燕シスターズ   作:しぃ君

16 / 19
 日常百合は大好きだけど、愛情表現多めの百合大好き民だから、今回は百合要素強めです。


わたしたちの想い

 夢を見た。

 何度も見た、夢を見た。

 不安になる夢。

 お姉ちゃんが幸せそうな笑顔で、わたしの前から去っていく。

 綺麗な純白の衣装を着て、右手の薬指に指輪をはめて、バラのブーケを持って、歩いて行く。

 

 

 その先には、一人の人がいて、男の人か女の人かも分からないけど、自分じゃないことはわかる。

 だから、必死に叫んだ。

 行かないで、って。

 一人にしないで、って。

 でも、全然届かなくて、お姉ちゃんは振り返らず、わたしに手だけを振って行ってしまった。

 

 

 あぁ……きっと、これは──いつか来る未来なんだろうな。

 

 ◇

 

「お姉ちゃん……!」

 

「結芽ちゃん!? すっごく魘されてたけど……大丈夫??」

 

「ぅぁ……な、なんでもないよ! 全然、大丈夫!」

 

 

 心配させないように、いつも通りの笑顔を張り付けてそう言うと、お姉ちゃんは安心したように微笑んで、わたしのベッドから離れていく。

 一瞬、その光景が、さっきまで見えていた夢にダブって、手を伸ばしそうになった。

 胸が苦しくて、抱き締めて欲しくて、お姉ちゃんの温もりがないのが怖くて、弱い自分がまた少しだけ嫌になる。

 

 

 あれは、未来だから。

 変えようのない、未来だから。

 いつか、お姉ちゃんの一番はわたしじゃなくなる。

 自然と他にできた大切な人に、移っていく。

 その内、わたしは二番にも居られなくなって、お姉ちゃんの中から少しずつ消えていくんだ。

 

 

 もし、胸に点るこの想いを伝えたら、ずっと一緒に居てくれるのかな? 

 姉に向けるべきじゃない、こんな想い(恋心)を伝えたら。

 好きだ、大好きだ。

 この世界で誰よりも、お姉ちゃんのことが好きだ。

 

 

 後悔するくらいなら、引き摺るくらいなら、いっそ切って捨ててくれた方が苦しくない。

 女の人の恋愛は上書き保存らしいから、きっと新しい恋をすれば、お姉ちゃんのことを忘れられる──そんなわけない!! 

 無理だ、絶対に無理だ。

 どんなに頑張っても、どんなに苦しんでも、わたしはこの恋を忘れられない。

 

 

 切って捨てられても、どうせ後悔する、どうせ引き摺る。

 最悪だ。

 こんな恋しなければ良かった(お姉ちゃんに恋をして良かった)

 勝ち目のない、恋なんて……

 

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

 

「どうしたの、結芽ちゃん? やっぱり、なにか──」

 

「わたしが、好きって言ったら、どうする?」

 

「ん? 嬉しいよ? だって、わたしも──」

 

「違う」

 

「……え?」

 

 

 驚くお姉ちゃんは固まったまま、動こうとしない。

 何が違うのか、必死に考えているんだろう。

 本当に、優しいお姉ちゃんだ。

 そんなお姉ちゃんだから、わたしは──好きになったんだ。

 

 

 気持ちを整える意味も兼ねて、ゆっくりベッドから出る。

 一歩、また一歩、お姉ちゃんの方に歩み寄り、正面に立つ。

 身長差がもどかしい、けど構わない。

 

 

「ごめんね、お姉ちゃん」

 

 

 爪先立ちで背伸びをし、足りない分を埋めるように首裏に手を引っ掛けて、お姉ちゃんの顔を、唇を引き寄せる。

 隙だらけなお姉ちゃん。

 いつもは綺麗だけど、わたしの前でだけは、幼くなる時がある。

 今がそうだ。

 

 

 キュッと目を瞑って、わたしの唇を避けようとしない。

 可愛いなぁ、わたしのお姉ちゃん。

 初めてがわたしで、本当にごめんね。

 

 

「ん……ちゅっ……」

 

 

 甘い。

 蕩けるような甘さだ。

 ただ唇を重ねただけなのに、重ねた時に伝わる温度が温かくて、気持ちいい。

 知らなかった。

 知っちゃダメだった。

 

 

 あぁ、もう、止まれないよ。

 もっとしたい。

 わたしの想いを、もっと……!! 

 

 ◇

 

 結芽ちゃんのたどたどしい、ついばむような口付けは、甘い蜜だ。

 とろとろと、わたしの中に流れ込んでくる。

 好きが、大好きが、心に染み渡る。

 愛おしい妹から向けられる、剥き出しの恋心は、砂糖菓子のように甘くて、硝子のように繊細だ。

 

 

 拒絶したら、壊れてしまう。

 壊してしまう。

 壊したくない、離したくない。

 この想いは、家族だから生まれるの? 

 それとも──相手が結芽ちゃんだから、生まれるの? 

 

 

 わからない、わからない、わからない。

 けど、受け止めて上げたい。

 逃げたくない。

 長い、長い口付けの中で、わたしはそう思った。

 

 

「お姉ちゃん、わたしの、わたしの好きはね。こういう好き、なんだ。気持ち悪いかな? 気持ち悪いよね? わたしたち姉妹なのに、こんなこと……」

 

「……結芽ちゃん、わたしの目を見て、ちゃんと聞いてね?」

 

「う、うん」

 

「最初に言っておくけど、わたしは結芽ちゃんのこの想いを、気持ち悪いなんて思わない。勇気を振り絞って伝えてくれた恋心を、気持ち悪いなんて絶対に思わない。確かに驚いてるけど、わたしは結芽ちゃんの想いと、しっかり向き合いたいって考えてる。だって、結芽ちゃんはこの世界でたった一人の妹なんだから」

 

 

 今は、この言葉で繋ぎ止めよう。

 わたしが変われるように、結芽ちゃんに寄り添えるように。

 

 

「……ありがとう、お姉ちゃん」

 

 

 絆の糸を、絶たない為に。

 小さな嘘を一つ、ついた。

 わたしは結芽ちゃんの為に寄り添いたいんじゃない、自分が離したくないから、繋ぎ止めたんだ。

 

 

 最低だな、わたし。

 ごめんね、結芽ちゃん。

 でも、絶対に離したりしないから。

 手を離したり、しないから。




 シスターズプロフィール⑪「一年の目標」
 摘花「そうですね。今年も、死傷者0を目指して、頑張っていきたいと思っています。あとは……結芽ちゃん貯金始めようかと思ってますね」

 結芽「もっともっと強くなる、かな。誰にも負けないくらい、強くなってお姉ちゃん、いっぱいいっぱい頼ってもらうんだ!!」

 ──────────────────────

 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想や評価にここ好き、お気に入り登録もお待ちしております!

摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも

  • 過去話やろ!
  • 日常一択!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。