愚直な軌跡   作:ネオニューンゴ

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 創の軌跡発売からもう5日経ったと思うと早いですね。作者は割と軌跡シリーズは駆け足気味でプレイするのですが今作は割とゆったりとプレイしてる感じです。
 さて今回の話でハイメは大きな転機を迎えたりします、それではどうぞ。


第十五話 奥義と想いと

 朝、ハイメが目を覚ますと大地の独特な匂いが鼻をくすぐり静かな寝息が耳に入り目を開く。

 

(どうやら皆より早く目が覚めてしまったらしいな)

 

 体を解すと列車の長旅の影響かはたまた乗馬の影響か、臀部は少し痛むものの体に疲れは残っていない、時計を見ると起床時間まで二度寝するか微妙な時間だ。ハイメは少し技の鍛練をしようと思いそーっと住居から出ていく。外へ出ると穏やかな風が吹き主婦と思われる人達がちらほらと起きており火の準備をしている。少し開けている場所を見つけそこに行くと既に先客がいた。

 

「ユーシス……早いな」

 

「そういう貴様もなハイメ」

 

 ユーシスは突剣を振るう手を止めこちらに向き直る。思わず声を掛けてしまったがハイメはあまりユーシスとは話さない。それはもう身に染み付いた貴族制度が貴族は偉く、ましてや四大名門等本来ならば一般の平民は関わる事などまずない、ラウラのように何か切っ掛けがあればいいのだが……。どうしてもそんな気持ちがユーシスに対していまいち踏み込めない理由でありユーシスも気づいていたようでその事について話してくる。

 

「この際だからはっきりと言っておくが俺に対していらん気遣いをするのはやめろ、Ⅶ組にいる間俺はただのユーシス、お前と対等な存在だ」

 

 少なからずハイメのそういった面を煩わしく思っていたのだろう。ユーシスの鋭い視線を直視出来ず確かに心当たりのあるハイメは思わず目を逸らしてしまう……がこういった態度が良くないのだと思い直しユーシスを見つめ返す。

 

「それでいい、これで俺と貴様は対等なクラスメイトという訳だ、という事で少々鍛練に付き合って貰うぞ」

 

「あぁ、臨むところだ」

 

 そうし十五分程二人は互いに一進一退の攻防を繰り広げる。ユーシスは鋭い突きを連発しハイメに主導権を握らせまいとするが対人戦ではハイメに部があるようでハイメはユーシスの突きを避けつつ何とか大きな一撃を決めようとチャンスを伺う。そうしているうちに二人は何やら周りが騒がしくなってきた事に気づく、一旦鍛練を止め周りの人に話を聞くとどうやら集落の二つの入り口付近に魔獣が現れたらしい。

 

「バカな!導力灯だってあるのに……」

 

「くっ……俺達はゼンダー門方面の入り口が近いか、行くぞコバルト、反対側はシュバルツァー達に任る、すまないがこの事を俺達のクラスメイトに伝えてくれ」

 

 住民にユーシスがそう伝えると二人は集落入り口へと走っていく。体が岩石で出来た巨人が確かに集落の方へと向かっており何人か既に集落の男衆が応戦しているようだが巨人の反応は鈍くほとんどダメージを受けている様子はない。

 

「チッ、物理攻撃に耐性を持っているのか厄介な……」

 

「何はともあれ集落の人を逃がすのが最優先だ、自分に考えがあるユーシスはアーツの駆動を!」

 

「……任せるぞ!」

 

 ハイメはその場で剛龍招来をし岩石の巨人に向かい矢のように進んでいく。剛龍招来を下半身に限定したことにより持続時間だけでなくその効果も上がったハイメのスピードはもはやフィーに勝るとも劣らない物となっていた。

 

(今まで肝心なところで失敗していた鳴神流の奥義の一つ『蒼嵐雷斧』今なら出来るかもしれない……いや、必ず成功させる!)

