愚直な軌跡   作:ネオニューンゴ

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 誤字報告を下さる方ありがとうございます、とても助かります。なるべく誤字はしないよう気をつけているつもりなのですがどうしても出てしまって申し訳ないです。6月はちょっと仕事の関係で更新速度が遅れてしまうかもしれませんが愚直な軌跡をどうかよろしくお願いいたします。


第十二話 脆い石ころ

 六月、それは梅雨の季節、そして学生とは切っても切り離せないイベント中間試験のある月でもあった。

 Ⅶ組メンバーも中間試験に向け勉学に励み、また講義も熱が入ったものとなる。ハイメも例に漏れずノートにペンを走らせる、今まで勉強に対する姿勢はそこそこ勉強し平均点くらいを取るというのがハイメのスタンスだったが折角自分を高められる環境にいるので今回は平均点以上を目指そうと奮起する。いつもより短く感じる授業を終え時は放課後、試験が近いため部活動は中止、ハイメの仕事もテスト期間は免除となり放課後のクラスには珍しくⅦ組メンバー全員が顔を揃えていた。

 

「やっと終わった……」

 

 そう言って机に項垂れるのはフィー、勉強が苦手な彼女にとって試験前の密な講義はいつもの倍以上疲れれるらしく、放課後はダウンしたフィーを介護するエマがもはや鉄板になりつつある。

 そんな二人を微笑ましく思いながらやはり話題は中間試験の事になる……のだがⅦ組メンバーの会話はまるで四月に戻ってしまったかのようにぎこちない。その渦中にハイメはいた……というのも今回は珍しくハイメが誰かを避けているのではなく驚く事にリィンとアリサの二人がハイメに対しぎこちない態度をとっていた。リィンもアリサも比較的友好的でⅦ組のコミュニケーションの潤滑油といっても過言ではないのだがその二人がぎこちないと会話も中々続かない。そんな状況をハイメが気を遣わない筈もなく早足で教室から出ていく。一日二日くらいそんな日が続いても皆何も思わないがこの状態は一週間程続いており、基本的にこういった事に対して我関せずのフィーとユーシスの二人ですら首を傾げていた。

 

sideハイメ

 

 

「はぁ……」

 

 一人になってもう何回目になるため息か分からない、学生寮への帰路を歩くハイメは見るからに肩を落とし落ち込んでいるのが見てとれた。ハイメ自身リィンとアリサに何か不快な事をした心当たりはない……と思うが感じ方は人各々、もしかしたら二人に対し何かしてしまったのかもしれないと思うが本当に心当たりがないので謝る事すら出来ずにいた。いつもならば仕事に武術の修練とやるべき事に没頭出来るのだが今は試験前なので勉強するくらいしかなくふと一区切りついた時には思い出してしまい憂鬱な気持ちになるのだ。

 

「いっそ二人に理由が聴ける程自分の神経が太ければ良かったのだが……」

 

 だが中間試験が終われば待っているのは特別実習、もし自分から二人に踏み込んでいって取り返しのつかないことになれば自分達だけでなく他のⅦ組メンバーにも迷惑を掛けてしまう、そう思うと中々話を切り出せずむしろ自分がいない方がいいのでは?と思いこうして一人クラスから逃げたしていた。降り続く雨とどんよりとした空模様を見て更に憂鬱な気持ちになりながらハイメは学生寮へと一人戻る途中何者かに声を掛けられる。

 

「そこの君、止まりたまえ」

 ハイメが視線を上げるととそこには貴族クラスの制服に身を包んだ生徒が何人かがハイメの行く手を塞ぐように立っていた……

 

sideⅦ組

 

 ハイメが教室から出て少しした後この状況を流石に見過ごすわけにはいかないとマキアスが立ち上がる。

 

「それでリィンもアリサくんも一体どうしたというんだ?」

 

「いや……その」

 

「えーと……」

 

 マキアスの問いに対して曖昧な返答と表情で返す二人、他のⅦ組メンバーが聞いてもいつもこのような感じなのだ。しかし今日こそは逃がすまいと気がつけばマキアス以外のメンバーも二人を取り囲むようにしており、降参と言わんばかりにリィンは両手を上げる。

 

「フン……ようやく観念したか」

 

「一体どうしたというんだ、リィンらしくないぞ」

 

