リアル多忙につきトロトロ投稿です、お許し下さいボルガ博士!
「さて、それではもう一度俺がこの場を仕切らせてもらうわけなんだがーー」
バンド間の自己紹介も終わり、再びマイクを握ることになった俺は、俺が彼女たちをここに集めた2つ目の目的を果たしにかかる。
「ーー黒服の人たち、セッティングをお願いできますか」
「お任せ下さい、鳴瀬様」
「おわぁ!? 一体どこから出たんだ!?」
「さ、さっきまで誰も居なかったのに!?」
言葉と同時に、俺の影からぬるりと現れた長髪のレギュラー黒服の人に、間近で見ていた巴さんと上原さんが思わず声を上げた。他のグループのメンバーも軒並み驚く中で、《ハロー、ハッピーワールド!》の面々だけはいつも通りだった。
「それでは皆様、暫し壁の側にお控えください。さっ、皆早く作業にかかりなさい。お嬢様たちをお待たせしては駄目よ」
「はい」「承知しました」「可及的速やかに実行します」
レギュラー黒服の人の鶴の一声で、入り口の扉からなだれ込むように、黒服の人たちがフロアに殺到する。各々が手に持った板やパイプ、スピーカーなどの音響機材をある形に組み上げると、ものの一分ほどで最後の黒服が「失礼いたしました」と退室していった。恐るべき早業である。
相変わらずやべー手際だなぁ、おい。もし、黒服さんが銀行強盗でもやった日には、警察を呼ぶ前に金を盗んでまんまと逃げ出せるんだろうな……。
「いえ、私どもはこころお嬢様から、その働きに対して十分な対価をいただいておりますので、そのような愚行に走ることはありえませんよ、鳴瀬様」
「……!?」
く、黒服さん!? な、なんで、俺の思考を……!?
「それでは、私もこれで失礼します。何かあればいつでもお呼びください」
「お、おおぅ……そうさせてもらいます」
急にこちらの思考を読んできたレギュラー黒服の人に戸惑いながら、彼女が退室するのを見送ると、俺は「ん゛んっ」と一つ咳払いしてから、全員を見渡した。みんなの中央には、中心部がお立ち台のように迫り上がった円形の舞台が出来上がっていた。
「えーっと、とりあえず話を進めさせてもらおうか。今、みんなの目の前にあるこの設備なんだが、これが当日のステージのレイアウトだ」
「……! へぇ、これがそうなんだ」
「なるほどね、これを見て呼ばれた理由がわかったわ」
美竹さんと湊さんは、俺の言葉とステージを見ただけで、俺の言わんとすることを察したようだ。他にも何人かは「なるほど」といった表情で頷いたり、真剣な眼差しでステージを見ている。
「わぁ! なんだかお祭りの櫓みたいでワクワクするね美咲ちゃん!」
「というか、お祭りの櫓そのものなのでは?」
「お、流石に気づくのが早いな奥沢さん」
ステージを観察するうちに、その正体をほとんどの人が見抜いたところを見計らって、俺は再び口を開いた。
「皆も大体気づいたと思うが、今回のイベントのメインステージ、これは祭り太鼓の櫓を流用しているんだ」
今回の、商店街の活性化を目指したストリートライブ。これを開催する条件の一つとして「低予算」という縛りがあった。そこで、俺たちは商店街が元々持っていた設備を流用することでコストダウンを図ったのだが、その結果として生まれることになったのが、この特殊なステージだった。
「このステージ、商店街の秋祭りを知っている人なら分かると思うんだが、普通なら中央の櫓の上に大太鼓が一台載って、下のステージ部分に小太鼓や鳴り物があるってレイアウトなんだ」
「そうだな、アタシは櫓で太鼓を叩いたこともあるからよくわかるよ。それで、この櫓を十字路の中央にドーンと置くんだ」
「詳しい説明ありがとう、宇田川さん」
俺の言葉に巴さんが大きく頷く。彼女は商店街の祭り太鼓の常連なので、このステージのことは俺よりも詳しいはずだ。
「そして、ここまで言ったらもう大体の人は察しがついていると思う。今回のストリートライブのレイアウトも、その秋祭りと同じスタイルでやらせてもらう」
「ということはつまり……」
「中央の櫓の上に誰かひとりが乗って、下のステージの四方を他のメンバーが固めるってことか……!」
戸山さんの言葉に市ヶ谷さんが的確な答えを返すと、その瞬間集まったガールズバンドが「わっ」と一斉に盛り上がった。
「へぇ~、なんだか面白そうだね!」
「うん、普通は皆同じ客席の方を向いてるもんね!」
「わぁ! 私櫓に登りた〜い!」
「言うと思ったよ! 配置はちゃんと相談するからな!」
《poppin'party》の4人が、ステージの配置で盛り上がれば、
「うわ〜! 十字の隊形を組んで演奏なんて《MFO》のパーティフォーメーションみたい!」
「うんうん、なんだか楽しいね、あこちゃん」
《Roselia》の白金さんとあこさんの2人は、何やらゲームの話と絡めて盛り上がっていた。
「うちは、やっぱり慣れてる巴かな?」
「え、アタシは祭りで何度も登ってるからな~。それよりも折角だから、初めての誰かを乗せるのがいいんじゃないか」
「なら、リーダー、いっちょ行っときますか〜」
「え、蘭じゃなくて私なの!? こういうのは蘭の方がインパクトあると思うなぁ〜」
「でも、バンドのPRなら、やっぱりリーダーのひまりの顔を覚えてもらわなきゃ」
「上原ひまり、上原ひまりに清き一票を〜」
「えぇ!? なんか選挙になってる!?」
《Afterglow》は、《ポピパ》よりも、より踏み込んだ形で配置について相談している。この辺りの早さはバンドとしての経験値の高さが窺える。
