久しぶりの本編でここから二章開始となります。
今後の大きな流れとしては、はぐみちゃんのチームメイトのエピソードメインで展開していきますが、もしかすると時空を歪めてゲーム二期のエピソードを盛るかもしれません。
サイドストーリーも適宜挟むのでゆっくり進行になるかな? じっくりとお付き合いよろしくお願いいたします。
【お礼】
これを書いている時点で、お気に入り300人&UA20000回達成しました。皆様ありがとうございます!
300人って言ったら、ほら、あれだよ、うん、そう、あれな(上手い例えが思い付かない)!
好き勝手思うままに書かせていただいている《バンドリ》、そして《ハロハピ》の二次創作をこれだけの方に追いかけていただいていることに、《バンドリ》と皆様への感謝の念に絶えません。
なのでこれからも好き勝手に書きまぁす(暴論)! よろしくお願いしまっす!
【アンケートについて】
薫さんのサイドストーリーはアンケートの結果遊園地ルートの乙女チック重点になりました! 100名以上の方に協力いただき感謝です!
そして、即刻次のはぐみちゃんルートのアンケートに移ります。この話を投下した時点でアンケートは入れ替わってます。
内容は以下の二つになります。
①お家でベース練習ルート
前に鳴瀬君の家で約束したように、鳴瀬君がはぐみちゃんのお家にお邪魔して一緒にベースの練習をするルート。イメージとしてはこころちゃんルートに近いかな? 外堀埋められ系主人公鳴瀬君。
②お外で疑似デートルート
勉強漬けで体が鈍り始めたことを鳴瀬君がぼやいていると、はぐみちゃんがスポーツセンターでの運動に誘う話。最初は《ハロハピ》メンバーでいく予定が、他のメンバーの都合がつかなくなり、いつの間にか二人で行くことに。最初は気にしていなかった二人が途中でお互いに意識し始めて……という感じ。
選べるのはどちらか一つ! どうか見たいと思うルートにじゃんじゃん投票してください! ご協力よろしくお願いいたします!
野良ベーシストは次の目的地へと再出発する
人の心というものは熱しやすく冷めやすい鉄のようなものだと思う。
熱を失って固まったそれに再度火を灯すことはもちろんできる。
できるのだが、一度冷めたそれに再び熱を送ることの煩わしさ、その気になればいつでも熱を取り戻せるという慢心、これからも何度も熱を送り続けなければならないという将来への不安。
これらの要素が絡まりあって、再び熱を帯びることの無い心のなんと多いことだろうか。
特に、心がかなりの高熱を経験した後ほど、この手の事故は往々にして起こる。
そう、それは人生初めてのライブが想像以上にオーディエンスに受け入れられてしまったバンドにも往々にして起こるものなのである。
故に、俺はライブハウス《
ーー鉄は熱いうちに打て。
未だ熱を帯びたままの《ハロハピ》を、すぐに徹底的に叩くことで世界を切り開くための
これが、俺が《ハロハピ》のアドバイザーとして現在抱える
◇◇◇
「こんちゃーす」
「おう、鳴瀬の坊主じゃねーか!」
俺が挨拶をしながら《arrows》の扉を潜ると、いつものようにカウンターに立っていたオーナーの
「聞いたぜ、鳴瀬。《ハロー、ハッピーワールド!》初ライブで大爆発したらしいじゃねーか。《ハニースイート デスメタル(HS DM)》の直後の出番で、あいつらの客のテンション全部喰っちまったんだって?」
「耳が早いッスね、親父さん」
「うちの客でライブに行った奴らが全員口を揃えて『《ハロハピ》はヤバい。間違いなく
そう言って四方津さんはニヤリと笑う。
「バンドのアドバイザーとしては鼻高々ってところか? どうなんだよ鳴瀬クン?」
「まー、否定はしませんけどね。でも、見えた課題も多いライブでしたよ」
ライブを生で見てきた素直な俺の感想に四方津さんはやれやれといった
「そりゃ、《バックドロップ》でゴリゴリやってた坊主からしたらもの足りんだろうがな。もっと褒めてやってもいいんじゃないのか」
四方津さんの言葉に俺は首を横に振る。
「褒める言葉はライブ後の打ち上げの時に十分言いましたよ。あんまり甘やかしすぎて付け上がってしまうのもあれなんで、ここからしばらくはガチでいきます」
「おお、怖い怖い。練習の鬼の鳴瀬クンの本気モードなんて同情しちまうぜ」
