
「二度とやらないで!!」
不敵な笑みでこちらを見つめるミルちゃん。
相変わらず、変な所で性格が悪い。
綾小路に居た頃からの仲だが、何故今まで友人としてやって来れたのか謎だ。
悪い子じゃないし、綺麗で可愛い子なんだけどなぁ。
あ、勿論、結芽ちゃんの方が可愛いよ?
浮気じゃないからね?
勘違いしないでね?
誰に対するか分からない言い訳を心の中でした後、みんなを部屋から解放する。
態々付き合って貰って悪いが、ここからはわたしたち姉妹の時間。
何人も邪魔することは許さない。
「結芽ちゃーん──って、寝てる」
「……むにゃむにゃ……お姉ちゃん」
「そんな時間、経ってない筈なんだけどなぁ」
そう言えば、さっきのオセロ、置く場所があと一つ横にズレてたら、わたしの負けだったかもしれないんだよね……
まさか、とは思うけど。
……頑張って考えてたのかな。
ふふっ、流石はわたしの妹。
百点満点のご褒美を上げたいくらいだ。
「ふぁ〜。…でも、少し眠い」
余裕はあったけど頭使ったし、結構疲れてるのかも。
少しだけ……少しだけだから。
起きたら…ちゃんと……料理──
◇
……柔らかい。
モチモチして、フワフワで、弾力がある。
こんな感触の枕、持ってたっけ?
寝起き故のぼやけた視界で触っている枕を見ると……
「!?!? お、お姉ちゃ──むぐっ!」
「えへへ〜、結芽ちゃんが……いっぱーい」
正直夢の中で増えている自分も気になるが、今はそれ所じゃない。
いっぱいのわたしと戯れてるお姉ちゃんのおっぱいに、私が殺される。
……シャレじゃない、本気だ。
甘くていい匂いがするが、呑気に嗅いでいる場合ではない。
じたばたしてお姉ちゃんを起こさない程度に体を動かし、ようやく少し離れることができた。
本気で危なかった、窒息の理由で誰かを笑い殺せるレベルで危なかったよ。
今日、初めて知ったが、胸は凶器だ。
誰もを魅了する存在でありながら凶器でもあるとは……恐ろしい。
だけど、それ以上に恐ろしいのはわたしかもしれない。
少しだけ、お姉ちゃんの胸の中で、溺れてみたいと思ってしまった。
「よし。……二度寝しよ」
幸い、まだ午後五時前。
二度寝しても、七時過ぎ頃には起きられるだろう。
最後に一言残すなら──お姉ちゃん枕は最高に気持ち良かった、と言う事だ。
シスターズプロフィール③「一番の親友」
摘花「うーん、付き合いの長さだけなら、ミルちゃんや寿々花ちゃんですけど……仲の良さなら薫ですかね。本音で、本気でぶつかり合ったのは彼女が初めてだった気がします」
結芽「沙耶香ちゃん…かな。同年代だし、良い遊び相手になってくれるから大好きだよ!おねーさんたちは友達って言うより……仲間みたいな感覚が強いしね。そうだ、沙耶香ちゃんとのツーショットあるんだよ?見る見る?」
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次回もお楽しみに!
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摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも
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過去話やろ!
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日常一択!