野良ベーシストは運命と出会う   作:なんJお嬢様部

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続きました。
今回の話はサイドストーリーとなります。本編のみ追いかけている人はもうしばらく投下をおまちくだされー。


はい、ということでキャラ別サイドストーリーの二人目は薫さん、ストーリーは遊園地編です。可愛らしさ重点ということでギャップ萌えを狙っていきますわよ!





寄道 野良ベーシストとファンタジアランドの思ひ出
野良ベーシストは夢の国へと旅立つ(前編)


 《ハロー、ハッピーワールド!》は今をときめくガールズバンドなわけなのだが、彼女たちは何もバンドの時にしか集まらない訳ではない。

 

 一度(ひとたび)ペグ子の思いつきが舞い降りてくると、練習を放り出して他のことを始めることもしょっちゅうある。

 

 例えば、この夏にライブの後にプールに行ったことも、奥沢さんのおばあさんの家に遊びに行ったことも、全部ペグ子の思いつきだ。

 

 そして、今日もまた時と場所を選ばないペグ子の思いつきが《ハロハピ》メンバーの前で炸裂することになった……。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 初ライブのあった暑い夏も終わり、肌を撫でる風に秋の足音が聞こえて来そうなある日のこと、スタジオ《arrows(アローズ)》での練習中に、突然ペグ子が「みんな!今度の週末は遊園地に行くわよ!」と叫び出した。

 

「遊園地ぃ~?」

 

 俺が、「 急に何を言っているんだこいつは(またいつものやつか)」という調子で聞き返すと、ペグ子は自信満々といった様子で腰に手を当てて胸を反らした。

 

「そうよ! パパがね、たまにはお友達とゆっくりと羽を伸ばして来なさいって、遊園地のチケットをくれたのよ!」

 

 そう言ったペグ子の手がスカートのポケットをまさぐると、次に俺たちの目の前に突き出されたその手には7枚のチケットが握られていた。

 

「ほーん、そうなのか。どれどれ……うお!? これ『ファンタジアランド』のチケットじゃん!」

「えっ!? 『ファンタジアランド』!?」(×4)

 

 俺の声で目の色を変えた四人が、次々にペグ子の手からチケットを受け取る。

 

 「ファンタジアランド」とは、東の「オリエンタルランド」、西の「USJ」に対抗して生まれた、日本第三の本格派のテーマパークだ。

 

 このテーマパークの最大の売りは「本物」である。

 なんと、パーク内の施設の多くが海外などで実際に使用されたことのある建物を移築しており、本物の城や庭園などを実際に歩いて楽しめるのだ。ガワだけをそれっぽくして、中身はチープといったそこら辺の遊園地とは一線を画しているといっていい。

 

 そして、本物を用意できなかった施設についても抜かりはなく、外観や内装ともに拘り抜いた造りとなっていて、子供以上に大人心をくすぐるようにできている。

 遊園地のメインターゲットは子供だが、その子供たちがお金を取り出す財布の紐を握るのは親だ。その親も楽しむに足る造りとすることで、財布の紐を弛めようという戦略なのだ。

 

 また、建物の美しさから自撮り映えするということで、SNSユーザーやカップルにも注目を浴びており、様々な客層にたいして隙のない展開を仕掛けている。

 

「おお! これが音に聞こえし、かの有名な総合テーマパークのチケットだね!」

「わーい! はぐみ、テレビでCMを見てから一度行ってみたかったんだー!」

「アトラクションだけじゃなくて、外国の本物のお城を丸ごとそのまま移築したりして、施設全体が別世界みたいに綺麗だってテレビで言ってました」

 

 薫たち三人は手に取ったチケットを様々な角度から眺めて目をキラキラさせている。

 

「でも、ここってまだプレオープンで限られた人しか入れないんですよね。よくチケットが取れましたね」

 

 奥沢さんは表面上は冷静に振る舞っているが、それでも興奮から頬に朱が刺しているのがはっきりと見てとれた。

 

 そんな奥沢さんに、ペグ子が満面の笑みとピースサインで応える。

 

「ええ! だってこの『ファンタジアランド』は、パパが沢山お金を出して造ったんですもの!」

 

 このペグ子の言葉に、俺と奥沢さんの体がピシリと石化したように固まる。

 

