燕シスターズ   作:しぃ君

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 前話から時間はそんなに経ってない……筈。


向き不向きは誰にでもある

「い、今、なんと?」

 

「…二度も言わせるな。摘花、お前は刀剣類管理局本部の駐在刀使に選ばれたんだ。指揮官候補生として」

 

「……あ、有り得ません!! 何かの誤報では!?」

 

 

 相楽学長の言葉に混乱していたわたしは、叫ぶようにそう返した。

 だって、わたしより強い同級生や上級生は、探せば幾らでも出てくる。

 そんな人たちを差し置いて、凡才すらないわたしが選ばれるなんて有り得ない。

 

 

 もし有り得たとしたら、選ばれなかった人からどんな反応されるか、想像に容易いはず。

 目の前にいる聡明な彼女が、それを分かっていない訳がない。

 ……なら、本当に冗談や誤報ではないと言うのか? 

 

 

 頭の中をぐるぐると疑問が巡り、一周回って冷静になった思考回路か「取り敢えず話を聞こう」、という答えを出した。

 

 

「取り乱してすいません。……私が選ばれた理由を教えて貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「理由は、今お前が証明した」

 

「はい???」

 

「知識はまだまだ足りてないが…。お前には良く回る頭と、人を惹きつけるカリスマ性がある」

 

「良く回る頭と、カリスマ性…ですか?」

 

 

 オウム返しをするわたしに、相楽学長は「そうだ」と、頷いた。

 真剣な雰囲気が彼女から出ている事から、冗談やお世辞ではないと分かる。

 良く回る頭にカリスマ性、自分にそんなものがあるとは思えないが、彼女があると言ったらあるんだろう。

 勘だけど、相楽学長はそう言うのを見分ける目を持ってる人だから、きっとそうなんだ。

 

 

「先日、稽古の前に課題としてテストをやらせたのを覚えているか?」

 

「へっ? …ああ、なんだか良く分からない感じの問題でしたけど、一応全部解けたと思います」

 

「あれは知能指数を測るための、所謂IQテストだ。そして、その結果がここにある」

 

 

 机の上に一枚の紙を置いた相楽学長は、わたしに目で見るように促す。

 見ろと言われて見ないと言う選択が、わたしに取れる訳はなく、恐る恐る紙に書かれている内容を見た。

 そこには、ただ一言『測定不能(Error)』と、書かれている。

 

 

 先程より、より混乱してしまい、どうしていいか分からず、視線を相楽学長の方に戻す。

 すると、彼女は可笑しそうに笑っていた。

 何が可笑しいのか、わたしには分からない。

 

 

 バカにして笑ってる…訳では無いだろう。

 彼女はそんな人じゃない。

 なら、なんでだ? 

 なんで、相楽学長は笑っているんだ? 

 

 

「そ、相楽学長? 何が可笑しいんでしょうか…?」

 

「…ふふっ、悪かった。説明するよ。お前は知らないかもしれないが、基本的に、IQが測れないなんてことはない……例外を除けばな」

 

「わたしが、その例外…ですか?」

 

「そういう事だ。…そして、知能指数が高過ぎて測れない時に出るのが測定不能。知能指数が低過ぎて測れない時に出るのが測定不可だ。お前のはどうだ?」

 

「測定不能…ですね」

 

 

 ……いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!?!? 

 可笑しい、可笑しいよ絶対!! 

 すっごく分かりやすく言えば、「君の頭良過ぎて!! 俺たち測定できなかったぜ!!」、って事でしょ? 

 有り得ない有り得ない有り得ない。

 

 

 そんなのないって、機械の故障かなにかでしょ? 

 そんなんだよね? 

 そうだって言って!? 

