ちなみに全くの余談なのですが作者はノンケなのですが何故か旧Ⅶ組だといっつもPTがリィン、ユーシス、ガイウス、アリサと男性の比率が高めになっておりました、皆さんはどのキャラクターがお好きでしょうか?作者はユーシスが一番好きです。
それでは5話になります。
4月20日 特別実習日一日目
「ね、眠い……な」
結局ハイメは日が昇るまで鍛練に没頭していてあまり睡眠時間が取れなかった。集合時間もギリギリで下の階に降りて重い瞼をどうにか開けながら駅へと着いた、今リィン達が切符を買っておりハイメはベンチでダウンしている。ガイウスやエリオットに大丈夫かと言われてしまう始末でハイメは面目ないと返すばかりだ。切符を買いに行ったリィンとアリサが戻ってきたようだ。
「切符買ってきたぞ、ハイメ本当に大丈夫か?」
「どうしたの?まさか緊張して眠れなかったとか言わないでしょうね?」
事の次第を皆に話すと溜息をつく者、苦笑いをする者の半々くらいだ、唯一ラウラのみが分かるぞといった表情を浮かべウンウンと頷いている。それからⅦ組のメンバーは思い思い談笑していたがB班の乗る列車がホームへ到着したとアナウンスが流れる。
「それじゃあ僕達は先に行くぞハイメ、お互い頑張ろう」
「ああ、それではなマキアス」
「そなた達に風の導きがあらんことを」
「大変だと思うけど頑張れよガイウス」
B班のメンバーと別れて間もなくハイメ達が乗る列車もホームへと着いたようなので乗り込む。座席は平日の朝早くという事もあってケルディック方面行きの乗客はあまりいないようだ。これがもう少し時間が経って帝都ヘイルダム行きとなれば話は別になってくらのだろうが……
「すまないが自分は少し寝させてもらう、ケルディックに着いたら起こしてくれ」
襲いくる睡魔に限界を感じたハイメはリィン達にそう言うと早々に一つの座席に寝転びすぐに寝息をたてはじめる。
リィン達はその姿にただただ苦笑して見るしかなかった。
「ハイメ、ハイメ!ケルディックに着くぞ!」
「む……」
ハイメは瞼をゆっくりと上げるとリィンの顔が目に入ってくる、一瞬何故自分の部屋にリィンが?と考えたが実習中な事を思いだしすぐに意識を覚醒させる。
朝程の眠さもなく意識はすぐにクリアなものへと変わる。
「すまないリィン助かった」
「いや、気にしないでくれ、それよりもう大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ……ん?サラ教官?」
「駄目よ~実習はもう始まってるんだから寝たりしちゃ、まぁ初回だから見逃してあげるけど」
ハイメは体を起こして大きく伸びをして窓の外へと視線を向ける。
すでに列車は駅へと差し掛かっており、駅には荷物を多く抱えた商人のような人の姿がちらほらと見える。
列車はすぐに停止しハイメ達は列車を降りる。
何故一緒にサラ教官もいるのか気にはなったハイメだが、まぁ初回だしきっと引率か何かだろうと思い思考を切り上げる。
駅を出るとまず飛び込んできたのは大きな広場に何軒もの屋台のようなものが並んでおり商人達の活気で賑わっていた、流石商業都市と呼ばれているだけの事はある。
「それじゃあ私が今回の実習でお世話になる宿《風見亭》へと案内するわね」
「お願いします」
「行きましょ、リィン」
リィンとアリサはそのまま二人で並びながら歩みを進めた。
その後ろにラウラ、エリオット、ハイメはついていく。
ハイメは内心自分が寝ている間にもう仲直りしたんだなと思いながら二人の後ろ姿を見ているのだった。風見亭に着き、お世話になる宿主さんに挨拶を終えて、荷物を部屋へと置く、部屋が男女共用な事をハイメとアリサは抗議したがその努力は虚しくサラに一蹴されてしまう。
その後一階へと降りて早速この実習の課題が記されている紙を受け取り中を確認した。
