野良ベーシストは運命と出会う   作:なんJお嬢様部

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続きました。
水着回の前編。

「さぁ、水着回ざますよ!」「フンガー!」「いくでガンス!」

ということで(?)水着回です。トコナッツパークの設定は勝手にこちらでマシマシにさせてもらってます。

男女6人(内男1人)、プール、水着回……何も起こらぬはずはなく……。

何が起こるかは本編でどうぞ!

【アンケートについて】
水着回のアンケートはまだまだ募集してます!
そして、案の定ペグ子が強い! やはりメインヒロインは格が違った!

そして、面白い票の散らばり方でびっくり。まだまだ読めない展開です。もしかすると上位二人までなら書くかも?

ちなみに、一緒に乗らなかった人たちも既に話の構想は作ってるので、後編の後書きなんかでもしそれぞれのルートを辿ったらどんなことが起きたかはネタばらしする予定です。


野良ベーシストはどちらかというと山派である(前編)

「ねぇ、わたしたち、何か夏らしいことをしましょうよ!」

「んぁ? どうしたんだよ急に」

 

 ペグ子がそんなことを言い出したのは打ち上げ会場のファミレスで、俺がアルコールのグラスを3杯空けた頃だった。

 

「夏らしいことって、お前、毎日バンドの練習して、フェスに参戦するか、自分でライブに出場する。最高に夏らしかっただろ」

「そんなバンドマン基準で言われても困るわ!」

 

 ペグ子の言葉に他の《ハロハピ》メンバーも口を揃えて追従する。

 

「こころの言う通りだよ、Mr.鳴瀬」

「うんうん、はぐみライブの練習ばっかで、まだ全然遊んでないよー!」

「わ、私も少し遊びたい、かな……」

「鳴瀬さんって、バンドを念頭に置きすぎてたまにずれてますよね」

 

 えぇ……? なにこの流れ? めちゃくちゃ言われるじゃん。

 

 だって、バンドマンだろ? 夏はバンドを見るか()るかしかないじゃん!

 

「なんだよ、みんなめちゃくちゃ言うじゃん。 ……じゃあ、みんなの言う夏らしいことって何? 海に泳ぎにいくとか?」

 

 俺が「海に泳ぎに行く」と口にした瞬間、ペグ子の顔が輝く。

 

「海! いいじゃなーい! わたしのパパがモルディブに海上バンガローを持ってるのよ! 今からプライベートジェットでみんなで一緒に遊びに行きましょう! 黒服の人たち、すぐにジェット機を最寄りの空港まで呼んでちょうだい!」

「ちょっと待ってこころ。今の言葉でパワーワードが飛び出し過ぎて私の頭の理解が追い付いてない」

 

 ペグ子の言葉に奥沢さんが待ったをかける。その待ったで、ゴツい衛星電話で何処かにコンタクトを取ろうとしていた黒服の人の動きにも待ったがかかった。

 

 実際、俺もかなり戸惑った。

 

 モルディブ?

 

 海上バンガロー?

 

 今からプライベートジェット?

 

 ……セレブか!

 

 …………こいつセレブだったわ!

 

 ペグ子の言葉で俺は改めてこいつは住む世界が違うのだと気付かされた。

 

 ああ、ハイソサエティ。

 

 ああ、セレブリティ。

 

「そ、そこまでしなくてももっと近場でいいんじゃないかなぁ? 私、パスポート持ってないし……。例えばプールとかでも泳げるよね?」

 

 松原さんの言葉にペグ子が手を打って喜ぶ。

 

「プール! 花音、ナイスよ! それじゃあ、どこのプールを貸し切ろうかしら? 黒服の人たち、めぼしい国内のプールに連絡をお願いね!」

「ですからスケール! もっと普通のスケールでお願いこころ。でないと私の精神(メンタル)がもたないから」

 

 再びの奥沢さんの渾身のツッコミによって、ペグ子の凶行はなんとかストップされた。

 

 ありがとう奥沢さん! 君の胃の平穏と引き換えに、世界の平和は守られたよ!

