基本摘花視点ですが、後半パートは他の誰かの視点で進みます。
そこら辺は御容赦ください。
日曜日に投稿が出来なくてすいませんでした。
あの日のわたし
「はぁ……はぁ……。もう、一本。お願い…しますっ!」
「……いや、今日はもう終わりだ。時間も時間だしな。お前だって──」
「大丈夫です!! だから、お願いしますっ!」
時間的に夜七時を回った頃。
綾小路武芸学舎の剣道場にて、わたしと相楽学長は木刀を持って向かい合っていた。
稽古を始めてから三時間半が経ち、集中は切れかけ、呼吸だって落ち着かないが、わたしは稽古を止めようとは思わない。
何故なら、わたしは弱いから、凡才ですらないから、誰よりも努力するべき人間だからだ。
けど、剣の師である相楽学長は、わたしの姿勢をあまり好んでいないらしい。
今も、わたしの願いを聞いて、嫌を通り越し、呆れた顔をしている事から、それが分かる。
「…何度言ったら理解するんだ? 無理な努力は、良い結果には繋がらない。自分の限界をしっかりと分かれ。私も仕事がある、今日はここまでだ。いいな?」
「……はい。ありがとうございました」
「はぁ…。頼むから、最初からそれぐらい物分り良くなってくれ」
そう言い残すと、相楽学長は剣道場から去って行く。
足早と去って行く所を見ると、仕事が溜まっていたのかもしれない……悪い事しちゃったな。
……それにしても、無理な努力に、自分の限界…か。
言われた言葉を頭の中で反芻させながら、剣道場の片付けをし、練習用に着ていたジャージから制服に着替える。
ふと、窓から空を見上げると、綺麗な満月が顔を出していた。
「強くなれる方法が、あなたみたいに、見える所に転がっててくれればいいのにね」
物言わぬ月に冗談を言って、わたしは剣道場を出た。
◇
週末は実家、平日は寮で暮らすわたしには、優しくてちょっと変な良き同級生兼同居人が居る。
名前はミルヤ、
絹のように綺麗な銀髪は腰まであり、引き込まれるような琥珀色の瞳を知的な眼鏡で隠している。
ハーフと言うこともあり、日本人離れしたお人形さんみたいな容姿をしているので、初見の人は興味本位で声を掛けるが、返しが真面目過ぎる為、根気よく行かないと友達にはなれない。
色々と勿体ないが、真面目で優しくて、可愛い子だ。
無論、わたしの中での一番は結芽ちゃんから動かないけどね!!
……あぁ、でも一つ欠点──と言うか変な所を上げるなら、刀剣オタクの度合いが常人の認識を遥かに凌駕してるところかな。
一回、わたしの御刀である『山鳥毛一文字』について聞いたら、軽く二時間はぶっ通しで喋ってたよ。
途中までは頑張ったんだけど眠りそうになっちゃって……その度に可愛らしく「面白いのはここからなんです!」、って言われて起こされるから、眠るに眠れなくて滅茶苦茶辛かった。
そしてもう一人、わたしとミルちゃんの寮部屋に入り浸るお嬢様が居る。
名前は寿々花、此花寿々花、わたしは寿々花ちゃんと呼んでいる。
柔らかくてさらさらな赤毛をポニーテールに纏め、星屑が散りばめられたような薄蒼色の瞳をしている。
同級生とは思えない程に上品で、淑女の雰囲気があり、顔付きも幼さがあるのに可愛いより綺麗と言いたくなる子だ。
本人も可愛いと言われるより綺麗と言われた方が嬉しいと言っていた。
偶に可愛いと言うと耳を赤くして反応してくれる……素直に可愛い。
でもやっぱり、結芽ちゃんが一番可愛い!!
最高で最強なのはやっぱり結芽ちゃんだよね!!
一本一本が国宝級の輝きを放っても可笑しくない桜色の髪に、ゴミ一つない海を落とし込んだような碧色の瞳。
モチモチフワフワとした、小さく柔らかい体。
可愛さが詰まりすぎて爆発寸前な顔立ち。
全てのパーツが神様に愛されてるとしか思えない!