「……え、ということはですよ、もしかして、こころのお父さんは『ファンタジアランド』の株主ということでは……」

「そうね! 確か発行された株式の50%位を保有して筆頭株主? というのをやっているらしいわ!」

「いや、それ株主というよりも経営者じゃねーか!? 単に自社株を買い込んでるだけだろ! つーか、この規模の遊園地の株式の半分を単独で保有できるってどんだけ資産持ってるんだよ……」

「ですね……」

 

 ぱねぇ……。(しん)さん、マジでぱねぇ……。

 

 新進気鋭のテーマパーク「ファンタジアランド」が、まさかほとんどペグ子のパパ上のものだったことに、俺は改めて心さんの凄さに驚くのだった。

 

「とにかく、今度の週末はみんなで『ファンタジアランド』よ! みんなちゃんと予定を空けておいてね!」

「はーい!」(×5)

 

 ペグ子の言葉に俺はみんなと同じように返事をする。

 

 俺としても特に断る理由もなかったし、バンドでの作曲やパフォーマンスのためにも様々な経験を通してのアウトプットは重要だ。特に今の《ハロハピ》のためにはこういう引き出しを増やすための活動が後々効いてくることになるだろう。

 

 まぁ、折角だし俺は俺で色々楽しませてもらいますかね。

 

 日本有数のテーマパークにタダで入れるのだから、たまには引率者ではなく純粋に施設を楽しむのも悪くないだろう。もともとこういう場所は俺とは縁遠い世界なので、俺自身のアウトプットを増やす意味でも、今回のテーマパークは貴重な時間になるだろう。

 

 小学校の頃に遠足が近づいてきたときに感じていたようなワクワクした気持ちを久しぶりに感じながら、俺は週末が来るのを心待ちにしていたのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ふぃー、気持ちのいい秋晴れだな」

「そうですね~。ふわぁ……油断しているとあくびが出ちゃいます」

 

 からりと晴れた秋晴れの空を眺めて俺がつぶやくと、隣を歩く松原さんが同意する。

 「ファンタジアランド」入園当日、俺は松原さんを家まで迎えに行ってそこから二人で待ち合わせ場所までてくてくと歩いていた。

 

 俺がわざわざ松原さんを迎えに行ったのは、もちろん彼女の天文学的な方向音痴を警戒したためだ。

 松原さんの方向音痴はもはや芸術と言って差し支えないレベルで、懇切丁寧に道順を教えて歩き始めた瞬間に逆方向に進み出すこともあれば、スマホのナビの案内に従うと、指示された道の一本奥の道を曲がり始めることなどざらにある。

 

 今回の「ファンタジアランド」は遠方にあるため、駅から電車を乗り継ぎ、新幹線に接続して向かう手筈になっている。万が一にも迷子で時間に間に合わないなどということがあってはならないのだ。

 

 そのため、実は松原さんと一番家の場所が近かった俺が人力ナビゲーターを買って出たというわけだ。

 

「眠そうだね、松原さん。昨日は楽しみで眠れなかった?」

「ふぇ!? ……じ、実はそうなんです。朝もどんな服で来ようかなって、早起きして悩んじゃって」

 

 そこまで言うと松原さんは恥ずかしそうに俯く。

 

 そんな松原さんの今日のコーディネートは白の細身のブラウスに裾を折ったキュロット、足下はくるぶし丈の靴下とコンバースのスニーカーという、普段のふわふわヒラヒラしたタイプの服とはまた違った組み合わせだ。恐らく、アトラクションに乗るときの邪魔にならないように気を配ったのだろう。

 俺は、鏡の前であーでもないこーでもないと色々な服を引っ張り出して悩み、いつの間にか家を出る時間が来てあたふたしている松原さんの姿を頭の中に思い描いて思わず笑みを溢す。

 

「あっ、鳴瀬さん! もしかして何か失礼なこと考えてますか?」

「えっ」

 

 しかし、そんな俺の笑みは松原さんに気づかれてしまったようだ。

 

 松原さんは頬をぷっくりと膨らませて俺の顔を見上げてくる。怒っているのだろうが、ペグ子と同じでどう見てもハムスター的な可愛さが第一印象として刷り込まれてしまい全く迫力がない。

 

「いやいや、そんなことはないよ?」

「むー、でも鳴瀬さん、こころちゃんに対して失礼なことを考えてる時にたまにそんな風に笑ってますよ」

「えっ、マジで? そんなことはないと思うけどな~」

 

 うへぇ、松原さん、思ったよりも俺のことよく見てるな~。

 