 

 そして、その後の話の流れで、この界隈では一番でかいレジャープールの「トコナッツパーク」が話に挙がった。

 

「『トコナッツパーク』、いい響きだね。あそこのプールサイドにはパラソルとデッキチェアが装備されていたはずだ。飲み物片手にゆったりと過ごすにはうってつけの場所だね」

 

 薫が肯定の言葉を出したのを皮切りに、他のみんなも賛同していく。

 

「あそこはおっきいウォータースライダーもあるんだよー! はぐみ、それに乗りたいなー!」

「わ、私は流れるプールでぷかぷか浮き輪で浮かんでいたいです」

「へぇ、今スマホで調べたんですけど、本物の海の砂を入れた波の出るシーサイドプールなんてのもあるみたいですよ? 面白そうじゃないですか」

 

 みんなの言葉を聞いたペグ子が椅子から飛び上がって叫ぶ。

 

「決まりね! 今年の夏はみんなで『トコナッツパーク』よ!」

「おー!」(×4)

 

 どうやら話がまとまったようである。

 

 確かにバンド漬けの日々よりも、たまにはこんな風に羽を伸ばして自分のアウトプット(おもいで)を増やすのも悪くない。

 そんな体験から新しい歌が生まれることだってあり得るのだから。

 

「おー、それじゃあみんな、この機会にゆったりと羽を伸ばしてこいよー。……ぐびっ、ぐびっ……ぷはー、うめー! ……んん?」

 

 話に一段落が着いたところで、久々のアルコール摂取を再開したその時、《ハロハピ》の全員の視線が集まっていることに気付いた俺は手に持ったジョッキを口から離す。

 

 ……何? 何なのこの視線? 俺、なんか変なこと言ったか?

 

 みんなの視線の真意を掴みかねていると、ペグ子が呆れたような表情で口を開いた。

 

「何言ってるのよ鳴瀬。あなたも一緒に行くに決まってるじゃないの!」

「……え。…………えっ!? 俺も!?」

 

 グラスを握っていない方の手で俺は自分の顔を指差すと、ペグ子以外の全員が首を縦に振る。

 

「ああ、もちろんじゃないか。Mr.鳴瀬はわたしたちと共に激しい毎日を過ごした仲だ。羽を伸ばす必要があるのはお互い様さ」

 

 いや、お前らと一緒の休みなんて、休みじゃないんだけど。

 

 喉元までせり上がったその言葉をなんとか飲み込む。

 

「はぐみ、鳴瀬くんだけ仲間外れなんてやだよー! ねぇ、一緒に行こうよ! かのちゃん先輩も鳴瀬くんが一緒の方がいいよね?」

「ふぇっ!? そ、そう、ですね。男の人が一緒の方が、何かと安心できますし……」

 

 北沢さんに話を振られた松原さんが上目遣いで俺を見ながらおずおずと答える。

 

 なんだか雨の日に棄てられた子犬のような不安げなその目を見ていると、彼女にそんな目をさせた俺が血も涙もない大罪人に思えてくる。

 

 ああ、松原さんその目で俺を見ないで! お願い!

 

 そして、そんな様子を見た奥沢さんがニヤニヤした顔で俺の方を見る。

 

 ……うわ、めっちゃ悪い顔してますやん。絶対悪ノリするやつですやん。

 

 そんなことを考えていると奥沢さんが口を開く。

 

「まー、女の子のおっぱいが大好きな鳴瀬さんにはちょうどいいんじゃないですかね。みんな水着ですし」

「ちょっ、おまっ、奥沢さん、マジでそれ止めて。折角アルコールで全て忘れようとしてたところだったのに」

 

 おいおいおい、禁じ手ですよそいつは。いかん、一気に酔いが覚めたわ。

 

 そして、北沢さんと松原さんは赤くなって腕で胸を隠すし! 見てねーし! あ、いや、ちょっとは見てしまったかもしれないけど!

 

 んで、奥沢さんも顔赤くなってるじゃん! 恥ずかしいなら言わなくてもいいじゃん!

 

 ああ、もう、これ以上何か言われる前に回避だ回避!

