ここから数話は花音ちゃんのサイドストーリー、「お買い物デート編」になりますわ!
今回は花音ちゃん視点で話が進む部分が多くあります。なるべく雰囲気が出るようにトレス頑張ります、島村○月頑張ります!
今回は、途中であるガールズバンドの人物も関わってきます。誰が関わるかはお楽しみにですわ!
あと、花音ちゃんの家族で、実質的なオリキャラも出ます。話の流れで必要だと思ったので、苦手な方は「ボルガ博士、お許しください!」!
野良ベーシストはクラゲ少女を導く 前編
「ん、うぅん……朝、かぁ……」
カーテンの隙間から溢れる朝の光の眩しさに、私は思わず目を開けてしまった。
「ふわぁ……カーテン、ちゃんと閉めてなかったんだぁ……」
いつもはきちんと閉めてあるはずのカーテンが、ほんの少し開いていた原因は自分でもよく分かっている。
昨日の夜はずっと雨が降ったりしないか、空を見てたから……。
昨日の私は今日が晴れるように祈って、ベッドに入りながら、ちらちらとカーテンを捲って何度も夜空を眺めたんだ。そうしているうちに、いつの間にかカーテンを少しずつ開けたまま寝てしまっていたみたい。
やっぱり、私っておっちょこちょいだなぁ……。でも、仕方ないよね。
どれだけ誕生日を迎えても、中々無くなってくれないおっちょこちょいを恨めしく思う反面、今日に関してはちょっと仕方ないかな、とも思っている私がいる。
「今日は、鳴瀬さんとお買い物かぁ……」
そう。今日の私は、なんと鳴瀬さんと一緒にお買い物に行く約束をしてしまったのだ。
しかも、今日のお買い物に他の《ハロハピ》のみんなはいない。今日は偶然、みんなの予定が空いていなかったんだ。
つまり、それは、今日は鳴瀬さんと二人きりということで…….。
「ふぇぇ~……!」
そのことを考えた瞬間、思わず枕に顔を埋めてしまう。
きっと私の頬は冬の最中に外でたっぷり遊んだ子どものように真っ赤になっているんだろう。
もちろん、私と鳴瀬さんは二人でそういうことをするような関係じゃない。鳴瀬さんは、あくまでも私たち《ハロハピ》の先生で、そして大切な仲間の一人。《ハロハピ》のみんなと同じで、フラットな関係だ。
それでも。
……鳴瀬さんは、やっぱり私の特別なんだ。
こころちゃんに誘われて(引っ張られて、かな?)、《ハロハピ》をやることになったとき、私はそこまでやる気があったわけじゃなかった。むしろ、どちらかといえば何か理由をつけて「やめたいな」と思っていたように思う。
でも、そんな気持ちは鳴瀬さんのたった一言で変わったんだ。
「……ありがとう」
《
ーー《ハロハピ》に入ってくれてありがとう。
ーードラムを辞めないでいてくれてありがとう。
それは、本当に色んな意味の籠った「ありがとう」だった。こんな臆病で、引っ込み思案で、おっちょこちょいな私を必要としてくれる「ありがとう」だったんだ。
だから、私は今日まで《ハロハピ》で走ってこれたんだ。
そして、それは多分これからもそうなんだ。
今、私は大声で自分のような人たちに伝えたい。
「たった一言でも、それが心の奥まで突き刺さったら、人は変わることができるんだよ」って。
だから、鳴瀬さんは私にとって間違いなく特別な人。
私に、新しい未来をくれた人。
「ふ、ふぇぇ……!」
そう思うと、ますます顔が赤くなった気がして、私は枕に顔を押し付けて両足をぱたぱたさせてしまう。でも、そうでもしないと、この気持ちを発散させるのなんて絶対に無理だ。
「花音~? もう起きたの~? 朝ごはんできてるわよ~」
「あっ、お母さん! ふぇぇ、今行きます~」
どうやら足をぱたぱたさせていたのを聞かれてしまったみたいで、お母さんが朝ごはんの声をかけてくれた。ぱたぱたを聞かれてしまったことに、さっきまでとは別の意味で頬が赤くなってしまう。
「おはようございます、お母さん」
