夢を見た。
何度も見た、夢を見た。
不安になる夢。
お姉ちゃんが幸せそうな笑顔で、わたしの前から去っていく。
綺麗な純白の衣装を着て、右手の薬指に指輪をはめて、バラのブーケを持って、歩いて行く。
その先には、一人の人がいて、男の人か女の人かも分からないけど、自分じゃないことはわかる。
だから、必死に叫んだ。
行かないで、って。
一人にしないで、って。
でも、全然届かなくて、お姉ちゃんは振り返らず、わたしに手だけを振って行ってしまった。
あぁ……きっと、これは──いつか来る未来なんだろうな。
◇
「お姉ちゃん……!」
「結芽ちゃん!? すっごく魘されてたけど……大丈夫??」
「ぅぁ……な、なんでもないよ! 全然、大丈夫!」
心配させないように、いつも通りの笑顔を張り付けてそう言うと、お姉ちゃんは安心したように微笑んで、わたしのベッドから離れていく。
一瞬、その光景が、さっきまで見えていた夢にダブって、手を伸ばしそうになった。
胸が苦しくて、抱き締めて欲しくて、お姉ちゃんの温もりがないのが怖くて、弱い自分がまた少しだけ嫌になる。
あれは、未来だから。
変えようのない、未来だから。
いつか、お姉ちゃんの一番はわたしじゃなくなる。
自然と他にできた大切な人に、移っていく。
その内、わたしは二番にも居られなくなって、お姉ちゃんの中から少しずつ消えていくんだ。
もし、胸に点るこの想いを伝えたら、ずっと一緒に居てくれるのかな?
姉に向けるべきじゃない、こんな
好きだ、大好きだ。
この世界で誰よりも、お姉ちゃんのことが好きだ。
後悔するくらいなら、引き摺るくらいなら、いっそ切って捨ててくれた方が苦しくない。
女の人の恋愛は上書き保存らしいから、きっと新しい恋をすれば、お姉ちゃんのことを忘れられる──そんなわけない!!
無理だ、絶対に無理だ。
どんなに頑張っても、どんなに苦しんでも、わたしはこの恋を忘れられない。
切って捨てられても、どうせ後悔する、どうせ引き摺る。
最悪だ。
勝ち目のない、恋なんて……
「ねぇ、お姉ちゃん」
「どうしたの、結芽ちゃん? やっぱり、なにか──」
「わたしが、好きって言ったら、どうする?」
「ん? 嬉しいよ? だって、わたしも──」
「違う」
「……え?」
驚くお姉ちゃんは固まったまま、動こうとしない。
何が違うのか、必死に考えているんだろう。
本当に、優しいお姉ちゃんだ。
そんなお姉ちゃんだから、わたしは──好きになったんだ。
気持ちを整える意味も兼ねて、ゆっくりベッドから出る。
一歩、また一歩、お姉ちゃんの方に歩み寄り、正面に立つ。
身長差がもどかしい、けど構わない。
「ごめんね、お姉ちゃん」
爪先立ちで背伸びをし、足りない分を埋めるように首裏に手を引っ掛けて、お姉ちゃんの顔を、唇を引き寄せる。
隙だらけなお姉ちゃん。
いつもは綺麗だけど、わたしの前でだけは、幼くなる時がある。
今がそうだ。
キュッと目を瞑って、わたしの唇を避けようとしない。
可愛いなぁ、わたしのお姉ちゃん。
初めてがわたしで、本当にごめんね。
「ん……ちゅっ……」
甘い。
蕩けるような甘さだ。
ただ唇を重ねただけなのに、重ねた時に伝わる温度が温かくて、気持ちいい。
知らなかった。
知っちゃダメだった。
あぁ、もう、止まれないよ。
もっとしたい。
わたしの想いを、もっと……!!
◇
結芽ちゃんのたどたどしい、ついばむような口付けは、甘い蜜だ。
とろとろと、わたしの中に流れ込んでくる。
好きが、大好きが、心に染み渡る。
愛おしい妹から向けられる、剥き出しの恋心は、砂糖菓子のように甘くて、硝子のように繊細だ。
拒絶したら、壊れてしまう。
壊してしまう。
壊したくない、離したくない。
この想いは、家族だから生まれるの?
それとも──相手が結芽ちゃんだから、生まれるの?
わからない、わからない、わからない。
けど、受け止めて上げたい。
逃げたくない。
長い、長い口付けの中で、わたしはそう思った。
「お姉ちゃん、わたしの、わたしの好きはね。こういう好き、なんだ。気持ち悪いかな? 気持ち悪いよね? わたしたち姉妹なのに、こんなこと……」
「……結芽ちゃん、わたしの目を見て、ちゃんと聞いてね?」
「う、うん」
「最初に言っておくけど、わたしは結芽ちゃんのこの想いを、気持ち悪いなんて思わない。勇気を振り絞って伝えてくれた恋心を、気持ち悪いなんて絶対に思わない。確かに驚いてるけど、わたしは結芽ちゃんの想いと、しっかり向き合いたいって考えてる。だって、結芽ちゃんはこの世界でたった一人の妹なんだから」
今は、この言葉で繋ぎ止めよう。
わたしが変われるように、結芽ちゃんに寄り添えるように。
「……ありがとう、お姉ちゃん」
絆の糸を、絶たない為に。
小さな嘘を一つ、ついた。
わたしは結芽ちゃんの為に寄り添いたいんじゃない、自分が離したくないから、繋ぎ止めたんだ。
最低だな、わたし。
ごめんね、結芽ちゃん。
でも、絶対に離したりしないから。
手を離したり、しないから。
シスターズプロフィール⑪「一年の目標」
摘花「そうですね。今年も、死傷者0を目指して、頑張っていきたいと思っています。あとは……結芽ちゃん貯金始めようかと思ってますね」
結芽「もっともっと強くなる、かな。誰にも負けないくらい、強くなってお姉ちゃん、いっぱいいっぱい頼ってもらうんだ!!」
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次回もお楽しみに!
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摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも
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過去話やろ!
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日常一択!