 

「わかった、わかりました! 行きます、俺もプールに行きまーす!」

 

 そう言った瞬間、隣の席のペグ子が嬉しそうに俺の腕に飛びつく。

 

「なーんだ、やっぱり鳴瀬もプールに行きたかったんじゃなーい!」

「この流れでそう言われると、俺がおっぱいのためにプールに行きたい男みたいになるからマジでやめて」

 

 そんなこんなで、俺は《ハロハピ》メンバーみんなと「トコナッツパーク」に行くことになったのである。

 

 ……やべぇ、嫌な予感しかしねぇ。

 

 ……とりあえず、まずは遺書の準備からかな?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「わーい! ウェミダー!」

「いや、プールだろ。あと叫ぶな。迷惑だから」

「なんとなくこう言わないといけない気がしたのよ!」

「それ、何の義務感?」

 

 俺の隣で叫ぶペグ子に、冷静なツッコミを入れながら、俺の心はこれまで経験したことがないほどにざわついていた。

 

 なぜなら、俺の隣のペグ子が水着姿だからである。

 

 ペグ子は白を基調にカラフルなドットの模様を散らして、裾には少しフリルをあしらったようなセパレートタイプの水着を着ていた。少し少女趣味のようにも見えるが、逆にそれがペグ子には合っている。

 

 水着の上下の基本的なデザインは布の面積が多めでそこまで際どいタイプではないのだが、(黙っていれば)美少女のペグ子が水着を着ているという事実だけで心が騒ぐ。

 

 しかも、水着になってわかったがペグ子は以外と着痩せするタイプだ。普段がだぼっとしたボーダーのシャツにオーバーオールというシルエットの出にくい私服のことが多いので、水着だとそれがより際立つ。

 

 子供っぽい言動でカモフラージュされていたが、やはり年頃の女の子ということもあって出るところがちゃんと出て……

 

 ……! ち、違う! 俺は何も見てない! いや、何も見てなくはないけど、違う! 違うんだよ!

 

 俺の中の悪い俺を否定するために、がんがんと頭を側のパラソルの支柱に打ち付けていると、ペグ子が「鳴瀬、大丈夫なの?」と、本気で心配そうな顔をして尋ねてきたのですぐにやめた。

 

 ……ペグ子、すまん。今の俺にはお前に心配してもらう資格はないんだ。俺はただのおっぱい好きのクソ野郎だったよ。

 

 そんな俺の心の声など聞こえていないペグ子は満足そうにその両腕を天に伸ばす。

 

「んーサイコーね! そうだ鳴瀬、今日は早くから場所取りありがとね! これだけの人出なんだもの、大変だったでしょう?」

「ん、あー……、いや、たいしたことないって」

「ほんとに?」

「ほんとほんと」

 

 ペグ子のねぎらいの言葉に俺の歯切れが悪かったのには理由がある。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 俺は、今日の朝イチでこのプール「トコナッツパーク」の開場に合わせて並んだ。この界隈で、設備が充実したプールというのはここしかなく、特にこんな好天に恵まれた日はプールサイドの場所取りは熾烈を極めることが予想されたからだ。

 

 しかし、大学のサークル1回生の時や2回生になってからの新歓の花見なんかで前日からの場所取りも経験したことがある俺には早起きしての場所取りなどは苦でもなかった。

 

 そして、予定通り開場の一時間以上前に「トコナッツパーク」の前に着いたのだが、

 

「うわ!? もう結構並んでるじゃん!」

 

 なんと既にトコナッツパークの入り口前には50人近い人だかりができていたのだ。

 

 プールサイドのデッキチェアなんかも確保したかったのだが、この人数だと座るのに最適なスペースの確保すらも厳しいレベルだ。

 

「マジかー、結構暇な人間っているんだな……あれ?」

 

 自分の見通しが甘かったことに頭を抱えていると、俺はその行列の前部に見たことがある気がする顔を見つけた。

 

 すると、俺が視線を送っていることにその人も気が付いたようでこちらを振り返る。彼女が振り返り、その顔を正面から見たことで俺は今度こそ確信した。

 

 服装こそ普段とは異なっているものの、あれはーー

 

「ーーあのー、もしかしてこころの黒服の人ですか?」

「おや、鳴瀬様ではないですか」

 

 俺の声かけに彼女がにっこりと微笑んで返事をする。やはり彼女は俺が考えていた通り、いつもペグ子の側で控えている三人のレギュラーメンバーの黒服の一人だったのだ。今日は夏らしく白い薄手のワンピースだから危うく見逃しそうになった。

 

 今日は黒服じゃない黒服の人が俺にそう答えた次の瞬間。

 

「うおぅ!?」

 