「はい、おはよう花音。さぁ、さっと食べちゃいなさい」
「はーい、はむっ」
促されるままに、キッチンテーブルの椅子に腰を下ろしてトーストを頬張る。今日はいちごジャムとバターのトーストに、サラダ、コーンポタージュスープの洋食スタイルだ。
「ふわぁ、甘い……」
いちごジャムのどこか爽やかさのある甘さが、まだ過ごした寝ぼけていた私の頭を回転させていくのがわかる。やっぱり、甘いものは偉大だ。
「ジャム、使いきりたかったから、いちごを勝手に塗っちゃったけど大丈夫だった?」
「うん、すごく美味しいし、甘くてしっかり目が覚めたよ。ありがとう、お母さん」
「ふふっ、どういたしまして」
お礼の言葉を残してお母さんは、シンクで洗い物を片付け始めた。その背中をわたしは何となしに眺めてしまう。
私とお母さんはよく似ていると言われる。
実際に、この髪の毛はお母様譲りだし、のほほんとした穏やかな雰囲気は本当に瓜二つだと、親戚の人たちから太鼓判を押されたこともあった。
でも、お母さんは私と違っておっちょこちょいじゃないんだよね。
そうなのだ。私と違ってお母さんはおっとりはしているけど、色んなことをそつなくこなすのだ。
私が家事を手伝うときも、私が一つのことをやる間に3つも4つも家事を済ませているし、私のように方向音痴でもない。
……お父さんも、おっとりタイプだけど仕事はできるし、方向音痴でもないんだよね。ふぇぇ、何で私だけなのかなぁ?
外見的な特徴や、性格や性質の一部は間違いなく二人から受け継いだはずなのに、このおっちょこちょいと方向音痴は一体どこからやってきた子なのだろうか。
もしかすると、私がまだお母さんのお腹の中にいるときに、クラゲのようにどこかからふわふわと漂ってきて私の中にこっそり入り込んだのかも……
「花音、手が止まってるわよ?」
「ふぇ!? あっ、わわわっ!?」
急にお母さんに呼ばれて、空想から現実に戻った私は慌ててトーストを落としそうになる。トーストは二、三度私の手の上で跳ねてから、再び手の中に収まった。手の中のトーストにマーフィーの法則*1が適応されなかった幸運に、神様にしっかりと感謝する。
「お母さん、急に呼ばないでよぉ」
私が抗議の声を上げると、お母さんは呆れた調子でため息を吐く。
「お母さん、何度も花音のことを呼んだわよ?」
「ふえ?」
「でも、花音ったら全然動かないんですもの。お母さんも大きな声を出しちゃったわ」
「ふぇぇ、ごめんない……」
ふぇぇ……全然気づいてなかったよう。やっぱり私はダメダメだぁ。
おっとりしている私は、しばしばこんな考えに耽っていて、現実の行動が疎かになることがよくある。かと思えばときにとんでもない行動をとって周囲を焦らせてしまうことだってあるのだ。
そういえば昔、海に遊びに行ったときに、大好きなクラゲを見つけて思わず手を伸ばし、触手の毒で真っ赤に手を腫らしてしまったときは、とんでもなく周りを狼狽えさせてしまったこともあったっけ。
……もう少し行動にバランスがとれればいいのに。もしかすると、もっと大人になればちゃんとした行動がとれるようになるのかなぁ。
未来の自分にささやかな期待を込めながら、私はトーストの最後の一欠片を口の中に放り込んだ。未来もこのいちごジャムみたいにたっぷり甘ければいいのに。
「お母さん、トーストのお皿空いたよー」
「はい、じゃあお皿貰うわね。サラダとスープも早く飲んだ方がいいわよ。今日、お友だちとお出かけなんでしょう。花音、準備に時間がかかるからお待たせすると悪いわ」
「きょ、今日はいつもより早く起きたから大丈夫だよ!」
空いたお皿を手渡しながら、私はお母さんの言葉に反論する。
確かに私は出かける準備にも結構時間がかかるタイプだけど、今日はそれも見越してかなり早めに起きることにしていたのだ。しかも、朝日のせいでその予定よりも早く目が覚めたから、今朝はとっても余裕がある。