中には数枚の紙が入っており、そこには手配魔獣の駆除、薬草を取ってきて欲しい、街道灯の交換と依頼の内容とその主が書いてあった。その依頼を見てリィンは何か気になったようでサラを呼び質問をする。
「すみません、サラ教官この必須と書いてある依頼がありますが、それ以外の依頼は必須ではないという事ですか?」
「良いところに気がついたわねリィン、そう必須以外の依頼をするかしないかはあなた達次第よ任せるわ」
質問に答えたサラは頑張ってね♪と言って酒を飲み始めてしまった。五人は極力全ての依頼をこなしたいという事で手配魔獣以外の二つの依頼を二手に別れて行う事にした。
「それじゃあ俺は街灯の交換に行こうかな」
「私も街灯の交換にしようかしら」
「ならばエリオット、すまないが自分と薬草の依頼の方をしないか?薬草なら市場にあるだろうし、こちらは二人で事足りるだろう」
「うん、そうだねそれじゃあ僕も……」
「分かった、ラウラはそれでいいか?」
ここまで唯一意見を出していないラウラに確認を取るとフムと少し思案し思いたったのか口を開いた。
「私がハイメと組ませてもらっても良いだろうか」
その言葉に四人は差違はあれど驚く。
四人共ラウラは誰と組んでも構わないと言うと思っていたのだがまさか名指しでハイメと組みたいと言うとは思っていなかった。エリオットは了承し、ハイメはラウラと行動する事となった。
これはハイメが最も恐れていた事態である、別にラウラを嫌っている訳ではないがハイメが女性と二人で行動をしたのは先日のアンゼリカとの共闘くらいで女性と行動した経験など殆どない。だからこの実習なるべく女性と二人きりもしくは女性二人に対して自分一人になることだけは避けたかった、だから先手を打ちエリオットと二人で薬草の依頼を受けようとしたのだが、完全にハイメの目論見は外れてしまう。
リィンがニヤニヤしながら頑張れよとか言って来たのが無性に腹立たしいがそんな場合ではなかった。そんなハイメ心中を知ってか知らずかラウラは出発を促す。
「よし、それでは行こうかハイメ」
「あ、ああ、そうだな礼拝堂だったか」
町の地図を確認すると風見亭から見て右の方の街道の近くにあるため少し歩く事なる。その間ハイメはラウラにケルディックの事を聞いたり、リィンとアリサの仲直りの経緯を聞いたりしていた。礼拝堂に着き、教区長から必要な薬草を聞き、早速大市にないか探しに出る。
大市はちょうど町の中心にあり祭りの屋台に近い形式で出店している。この町のシンボルと言っても過言ではないだろう。ハイメとラウラは二手に別れて目的の薬草を探す。幸い薬局で『ベアズクロー』という薬草は手に入れたが、頼まれているのはもう一種類、『皇帝ニンジン』は品切れとの事で手に入らなかった。
ひとまずラウラが手にいれて来る事を期待してハイメはラウラと合流する事にした。
「ラウラ、そっちはどうだった?」
「私の方は『皇帝ニンジン』を分けて貰えそうな場所の情報を手にいれた、そなたは?」
「ならちょうどいいな、自分は薬局で『ベアズクロー』を譲って頂いた」
「では早速その場所に向かうとしよう」
二人はケルディック街道にある農家を訪ねるべく街道へと出た。整備された街道とはいえ少なからず魔獣は存在するし舗装された道を外れればなおさらだ。二人は警戒しつつ街道を進むとちょうど街道を塞ぐかのように狼型の魔獣が三匹こちらを威嚇するかのように吠えてくるのでラウラは大剣を抜きハイメも構えをとる。
「ふむ、これは倒さねば進めないな、準備はいいかハイメ」
「ああ、自分が合わせよう行くぞラウラ!」
二人は戦術リンクを繋ぎ魔獣へと向かっていく、まず先手を打ったのはラウラだ身の丈ほどある大剣を上段から振り抜き一匹に致命的なダメージを与える。ラウラの攻撃の隙に二匹の魔獣が攻撃を仕掛けようとするがそれをハイメが許さない。
