百合…に近い姉妹愛みたいな感じを意識しました、楽しんで下さい。
あぁ、これはただの独り言ですが、買って2ヶ月ちょいのFF7リメイクをようやくクリアしました。
長かった……どうぶつの森を買わなければもっと早かったけど……
辿り着いた脱衣所で、わたしは着ていた洋服を脱ぎ捨てるようにカゴに入れ、お姉ちゃんの制止も聞かずに温泉に向かって駆け出していく。
立ち上る湯気で少し足下が見辛いが、刀剣類管理局本部にある大浴場とは違う、The温泉と言った雰囲気に心が踊る。
人影が見えない所を見ると貸切状態らしい。
やりー!
「一番乗りー!!」
「こらっ!」
バスタオル片手に温泉に飛び込もうとしたわたしを、お姉ちゃんは後ろから捕まえた。
脇に腕を通されたガッチリとホールドされたわたしは、抜け出す事など出来ず、自動的にシャワーが取り付けられた場所に連行される。
……気にしてないのだろうが、今はお互いに裸。
お姉ちゃんもバスタオルこそ持っているが体に巻いておらず、首からかけている。
温泉にタオルを漬けるのがマナー違反だと知っているのだろう。
……その所為で、直に背中に当たっている。
水枕のように柔らかい、お姉ちゃんのスイカ級に実った果実が。
自分から意識して触りに行くのは良いのに、不意にやられるとドキドキしてしまう。
意識しないようにすればするほど、ど壷にはまる。
「もぉ〜結芽ちゃん! はしゃぐのは良いけど、ちゃんと体は洗わなきゃダメだよ?」
「う、うん。分かった…」
「よろしい。先に洗ってあげるから、早く座ってね?」
「…はーい」
言われるがまま風呂椅子に座ると、お姉ちゃんは手馴れた手つきでわたしの髪を洗っていく。
背中の感触からは解放されたが、ドキドキはまだ残っている。
何故かって?
そんなの、こうやって、お姉ちゃんに触られてる時が、自分がどれだけ大切にされてるか分かるからだ。
髪を洗うお姉ちゃんは、手馴れた手つきだけど、まるで割れ物を扱うかのように、丁寧に丁寧に隅々まで洗っていく。
心地が良い、きっとここまで大切にされているのは自分だけだと、優越感に浸れる。
「痒い所ない?」
「だいじょーぶ!」
何時にもなく甘い声を出していた自覚はあった…。
けど、漏れてしまったのだからしょうがないだろう。
甘々な時間は何時の間にか過ぎ去り、体まで洗ってもらった所で、ようやく意識が覚醒する。
「先に温泉入ってても良いよー?」
「…ううん、わたしもお姉ちゃんの背中洗う!」
「そっか…ふふっ。ありがとね、結芽ちゃん。じゃあ、任せちゃおうかなぁ?」
わたしの言葉に、お姉ちゃんは振り返って微笑んだ。
良く、お姉ちゃんはわたしの事を天使の様だと言うが、それならお姉ちゃんは女神様だと思う。
慈愛の女神様、そう言っても過言ではないほどに、優しい微笑みを私に向けてくれる。
不思議だ。
メイクも何もしてない筈なのに、今こうやって微笑んでいるお姉ちゃんは、世界一の美女だと断言出来る。
見蕩れ過ぎないように少し顔を逸らし、背中を洗っていく。
徹夜や夜遅くまで作業をしてる人とは思えない程に、綺麗な肌と無駄のない肉付き。
何をどうしたらそうなるのか、皆目検討がつかない。
姉としては尊敬してるし大大大好きだが、同じ女性としては正直羨ましい。
…そうだ、さっきドキドキさせられた仕返し代わりに、ちょっとイタズラしちゃおうかな〜?