 なんと列を形成していた大半の人たちが一斉に俺の方に振り返ったのだ。ライブで視線に曝されることには慣れている俺でも、街中で急に大量の一般人から注目されるのは流石に戸惑う。

 

 しかし、よくよくその人たちを見ると、その全てが女性で、しかもなんだかほとんどの人に見覚えがあった。

 

「……えっと、もしかしてこれみんな黒服の人たちですか?」

 

 俺の問いに黒服の人が首肯する。

 

「はい、本日は私共の休暇も兼ねて、こころお嬢様のために、本日の日付変更時刻頃から、一同入り口前で待機しておりました」

「休暇の意味! 全然休暇になってないじゃん! でも、ということは……」

 

 改めて列を見直すと、黒服の人たち以外に並んでるのはたったの二家族だけである。

 

 大量に見えたその列はなんとほぼペグ子の家のお手伝いさんだけで形成されていたのだ。

 

 いや、俺が来た意味なかったじゃん!

 

 折角朝早くから起きて準備をしたのにも関わらず、肩透かしを喰らったかたちになった俺は心の中で頭を抱えた。流石に天下の往来で急に頭を抱えることを慎むぐらいの美徳は俺も持ち合わせていた。

 

 だが、そんな俺の心は黒服の人にはお見通しだったようである。

 

「鳴瀬様、そんなにお気になさらないで下さい」

「えっ?」

 

 その言葉に、俺が黒服の人へと意識を向けると、彼女は口元に軽く手を当ててくすりと笑った。それは、普段はキリッとした表情で、腰の後ろに手を回して控えていることがほとんどの彼女には珍しい表情と仕草だった。

 

「こころお嬢様たちのお席は鳴瀬様が確保してくださいませ」

「えっ、いや、それは流石に……」

 

 彼女の申し出は手柄を俺に譲ることに等しいものだった。それは、俺も気が引けたので辞退しようと口を開こうとする前に、黒服の人が首を左右に振った。

 

「いいのです、私共はあくまでも仕事の範疇ですから。お友達である鳴瀬様がわざわざ席を確保してくださったことの方が、こころお嬢様も喜ぶと思いますから」

 

 彼女のその言葉に、周囲の黒服の人たち(やはり今日は全員黒服ではないが、反応からして恐らくそうだ)が頷く。

 流石にここまで言われて辞退するのは逆に失礼だと判断した俺はその言葉に従うことにした。

 

「わかりました。それではそうさせてもらいます。すみません、なんか気を遣わせてしまって」

 

 そう言って申し訳ない気持ちで頭を下げる俺に彼女の再び首を左右に振った。

 

「いえいえ、鳴瀬様がいつもこころお嬢様の無茶振りで苦労されてるのは私共も知っておりますので、この辺りで心証を良くしておくと今日は無茶振りも多少は減ると思いますので」

 

 ああ、なんという気遣いだろうか。

 

 黒服の人は今後起こるであろう俺の心労にまで配慮してくれている。同じペグ子に振り回される者同士共感(エンパシー)を感じてくれているのだろうか。こんなにありがたいことはない。

 

 この世に必要なものは「Peace,(へいわ) Love(あい), empathy(きょうかん)」。ああ、やっぱりカート・コバーンの言うことは間違ってなんかいなかったんだね。

 

 と、そこまで考えて気付いた。

 

 ……だったら、いつももっと助けてくれてもいいのでは?

 

「あ、それは無理です。こころお嬢様には無茶を言えるお友達も必要だと思っておりますので」

「まだ何も言ってないのに!?」

 

 こえーよ、やっぱりエスパーかな?

 

 まるでこちらの思考を読んだかのように発言を置きにくる黒服の人にビビっていると、黒服の人がまたクスクスと笑った。

 

「それに、私たちもやっぱり夏休みを楽しみたいので。みんな、後のことは鳴瀬様に任せて今日はバカンスよ!」

「やったー!」(無数の歓声)

「えっ、ちょ……まっ……」

 

 体よく厄介ごとを押し付けられたことに気付いたその時「開園でーす!」の声と共に「トコナッツパーク」の門が開く。

 

「あっ、どうやら開園時間のようですね。それでは鳴瀬様、同じこころお嬢様に振り回される者同士のよしみで、今日は楽しませていただきますね!」

 