だから、鳴瀬さんを待たせるようなへまは絶対にしない。
「ならいいんだけどね」
それでもお母さんは半信半疑といった様子で私を眺める。確かに、そういう前科があるので仕方ないんだけれど、もう少し自分の娘を信用してほしいなぁとは思うのだ。
「そういえば、今日は誰とどこにお出かけするのかしら」
「むぐっ、きょ、今日は
突然、今日の予定の話題を振られた私は思わず飲んでいたスープでむせそうになった。
実は、バンドでお世話になってる人がいることはお母さんたちには教えているけど、それが大学生の男の人だとは伝えていないのだ。
それを言うのは、なんだか恥ずかしいし、言ったら言ったで色々と詮索されそうなのもなんだか嫌だし。
だから今日のお出かけも、バンド仲間と楽器屋さんに行くと濁すことにしたのだ。
そのことを知らないお母さんは、特に私の言葉に何か引っかかることもなく嬉しそうに頷いてくれる。私が《ハロハピ》に入ってからお母さんはずっとご機嫌だ。
「あら、そうなのね。花音、最近はドラムが楽しそうでお母さん嬉しいわ」
「うん! 最近は色んなところで演奏を披露したりしてとっても楽しいんだよ!」
「いいわねぇ、お母さんもマーチングに入ってた頃はコンクールが楽しくて仕方なかったもの」
お母さんはそう言うと頬に手を添えて、昔を懐かしむように優しい視線で遠くを見つめた。
「お母さんもそうだったんだ。それで、今日買いに行くスティックは、一緒に行く鳴瀬さんって友達が前に譲ってくれたモデルなんだけど最近折れちゃって、ここの近くの楽器屋さんにはないから、買えるお店を案内してくれるって」
「まぁ、そうなのね。それじゃあ、その子には私からも今度お礼を言わなくちゃね」
「は、恥ずかしいから、お礼はいいよ! 私の方から言っておくからね!」
突然、恐ろしいことを言い出したお母さんに私は慌てて釘を刺す。ここでお母さんがお礼を言いに出てきたりしたら、何のために私が鳴瀬さんのことを隠したのかということになってしまう。
「あらあら、残念ねー。ちゃんとお礼はいうのよー?」
「わ、わかってるよー」
あ、危ない……! とんだやぶ蛇だったよぉ……。
お母さんがあっさりと引き下がってくれたことに安堵して、私はホッと胸を撫で下ろした。もう少しでおっちょこちょいでは済まないことになりそうだった。これからバンドのことを話すときには、もっと言動に気を付けないといけないのかもしれない。
……大変そうだけどがんばるぞ!
「ごちそうさまでしたー」
「はーい、早めに支度はすませておくのよー」
「わかったー」
決意を新たにした私はお母さんの言葉を背に受けながら部屋に戻る。
とにかく、まずは、今日のお出かけからだ。
鳴瀬さんとならんで恥ずかしくない、そして、なおかつ楽器屋さんでスティックの試打をすることも考えたアクティブな服装を選ぶんだ。
「……よし!」
そして、私は強い意気込みでクローゼットの扉を開いたのだった。
◇◇◇《side 松原花音 over》
「あっれぇー、こっちの方じゃなかったっけか?」
今日は日曜日、俺は住宅街の中で、微妙に精度が冴えないスマホのナビと格闘していた。
「確かにこの辺りなんだけどなぁ、松原さんの家」
俺がこんなところでナビとにらめっこしているのは、松原さんの家を探すためだった。
今日の俺は松原さんと一緒に、楽器店にスティックを買いに行く約束を取り付けていた。というのも、以前俺が松原さんにあげたスティックの中に、彼女のお気に入りとなったスティックがあったのだが、つい最近、練習中にそれが折れたのだ。
しかも、それが近場の楽器店での取り扱いがないメーカーのものだったため、俺が一番近場で取り扱いのある二駅離れた楽器店に松原さんを案内することになったというわけだ。
流石に、松原さんを一人で二駅も離れた場所に送り込むわけにはいかないからな!
