温泉に行った慰安旅行兼姉妹旅行から、もう一週間の時が経った。
存分に癒されたわたしたちは、普段より一層仕事に励むことが出来たのだが……最悪なことに、忌々しい季節が訪れる。
夏だ、夏が来たのだ。
暑くて、蒸し蒸しして、蚊が鬱陶しい季節。
なにより…なにより!!
結芽ちゃんがわたしに抱き着いてくれなくなる!!!
因みに、これをみんなに愚痴ったら苦笑いされたんだけど……なんで?
みんなは、大好きな人に抱き締めて欲しいって思わないの?
…とまぁ、面倒臭いメンヘラみたいな思いはさて置き。
刀剣類管理局本部では今、節電キャンペーンを行っている。
なんでも、経費削減の意味もあるらしいが、忍耐力を鍛える訓練だと、云々かんぬん言っていた。
正直止めて欲しい、ただでさえ結芽ちゃんと触れ合えなくて悲しいのに、エアコンもつけられないなんて地獄でしかない。
一応、寝る時はつけていいと言っていたが、夜中になったら管理室の方で強制的にエアコンをOFFにするから、一晩中はつけられないし……最悪だ。
現に結芽ちゃんもぐでぐでの状態で、扇風機の前にイスを移動させてなんとか凌いでいる。
さて、あれが長続きすればいいのだが…。
そう上手くはいかないだろう。
わたしはため息を吐きながら、今日の仕事を終わらせる。
「……これで、お終い!」
「お仕事終わったの、お姉ちゃん!? だったらさ、プールでも行こうよ!」
「あぁ……プールかぁ。止めた方が良いかもよ? さっき、休憩がてら調べたけど、どこもいっぱいみたいだし」
「えぇ…! じゃあ、エアコンつけてよ!! 暑くて死んじゃいそうだよぉ〜!」
「そ、それも、難しいかなぁ。私、一応幹部クラスの人間だし……ルールは破れないよ」
「そんなぁ……」
ごめん、ごめんね結芽ちゃん。
さっきまであんなに嬉しそうだったのに、しゅんとさせちゃって。
上目遣いからのお強請りコンボは、結構なダメージだったけど……我慢した。
何せ、わたしは刀剣類管理局本部の筆頭指揮官。
実働部隊の実質的トップなのだ。
そりゃあ、真庭本部長とかの役職持ちよりかは権力はないけど、それでも幹部クラスの席を貰っている。
だからこそ、こう言う時にルールを破る訳にはいかない。
なにか……涼しくなれるもの。
キョロキョロと辺りを見回したり、最近買った物を思い出していると……有った。
丁度良さそうな、夏にピッタリの涼しくなれるもの!
「結芽ちゃん! ゲームしよっか?」
「ゲーム?」
取り付けられている大型テレビの近くに、中央のイスを持っていき、結芽ちゃんが持っているPS4を借りる。
リモコンとコントローラーを結芽ちゃんに渡し、買っておいたゲーム自分のベット近くから引っ張り出す。
本当は息抜き&結芽ちゃんの怖がる顔を見る為に買ったのだが、この際理由などどうでもいい。
涼しくなる為に、このゲームを遊ぼう!