「櫓中心の円形ステージか……ちょっとマズいかな」
「湊さん、このステージ……」
「ええ、基音さんは中々面白いステージを用意してくれたわね。《Roselia》の力が試されるいい機会だわ」
だが、それ以上にバンド経験が高く、頭の回転の早い数名はこのステージの抱える欠陥に既に気付いているようだった。
……《ポピパ》の山吹さんと、《Roselia》の湊さんと氷川さんは流石に気付くのが早いな。多分、美竹さんや花園さん辺りも分かってるけど、話し合いを優先させてる感じかな。ただ、認識の共有を図る上でも俺から説明はしたほうがいいか。
俺は、「パンパン」と手を叩くと、全員の視線をもう一度集める。全員が俺の方を向いていることを確認してから、俺はこのステージが抱える問題について話し始めた。
「えー、俺が今日皆に集まってもらったのは、顔合わせ、というよりもこのステージの構造上の弱点を理解しておいてほしいってのが本題なんだ」
「弱点? このステージには何か問題があるのかしら? 見たところ丈夫そうないいステージなんだけど……」
「うん、はぐみが飛び跳ねても平気そーだよ!」
俺の言葉にペグ子が首を傾げ、北沢さんがぴょんぴょんと飛び跳ねてみせる。
実際、このステージは物自体はかなり良い。祭太鼓やお囃子などを載せる都合上、かなりの強度がある構造をしている。しかし、問題はそこではない。
「ああ、あるんだ。それは、強度というよりも
「人員の配置、というと、誰がどこで演奏するかということだね」
「そう、それで察しのいい人はもう気付いていると思うんだけどさ、このステージ
「ふぇぇぇ……、みんなバラバラなんて……」
「うわ、本当だ!」
俺の言葉に、松原さんが困惑の、奥沢さんが驚愕の声を上げた。
このステージの抱える問題、それは「バンドステージのレイアウトが取れないこと」だった。
通常、バンドは体育館のようなステージで、全員が同じ方向にいる観客に向かって演奏する。なので、後方のドラムなどは前のメンバーの様子を見ながら演奏のコントロールができるし、ギターやベースは示し合わせての掛け合いなども取れる。
だが、今回のステージは祭太鼓用なので十字路の中央に配置する。必然、観客は周囲を囲むように配置されるため、四人の演奏者がそれぞれの通路に向かって演奏しなければならない。しかも、演奏者の間にはアンプキャビネットやスピーカーなどの音響設備が立つため、左右の連携も不可能だ。
唯一、中央の一人だけは全てのメンバーにアクセスできるが、そこで障害になるのが櫓の高低差だ。高所に位置して圧倒的に観客へのアピールが強い人間が、いちいち他のメンバーを気にして下を向くと見栄えが悪い。必然、一番演奏に集中しなければならないのが中央のメンバーということになる。
つまり、このステージは、
ここに集まったガールズバンドのメンバーは、奇しくも全て5人だ。全員が自分に与えられた役目を果たさなければ、理想の
……かといって、個人の完成度が高ければ、必ずライブが成功するわけじゃないのが、このステージの落とし穴何だよな。
誰かがスタンドプレーに走れば、緊密に連携が取れないこのステージでは命取りだ。
普段、どれだけの練度で練習してきたか。
メンバー同士が互いの演奏に背中を預けられるか。
バンド内の信頼関係を剥き出しにさせられるのが、このステージがバンドに課す2つ目の試練だ。
ライブをする以上は、自分の出せる最高のパフォーマンスを見せたいのが人情だ。しかし、それに仲間がついてこられなければ、ステージは崩壊する。
共に歩む仲間が、自分と同じ高みにいることを信じて突っ切るか。
あるいは、互いに歩み寄って歩調を合わせ調和をとるか。
ここに集った4つのバンドは、かなり難しい舵取りを強いられることになる。
だからこそ、信頼できるバンドを厳選したんだよな、俺は。
俺はもう一度、フロアに集ったメンバーを見渡す。
彼女たちはもう、先程までの和気藹々としたムードを大きく潜めて、真剣にステージのレイアウトを考えている。もちろん、バンドごとの特性があるので完全に本気モードではないバンドもあるが、少なくとも軽々に配置を決めてしまうようなバンドはここにはいない。
間違いなく、ここに揃ったガールズバンドは最高だ。
だからこそ見たいんだ……彼女たちがステージで起こす
食うか食われるか。
踏み台にするかされるか。
あるいは、手と手を取り合うか。
少なくとも、このステージを超えた彼女たちは以前の彼女たちではいられないだろう。
それが《ハロハピ》にとって、いや、欲を言えばここに集った全てのガールズバンドの糧になることを祈って。
俺は、高鳴る胸の鼓動を抑えながら、彼女たちを見守っていた。
なんだか、また日間ランキングにのせていただいたようで、お気に入りが増えて感謝感激ですわ~!
進められるときにどんどん話は進めていきますわ~!
奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?
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結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
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田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。