「やらせはしない!」
ハイメは一発ずつ魔獣の腹に蹴りを入れる、ダメージは少ないが牽制としては充分だった。
二人は即座に自分達の位置を入れ替え、お互いがダメージを与えた魔獣に追撃をかける。
パワータイプのラウラの一撃を与えられていた魔獣は避けようとするがその力もなく、ハイメの踵落としをモロに喰らいその体をセピスへと変える。
「次は私の番だな、ハァッ!」
ラウラの方は跳躍し、己の体重を乗せた一撃を放つ、その大剣から放たれる威力に魔獣は為すすべもなく力尽きる。どうやらラウラとの連携は上手くいったようだとハイメは胸を撫で下ろす。
「そなたに感謝をハイメ」
「いや、ラウラのパワーがあってこそだ、自分は援護したにすぎない」
「それでも背中を預けられる仲間がいるという事はそれだけで価値のあるものだ」
この後も何体かの魔獣に遭遇したが少しダメージを受けはしたものの連携で各個撃破していき、問題なく目的地である農家へと着いた。事情を話すと農家の人は快く『皇帝ニンジン』を分けてくれた。
その後一度リィン達と連絡を取り町で合流する事となった。二人は早足でケルディックへと戻り教区長に目的の品を渡し、集合場所である風見亭へと足を進めた。
風見亭には既に三人とも着いており二人は駆け足で合流する。
「おっ二人共お疲れ様、大変だったな」
「すまない、遅れてしまったな」
「ううん、僕達も今着いたばかりだよ」
「ラウラもお疲れ様」
「そなたもなアリサ」
五人は互いに依頼をこなした事を伝え合い軽く食事を取ってから最後の依頼である東街道の手配魔獣の駆除へと向かう事にした。道中で五人での戦闘となるため全員の役割を明確に決めた方が良いだろうとラウラから提案があり役割を決める事にした。
まず前衛にラウラ、リィン、この二人は切り込み役としての役割となった、次に後衛にはエリオットとアリサ、エリオットはアーツでの攻撃と回復、アリサ弓で前衛の二人の支援、状況によってはアーツでの支援という事となった。最後に中衛はハイメ、ハイメは基本リィンとラウラが取りこぼした敵を後衛の二人に近づけさせない事、場合によっては前衛と同じ役割を担う事となった。リンクは基本的にはリィンとアリサ、ハイメとラウラとなった。
この陣形はずばり的中したようで難なく街道の魔獣には対応できた。
街道の外れの高台になっている場所に手配魔獣はいるらしく、五人は気を引き締めて魔獣がいる高台へと向かう。
高台を登ると手配魔獣が鎮座しているが足音で感づいたのか、魔獣はこちらへと気付くと突進を仕掛けてくる。いち早く反応したラウラが駆け出し大剣を抜き放ち魔獣と相対する。
「くっ」
正面からの力のぶつけ合いに軍杯が上がったのは魔獣の方だった、ラウラ手の痺れを感じたため態勢を立て直すべく後退する、追撃をかけようと魔獣は突進をしてくるがアリサが弓を放ち動きを妨害する。
「よし、皆下がって『アクアブリード』!」
その間にエリオットはアーツの詠唱を終えており魔獣へとアーツをぶつけると魔獣は短い悲鳴を上げて体をのけ反らせる。魔獣に大きな隙ができこれを逃す手はない。
「好機だ、リィン!」
「仕掛けるぞ!」
ハイメとリィンはリンクを繋ぎそれぞれ一撃ずつ加える、だが魔獣もやられてばかりではいない、リィンとハイメから距離を取りアーツの詠唱に入る。二人は即座に散開して追撃を与えようとするが魔獣の詠唱の方が一歩早く、ハイメへとアーツが放たれ、ハイメは対応しきれずに咄嗟に防御しようとするが間に合わない。
「ぬあっ!」
鈍い衝撃がハイメの体を襲い大きく後退を余儀なくされる。これに気をよくしたのか魔獣は続け様にアーツの詠唱を始めるが……
「させないわ!フラムベルジュ!」
アリサが炎を纏った弓矢を当ててアーツの駆動を解除しそこに今度はアリサとリンクを繋いでいたリィンが絶妙なタイミングで一撃を加える。