わざとらしく体をブルッと震わせてから、四方津さんは俺にスタジオの鍵を投げるように渡してくる。
「ほい、それじゃあ鍵な。俺のお気に入りのこころちゃんはともかく、他の子は年相応の女子高生だからな。バンドマンであること以前に、それを忘れるなよ」
「うっす」
空中で鍵をパシッと受け止めながら俺は頷く。
人生経験では到底敵うことの無い
そんなことを考えていると、四方津さんが今度はニヤニヤした表情を浮かべる。
この
「……まだ何かあるッスか?」
俺がげんなりした表情を浮かべながら探りを入れると、四方津さんはそれにすぐに乗ってきた。
「いやいや、《ハロハピ》がバンドとして一つ上のステージに行ったところで、鳴瀬クンと女の子達の仲も一つ上のステージに行ったのかと気になってな」
やっぱりこれか。四方津さんもこれがなければもっと気安く話せるんだがなぁ……。
モテない、カネない、イケてないの三拍子が揃った男のバンドマンの未来を憂う四方津さんは、とにかく結婚適齢期を迎えそうな男のバンドマンへの恋愛がらみのお節介が多い。
ひどい時には結婚相談所のアドバイザーですらここまで親身にはならんだろうというレベルで話を持ちかけてくるので、一体俺はここに何をしに来たんだと戸惑うこともしばしばである。
俺はなんとか話を早く切り上げられないか頭を抱えながら四方津さんと対峙した。
「いや、まぁ、一つ上のステージに行ったかはともかく、絆は深まったと思いますよ」
「ほー、そうかそうか。良いことじゃねえか!」
四方津さんが笑顔で俺の肩をバシバシと叩く。痛い。
「親父さん、痛いっす」
俺の抗議の声を受けても四方津さんの攻撃は止まらなかった。
「これぐらい我慢しろ! 俺は正しい道を歩み始めた後輩を祝福してるだけなんだからよ!」
……とんだ手荒い祝福があったもんだな。
肩パンをあくまでも祝福と言い張る四方津さんに、しかし、その心から嬉しそうな顔を見て更なる抗議の言葉をグッと飲み込んだ。
大学進学のために瀬戸内海を見渡すような田舎から出てきて1年強。四方津さんには本当にお世話になった。ただのスタジオの一利用者以上に俺は気にかけてもらっている。
今まで俺の人生に影響を与えてくれた人物は何人かいるが、目の前のこの傑物も俺という人間を構成する要素の一つであることは疑いようもない事実だ。
そんな人の祝福を甘んじて受けないのは罰が当たるというものだ。
「はは、ありがとうございます親父さん」
お礼の言葉を言うと、四方津さんはようやく肩を叩くのを止めて、今度はカウンター越しに俺の方にずいっと身を乗り出してきた。
「いいってことよ。……んで、ちょーっと聞きたいことがあるんだがね」
「なんです?」
耳打ちするようなその声のトーンに俺も顔を近付けて囁くように答える。
「鳴瀬、お前《ハロハピ》のあの子達の中では誰が一番なんだよ?」
「えっ?」
「誰が一番なんだ」
そんなことは今まで考えたこともなかった。《ハロハピ》のメンバーは個性の宝石箱のようなものだ。金子みすゞの「みんな違って みんないい」というように優劣をつけるべきものではない。
そんな俺の内心の戸惑いを見透かしたかのように四方津さんが言葉を続ける。
「もちろん《ハロハピ》のあの子達はみんないい子だよ。俺が言ってるのはそういうのじゃなくて、
「それは……」
それこそ正に埒外というものだ。彼女たちに対して、バンドマンとして以外で、一人の男として異性を見る目でときめいたことなんてーー
ーーあるかもしれない。
彼女たちとの今までの思い出を呼び起こしてみると、確かにそんなことがなかったかと言われれば、はっきりと否定することができない。
彼女たちのひたむきなその姿に、前向きなその姿勢に、情熱的なその演奏に、俺がバンドマンとしてときめいたのは疑いようもない事実だ。
じゃあ、俺はそんな彼女たちの姿に、男として異性に対するときめきを感じてはいなかったのか。
…………ダメだ。分からん。おいおい、マジか。今までこんなこと考えたこともなかったのに、ここでか。
まぁ、俺も一生を独り身で過ごすとは思っていなかったから、いずれはそういうこともあるだろうとは思っていた。
でも、それがまさかこんなに早いタイミングで、しかも相手があの《ハロハピ》の5人に対してだとは思ってもみなかった。