「話したら何か解決に繋がるかもよ、そりゃどうしてもってなら無理に話さなくていいけどさ……」

 

 男子組の援護もリィンは改めて大きな息を吐き自分の心の内を話し始める。

 

「いや、前の実習のバリアハート組の皆なら分かると思うけど最後ユーシスとフィーの援護にいってハイメが怪我しちゃっただろ?改めて申し訳なくてさ……ただ謝るのも何か違うし……」

 

 そう、リィンはバリアハートの実習後、どこかハイメに後ろめたい気持ちを抱いていた。実習が終わってすぐはこんな事を考えるのはハイメに対して失礼だと思っていたがその気持ちはどんどんと大きくなり遂に表面上で取り繕えない程になっていた。

 そしてリィンと同じ気持ちをバリアハート実習組は大なり小なり抱いておりその場は沈黙してしまう。その沈黙を破ったのはラウラだった。

 

「リィン、やはりそれは思い上がりというものだと私は思う、私達は一介の学生に過ぎない、目の前に二人助けなければいけない人がいて理想は二人とも助ける事だが現実的にまだ私達はそれだけの力がない」

 

「うっ……そうだよな……」

 

 それでもどこか納得しきれない……そんな気持ちが表情にありありと現れる。責任感の強いリィンはそれでもまだ心の中で葛藤していた。そんなリィンを諭すようにガイウスが口を開く。

 

「俺も故郷を守る力をつける為にこの学院に来たがまだそれだけの力が身に付いたとは到底思えない、目の前の一人の人間すら守れるかどうか怪しいだろう、それにハイメは馬鹿ではない、何らかの算段があってリィンを二人の援護に行かせたんだ、それで失敗してしまったのは周りもそしてハイメ自身も力が足りなかったんだろう」

 

「フン……それに奴はもう前を向いているんだ、俺達が後ろを向いていたらそれこそ顔向けが出来ん、奴は強い奴だ」

 

 ユーシスの言葉に皆ウンウンと頷くが一人だけ微妙そうな表情している者がいた、そうアリサだ。

 

(本当にそうなのかしら……?皆が思っている程ハイメは強い人間なのかしら?)

 

 アリサがハイメを避ける理由、それは本当に偶然なのだが数日前キナジウムの武術修練場でハイメの心の内を聞いてしまったからだ。ハイメの心の内を聴くまではアリサも他の皆と同じようにハイメは心が強く目の前の困難や自分が犯してしまった失敗を努力で乗り越えていける、そう思っていたが今は違う。もしかしてハイメはギリギリの所で一人で闘っているのではないか?もしそのギリギリを過ぎてしまったらハイメはどうなるのだろうか?ハイメのあんな姿を見たら日常で何食わない顔で過ごしているのもどこか無理をしているんじゃないかと思ってしまう。そんなアリサの様子をラウラは見逃さない。

 

「どうしたアリサ?」

 

「アリサさんはまた違う考えをお持ちなんですか?」

 

「珍しいね、アリサがそんな顔するなんて」

 

 怪訝そうな顔でこちらを見てくるⅦ組メンバーにはっとなり慌てて取り繕おうとするアリサだったが肝心の事を言えないのでどうしても陳腐な事しか言えない。だがこれだけは話す訳にはいかなかった、ハイメが何も言わないのに自分がハイメの弱さを吐露する訳にはいかない。

 

「ごめんなさい、これは私が自分で折り合いをつけなければいけない問題なの、だから……」

 

 真剣なアリサの瞳を見てこれ以上追及するのは野暮な事だと一応納得するⅦ組メンバー。そうなると当然のごとく次の話題は中間試験試験になる。

 

「うーん、やっぱり分からない事は教え合うのが一番良さそうだけど……」

 

「全員集まって効率良くいくとも限らないわよね」

 

「なら二つにグループを分けよう、どのみち今の状態じゃそれしかない、成績的に言えば……僕とエマ君のグループが良いか」

 

 そうなると話は早く各自苦手な教科と得意な教科、それと勉強が苦手かどうかでグループを作っていく。エマのグループはフィー、リィン、アリサ、ユーシスの5人となりマキアスのグループはエリオット、ガイウス、ラウラ、そしてハイメとなった。

 

「ここにいないハイメ抜きで決めてしまうのは悪い気もするが……」

 