 そして、言いたいことを言うだけ言って、黒服の人たちはみな雪崩れ込むように「トコナッツパーク」の中へと消えていった。

 

 えぇ……これ、場所取りの功績の代わりに、残りの面倒ごとを全部引き受けることになったやつですやん。

 

 しかし、本当に楽しそうな黒服の人たちの表情と、普段の彼女たちの苦労を知っている俺には何も言うことができず今に至る訳だった。 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 というわけで、場所取りに関しては俺は手柄を譲ってもらった身なので何も誉められる立場じゃなかった。

 

 むしろ誉めてもらうところがあるとするなら、今日の今後起こるであろう一切の出来事(トラブル)の面倒を俺が見ることを引き受けたことなのだが、ここではそれをアピールすることも叶わず八方塞がりである。

 

 あー、マジで貧乏くじ引いたわ。

 

 そんなことを俺がガックリと肩を落としていると、

 

「あっ、鳴瀬。みんなも来たわよ! おーい! みんなこっちよー!」

「おー、みんな来たか。こっちーー」

 

 そこまで言って言葉を失った。

 

 なぜなら、俺の目の前に現れた水着姿の彼女たちは女神と見紛うほどの美しさだったからだ。

 

「やぁ、二人ともお待たせしたね。でも、乙女の準備には色々と時間がかかるものだと理解してくれたまえ」

 

 そう言って現れた薫は、純白のビキニに白のパレオを着けたシンプルな水着だ。

 

 そして、そのシンプルさが薫のスタイルの良さをぐっと引き立てる。素材が良いと下手に手を加える必要がないことの典型と言ってもいいだろう。

 普段がマニッシュなパンツルックが多い彼女の水着姿というギャップも、その魅力を引き立てるのに一役買っているのは間違いない。

 

 まさに地上に降りた美の女神(ミューズ)と言っても過言ではない美しさだ。

 

「こころちゃんが早すぎるんだよー。鳴瀬くんおまたせー!」

 

 北沢さんは上はチューブトップタイプの青と白のボーダー、下は赤と白のボーダーのセパレートだ。それにオーバーレイヤーとして上はシースルーのネックホルダータイプのものを、下はショートパンツタイプの水着を重ね着している。

 

 元気印の彼女らしい動き易さに重点を置いたデザインだが、上のシースルーや、下のショートパンツの外したボタンからちらりと見えるアンダーレイヤーの水着が大人らしさを演出している。

 

 そんな背伸びした部分が見え隠れする、少女と大人の境界線にあるような彼女の姿に不覚にもぐっと来てしまう。

 

「ふぇぇ……ま、待ってください~」

 

 二人に置いて行かれないように必死に走ってきた松原さんは、以外にも赤を基調にした鮮やかなセパレートの水着だった。要所に大きめのフリルがあしらわれているのもその華やかさを加速させている。

 

 オーバーレイヤーにシースルーの青のカーディガンのような水着を合わせて少し鮮やかさを落としているが、それでもその色彩は色素の薄い彼女の肌と髪とのコントラストで目を引いた。

 

 いつもは大人しい松原さんがこんなにも大胆な水着を着てくる。それを見ることができただけでも僥倖と言えるような可愛らしさだ。

 

「ああ、もう、みんなちゃんと日焼け止め塗らないと後悔しますよー!」

 

 最後に日焼け止めを持って現れたのは奥沢さん。

 

 彼女の水着は他のみんなに比べると大人しめのデザインで、上は飾り気のない紺のビキニ、下はフェイクデニムのハーフパンツタイプの水着だ。

 

 しかし、それでも布の面積が私服から減ったことにより、奥沢さんの普段は隠れたスタイルの良さが十分に出ている。特に、ビキニ姿の上半身は男なら振り向かずにはいられないような色気がある。

 

 スタジオ《arrows(アローズ)》のラウンジでいつも奥沢さんを気にかけている男たちに、「俺、奥沢さんとプールに行って水着姿を見たんだよね」なんて言ってしまった日には、俺はその場でサバトの贄とされて明日の朝日は間違いなく拝むことができないだろう。

 

 とにかく。

 

 この時改めて、俺はとんでもない美少女たちに囲まれていたのだと再認識させられたのだった。

 