 

不思議と確信めいた予感を抱きながら、ハイメは巨人の股下に潜り込み精一杯力を込めて烈空穿を放つ、そして巨人の大きな体を宙に浮かせる事に成功する。ハイメは素早く巨人に蹴りを放ちながら自分も上へ上へと昇っていき巨人の真上まで跳躍する。

 

「受けろ!鳴神流攻めの型秘伝『蒼嵐雷斧』!」

 

振り上げた右足に氣が収束し斧状の形を作りハイメはそのまま踵落としの要領で巨人の頭めがけて自身の落下に合わせて振り下ろす。ハイメの必殺技を喰らった岩石の巨人はその衝撃で大きく後退する事を余儀なくされる。さらに反撃に移ろうとしても体が痺れ動く事すら許されない。

 

「ハァッハァッ……ユーシス!頼む!」

 

「よくやったコバルト!上出来だ」

 

 ハイメの攻撃の間にユーシスは住民を避難させアーツを駆動しておりハイメの合図でアーツを繰り出す。ハイメの必殺技はダメージ的に言えばそんなに入っていないがユーシスのアーツはそうもいかない。何とかその場から動こうとする巨人だがそれすらもままならずアーツが直撃しその場で転げてしまう。

 

「好機!ユーシス!」

 

「ついてこい!コバルト!」

 

 戦術リンクを繋いだ二人は即座に追撃を入れる、その後一旦後退し様子を見る。

 

「手応えはあったと思うが……」

 

「……!どうやら足りないらしいぞ」

 

 その鈍重そうな体をゆっくりと起こし臨戦体勢に入る。どうやらハイメの一撃で麻痺していた体も元に戻ったようだ。とはいえ一連の攻撃で住民の避難と巨人を集落の入り口から離すことに成功したようで完全に巨人の意識は二人に向いている。

 

「コバルト、まだやれるな?」

 

「こんな事なら委員長の応援でも頼むべきだったと若干後悔はしているがな、くるぞ!」

 

 アーツが有効な攻撃手段のためユーシスに後衛を任せハイメはひたすら巨人に張り付きヒット&アウェイを繰り返す。二人は戦闘不能にならないよう前衛後衛を入れ替えながらダメージを受けても片方がダメージを受けてもすぐに回復できるよう立ち回りながら戦いを進めていく……ある事を信じて。

 

「なぁユーシス!リィン達は来てくれるだろうかなぁ!うおっ!」

 

「余所見をしているからだ馬鹿者!クッ!来てもらわなければ俺達はこのままジリ貧なだけだ!」

 

 だんだんと交代するペースが早まり二人とも肩で息をし、徐々に集落の方へと押し返され始める。ユーシスは既にスタミナが切れかけだんだんと機動力が落ちてきておりハイメも決して軽くはないダメージを負い二人が追い詰められているのは明白だった。

 

(まずい、ユーシスも自分も、もう限界に近い、ならば一か八かの賭けにでるしかない!)

 

「ユーシス!アーツを準備してくれ!一発キツイのをな!」

 

 ハイメの考えを瞬時に汲んだのだろう、だからこそユーシスは反論の声を上げる。

 

「阿呆!また貴様はそうやって自棄になるつもりか!前回の実習で何を学んだ!」

 

「このままリィン達を待っても埒が空かない、このままでは集落に被害も及ぶしジリ貧だ!自分よりもユーシスの方がアーツの扱いに長けているんだ!自棄じゃない作戦だ、頼むぞ」

 

「貴様!これで大怪我などしてみろ、タダでは済まさんぞ!」

 

 ユーシスの言葉を背中に受けながらハイメは巨人へと駆け出す。巨人の繰り出す拳の衝撃によろけながらも腕を伝い巨人の頭部めがけて蹴りを放ち、攻撃動作の途中だった事と蹴りの衝撃が合わさり巨人は転倒する。そこにユーシスが巨人の頭部めがけてユーシスが今放てる最大のアーツを放つ。二人は警戒を解かず巨人をじっくりと観察するがやがて巨人はその体をセピスへと変える。

 

「……終わったか、また貴様に助けられたなコバルト」

 

「今回は我ながら上手くいきすぎたよ……ありがとうユーシス」

 

 二人はハイタッチを交わしこの事態を乗りきった事をお互いに称え会う。ハイメもユーシスもいっぱいいっぱいでお互いに疲れたような顔を見ていると自然と笑みがこぼれる。

 

「おーい!二人とも大丈夫かー!」

 

 遠くからリィンの呼び声が聞こえ事態が終息した事を実感させる。ユーシスは「遅いぞ馬鹿者」と悪態をつきながらも口元は笑っていた。ハイメも震える足に気合いを入れ事態の終息と自分が鳴神流の奥義を成功させたという喜びと確かな達成感を噛み締め空を見上げる。雲間から見える太陽がまるでハイメを祝福しているようだった。

 

~???~

 

「で?これでよかったのか?」

 