「アイラブマイシスター!!!」
「煩いですわ、摘花さん。…と言うより、帰りが遅すぎませんこと?」
「そうですね。此花寿々花の言う通りです。大浴場の時間も、食堂の時間もあと一時間ありませんよ?」
「大丈夫、大丈夫。わたしはそんなに長風呂じゃないし……それに、それを言ったら寿々花ちゃんこそなんでまだ部屋に居るの? チラッと見たけど、お迎えの車、校門前に止まってたよ?」
「……稽古終わりで疲れてる摘花さんにお茶でも差し上げようと思っていたんです。まぁ、あまりにも遅過ぎた所為で、既に保温の水筒に移してしまいましたが」
今日は良く呆れた顔をされる日だ。
そう思いつつも、わたしは寿々花ちゃんにお礼を言う。
すると、お礼を受け取ってすぐに、彼女は帰って行った。
本当に、ただお茶を飲んで欲しかっただけらしい。
彼女の事だから紅茶だろう。
お茶菓子代わりのクッキーも冷蔵庫に入ってた筈だし……夜は控え目にして、寝る前にティーパーティーと洒落込むのも悪くない。
「ミルちゃんは夜ご飯食べた?」
「いいえ。汗を流す為にお風呂は済ませましたが、食事は一緒にと思って待ってました。良い勉強時間にもなりましたしね」
小さく微笑む彼女をよく見ると、ネグリジェと呼ばれる、外国発祥の白いワンピース型の寝巻き姿だった。
寝間着で食堂に行くのは、ミルちゃん的にはセーフらしい。
公私の仕分けがしっかりできてる、彼女らしい基準なんだろう。
最も異性が居る学校で寮生活だったら、そんな事絶対にしないだろうが。
よし、ミルちゃんをこれ以上待たせるのは悪いし、ちゃっちゃっとお風呂に入ってこよー!
善は急げ。
わたしは、タンスから下着と寝間着、タオルを持って風呂への準備を済ませていく。
そして、部屋を出る前に一言。
「今日の夜はティーパーティーしたいから、ご飯は控え目だよ?」
「あなたならそう言うと思ってました。…分かりましたから、速く行ってきてください。汗臭いですよ」
シッシと手を振り、わたしを部屋の外へと追い出す。
クスクスと笑っていたから冗談だと思うが……わたしそんなに汗臭くないよね?
確認しようと思ったが……結局、怖くて出来なかった。
だって、汗臭かったら嫌じゃない?
一応、思春期真っ盛りな年頃の女の子だよ?
自分にそう言い聞かせ、そそくさと足を大浴場に向かわせた。
誰ともすれ違わなくて良かったと、心の底から思った夜だった。
◇
初対面の時、私が燕摘花に対して抱いた印象は、生き辛そうな人と、言うものだった。
そして、誰に対しても笑顔で接する彼女を一言で表すなら、聖女や女神。
きっと、殆どの人が、彼女の笑顔以外の表情を見た事がない。
何事もなければ、私もその『殆どの人』に分類される筈だった。
けど違った、違ったのだ。
彼女は、クラスで浮き、一人で行動することが多い私に構い続け、終いには寮の相部屋を申し出るに至った。
行動原理は分からない。
憐憫か、はたまた……度の過ぎたお人好しによるお節介だったのか。
分からないが、一つ良い事があった。
それは、燕摘花の色々な表情を見る事ができ、話も聞けたから。
少しだけ、本当に少しだけだが、誰かに自慢したくなった。
本物の桜にも劣らない綺麗な桜色の髪に、海を鏡で撮したような美しい碧色の瞳、誰もを魅了する、笑顔や微笑みの似合う顔立ち。
コミニケーション能力もあり。
私とは生きる世界が違うような存在……なのに、今は私の目の前でダラダラと寛いでいる。
私だけが知っている彼女の姿。
…やっぱり、少しだけ自慢したくなる。
でも、しない。
独り占めにしたいから、私だけが知っている、秘密にしたいから。
「ミルちゃん? 何か面白いことでもあった?」
「…私、笑っていましたか?」
「うん。すっごく嬉しそうに見えた」
「気にしないで下さい。あなたのグータラ具合が面白くて笑っていただけですから」
「き、聞き捨てならないよ! ミルちゃん! 頑張ってる分の報酬はあって然るべきだよ!!」
「はいはい。いーですから。カーペットの下にカスを落とさないでください。洗うのは私なんですから」
「じゃあ、私が洗う!!」
こうやって下らない会話が出来るのも、きっと私だけだ。
…だから、この関係を無くしたくないと、そう心から思う。
シスターズプロフィール⑤「休日の過ごし方(一人の場合)」
摘花「読書ですかね…。あとは、日用品や食料品の買い出しに。動画配信サービスで映画を見たり、というのもあるかもしれません」
結芽「一人〜?うーん、つまんないから、外に遊びに行くかな?最近は、いちご大福ネコ限定のショップができたらしいから、行ってみようかなって考えてるんだよね〜!!」
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次回もお楽しみに!
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摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも
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過去話やろ!
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日常一択!