愚直な軌跡   作:ネオニューンゴ

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お気に入り登録、評価ありがとうございます、とても励みになります。まだまだ至らない点も多いですが物語を少しでも面白く出来るよう、また閃の軌跡という作品の魅力が皆様に少しでも伝わるよう邁進していきたいと思います。少し短めですが4話になります。


第四話 先輩と先輩

 Ⅶ組のメンバーは明日の実習への思いをそれぞれ胸に抱き寮へと帰っていったが、ハイメはそうはいかない。

放課後になると仕事が待っている、苦学生は実習だろうがなんだろうがこの学院に在籍するため己の責務を果たさなければならない。事務員の人に今日の仕事を聞きに行くと、今日の仕事は生徒会が斡旋してくれるらしい。ハイメは仕事を貰うべく、学生館二階の生徒会室前へと来ていた。

 

(生徒会長と会うのは入学式以来か……今はいるだろうか?)

 

 ハイメは一度深呼吸をし、ドアをノックする。中からはーいと間延びした返事が返ってくる。

 トワが居ることを確認したハイメは静かにドアを開けて、生徒会室内へと入室する。

 

「1年Ⅶ組所属ハイメ・コバルトです、仕事の件でトワ・ハーシェル会長にご要件があり参りました」

 

「あ、ハイメくん!待ってたよ~」

 

 トワは書類を片付け、椅子に座るよう促す。お茶を淹れると言われたがハイメはやんわりと断る。トワは若干不服そうではあったが、ハイメは生徒会長にお茶をご馳走になる理由はない、かといった断る理由もないのだが……用件は帝都へ繋がる街道に魔獣の群れが出現したらしい。まだ被害が出ていないので手配するには至ってないらしいが、いかんせん場所が場所のため早急に駆除してほしいとの事でハイメに話が回ってきたらしい。

 帝都の遊撃士ギルドが運営されていればこんな事にはならなかったのだがとトワは謝罪をしてくるが、トワに責任があるのではないとハイメは言う。

 地図を貰い早速魔獣のいる場所へと足を運ぶ事にした。

 誰かに手伝ってもらったほうが良いとトワは言ったがこれは自分の仕事であるのと実習前日な事もありでクラスメイトには迷惑を掛けられない。

 リィンあたりなら頼めば来てくれそうなものだが結局ハイメは一人で行く事にした。

 

「この辺りか……」

 

街道から少し外れた脇道に広場のような場所が出来ており、そこでの目撃証言が最も多いらしい。

ハイメは息を殺しそっと岩影から広場を覗くと確かに居た。トワから貰った紙に書いてある絵と照合する、情報通り四匹の畑あらしの姿が確認出来る。

 

「しかし何故こんな場所に畑あらしがいるんだ?荒らす畑も無いだろうに……しかし四匹か……」

 

 とはいえこちらも仕事だやらない訳にはいかない、そう思いハイメは畑あらしに奇襲を掛ける。

 ハイメの回し蹴りが2体に当たり、畑あらしはちょうど分断された形となる。ダメージを与えた2体を素早く攻撃し、畑あらしが合流するのを防ぎ、残りの2体も震脚で隙を作り出し、難なく撃破できた。

 この学院に入ってまだ日は浅いが対魔獣との戦闘は少しずつコツがつかめてきた事を実感する。

 

「フゥ、これで終わりか……しかし何故このような場所に畑あらしが?」

 

 辺りを見回すと奥に細い道が出来ており、そこにどう流れ着いたかわからないが果物が入った荷物が食い荒らされた跡が残っていた。

 畑あらしにとっては絶好のエサ場となっていたらしい、この事を早くトワ会長に報告すべく来た道を戻ろうとしたその時だった。突如ハイメの顔に砂がかけられる、間一髪顔を横にずらしたが咄嗟の奇襲に反応しきれず右目の視界が奪われてしまった。

 

「くっ!まだ居たのか!?」

 

 残された左目を頼りに辺りを見回すと……居た、それもとびきり大きい畑あらしが……

 

「クソッ!こんな奴の目撃証言など!」

 

 とはいえ大畑あらしはハイメが通ってきた道を塞ぐかのように鎮座している。どうやら通してくれる気はないようだ。

 

「大丈夫だ……倒す必要は……」

 