「あぁ……周りの奴があんまりに優秀だから何かあんのかと思ったが……底が見えたな、ありゃ正真正銘のカスだ……さぁてあのカスをどういたぶってやるかねぇ……クククク……」

 

~~~~~

 

 ハイメ達はウォーゼル宅で朝食を頂きながら今回の事件の顛末を聞いていた。幸い軽い怪我を負った者は数人いるが大きな怪我を負った住民はおらずまた集落の被害もほぼ0に等しいらしい。ひとまず被害を最小限に食い止められた事にほっと胸を撫で下ろす一同。

 

「それでこういった事は起こるものなのですか?」

 

 A班の全員が気になっていた事を代表してリィンが聞くが導力灯が普及してからは起こっていないらしい。これが人為的に起こされた物なのか、それともノルド高原に何か異変が起きているのかは分からないがとりあえず何が起きてもいいよう備えるとの事と自分達の事は心配いらないから実習に励んで欲しいという言葉と一緒に課題の入った封筒を受けとる。

 課題の内容は薬草の調達、監視塔への食糧配達と手配魔獣の討伐だった。昨日遅くに着いた事と今朝の事件でゆっくりと集落を見て回れていない一同は30分各自自由行動の時間を設け、それから課題に取り込む事になった……のだが。

 

「アリサ、自分に着いてきても何も面白い事などないぞ?」

 

「ダメよ、今朝だって何とかなったから良かったようなものの、一歩間違えたらユーシスと二人揃って大怪我をしてたかもしれないしゃない」

 

 このように心配性なアリサがハイメに着いてきているのだがその姿はまるで保護者と子供のようだった。ハイメとしては外面は平静を保っているが内心は凄く嬉しい。女性として意識しだしたアリサと一緒に居れて嫌なはずがないのだがハイメとしては一つ気になっている事があった。

 

「……リィンと一緒に居なくていいのか?」

 

「ばっ……バッカじゃないの!?何で私がリィンと……!」

 

「ん?俺がどうかしたのか?」

 

 アリサは赤面しながら即座に否定するがどうやらリィンはすぐ近くに居たらしく慌てて弁解をするアリサと何の事だか分かっていないようなリィン。これが気になっていた事でハイメはアリサを意識しだしてから短い期間とはいえ自然とアリサに視線がいくようになったのだがアリサの視線は決まってリィンの方へと向いていた。以前それとなくリィンに聞くとどうやら自由行動日等は何故かアリサと一緒に居る事が多いらしくリィンも「偶然って怖いよな」と半笑いだった。その言葉を聞いてハイメはリィンの朴念人っぷりに思わず舌を巻く事になったのだがそれはさておき、以上の事からアリサがリィンの事を気になっているのは明白であり、リィンも本人は無自覚かもしれないがアリサといる時は表情がどこか明るい。

 

「なぁ二人とも、実は妹に贈り物をしようと思っているんだが良かったら選ぶのを手伝ってくれないか?」

 

「し、仕方ないわね……そういうことなら行くわよハイメ」

 

「あ、あぁ……」

 

 アリサもリィンに誘われて満更でもなさそうだ、三人は集落の交易所にアクセサリーが売っているのを見つけ各自良さそうな物を選ぶ事になる。

 

「これなんてどうだ?」

 

「アンタねぇ!女の子に贈るのにその柄はどうなのよ!」

 

 アクセサリーを選ぶアリサとリィンを少し離れたところから見るハイメはやはり二人は凄くお似合いというか相性抜群だと思う。なんと言うか美男美女のとても絵になる二人なのだ……店にあった鏡に移る自分の顔を思わず見てしまう。醜悪ではないが決して整った顔立ちとは言えない、自分らしい汎用な顔立ちだ。リィンとアリサはカップルに見えるがハイメとアリサが並んだ時、恐らくそういう風には見えないだろう。

 

(それに外見だけじゃない、内面だって、いや内面の方が自分はもっと酷いもんだしな……なによりⅦ組の足を引っ張っている自分が色恋沙汰にうつつを抜かすなんて……)

 

 ハイメはそう思いながらもアリサに視線を向けるとアリサと視線が合ってしまう。

 

「ハイメは良さそうな物見つけたの?」

 

「あ、あぁこれなんてどうだ?」

 

 そう言ってハイメは手にしていた白と紫を基調としたペンダントを見せる。

 

「意外とセンスあるじゃない!ほらリィンも!ハイメを見習いなさい!」

 

「どれどれ?……凄く良いな!エリゼにぴったりじゃないか!」

 

(これ以上二人を見ていると変な事ばかり考えて良くないな)

 