「あら~、鳴瀬ったらみんなに見とれてるじゃないの~!」

「ちょっ、み、見とれてねーし!」

 

 ペグ子がいきなり核心を突いた茶々を入れてきたので、「やーい、お前、○○と付き合ってるんだろー!」と言われた時の男子小学生みたいな返しをしてしまった。

 

 そして、そのせいで後からやって来た《ハロハピ》四人組が頬を赤らめる。

 

「ふ、ふっ、ま、まぁMr.鳴瀬も男だから、そういうところがあるのは致し方ないね、うん」

「もう! 鳴瀬くんのエッチ~!」

「ふ、ふぇぇぇ……(放心)」

「鳴瀬さん……やっぱり、鳴瀬さんって、その……」

 

 ちょっと、もう、なんだよこの雰囲気!

 

 ペグ子め、マジでいつかシバく!

 

 俺は恐らく一生不可能であろうことを固く心に誓うと、慌ててペグ子の発言を否定しに走った。

 

「あー! もー! 違いますぅ~! 俺はみんなのこと全然そんな目で見てないですぅ~!」

 

 しかし、そう言った瞬間、今度はみんなの顔があからさまに不満気に変わる。

 

「そういうところだぞ、Mr.鳴瀬」

「むー、鳴瀬くんひっどーい!」

「な、鳴瀬さん…………(涙目)」

「はぁ……、まぁ、バンド脳の鳴瀬さんにはまったく期待してませんでしたよ、私は」

 

 ……えっ、何これ。

 

 何なの? 俺はどうすればよかったの? 一体何が正解だったの? 

 

 頼むから、誰か教えてくれよ! ねぇ!?

 

 そんな俺の心の叫びを聞き届けてくれる者などもちろんいなかったし、恋愛経験値ゼロの俺に正解が思い付くことなどは決してなかった。

 

 そんな中、一切の空気を読まないメンタル強者ペグ子がパンパンと手を叩く。

 

「はいはい、みんな! 折角プールに来たのよ! そんな表情してないで楽しみましょうよ!」

 

 ねぇ、誰のせいでこんな風になったと思ってるのかな?

 

 流石の俺もツッコミを入れようと口を開きかけたその前に、《ハロハピ》メンバーが次々と口を開く。

 

「ふっ、確かに折角の貴重な時間、最高に楽しんでこそというものだ」

「はぐみもいっぱい泳ぐよー!」

「は、早く浮き輪を膨らませなくちゃ……。ポンプ借りてこよう」

「あ、デッキチェアも人数分確保してくれてるんですね。それじゃあ私はジュースでも片手にゆったりと過ごしますか~」

 

 え? あれ? みんな気持ちの切り替え早くない?

 

 周りのノリに取り残される俺を尻目に、ペグ子はみんなの反応に満足そうに頷き、右手の拳を天へと突き上げた。

 

「それじゃあ、みんな! 最高の夏にするわよー! オー!」

「オー!」(×4)

「えっ……あの、ちょっと……」

 

 ペグ子の言葉に応えて天高く拳を突き上げた《ハロハピ》メンバーたちは、きゃいきゃいとはしゃぎながらみんなでどこかへと出かけ、後にはポツンと俺一人が残された。

 

「……とりあえず、ラジオ体操しようか。うん。」

 

 チャンチャッチャ チャチャチャチャ チャンチャッチャ チャチャチャチャ チャチャチャチャ チャチャチャチャ チャチャチャチャチャン ウデヲマエカラオオキクアゲテ セノビノウンドウカラー

 

 持ってきていたウォークマンのイヤホンからラジオ体操第一が俺の耳に響く。

 

 こうして、俺の「トコナッツパーク」はラジオ体操第一の音楽と共に、なんとも言えない釈然としない思いから始まったのだった。




結構早く書けた!

この鳴瀬君とかいう男の子かわいそう(他人事)

まぁ、対価として《ハロハピ》の水着を見たんだから仕方ないね。

???「錬金術の基本は等価交換!」
鳴瀬君「チクショウ……! (メンタルを)持っていかれた……!」

そして、後編のアンケートですが、これからすぐに執筆に取りかかるので期限をちょっと巻きます。

明日の昼までをリミットにしますので皆様のご協力をよろしくお願いいたします!

奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?

  • 結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
  • 田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。
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