わたしが買ったゲームの名は──
「じゃじゃーん! 『BIOHAZARD RE:3』だよ!」
「バイオハザード…って、ゾンビがいっぱい出てくる怖いやつじゃなかった?」
「そうそう。大体はそんな感じ。…怖いゲームをやって涼しくなる! 題して、ホラー納涼法! 大丈夫! 大丈夫! お姉ちゃんが隣で一緒に見ててあげるから? ね?」
「うぅぅぅ…。わ、わかった。がんばる…」
うん、強がる結芽ちゃんも可愛い。
この後、怖がりながらわたしに抱き着いてくる未来が、容易に想像出来てしまう。
ふふっ、結芽ちゃんには悪いけど……
今日はお姉ちゃん、最近不足していた結芽ちゃん成分を補う為に、鬼になります。
悪女のような笑みを浮かべて、わたしは近い未来に期待を寄せていた。
尤も、あんな展開になるとは予想外過ぎたのだが…。
◇
ゲームを始めてから三時間以上が経った。
扇風機はゲーム機本体が熱を持ち過ぎないように、そちらに向けているが、始める前より全然涼しい。
もっと言えば、少し肌寒いくらいに感じる。
だけど、ゲームは楽しい。
最初は何回もゲームオーバーになったが、慣れてくれば簡単だ。
銃でゾンビや化け物を倒すのは爽快感がある。
…偶にある謎解き要素には苦戦させられたが、お姉ちゃんの助言もあり順調に進んで行った。
まぁ、勧めた張本人であるお姉ちゃんは、わたしの隣でガクブル震えてる訳だが……
「ひぃっ!? そ、そこのロッカー! そこのロッカー! 今、ガタンって鳴った!! なんか居る、絶対居る!!」
「はいはい、今調べるから。お姉ちゃんはさっきの謎解きの答えでも考えてて〜」
悲鳴を上げながら忠告するお姉ちゃん。
ここまで怯えててもわたしに教えてくれるあたりは、流石お姉ちゃんと言える。
……いや、怯えてるから教えてくれるのか?
取り敢えず、分からないことは後回しにして、ロッカーを調べる。
すると、忠告通り、中からゾンビが出てきた。
しかも、調べた瞬間に驚かすよう出てくるオマケ付き。
短い悲鳴が隣で聞こえたが、無視してゾンビの頭をハンドガンで撃ち抜く。
慣れれば慣れる程、照準を合わせる速度が早くなる。
自分の成長を目に見えて感じられるのは、嬉しいものだ。
相楽学長に剣術を教えて貰っていた時を思い出す。
あの時は、自分がどんどん強くなっていく感覚に、毎日ワクワクしていた。
また、あの感覚が感じられるなんて……こう言うゲームも悪くないかも。
「ふぅ…。お姉ちゃん、少し休憩しよ?」
「そ、そうだね。ちょっと待ってて、お茶持ってくるから!」
「お願〜い!」
少し間延びした声でそう言った後、セーフティエリアに移動し、セーブをしてから、一度画面を止める。
……それにしても、わたしが休憩しようと言った途端、即座に簡易キッチンに向かったのを見ると、相当怖がってたみたい。
お姉ちゃんがあそこまでホラーが苦手だと思わなかった。
ちょっとだけ意地悪、しちゃおうかなぁ?
くふふっと、悪い笑い声を漏らして、わたしはそっとお姉ちゃんの背中に近付く。
身長差がある所為で、背伸びしないと首元まで届かないけど──届けば良いのだ。
無防備に晒されている首元にわたしは──噛み付いた。
強くなんて、跡が残るような事はしない。
あくまで甘噛みだ。
でも、お姉ちゃんは……
「わきゃあああああ!?!? ……あっ」
「……へっ?」
……やり過ぎたかも。
驚きのあまり気絶したお姉ちゃんが、わたしに覆い被さるように倒れてくる。
瞳に映し出される、ゆっくりとした時の流れ。
凄い、スロー映像を見てるみたいだ!
そんな、呑気な考えを浮かべるが、段々と時の流れは元に戻り、お姉ちゃんがわたしに向かって倒れてくる。
お姉ちゃんが頭を打たないように抱き締めるが、逆にわたしが頭を打ってしまい、意識が飛ぶ。
起きたお姉ちゃんにこっ酷く怒られたのは、仕方のない事だったと思う。
反省のある一日だった。
ごめんなさい、お姉ちゃん。
今度噛むなら耳にします。
シスターズプロフィール①「怖いもの」
摘花「お化けとかは平気ですけど、怪物系統は苦手です。今回の件で思い知りました。……一番苦手なのはゾンビです」
結芽「う〜ん、お化けは嫌かなぁ…。だって、斬れないし。怪物とか化け物は斬れるし倒せるから大丈夫!荒魂もそっちに近いしね。でも、一番怖いのは怒った時のお姉ちゃん…かな」
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次回もお楽しみに!
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摘花ちゃん視点の過去話は見たい?それとも日常の話が見たい?……過去編は少し重いかも
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過去話やろ!
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日常一択!