松原さんの方向音痴は、もう俺も含め《ハロハピ》の中では周知の事実だ。
この間、店の場所を教えたときに「一人で行けますよ!」と言った松原さんに、「じゃあ店の方向を指差して?」と尋ねると、自信たっぷりの表情で180度反対の方向を指差したのは記憶に新しい。
かわいい子には旅をさせよと言うが、絶対に一人で旅をさせてはいけない人間もいるのだということを、俺は深く心に刻んだのだった。
そうして、俺たちは待ち合わせをして出かける予定だったのだが、待ち合わせの時間を過ぎても一向に松原さんが現れなかったので、《ハロハピ》のみんなから住所を聞いて、今迎えに行っているという状況なのだ。
そう、なのだが。
「んー、なんか微妙なラグがあるんだよなぁ」
そんなことを考えながら住宅街を歩くも、一向に目的地に到着しない。電波状態がよろしくないのか、携帯の不具合か、現在地のカーソルが定期的にワープしてしまうのだ。
《ハロハピ》で集まるとき、松原さんは大概奥沢さんか薫のどちらかが連れてきてくれたので、俺が家の位置をあまり知らないのも裏目に出た。このままでは俺が道に迷う可能性が高い。
「しゃーない、誰かいそうなら声をかけてみるか」
こういうときは、やはり地元民に聞くに限る。現代社会は地域の繋がりが希薄になっているものの、この界隈はそれなりに古くから地域に根差した人が多い住宅街だ。だから、ご近所付き合いなんかもまだ残っているに違いない。
問題は、道行く人だとこの住宅街の人ではない可能性があるので、できるなら家の敷地にいる人に声をかけなければならないということか。
「しかし、そんな都合よく家から出ている人がいるのか……おっ、いるじゃん!」
なんと、運がいいことに、少し先の家で庭先に出て植木にホースで水遣りをしている女性がいたのだ。
あまりダッシュで近寄るのもあれなので、早歩きで女性に近づいた俺は、驚かせることがないようにやや遠い位置から、間延びした調子で声をかける。
「すみませーん」
「はーい、私ですか?」
「そうです、そうです」
女性が返事をしてくれたのを確認して、彼女の近くに駆け寄る。俺が駆け寄る間にホースの水を止めた女性はゆっくりとこちらを見つめた。
水色のややウェーブがかった豊かな髪の毛を、腰の辺りで髪留めでまとめた落ち着いた雰囲気のその女性は、俺と視線が合うとにっこり微笑んだ。
「おはようございます。何のご用でしょうか?」
微笑みながら用件を聞いてくれるその女性に頭を下げて、俺も早速用件を告げる。
「すみません、実は道をお尋ねしたくて声をかけたんです」
「そうでしたのね、私もこの辺りを全部知っているわけではないのですけれど、お力になれるかもしれません」
おお、優しい人だな。これは声をかけて正解だったな。
見ず知らずの俺に丁寧に対応してくれる女性に俺は内心でガッツポーズをしていた。
「では、お探しのお家をお教えいただけますか?」
「はい、今探しているのは松原さんというお宅なんですが」
「松原……ですか?」
「はい、友達づてに場所を聞いてきたんですが、どうもナビの調子が悪くて、ご存知ですか?」
そこまで俺がいうと、目の前の女性はまじまじと俺の姿を眺めたあと、にっこりと微笑んだ。
「はい、もちろん。だって、うちが松原ですもの」
「え」
その答えに驚いた、俺は改めて目の前の女性をまじまじと眺めてしまう。
ウェーブのかかった水色の髪。
柔和な顔立ち。
穏やかで優しい性格。
「……もしかして、花音さんのお母さん、ですか」
「はい、そうですよ。そういうお兄さんは、花音のバンドのお友だち、えーっと、鳴瀬さんですね?」
「そうです、そうです! いやー、こんな偶然があるんですね! 花音さんにはいつもお世話になってます!」
俺が頭を下げると、花音さんのお母さんはゆっくりと首を左右に振る。
「いえいえ、わたしも皆さんのことは花音からよく聞いていたんですが、どうやらお世話になりっぱなしのようで、申し訳ない限りです。今日も方向音痴の花音を、わざわざ迎えに来てくださったんでしょう?」