慌てふためくお姉ちゃんの顔を想像すると、悪い笑みが零れる。
くつくつと声が出そうになるのを我慢し、わたしはそっと脇の下から手を伸ばし……先程押し付けられた果実を鷲掴みにした。
「ひゃっ!? ゆ、ゆゆ、結芽ちゃん!? い、いきなりなに?」
「あっ、ごめんなさーい。手が滑っちゃってー」
棒読み。
圧倒的な棒読みだが、触られた事に驚いているお姉ちゃんはそんなことに気付かず、擽ったそうな声を漏らしている。
あぁ、柔らかい。
これなら何時間でも触ってられるよ…。
無意識の内に揉みしだいていると、わたしの甘い声とは比較にならない声が耳に響いた。
「ゆめちゃん…。もう…やめてぇ…?」
「………………」
ここで理性を飛ばさなかったわたしを誰か褒めて欲しい。
あんな、狂おしいくらいに蕩けた顔と嬌声がセットで来られたら、大抵の人は理性を吹き飛ばされる。
……その後は、しっかりと体を洗い、温泉に浸かった。
今現在、イタズラの罰として、お姉ちゃんの足の間に挟まれて、抱き枕のように抱かれている。
ごめん、お姉ちゃん、これは罰と言うよりはご褒美だよ。
だって、筋肉が多くないお姉ちゃんの体って、どこをとっても柔らかいから、お布団に包まれてるみたいな感じで…幸せになれる。
体を動かせない事を、罰にするつもりだったのだろう。
結局、最後までお姉ちゃんはわたしの気持ちに気付かなかった。
◇
温泉に浸かり、疲れを癒したあと、わたしたちは昼食を取るために外に出ていた。
…と言っても、あまりお腹は減っていなかったので、軽めに済ませることになり、適当なカフェに足を運ぶ。
旅館で借りた浴衣を着て、持ってきていたサンダルを履いているので随分身軽に……なる筈だったが、御刀とスマホや財布を入れた巾着袋の所為で思ったより重い。
「ふぅー。ここでお昼にしよっか。…にしても、何だか凄いお店に入っちゃったね」
「足湯カフェって…何だか聞いた事ないよね?」
入ったお店は、足湯カフェを売りにしている所だった。
足湯に浸かりながら、ゆったりのんびり出来るらしい。
少し値は張るが、時間無制限の食べ放題飲み放題もあるらしく、本当にゆったりのんびりできる仕様になっている。
店員さんに案内されたテーブルに着くと、お冷とお手拭きと一緒にタオルも渡してくれた。
これで浸かった後の足を拭けと言う意味だろうか、しっかりしている。
わたしも結芽ちゃんも、サンダルを脱いで足湯に浸かる。
温い訳でもなければ熱過ぎる訳でもなくて、丁度良い温度は心地良い。
座っているソファは、足を伸ばして座っても余裕そうだから、行儀はあまり良くないが、浸かり過ぎないよう適度に休憩できる設計。
作り込まれたお店だと、一人感心していると、対面に座る結芽ちゃんが浴衣の袖を引っ張った。
「ねぇ〜? お姉ちゃんは何食べる?」
「あー。…ちょっと、メニュー貸して?」
「うん。わたしは決め終わったから、良いよ」
ありがと、そうお礼を言って、メニューが書かれた紙を受け取る。
飲み物は、紅茶にコーヒーや、ジュースに牛乳、何故かアルコールまである。
品揃えが豊富だ。
…足湯に浸かりながらアルコールを呑むのが、OKなのか分からないが。
食べ物も、定番のサンドイッチやケーキ、スパッゲッティに加えてピザまである。
……ここまで来ると、厨房がどうなってるのか気になってくるところだ。
頼むなら……紅茶とチーズケーキかな。
「決まったよ。店員さん呼んでくれる?」
「りょーかい!」
可愛らしく敬礼をした結芽ちゃんは、呼び鈴を鳴らして店員さんを呼んだ。
間もなく、さっきこのテーブルまで案内してくれた店員さんが、やって来た。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい。わたしは紅茶とチーズケーキを。あっ、砂糖とミルクもお願いします」
「えーっと、わたしはフルーツ牛乳とチョコケーキ!」
「かしこまりました。ご注文繰り返させていただきます。こちらのお客様が紅茶とチーズケーキ、別で砂糖とミルク。そして、こちらのお客様がフルーツ牛乳とチョコケーキでよろしいでしょうか?」
『はい』
「では、少々お待ち下さい」
そう言って、店員さんは厨房──キッチンの方へと下がって行く。
オーダーを届けに行ったのだろう。
よし、今の内に、真希ちゃんたちにメールを送っておこうっと。
『姉妹で楽しんでます。みんなも早く来てね? 待ってるよー!』、こんな感じていいかな?