リィンは反撃こそ貰ったものの確かなダメージを魔獣に与える事に成功した、自分の目的を果たしたリィンは即座に魔獣の間合いから撤退しつつ声を上げる。
「頼む!ラウラ!」
「承知!これで決める!」
気を伺っていたラウラのクラフトが魔獣に直撃し、魔獣はその場に力なく倒れる。
「やった……のか?」
「ええ、どうにか倒せたみたいね」
それぞれのメンバーは魔獣を打ち倒したという事実を胸に噛みしめ、全身から力が抜ける。比較的立ち直りの早かったラウラとリィンが声をかけハイメ達は町へと帰還した。
町に戻る頃には日も傾いている時間で依頼も全てこなしたメンバーはケルディックの大市を見学しようという事になったのだが……商人が言い争いをしている場面に直面、あわや暴力沙汰になりそうだった所をリィンとハイメで仲裁し話を聞く事に、どうやら同じ場所に許可証が発行されておりどちらかが偽装したのではないかという事で掴み合いにまで発展してしまったらしい。話を聞いたタイミングで騒ぎの話を聞いたという元締めが現れその場はお開きとなった。
その後元締めにお礼をしたいと屋敷へと招待され色々と話を聞く事ができた。本来ならば騒ぎを治める立場である領邦軍が何故か来なかった事、税の関係で一悶着あったこと等多くの情報を聞く事ができたメンバーは元締めにお礼を言って屋敷を後にする。
「なかなかキナ臭い話になってきたわね」
「うん、僕でも今回の騒ぎは領邦軍が仕組んだんじゃなきかって思うよ」
「ああ、考えを纏めたいな」
「ひとまず宿へと戻るとしよう」
「自分もその意見に賛成だ」
メンバーは宿へ行き部屋に荷物を置いて夕飯を食べる事にした、だがそれぞれ今日の実習の振り返りを頭の中でしていて口数は少ない。
その空気に耐えきれなくなったリィンが話題を振りはじめ、少しずつ会話が生まれる、そんな時エリオットがふとある疑問を口にする。
「そういえばどういう基準で僕達Ⅶ組のメンバーが決められたんだろうね?」
「ああ、それは自分も気になっていた」
「ふむ、たしかにな」
「まさか入学の動機…とかか?」
「まさかね……」
そこから各々の入学の動機を言い合う事になったがやはりというべきかそれぞれ事情によって、志を持った者等と意見が別れて確信に至る事は出来なかった。そろそろ明日に備え部屋で休もうかと時にラウラがリィンを呼び止め問いかける。
何故本気を出さないのかと?
ラウラ曰くリィンの扱う『八葉一刀流』の妙技はまだまだあるはずだと。このラウラの意見はハイメの心にもグサリと突き刺さる。ハイメも修行期間の途中でこの学院に来たため自身が扱う武術『鳴神流』の全ての技を披露しているわけではない。
ハイメが鍛練を重ねてきてこれなら実践で使えると思い使っているのが『震脚』と『列空穿』である。もちろん他の技も日々時間を見つけて練習しているがいかんせん自分が未熟なため鳴神流のほとんどの技を習得しているとは言いがたい、だから剣技の少なさが本気を出していない事にはならないとハイメは抗議しようとしたがいかんせんラウラの凄みに圧されて開こうとした口をつぐむ。リィンは自分は八葉一刀流の初伝止まりで老師に修行を打ち切られた身だと説明する。
これを聞いたラウラは表情を曇らせてリィンの太刀筋には迷いがあると言う、これにはリィンも参ったといった表情を隠せない。ラウラは言いたい事を言って部屋へと戻って行く、ハイメ達もリィンにかける言葉がみつからずなし崩しに部屋へと戻った。部屋に戻ると今日の疲れがどっと押し寄せてきてハイメはベッドへと身を投げる。
(今日はとにかく寝てしまおう、疲れた)
リィンとラウラの事が気になりはしたが初めての実習という事もあり体に疲労が溜まっていたようでハイメの意識はすぐに眠りへと落ちていった。
(ん?)