 慌てて両手で頬を後ろに引き伸ばして笑みを隠すが、松原さんはじとっとした目で俺の顔を眺めてくる。

 

 うーん、気まずーい! なんとか流れを変えられないものか……。

 

 思ったよりも食い付いてくる松原さんに俺が戸惑っていたその時。

 

「やぁ、花音! そして、Mr.鳴瀬! いい、行楽日和だね!」

「あ、薫さん!」

「おっ、薫か。おはよう」

 

 丁度いいタイミングで、正面の道から手を振りながら薫がこちらに駆けてきた。

 

「なんだ薫、今日は何時もより遅いじゃないか。薫のことだからもう集合場所に行ってるのかと思ってたよ」

 

 俺はこれ幸いとばかりに薫に話を振る。とりあえずこれで松原さんとの話を有耶無耶にするのだ。

 

「ふふっ、実は昨日の夜に今日は何を着ていこうかすっかり迷って夜更かししてしまってね」

「あ、薫さんもそうだったんですね」

「ああ、それで朝寝坊してしまったから途中まで(シルバー)に乗って走って来たんだが、警察に停められてしまってね」

「ちょっと待った、なんか急におかしくなった」

 

 突如として飛び出した「馬に乗って走って来た」というパワーワードに戸惑った俺が話を制しようとしたが、薫の口は止まらなかった。

 

「馬は軽車両扱いだから、道交法を守れば路上を走ることができると説明するのに時間を取られてね、結局こんな時間になったというわけさ。馬も学校の厩舎に繋ぐ時間もかかったしね」

「う、馬さんって軽車両の分類なんですね……」

「明日使えないどうでもいい豆知識が増えたな……」

「馬は公道で乗るのに免許証も必要ないからね。それでも、ちゃんと手信号で右左折の合図も出すし、交差点は全て二段階右折で曲がってきたよ。警笛がわりの笛もほらこの通りさ」

 

 そう言って薫は胸元のネックレスを指でつまみ、そのペンダントトップを示す。そこには細長いタイプのシルバーの笛がキラリと光っていた。

 

 そんな薫の今日のファッションは、長い紫の髪が風で靡かないように、後頭部の下部で丁寧に編み込んでバレッタで留めてある。

 服は髪の毛の色よりやや濃い紫のノースリーブのタートルネックのセーター、下は白のチノパンに紺のデッキシューズという普段よりも少しラフな格好である。

 しかし、髪留めのバレッタや、ネックレス、腕につけたバングルなどのアクセサリーを全てシルバーで統一することで、いつもの王子様然とした姿ではない、女の子らしい可愛らしさが演出されているのは流石だ。

 

 この辺りのセンスの良さはやはり薫は頭ひとつ抜けている。

 

「笛もファッションの一部にしてしまうとは流石だな」

「ふふっ、お褒めに預かり光栄至極だよMr.鳴瀬」

 

 いつもと違う服装でいつも通りの芝居がかった台詞を吐く薫に、思わず首を竦めてしまう。

 

「やれやれだな。というか、薫。お前王子様っぽいとは思っていたが、本当に馬にまで乗れるんだな」

 

 実際に王子様っぽい人間は演劇の世界ではそこそこいるが、その中で乗馬ができると聞いたのは薫が初めてだ。

 

「ああ、前に演劇で正に白馬の王子役が当たってね。役作りのために乗馬部に頼んで教えて貰ったのさ」

「拘りがすげぇな!」

 

 薫のキャラ作りに関してはもう今までの付き合いで大分分かっていたと思っていたが、ここまでの話を聞かされたらさすがに脱帽せざるを得ない。

 

「もちろんやるからには手を抜かないのが私さ。本番で馬に乗った私がステージで決めポーズをとった瞬間、客席の子猫ちゃんたちが20人近く失神して搬送されたのは今でも演劇部の語り草だよ」

「薫ってさ、前世はメデューサとかバジリスクとかそういう系の魔物だったりしないか?」

 

 あまりにも規格外な薫に、俺は思わずツッコミを入れていた。ちなみに例に挙げたメデューサとバジリスクはどちらも視線で人を殺せる魔物だ。

 

「何を言っているんだ、Mr.鳴瀬。私の前世は子猫ちゃんたちに愛を振り撒く王子様に決まっているじゃないか!」

「もしお前が王子様だったら、無駄にその気にさせた女の子に後ろから刺されて死んでるだろうな」

 

 無自覚女ったらしの薫のことだ、きっと刺されて倒れるときにはその背中はハリネズミのようになっているに違いない。

 