 ないとは言いきれない、こんな大きい畑あらしを放置して置いては周りへの被害が確実に出てしまう。

 ハイメはため息をつき、構える。とりあえずは右目の視力が回復するまで時間稼ぎをするつもりだったが通路での戦闘な上退路はない。とりあえず広場に出る事が最優先だろう。

 

「出し惜しみはせん!二の型『列空穿』!」

 

 ハイメは相手を悶絶させるつもりで腹に蹴りを入れたが大畑あらしは鳴き声は上げたものの怯むどころかその場から動いてすらいない。今度は自分の番だと言わんばかりに大畑あらしは雄叫びを上げ巨大な尻尾で攻撃してくる。モーションが大きかったため、防御には成功したがハイメは後退を余儀なくされ、すぐ後ろに川という所まで追い詰められてしまった。

 いっそ川に飛び込もうかとすら考えた、今回は完全に相手の力量を見誤ってしまったらしい。

 

(万事休すか……今の自分では荷が重い……慢心したな)

 

 ハイメが逃走も視野に入れはじめたその時何者かがこちらに向かって走ってくる音がきこえ、ハイメはこちらに来ては行けないと声を発しようとするがその者の動きはとても早く、ハイメが声を出す前にこちらに来てしまった。

 

「ゼロ・インパクト!」

 

 凛とした声が辺りに響く。

 ハイメは大きく目を見開き驚いた、何故なら自分の蹴りで微動だにしなかった大畑あらしは大きく後退し、苦悶の表情を浮かべ体勢を崩していからだ。

 

「ぼさっとするな!追撃をかけるぞ少年!」

 

「ッはい!」

 

 ハイメは女性の声で我に返り、急いで女性の後を追い追撃を掛ける。

 ハイメは足を、女性は腹を重点的に狙い、魔獣の体勢が崩れれば二人で同時攻撃をしかけ体勢を崩す、この繰り返しを十分程度続け、ようやく魔獣を倒すことが出来た。

 

「終わった……予想以上にタフな奴だった」

 

「そのようだね、大丈夫かな?」

 

「はい、危ない所を助けて頂きありがとうございました」

 

「なに、後輩が困っていたんだ、先輩として助けるのは当たり前だろう?」

 

 どうやらこの女性はトールズ士官学院の先輩に当たる人らしい。学院内で見かけた事はないし、制服を着ている訳でもないとなると卒業生の方だろうか。

 

「さて、それじゃこの事をトワに報告しに行こうか」

 

「?トワ会長のお知り合いの方でしたか」

 

「知り合いも何も私は彼女の友人さ」

 

(トワ会長は卒業生の方に友人がいたのか)

 

 などと考えながらハイメは女性と学園の帰路へとつく。

その間女性はやけに自分のクラスの事を聞いてきたのは気になった、トワ会長にⅦ組の事を聞いたのだろうか、やけに質問された。

 学院に着き早速トワ会長へ報告をするべく生徒会室へと向かう。幸い会長はまだ生徒会室にいたため、会長を待つという事はなく済んだ。

 

「お疲れ様ハイメくん!ってあれ?なんでアンちゃんも一緒なの?」

 

「まぁちょっとね……それよりトワ、目撃証言は畑あらしのみだったはずなのに大畑あらしまでいたよ……たまたま私が通ったから何とかなったが彼一人では危険だったよ」

 

「えっ!本当なの!?アンちゃん!?」

 

「本当さ、なあ少年?」

 

「ええ、この方に助けて頂いたから何とかなりましたが、正直一人だったと思うと……自分では対処しきれませんでした」

 

 トワはそれを聞くとハイメに謝罪をしてくるが、別にトワが悪いわけではないので謝られても困ってしまう、そもそも会長には複数人で行くことを勧められたのに一人行った自分に落ち度があるとハイメも頭を下げ、二人して頭を下げあっていた。

 

「おいおい……何も二人して謝る事はないだろう?今回は本当に事故のようなものなんだ」

 

「でも、アンちゃん!」

 

「トワに謝り続けられても彼が困ってしまうよ」

 

 確かにその通りであった、上級生のしかも女性に頭を下げられるというのは後輩として男として申し訳ない気持ちになる。

彼女の言い分にトワは渋々と納得し、今度はお礼を述べ、謝罪変わりというわけではないがお茶を出してくれるらしい。今度は断る理由のないハイメは黙ってお茶をご馳走になる事にした。