ドアの開く音に目を覚ますハイメは周囲を見渡す。リィンのベッドがものけの殻だ、こんな夜中に何処へ行ったのだろうかとハイメは思案しつつもリィンの事が気になったため後を追うべく準備する。
「待って」
声をかけられビクッと肩を震わせるハイメ、声の主はどうやらアリサらしい。
どうやらアリサもハイメと同じ事を考えていたらしく、お互いに苦笑する。
(今日の様子を見る限りリィンとアリサは仲直りをしていたし、言葉も交わしていたな適材適所というやつなのだろう、きっと自分なんかが行くよりよほど良い結果になるだろうしな)
「分かったよアリサ、リィンを頼む」
その言葉にアリサは力強く頷き部屋を出る。
ハイメは再び就寝するべく布団に潜ろうとしたが……これに待ったを掛ける人物がいた、そうラウラだ。
「待って欲しいハイメ」
「ら、ラウラ……すまない起こしてしまったか?」
「リィンがこの部屋を出ていった時から起きていた、少し私に付き合ってくれないか?」
その提案にハイメは驚く、少し体に気だるさが残っていたがハイメ自身少しラウラと話してみたいと思い承諾した。外へ出ると涼しい風が頬を撫でる、昼間あれほど賑わっていた大市の店は畳まれており町は静寂に包まれていた。ハイメは現在ラウラの後に着いている、どうやら街道の方まで足を運ぶらしい。
少し開けた場所へ出るとラウラは歩みを止め、こちらに振り返る。
「ハイメ、一つ頼みがある聞いてはくれぬか?」
「内容にもよるが……」
ラウラは大剣を抜き構える、いきなり何事か、自分が何かラウラの気に障る事をしてしまっただろうかとハイメは思うが続く言葉は予想外なものだった。
「私と手合わせして欲しい」
「何故だ?こう言ってはなんだが自分の実力は恐らくⅦ組で一番低いぞ」
「私はそなたと手合わせがしたいのだ」
「…………分かった」
どうやらラウラは本気のようで真っ直ぐこちらを見つめる瞳を見ると何故か断るという選択肢が消えていった。そうしてハイメとラウラの手合わせが始まる。
「ゆくぞ!」
ラウラは地を蹴り上段から剣を振るう、ハイメとしてはラウラから直撃を貰った時点で致命傷になりかねないのですぐさま横に飛び回避する。
自分の居た場所代を見るとラウラの振るった大剣の一撃が地面に小さなクレーターを作っており、その威力を物語っている、一撃貰うだけでも致命傷になりかねない攻撃にハイメは内心怯むが今は手合わせ中だとその考えを頭から追い出す。ハイメが体勢を建て直すとすぐに追撃が来る。
(全くこちらは無手だというのに、反撃にも移れないか……我ながら情けない……だが!)
「どうしたハイメ!貴殿の武に掛ける思いは!その足は!蹴りは!その程度か!」
ラウラが横薙ぎに大剣を振るう、ハイメはしめたと口角を少し吊り上げる。ハイメが望んでいたのは上段の斬撃ではなく横薙ぎ、ラウラもこちらの意図に気づいたようだが、振り始めた大剣はその重量に逆らわずこちらへと向かってくる
「貰うぞ!≪震脚≫」
ハイメは飛び上がり大剣の腹に向かい足を振りぬく、当然大剣は下へと軌道を変え、ラウラもそれに従い体制を崩す。そこへハイメの蹴りが入った……と思われたがラウラは冷静に剣の柄でハイメの攻撃の軌道を反らす。
こうなると今度はハイメが態勢を崩しラウラは素早い動きでこちらに再度攻撃を仕掛けてくる。ハイメは必死にラウラの攻撃を予測しようと頭を回転させる。
(横薙ぎ!?いや……逆袈裟切りか!?)
「これで私の勝ちだ!」
ハイメの予想に反しラウラの取った行動は柄での連撃、全て綺麗にハイメの鳩尾へと入りハイメはその場に蹲り悶える。この時点で勝負ありだった。苦悶の表情を浮かべているとラウラが立ち上がるのを手伝ってくれた。その後二人は街道に設置されたベンチへと腰掛け体を休める。
ハイメが何を話そうかと思案していると先にラウラが口を開く。
「やはりそなたとの手合わせは楽しかったな」
「お世辞を言わないで欲しい、自分ではラウラの相手など務まらんよ、つまらなかっただろう?」
「お世辞なものか、ハイメ……そなたは戦っている時が一番輝いている、一挙一動からひしひしと伝わって来るのだ、そなたの武術に掛ける思いが」
ラウラがこちらを真っ直ぐに見つめる。ハイメは茶化さないでくれと言おうとしていたがラウラの透き通った琥珀色の眼差しに射ぬかれ息を呑む。
どのくらいそうしていただろうか、ハイメにはこの時間がとても長く感じたが実際にはそこまで過ぎていないのかもしれない。またしても先に口を開いたのはラウラだった。
「さて、明日もあるし今日はこのくらいにしておくか」
そういってラウラは立ち上がりハイメもそれに続く。
「ラウラ……」
「どうしたハイメ?」
「ありがとう」
ハイメの口から出た心からの言葉にラウラは何も言わず笑顔で返す、そう言えばラウラの笑顔を見るのは始めてだな、とハイメは場違いな事を思った。
こうして特別実習一日目は幕を閉じた。