 極限状態のわたしは、ダラダラと脂汗を流し、歪な笑顔を浮かべながらな、相楽学長に問い掛けた。

 

 

「機械の故障…とかでは?」

 

「ないな。知り合いの学者に頼んで、最高に精確な算出をしてもらった。間違いはない」

 

「あははっ! ……そうですか」

 

 

 うん、知ってたよ。

 だって、どっかの偉い人が『有り得ないなんて有り得ない』、って言ってたからね。

 何となくこうなる気はしてたけどさぁ……。

 

 

 師匠である相楽学長から言われるのは辛いよ。

 出来るだけ明るい言葉で送り出そうとしてくれてるんだろうけど、本当は全く成長しない弟子のわたしに愛想が尽きたのかもしれない。

 そうやって、わたしが一人勝手に落ち込んでいると、不意に髪をくしゃくしゃっと撫でられた。

 

 

 場所は学長室、ここに居るのはわたしと相楽学長だけ。

 撫でた犯人とも言うべき人は一人しか居ない。

 

 

「…相楽学長?」

 

「言っておくが、お前に愛想が尽きたんじゃない。人には向き不向きがあるから、お前に──摘花に向いてる選択肢を用意しただけだ。少し手間は掛かったがな。……存外説得が難航してな」

 

「ありがとうございます……師匠」

 

「一応、週末の休日は帰省が許されている。偶には、顔を見せに来てくれ。あと、あっちに着いてからは、作戦立案や指揮の勉強で忙しくなるからな。これまで以上に、体調管理に気を使え。私からは以上だ。部屋に帰って支度をしろ。二日後には出向だ」

 

「はいっ!! 燕摘花! 綾小路武芸学舎の生徒として、相楽学長の弟子として、最高の指揮官になる為に精進します!!」

 

 

 嬉しくて弾む心を抑えられず、強く大きい声でわたしは礼をして、部屋を出た。

 スキップしそうになるのはギリギリ我慢できたが、結芽ちゃんには嬉し過ぎて電話しちゃった! 

 お姉ちゃん、これからいっぱい頑張るからね! 

 いつか、刀使として、戦場に出るかもしれない結芽ちゃんの為に。

 

 ◇

 

 摘花を本部に出向させて数日が経った日。

 丁度その日は、来年度に入学、もしくは編入を控えた生徒のプロフィールに、私は目を通していた。

 そして、偶然にも見知った名前を見つけたのだ。

 

 

「燕結芽か。刀使として目覚めたのは最近だな」

 

 

 姉である摘花の事もあってか、自然と興味を惹かれ、文字を目で追っていく。

 書かれている内容は、一般的な身長や体重、視力や聴力。

 加えて好き嫌いや性格、そして──彼女の溢れる才能。

 体験に行った剣術道場では、偶然そこで稽古をしていた綾小路高等部の生徒を、ほぼ我流の剣術で圧倒したと書かれている。

 恐らく、刀使としての能力もすぐに開花していくことだろう。

 

 

 そして最後に、こう書かれていた。

 既に御刀に選ばれている…と。

 

 

「この歳で、御刀に選ばれたのか。…まさに神童だな」

 

 

 御刀の名前は『ニッカリ青江』、小柄な少女でも使えない事はない大脇差。

 刃長は1尺9寸9分、約60.3cmだったな。

 

 

 驚きのある情報が多くあったが、一番驚いたのは……

 

 

「似ているな、姉妹揃ってそっくりだ」

 

 

 雰囲気は正反対も良い所だが、それ以外は似ていない所を探す方が難しい。

 強いてあげるなら、摘花が歳の割に落ち着いていて、顔付きが大人に見えなくもない、という所だ。

 

 

「静かになってしまったからな、少し騒がしい奴がいてもいいだろう」

 

 

 クスリと、私は一人笑い、他のプロフィールに目を通し始める。

 静けさで満ちる学長室は、少し物足りなく感じた。




 シスターズプロフィール⑥「姉妹の好きな所と苦手な所」
 摘花「結芽ちゃんの好きな所?勿論全部ですよ!!全てが可愛いですから!!可愛いは正義なんですっ!分かりますか!?……えっ?苦手な所?………………ノーコメントで」

 結芽「お姉ちゃんの好きな所、いっぱいあるよ!!まず、優しい所でしょ?あとはカッコイイ所と、可愛い所と、おっぱい──(多過ぎるため以下省略。…えっ?苦手な所、全然ないよ?お姉ちゃんがやってくれてる事に迷惑だなんて思わないよ!!」

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 次回もお楽しみに!

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摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも

  • 過去話やろ!
  • 日常一択!
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