そのまま二の句を告げられず黙り込んでしまう俺に、四方津さんはいつものニヤニヤとした表情を浮かべる。
「おやおや、これは堅物っぽい鳴瀬の坊主にも初めての春が来たってところかな」
「茶化さないでくださいよ……」
四方津さんの顔にしっしと手を振ると、俺はカウンターから距離を置く。
「まぁ、でもよ……冗談じゃなくて、これからはそういうこともちゃんと考えた方がいいぞ。そういう経験をすることで自分という世界に深みが出ることだってあるんだからな」
「肝に銘じておきます」
四方津さんのアドバイスに俺は素直に頷いた。
四方津さんの言うことは恐らく間違っていないのだろう。
それは分かっているのだが、それを自分の腑に落とすにはどうやらしばらく時間がかかりそうだった。
そうして少し複雑な表情を浮かべているであろう俺に、四方津さんはさらに畳み掛けるような言葉を放つ。
「それに、もし仮に鳴瀬がこのままあの子達と深い仲になったとしても最終的に選べるのは5人の内の1人だけだ。それも頭に入れとけよ」
「…………」
この言葉に、俺は返事ができなかった。
俺が彼女たちの中から一人選ぶ? そんなことは無理だ。
誰を選んでも正解で、誰を選んでも間違い。これはそんな矛盾を孕んだ問題だ。
少なくとも、もし仮に誰か一人を俺が選んだら、その時点で現在の《ハロハピ》という世界はそのままではいられなくなってしまうだろう。
俺を仲間の一人だと言ってくれた《ハロハピ》を、俺が俺自身の手で壊す。
そんなことができるはずがない。いや、許されるはずがない。
《ハロハピ》はペグ子の
でも。
それでも。
もしも、その時を迎えてしまったら俺はーー
「ーー色々とありがとうございます、親父さん。それじゃあ、俺はそろそろスタジオの準備をするんでこれで」
俺は逃げた。逃げるしかなかった。
この問題に対する答えを出すには、今の俺には圧倒的に時間も覚悟も足りていなかった。
ああ、存外に俺は情けない奴だったんだな。
意外なところで露呈した女々しさに、俺は歯噛みしてしまう。
「そうか、まぁぼちぼちやれよ」
四方津さんはそんな俺を見透かしたように深く切り込んではこなかった。
この辺りの機微が、俺と四方津さんの間に深く横たわる人生経験という名の溝を感じさせる。
でも、それは俺が四方津さんぐらいの歳になっても、もしかしたらまだまだ埋まっていないかもしれない。
「……はぁ」
スタジオに向かう細い廊下で、俺は人知れず溜め息を吐く。
昔は、早く大人になりたかった。
大人になれば、ベースはもっと上手くなって、バンド活動ももっとうまくいって、すぐにメジャーデビューできると思っていた。世界中に俺の曲と演奏を届けられる日が必ず来る。無邪気にそう信じていた。
でも、実際に歳を取っていよいよ大人の世界が見えてくると、そこは昔の俺が考えていたよりも最も複雑で、昔の夢は井戸の底から覗く太陽のように遠く小さくなった。
でも、今はそれでよかったと思っている。
もしも脇目も振らずに大人になっていたとしたら、たぶん俺は色々なしがらみの糸に雁字絡めにされて、どこかでぶっ壊れていただろうから。
今はただ、目の前で絡まった問題を一つづつ解いて、ゆっくりと大人になっていけばいいさ。
しかし、そんな風に考える俺の前に新しく転がり込んできた問題は、5本の糸が複雑に絡み合う難題だった。
……やれやれ、どうやら俺が大人になる日はまだ先の話のようだな。
相変わらず俺以外には誰もいない細い廊下で、俺はまた大きな溜め息を1つ溢した。
二章導入ということで、ちょっと短め&《ハロハピ》メンバーも出ない、幕間の鳴瀬君のエピソードの延長のような話となりました。《ハロハピ》メンバーは次からはじゃんじゃん出るので安心してください。
色々と気苦労が絶えない鳴瀬君ですが、今後彼がどのような選択をするのかはこれからのお話をお楽しみに!
もちろん、《ハロハピ》もわちゃもちゃ活躍するよ!
奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?
-
結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
-
田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。