「ハイメは得意科目もなければ不得意な科目もないと言っていたし彼なら大丈夫だろう、それにハイメはそういった事でヘソを曲げるタイプでもあるまい」

 

 ラウラが腕を組ながらそう言うと何故かラウラの方に視線が集まり珍しくラウラは狼狽える。

 

「な、なんだ、私は何かおかしい事を言ったか」

 

「何て言うか……意外って言ったら失礼かもしれないけどラウラとハイメって仲良いよな」

 

「なっ!そんな事もないと思うが……」

 

「女子の中だと一番ハイメと話してるんじゃない?」

 

「ふーん……否定する割には嬉しそうなんだね」

 

 フィーがそう言うとラウラは更に狼狽える、そんな光景に皆自然と笑みがこぼれ笑い合う。当のラウラはどこか納得がいっていないようだがどこか暖かい、そんな雰囲気がⅦ組を包んでいた。

皮肉にもハイメはその暖かい輪の中にはいない……

 

Ⅶ組sideout

 

 

ハイメside

 

 降りしきる雨を傘が弾く音がやけに大きく聞こえる。貴族クラスの連中がいったい自分などに何の用があるというのか、いくら頭の中を張り巡らせても思い当たる節はない。最近こういった事が多いな……とハイメは心の中でため息を吐く。

 

「貴族クラスの方々が自分に一体なんの用件なのでしょうか?」

 

 そう言葉を紡ぎ深く頭を下げる。そんなハイメを満足そうに見下ろし鼻をならすと一人の生徒が前に出てくる。

 

「フン、平民らしく貴族に対する礼節は弁えているようだね、なに無駄な努力を続ける可哀想な平民に現実を分からせてあげるのも貴族の務めだと思ってね」

 

 無駄な努力……その言葉に思わずに拳に力が入るがそれでも相手は貴族、ここで問題を起こしたらⅦ組の皆にも迷惑が掛かる、そう思い努めて冷静に言葉を返す。

 

「そうですか、ご忠告感謝します、それでは」

 

 そう言って足早にその場を去ろうとするが取り巻き達がそうさせてくれない。苦虫を噛み潰したような表情をするハイメを面白そうに見る貴族クラスの男子生徒が更に続ける。

 

「おいおいつれないな、折角この四大名門の嫡男、パトリック=ハイアームズが話しているんだ、もう少しゆっくりしていけよ」

 

「四大名門……ハイアームズ……」

 

「フン、君達特科クラスⅦ組だかなんだか知らないが僕達の方が優秀だという事を次の中間試験で証明してあげるよ、覚えておくといい、君みたいな石ころはいくら磨こうと綺麗な宝石には勝てないという事をね!精々Ⅶ組の足を引っ張ってくれる事を期待しているよ、ハイメ=コバルト君」

 

 パトリックはそう吐き捨てるように言って取り巻き達を連れて去っていく。どうやらパトリックはハイメ個人に対してというよりはⅦ組に対して何か思うところがあるようだ。たまたま一人のハイメを見つけて嫌味を言ってきたのだろう。

 

「フン……それくらいの事なら言われ慣れてるさ……」

 

 自嘲気味にそう呟きハイメも寮への帰路へと着く。降る雨はまるでハイメを責め立てるかのように勢いを増すばかりだった。

 

 

翌日 放課後

 

 マキアスに昨日自分が帰った後の話を聞き、皆と一緒に勉強をする事を承諾したハイメ、マキアスグループはⅦ組で勉強する事になる。この五人の学力はマキアス、ラウラが優秀で苦手科目は数個あるが他の科目が飛び抜けているガイウス、エリオット、そして歴史のみ得意科目だが他の科目は平均点あたりを行き来するハイメといった感じだった。ラウラはあまり人に教えるのが自信がないらしくマキアスがガイウスとエリオットの苦手科目をフォローしラウラはマキアスのフォローとハイメが分からない所を教えるといった感じで話が纏まる。

 

「すまないラウラ、ここがよく分からないのだが……」

 

「そこはこの公式を使って……」

 

「あぁ!成る程こうなる訳か!」

 

「うん、そういう事だ」

 