 アリサがアクセサリーを見るのに夢中になっている間にそっとリィンに耳打ちし離れる事とアリサにもプレゼントをしてあげた方が良いことを伝える。リィンは不思議そうな表情をしていだが了承してくれそっとハイメは交易所から離れる。 

 とはいえハイメは特にする事があるわけでもなく、ゆっくりと集落の中を見て回るのだが……

 

「もし、そこのお方」

 

 集合時間までどうやって時間を潰そうか思案していると突然後ろから声を掛けられる。見たところノルドの民でもなさそうだ、体は紫色のローブで覆われており顔は見えないが声からしてかなりの年齢をとった女性だと思われる。

 

「自分に何か?」

 

「お暇そうに見えたので、よろしければこの老いぼれの与太話に付き合ってくれませんかのう」

 

「まぁ……そんなに長くなければ」

 

 一瞬どうするか迷うハイメだったが暇だったのは確かなので老人の話を聞くことにする。

 

「なに、すぐに終わますので……これはワシの故郷に伝わる言い伝えのようなものなのですがあなた様はロストアーツという物をご存知ですかいのう?」

 

「初耳ですが」

 

「なんでも複数の属性の特性を持つアーツらしいのですが……それを使うにはこの大陸のどこかにいる強力な魔獣が落とすクオーツを手に入れなければいけないらしいのです」

 

 複数の属性を持つアーツ、聞くだけで強力だが本当にそんな物が存在するのだろうか、といってももし本当に実在したとして仮に手に入ったとしてアーツが苦手な自分では宝の持ち腐れなんだろうなとハイメは考える。

 

「はは、まぁ失われたなんて言われるくらいですから凄いんでしょうね」

 

「実はですね……失われたマスタークオーツ……という物がこの世のどこかに存在する……と、これがロストアーツとは比べ物にならないくらい強力なもので使用者に絶大な力を与えるらしいのですが……その入手方法はおろか、存在すら極限られた人しか知らないそうですじゃ」

 

「失礼かもしれませんが……誰かが考えつきそうな言い伝えですね……本当に存在するなら一目見てみたいものです、ですがマスタークオーツが使われ始めたのは最近の話だし……にわかには信じられません」

 

 口では否定的な意見を言うもののもしそんな代物が存在するのならばハイメとしてはすがり付きたいと思ってしまう。そんなハイメの心のなかを見透かしたかのように老人はこう言い放つ。

 

「一目見るだけで本当によろしいのですかな?」

 

 ローブの奥から老人の銀色の瞳がハイメの矮小な考えをまるで分かっているかのように見つめてくる。

 

「降参です、自分は嘘をつきました、もしそんな物が本当にあるのならば自分はその力にすがってしまうかもしれません」

 

「ホホホ、若者は正直な方がいいですぞ、ただしもし万が一それを手に入れたとしてもよく考えて使いなされ、なにしろロストマスタークオーツは使用者の心を蝕むらしいので、後がない老いぼれの与太話に付き合ってくれてありがとうございます、お礼といってはなんですがこの老いぼれの故郷に伝わる幸運の御守りを受け取ってくだされ」

 

「は、はぁ……それではありがたく」

 

 老人からかなり古びたような黒いマスタークオーツのようか物があしらわれたペンダントを受け取ると老人は集落の入口の方へと消えていく。まるで最初から存在などしなかったかのように……

 

「はぁ……しかしたとえ心が蝕まれようと……もし力が手に入るなら……いややめよう、無い物ねだりをしても仕方がない、それにそんな力は自分の力ではないしな……そんな物で力を得ても胸を張ってⅦ組の一員とは言えないな」

 

 朝の一件で少し疲れているのだろう、こんな眉唾物の話を真に受けてしまうなんて、ハイメは今の話をを頭の片隅に追いやり時計を確認すると既に集合時間10分前だった。貰ったペンダントを制服の胸ポケットに押し込み、ハイメは集合場所へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 遂にハイメのSクラフト解禁です。実はこれも全く違う作品から作者の好きな技を流用してたりするのですが元ネタ分かったら作者と握手しましょう。ちなみにこのSクラフト、現在のハイメは剛龍招来を使用しなければ使えないので未完成だったりします。
 
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