「いや、そんなことないですよ。バンドでドラムが一番の経験者ってのはまずないんで、すごく助かってますよ。花音さん、今、めちゃくちゃ技術が伸びてますし」
「そうなんですか、ぜひ一度聞きに行きたいですね」
「ええ、ぜひ。冬には大きな
そう言って頭を下げると、お母さんは嬉しそうに声を出して笑った。
「ふふっ、それは素敵ね。花音も、『最近は色んなところで演奏できるのが楽しいんだ』って話してくれたばかりなんですよ」
「そうでしたか。花音さんがバンドを楽しんでくれているようでなによりですよ」
……そうか、演奏が楽しい、か。松原さん、本当によかった。
バンドの外の人にそう漏らすということは、間違いなくそれが松原さんの本心なのだろう。やはり、松原さんにさはドラムが好きだったのだ。
《ハロハピ》ができたときに、俺が松原さんにかけた言葉が間違いではなかったことが、一人の音楽に関わる人間として、俺は今、猛烈に嬉しかった。
「……でも、花音が楽しいのは演奏以外のこともあるかもしれませんね」
「そうですね、メンバー同士よく遊びにも行きますし、本当に色んなことを楽しんで吸収して、演奏にぶつけてくれていると思いますよ」
「ふふっ、それもですけど、多分花音にはもっと大切なことがあるんですよ」
「……?」
もっと大切なこと……なんだろうな? まぁ、家族にしかわからないこともあるかもなぁ。
お母さんの言葉の意図を汲み取れないまま、俺が少し考え込んでいると、お母さんが庭先の鉄格子でできた小さな門を開ける。
「鳴瀬さん、立ち話もなんですからどうぞ中へお入りくださいな」
「あ、いえ、僕も迎えに来ただけですので、そこまでのお気遣いは申し訳ないです。また、お時間があるときにでも」
お母さんの申し出を丁寧に辞去すると、お母さんは少し残念そうな顔をした。
「ああ、そうですね。今日はお出かけでしたものね。でも、ぜひまたお越しくださいね。そのときはまた、バンドのことをお聞かせくださいな」
「はい、そうさせていただきます」
「それじゃあ花音を呼んで来ますから、しばらくお待ちくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
そうして、俺は家の中に入っていくお母さんの背中を見送った。
それからすぐに、松原さんの家の中から、おそらく松原さんのものだろう「ふぇぇ~~!?」という絶叫が響いてきた。
「何事か」と門から身を乗り出しなかを窺おうとしたそのとき、玄関のドアが勢いよく開いて、中から頭に白いボンボンがついたタータンチェックのベレー帽をかぶり、白いロングのセーターと、チャコールとブラウン混ぜたような落ち着いた色のロングキュロットを着た、かわいらしい姿の松原さんが飛び出してきた。
「あ、松原さんおはよ……」
「な、鳴瀬さん! さぁ行きましょう、早く行きましょう、すぐに行きましょう!」
「わわわ!? 松原さん!?」
飛び出してきた松原さんは挨拶もそこそこに、俺の手を取るとそのままの勢いで俺を引っ張り始めた。
俯きがちなその顔は、決して俺に視線を合わせることはなく、その頬は冬の最中に外で遊んだ子供のように赤かった。
「さぁ、楽器屋さんが私たちを待っています! 急いで行きましょう! 案内お願いしますね、鳴瀬さん!」
「急ぐのはいいけど、松原さん、そっちは逆だってば~!?」
結局、この後しばらく聞く耳を持たない松原さんに引きずり回された俺は、たっぷり30分は当てもない旅を繰り広げ、ようやく正気を取り戻した松原さんと電車に乗り込んだ。
その後、電車のなかで、爆発寸前の惑星のように顔を真っ赤にして、消え入りそうなほど縮こまって謝り続ける松原さんを俺がなだめるには、ちょうど電車で二駅分の時間を要したのだった。
久しぶりの休みなので連投ですわ!
やっぱり視点人物変更は難しいですわね!
これから、ガルパの《ハロハピ》のイベントを走る作業に戻りますわ! 皆様アデューですことよ!
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