 元々話す回数が多いラウラならハイメも気兼ねなく聞くことができ、ラウラもハイメに解き方を教えれば理解する事からこの組み合わせは上手くいっていた。途中エリオットが意味ありげな視線を送っていたがマキアスに集中しようと一喝され結局どういう意味の視線なのかは分からなかったが……そうして日も傾いてきた頃集中力も続かなくなってきたためここで勉強会はお開きとなり寮へと戻る事になる。

 

「もう少し頑張りたかったが……」

 

「うん、僕もまだ分からない所が多くて」

 

「集中力が続かないのに続けてもあまり効果は期待できないぞ二人とも、適度に休憩を挟んで短時間でも集中してやった方が絶対良い」

 

「マキアス、もし分からない所があったら後で聞きにいっても良いだろうか?」

 

「ガイウスの切り替えの早さを二人とも見習うといい、焦っては事を仕損じるとも言う」

 

 五人は他愛ない話をしていると校門前でエマグループのメンバーと遭遇する。当然その中にはリィンとアリサの姿もありやはりハイメと話すのはまだ気まずいのだろう、表情が硬直しているのが見てとれる。結局Ⅶ組全員で学生寮へと帰る事になるがハイメは一番後ろに行き皆とは少し離れながら歩く事にした。リィンとアリサは申し訳なさそうな表情をしていたがこればかりはどうしようもない、元々ハイメは多人数の輪の中に入るのはあまり得意ではなくこうしていた方がハイメ自身気楽な部分もある。 周りを見ると数人のグループで帰っている生徒の姿が多く見受けられる、皆考える事は同じなんだな……と思いつつ頭の中で今日の復習をしているとユーシスがこちらに近づいてくる。

 

「前々から思っていたが貴様もよく分からない気遣いをするものだな」

 

「いや、その、ハハハ……」

 

 まさかそんな事を言われるとは思わなかったハイメとしては渇いた笑いをする他ない。

 

「フン、あの二人の事ならそんなに貴様が気にする必要はない、奴等自身の問題だ、それと改めて言っておくが前回の実習の借りはアルバレアの家名に誓って必ず返す」

 

「借りって……あれは自分が……」

 

「貴様がどう思おうと俺は借りを作ったと思っている、だから返す、それだけだ」

 

 あまり話した事はないがユーシスは意外と頑固なんだなと思っていると寮へと着く。皆と別れ部屋に戻り着替えを済ませ、少しベッドに横になる。頭に思い浮かぶのは先日パトリックに言われた事、ユーシスには気にするなと言われたがリィンとアリサの事、そしてテストで皆の足を引っ張らないかという不安だった。何もしてないとろくでもないことしか考えないなと身を起こし外を見ると雨は上がっていた。

 

「ラウラに切り替えも大事だと言われたし、気分転換に少し走ってくるか」

 

 夕食を摂る時間が少しばかり遅れるかもしれないがこんな気持ちでは食事もおいしく感じないし勉強にも身が入らないだろうとハイメは結論付け寮を出る。昼間は若干蒸し暑かったが日が落ちて丁度良いくらいの気温だ。そのまま街道の方へと足を進める、街灯に照らされ整備された道を無心で走り続ける。だんだんと体が火照り吐く息は激しさを増してゆく、それでも走っていると無心になる事が出来、後ろ向きな考えも頭の隅へと追いやられていく。結局少しだけのつもりが結構な時間走ってしまい寮へ戻る頃には食堂も閉まっていた。

 

「やってしまった……」

 

 シャワーを浴びて部屋に戻り何か食べる物を買い置きしていなかっただろうかと自室の棚を漁るが夜の無茶な修行を辞めたので当然食べ物の買い置きなどなくハイメは肩を落とす。食べ物がないと分かると途端に腹の虫は鳴き始める。かといって雑貨屋は閉まっているしカフェも開いてるかどうか怪しいだろう。幸い飲み物はあるのでごまかすしかないか……と思ったいた矢先に部屋のドアがノックされる。もう一時間もすれば消灯時間なのだがこんな時間に一体誰なのだろうか?何か急ぎの用事だろうか?と思いながらドアを開けるとそこに立っていたのはアリサだった。

 

「!?!?!?」

 

 こんな時間にどうした?あまり女性が意中でもない男性の部屋に訪れるものじゃないぞ……と言おうと思ったハイメだが実際に口から出たのは言葉にならない声だった。

 

「少しだけいいかしら」

 

「はい」

 

 結局返答もたった一言、先程の空腹はどこへやら様々な考えが頭の中をグルグルと回るがアリサは部屋の中へ入って椅子に座ってしまう。

 

(と、とりあえず飲み物!そうだ!たしか実家から送られてきた紅茶があったはずだ!)