 ソファーへと腰掛け、紅茶が出るのを女性と待つことにする。

 ハイメは自己紹介がまだだったことと女性の名前を聞いていなかった事に気付き自己紹介を始めた。

 

「自己紹介が遅れてしまいました、自分はハイメ=コバルトです、助けて頂き本当にありがとうございました」

 

「おっとそういえば私も自己紹介をしていなかったね、私はアンゼリカ=ログナー、二年生さ」

 

「ああ、先輩でしたか……ろ、ログナー!?」

 

 ログナーと言えば四大名門の一つであり、北部ノルティア州を統括するログナー侯爵家と言えばこれまた有名な家柄だ。なんと言っても最大の特徴はザクセン鉱山の管理をしている事だっただろうか……ラインフォルト社と共同だったような気もするが。

 しかしこの学院四大名門の子息や令嬢が全員いるのではないかと思ってしまう。そのうち皇族の血縁者や鉄血宰相の血筋の者まで入学してくるのではないだろうか?とハイメはありもしない妄想をしていると、トワが紅茶を淹れ終わったようでティーカップを運んでくる。

 紅茶を一口飲むと、熱すぎず、ぬるすぎず、ちょうど良い温度だ。

 

「フフッどうだい?私のトワは紅茶を淹れるのが上手いだろう?」

 

「ええ……私の?……ああ二人はそういったご関係で」

 

「もう、アンちゃん!変な事言わないの!ハイメ君に誤解されちゃうでしょ!」

 

 その後しばらくトワとアンゼリカが仲よく同じような問答を繰り返していたので、ハイメは紅茶をすすりながら先の戦闘を振り返る。アンゼリカと共闘した時リンクもなくあそこまで連携が取れていたのは間違いなくアンゼリカがハイメに合わせてくれていたからであろう、次にアンゼリカの技の威力について、これは言わずもがなアンゼリカの使う武術『泰斗流』だろう、東方から入ってきた流派で確か体内の気を操り技を放つのが得意だったと師範が言っていたような覚えがある。

 だがアンゼリカの脚運びは武術の型と思えない部分が幾つかあった、秦斗流の事を詳しく知るわけでないハイメだが確信に近いものはあった。もし、あの脚運びが我流の物ならば彼女は天才と呼ばれる部類の人間か相当の努力家なのだろう、ハイメの主観ではあるが元ある武術の型に我流を混ぜて自分のスタイルとして扱う事のできる人間はほんの一握りしかいないと思っている。それを10代でやってのけるのだ、自分もいつかそうでありたいと思う反面どうせ自分には無理だと思ってしまう。

 

「ところでハイメ君?キミは明日から特別実習だったろう?時間はいいのかい?」

 

 そう言われ時計を見ると既に寮でいつも夕食を摂っている時間だった。

 

「あっ……もうこんな時間か、すいません自分は失礼させて頂きます」

 

「うん、実習頑張ってねハイメ君!」

 

「私も健闘を祈らせてもらうよ、もし何か困った事があったら私を訪ねるといい、最近は得物を持って戦う人が多くてね、同じ自分の肉体を武器として使う者のよしみだ」

 

 ハイメは最後にお辞儀をして生徒会室から退出する。二人はハイメを見送りつつ口を開く。

 

「本当に頑張り屋さんだねハイメ君は」

 

「……努力家か、だがそれが欠点にならなければいいけどね、私は少し彼が危ういと感じるよ」

 

「アンちゃん?」

 

「あぁ何でもないよ、私のただの独り言さ」

 

 そう言いつつもアンゼリカは腕を組み少しの間思案にふけるのだった。

 生徒会室を出たハイメは急ぎ足で寮へと戻り食事を食べ、自室へと戻り特別実習の準備を始める。

 ついでに机の整理をしていると一通の手紙が出てきた。

 

 

「む……差出人は……師範か、この日付だと4月の頭には届いているな」

 

 封を切って手紙を読むと、近況報告から始まり、やがて愚痴へと変わっている、ハイメはそんな内容に苦笑しつつも懐かしさを感じてしまう。最後にはハイメがまだ教わっていない技の解説まで付いてきていた。

 

「こんな物を見せられては武人として体が疼いてしまうではないか」

 

 ハイメは明日が実習という事を忘れ外へ行き、日が昇るまでひたすら武術の習練に励むのだった。翌日彼が寝不足になるのは言うまでもない事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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