「ははは、私はこれでも子猫ちゃんを平等に扱うことには慣れているんだ。そんなミスは犯さないさ。……むしろ、私よりも君が背中に気を付けた方がいいんじゃないか、Mr.鳴瀬?」

「俺? ははは、それこそ無い無い」

 

 薫の言葉を俺は高笑いしながら右手を左右に振って否定した。

 

 俺は元々バンド一筋でここまで来たから、今まではそこまで恋愛に興味はなかった。だから、生まれてこの方、女の子に対して思わせ振りな態度や仕草を取ったことは何一つ無い。「火の無い所に煙は立たぬ」というやつだ。

 

 ……まぁ、それはそれでいささか寂しくはあるけども。

 

 しかし、そんな俺の言葉に薫と松原さんは、お互いに顔を見合わせたあとで、それぞれの口から大きな溜め息を一つずつ吐いた。

 

「Mr.鳴瀬、そういうところだよ」

「鳴瀬さん、そういうところですよ」

「えっ、何? 俺、誰かから刺されるの?」

 

 何、何なの? 俺の知らないところで謎の女が俺を狙ってるの?

 

 正直、心当たりといっても俺がよく知っていると言えるレベルの女性は《ハロハピ》メンバーと《ハニースイートデスメタル》のSAKIさんぐらいなものだ。

 それに、SAKIさんとの件はライブの時にけりがついているから問題はないはずなのだ。

 

 じゃあ、俺は誰に刺されるの!?

 

 本気でわからない俺が首を捻っていると、薫がやれやれ、といった調子で首を竦めた。

 

「私からは何とも言えないよ。自分の胸に手を当てて考えてみるといいさ」

「えー、マジかー……」

 

 梯子を外された俺は今度は松原さんの方に助け船を求めるも、彼女も今はつれない態度だ。

 

「そうですね。鳴瀬さんは一度ゆっくりと考えた方がいいですよ」

「ま、松原さんまで……」

 

 結局、そのあとどれだけ首を捻っても答えは浮かばず、俺たちはそのまま駅ですでに待機していた残る《ハロハピ》三人組と合流することになった。

 

 俺は駅で合流した三人にもこの件についてのアドバイスを求めたのだがーー

 

「そういうところよ、鳴瀬!」

「鳴瀬くん、そういうとこだよー?」

「鳴瀬さんってそういうところありますよね」

「そういうところってどういうところなんだよ……」

 

 ーー結局、三人からも二人と全く同じ対応をされた俺は、釈然としない気持ちのまま「ファンタジアランド」に向かう列車に揺られたのだった。

 

 

 ……いや、マジで心当たりが無いんですけど!

 

 




あんまり長く投下しないのもあれなのでここで一旦投下!

多分3分割になるかな~? 導入なので薫さん成分は少なめ。二話から多めにするよ!


【アンケートの協力依頼】

 薫さんのサイドを投下した時点でアンケートを花音先輩のものに差し替えます。花音先輩のルートは以下の二つです。

お買い物ルート

 時系列が遡って、初ライブ前。鳴瀬くんのお宅訪問の時にスティックを貰った花音先輩。その内の一組が手にしっくりときた花音先輩は、いつもそのスティックを使っていたが、ある日そのスティックが折れてしまう。
 花音先輩が悲しみに暮れていたその時、鳴瀬くんがスティックを売っている店を知ってると声をかける。
 しかし、極度の方向音痴の花音先輩が1人では行けないと困っていると、鳴瀬くんが道案内を買って出て、二人は二人きりでのお買い物に出かけることに……。

レッスンルート

 鳴瀬くんのお宅訪問の時に約束していた個別レッスンを頼む花音先輩。《arrows》のスタジオの一部屋を借りて二人っきりの猛特訓を始める。
 最初はぎこちない二人だったが、練習が熱を帯びるに従って、二人の距離はどんどん縮まっていき……。

という感じのルートになります。

まだ決定ではないのですが、どちらのルートにもオリキャラとして花音先輩のお母さんをチョイ役で出すのと、《バンドリ》からまだ登場していないバンドの誰かをスポットで登場させるつもりです。
《バンドリ》のキャラはどちらのルートでも同じキャラが出るのでルートによる違いは無いです。

皆様のアンケートへのご協力をお待ちしております! あなたの清き一票がこの作品の未来を変えます!

奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?

  • 結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
  • 田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。
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