花の女子高生とは思えない程に簡素で味気ないメールだが、別に構いはしない。
だって、こんなの他の誰かが見る訳じゃないしね。
そして、メールを送った後は、結芽ちゃんと話しながら、料理が来るのを待った。
ゆったりしていると、流れる時間が早く感じる。
あっという間に、ケーキと飲み物が運ばれてきた。
「美味しそ〜! いっただっきまーす!」
「いただきます」
紅茶にミルクと砂糖を適量放り込み、ティースプーンで回す。
礼儀作法的には、音を立てない方が良いらしいが、そんなの今は関係ない。
混ぜ終えると味を確かめるように、わたしは一口、紅茶を口にした。
紅茶本来の香りはミルクを入れても健在、味も甘過ぎず苦過ぎずのいい塩梅だ。
ケーキと合わせたらもっと良くなることだろう。
心をウキウキとさせながら、わたしはフォークで、チーズケーキを一口分切り取り、口に運ぶ。
「…うん、美味しい」
「チョコケーキもすっごく美味しいよ!」
「そっか、良かったね。…お姉ちゃんも一口食べたいから、交換こしない?」
「うんっ!」
うん、可愛い。
わたしの
出来るなら、今の笑顔を写真にして、額縁に入れて飾りたい。
素直にそう思ったが、そんな事したら引かれること待ったナシなので、わたしは手早く一口分に切り取ったチーズケーキを、結芽ちゃんの口に運ぶ。
カップルや家族間でよくある、食べさせあいっこだ。
「結芽ちゃん、あーん」
「あーん」
…可愛い。
あーんの顔が可愛い。
食べてる時の美味しそうな顔も可愛い。
あぁもう! 全部可愛いよ!!
抱き締めたい衝動に駆られながらも、今度は結芽ちゃんからのお返しを貰う為に、少しだけソファから乗り出す。
髪がコップやケーキに掛からないように耳に掛け流しつつ、チョコケーキを頂いた。
チョコの甘さが舌全体に広がるより早く、結芽ちゃんの「どう? 美味しいでしょ? 美味しいでしょ?」と、言わんばかりの表情が脳を溶かす。
旅行パワー? 旅行パワーなのか?