 

 訳の分からないまま客人に対して何ももてなさないのはいけないとすぐに紅茶の準備をする。

 

「粗茶ですが?」

 

「何で疑問系なのよ、でもありがとう」

 

 ハイメはとりあえずアリサの対面に座る事にする、中々用件を話さないアリサにこちらから聞くべきか?避けられてる件についてだよな、まさか絶交でも言い渡されるのか?とビクビクしながらアリサの言葉を待っているとアリサがためらいがちにに口を開く。

 

「その……まずはごめんなさい、急にこんな時間に押し掛けて、でもこのまま引きずるのも良くないと思って」

 

「その、用件は最近アリサが自分を避けている件についてだろうか?」

 

 

「えぇ……その……先に謝っておくわ、ごめんなさい、実は先日キナジウムで……そのハイメの心の内を聞いてしまって……」

 

「あっ……あぁ……そうか聞かれてしまったのか……」

 

 しまった、そんな思いがハイメの頭の中でいっぱいになる。まさかアリサに聞かれているとは……成る程確かにあんな事を偶然とはいえ聞かされてしまってはどう接すればいいのか分からなくなるのも当然だろう。アリサには申し訳ない事をしてしまったようだ。

 

「は、ハハハ……すまなかったアリサ、ほらあの日は模擬戦でガイウスに完敗したから少し気落ちしていてな、情けない男だと笑ってくれ」

 

 今の自分はちゃんと笑顔を作れているだろうか、今さら取り繕うも何もないかもしれないがそれでもアリサに余計な心配をさせる訳にはいかない。ただでさえ足を引っ張っているのにこの上またⅦ組のお荷物になろうとしている、それだけは絶対に避けなければいけない。ハイメはそんな気持ちで精一杯の笑顔を作るがそれでもアリサの表情は優れなかった。

 

「ねえハイメ?何でそんな無理して笑顔を作るの?弱さを見せる事はそんなに罪な事なの?」

 

「……もう十二分に自分の弱さは皆に見せているだろう?これ以上はただの甘えだよアリサ」

 

 Ⅶ組の皆がハイメを気に掛けてくれているのは痛いほど伝わっている。これ以上皆に甘えるのは依存だ、それにハイメは良く分かっている、弱さとは罪だと、自分が弱いせいで他人を傷付ける、それを克服するためにⅦ組に入ったというのに未だにこのていたらくだ。これ以上置いていかれる訳にはいかない、それがハイメの嘘偽りない本当の気持ちだった。

 

「そう……分かった、ハイメを信じるわ、でも忘れないで貴方の周りには皆がいるわ、私だってその一人なんだから」

 

 そう言って優しく微笑むアリサにドキリとするハイメ。すごく場違いな気持ちなのだろうが心臓が早鐘を打ち体温が上昇していくのを感じる。アリサの微笑みはとても魅力的に見えた。正直その後の事はよく覚えていない、二三個言葉を交わしアリサはハイメの部屋から出ていく。ハイメはボーッとアリサが出ていった扉を見つめ続け気がつけば消灯時間になっていた。慌てて部屋の明かりを消してベッドに潜り込むハイメ、それでも中々すぐには寝付けない。

 

(ば、馬鹿者ハイメ=コバルト!アリサは100%善意しかないんだぞ!それをこんな……)

 

 瞼を閉じて無理矢理寝ようとするがアリサの笑顔が頭から離れない。未熟者の自分がこんな事を考えてはいけない、こんな思いをアリサに抱くのは失礼だし不相応だ、心を殺さなければまた皆に迷惑を掛けてしまう。そうやって無理矢理にでも感情に折り合いをつけ心の奥へしまう事にする。テストも近いしその次は実習だ、今はただ自分を高める事にだけ集中しよう、やってくる睡魔の中そんな事を考えながらハイメの意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ハイメ下げ回に見せ掛けた落ちちゃったかー回、仲が良いからその人に魅力を感じるとは必ずしもとは限らないですよね。
ちなみに作者はリィ×アリが原作カップリングだと一番好きです、ここまで見て下さった読者様なら後は……分かりますね?
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