いつも通りの結芽ちゃんな筈なのに、数倍──いや、数十倍可愛く感じる。
鼻血を出さないようにするのが、わたしのその時の限界だった。
会話はうる覚えである。
◇
お昼ご飯──と言うよりおやつタイムを終えたわたしたちは、少しの間あのカフェでゆったりと時間を過ごし、その後は温泉ツアーに出かけた。
今日だけで少なくとも三種類の温泉に入り、人生で初のマッサージを受け、感激。
温泉で充分癒されたと思っていたが、マッサージでさらに癒され、至福の時を過ごせた。
今は旅館の部屋。
夕食も済ませてしまったので、テレビを見ながらまったりと過ごしている。
……手持ち無沙汰になってきたし、そろそろ聞こうかな。
「ねぇ、結芽ちゃん? お姉ちゃんに隠してること…なぁい?」
「へっ? そ、そんなの、ない…よ」
あからさまに嘘をついている。
こっちに顔は向けているけど、目は泳いでるし、少し肩が震えていた。
…別にそこまで怒ったりしないのに。
わたしは、優しく結芽ちゃんの頭を撫でながら、もう一度問掛ける。
「本当に、してない?」
「……実はね──」
そう言って、結芽ちゃんは話し始めた。
今回の旅行は全部、わたしと結芽ちゃんの為に計画されていたこと。
本当は二人、姉妹水入らずになる予定だったが、結芽ちゃんが駄々を捏ねて全員で行く事になって、一日だけ二人の時間を作ったこと。
…黙っていて、嘘をついていて、ずっと罪悪感に悩まされていたこと。
包み隠さず、結芽ちゃんは話してくれた。
でも、偶には、ちゃんと叱らなきゃね。
「では、これから結芽ちゃんにお仕置します。目を閉じて」
「……はい」
ギュッと拳を握って、結芽ちゃんは顔を俯かせた。
拳骨なんてしないよ、わたしの手の方が痛いもん。
だから……わたしはこの子を抱き締めたい。
頭を胸に埋めるようにして、強く…優しく抱き締める。
どう? 息苦しいでしょ?
擽ったいけど、こっちの方が余っ程お仕置になる。
ちゃんと反省、するんだよ?
◇
お仕置すると言われて目を閉じていたら、抱き締められて胸に埋められていた。
苦しい、苦しいけど、凄く甘い匂いがする。
同じボディソープで体を洗って、同じ温泉に入った筈なのに、お姉ちゃんからはわたしと違う匂いがした。
多分、それはお姉ちゃんの匂い。
何をどうやっても消せない、お姉ちゃんの匂い。
甘くて、優しくて、温かい、そんな匂い。
息がし辛いけど、罪悪感が襲っていた心に陽が射して、祓われていく。
モゾモゾと頭を動かして、脱出し、お姉ちゃんに聞いた。
何故、隠し事をしていることが分かったのかを。
そしたら──
「当たり前だよ。わたし、結芽ちゃんのお姉ちゃんだもん。妹の小さな変化にも気付くのが、姉って言う生き物なの」
カラカラと笑うお姉ちゃんを見て、一生勝てない事をわたしは悟る。
姉より優れた妹は居ない…だったっけ。
その通りだと思う。
刀使としてだったら勝てるかもしれない…けど、わたしとお姉ちゃんでは、強さのベクトルの向きが真逆だ。
もし、わたしが普通の女の子として産まれていたら、何一つお姉ちゃんには勝てなかっただろう。
悔しい、そう思わないと言ったら嘘になるけど……それ以上に嬉しい。
声を大きくして、わたしの自慢の姉だと言いたい。
「……ありがとう、お姉ちゃん」
「お礼なんて良いよ、わたしはお仕置しただけだから。…さっ、寝よ?」
出された布団の上まで、私をお姫様抱っこで運ぶ。
運び終わった後は、わたしの上に丁寧に布団を掛けて、お休みと呟いた。
お姉ちゃん自身も、直ぐに部屋の電気を消して、布団に入って行く。
…どれくらい経っただろうか。
上手く眠れない。
何故か目が冴えてしまう。
体を横に向けて、起きているか眠っているか分からないお姉ちゃんに声をかけた。
「お姉ちゃん…起きてる?」
「起きてるよー」
「…眠れないから、一緒に寝ちゃ──だめ?」
「…良いよ、ほら、こっちおいで?」
態々布団を上げて、わたしに手招きする。
暗いのに、良く見えないのに、お姉ちゃんが笑っているのは分かった。
入った布団は温かくて、直ぐに眠気が襲ってくる。
ポンポン、と優しくわたしの背中を叩きながら、懐かしい唄を──子守唄を聞かせてくれる。
ママが良く…唄ってくれて、お姉ちゃんも良く…唄ってくれた子守唄。
その日は少しだけ、なんでもない、普通の姉妹に戻れた気がした。
幸せに満ちていた、どこにでもいる、普通の姉妹に──
次回もお楽しみに!
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