野良ベーシストは運命と出会う   作:なんJお嬢様部

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続きました。

ようやくイベント開始まで一週間ですわ!(死)
全てを描くわけではなく、途中は端折るにしても、かなり時間がかかりますわ……
とりあえず、頑張りますわ! 島村卯○、頑張ります!


野良ベーシストは240時間戦える 【7日前・午後】

 《arrows》一階のラウンジスペース。

 奥沢さんとのやり取りの後、各スタジオで練習に明け暮れているガールズバンドの取材を終えた俺は、ノートパソコンを開いていた。

 

「さてと、《ハロー、ハッピーワールド!(   う ち   )》のホームページと、商店街のホームページに告知を出しておきますか」

「お、どうやら結構いい画が取れたみたいだな」

 

 誰にともなく、今後の作業を呟いていると、ラウンジに隣接するロビーのカウンターから、四方津さんが顔を出して話しかけてくる。彼には昨日や今日、そして来週中のスタジオレンタルのために企画の趣旨を説明してあるので、興味津々といった感じだ。

 

「ええ、お陰さまで、中々面白いイベントになりそうですよ」

「そうかそうか! それなら《arrows》を創業以来の臨時休業にしたかいもあるってもんだ!」

 

 四方津さんは嬉しそうに何度も頷く。

 四方津さんは、なんと、イベント当日には《arrows》を臨時休業してまで商店街に足を運んでくれるらしい。何でも最初は従業員に営業を任せて一人で来るつもりが、実は従業員の中にもイベントを見る予定を組んでいた者がかなりいたらしく、「横暴だ〜!」との抗議を受けて、「なら臨時休業にしてやるよ畜生め!」と鶴の一声で臨時休業を決めたのだ。

 かき入れ時である日曜の営業を中止し、既に入っていた予約に対しては、後日の割引クーポンまで発行して対応したそうで、そこまでして《ハロー、ハッピーワールド!》に入れ込んで貰えていることには、本当に頭が下がる思いだ。

 

「何から何まで本当にありがとうございます、親父さん。彼女たちも喜ぶと思います」

「いやいや、こっちだって好きでやらせてもらってるんだ。お互いに、気の遣い合いは無しにしようぜ。お前さんだって、今回のイベントも裏方で頑張ってるんだからな」

「じゃあ、そうさせてもらいます。おっと、立ち上がったか……」

 

 四方津さんと雑談をしているうちに、開いたパソコンが立ち上がった。俺は素早くブラウザを開くと、ブックマークのタブに表示された、あるホームページをクリックする。

 そのページの名前は《HAPPY LUCKY》。そう、《ハロハピ》の公式ホームページである。ファンからは専ら《ハピラキ》の愛称で呼ばれるこのホームページの管理人、通称《Mr.ハピラキ》は、何を隠そうこの俺だ。

 実は、《ハロハピ》を立ち上げたときから、この《ハピラキ》は同時に運営を開始していた。常に新たなバンドが産声を上げるこのガールズバンド界隈において、名前を売るために公式のサイトを持つのは必要不可欠だと俺は判断していた。

 

 ただ、俺が管理するとは思ってなかったんだがなぁ。まさか、メンバー全員が、普段はスマホしか持ってないなんて想定外だぜ。

 

 そう、俺は当初このホームページを立ち上げて、運営は他の誰かに任せようと思っていたのだが、なんとメンバーの誰もがパソコンを持っていないという事実が発覚したのである。

 唯一、DJとして編曲に携わるミッシェルの中の人、奥沢さんはタブレットを持っているのだが、如何せん作曲・編曲ツールがタブレットを圧迫していて、ホームページビルドまでは任せられなかった。

 というよりも、奥沢さんには既にTwitterやInstagramなどでの告知を頼んでいたので、これ以上の作業はオーバーワークと判断し、最初から任せるつもりは無かった。

 

 だからこそ、他の四人に任せようと思ったのだが、ペグ子と北沢さんはそもそもそんなにスマホのような電子機器に強くなかった。

 そこで、始めに松原さんに頼んだら、彼女は「ふぇぇ……私にできるかなぁ……」と言いながら、俺よりも遥かにたどたどしい手つきで、人差し指でキーボードを操作し始めた。それを見た俺は、そっと彼女の肩に手を置いて、いい笑顔を浮かべながら「ありがとう松原さん、俺、頑張るよ」と言ってパソコンを回収させてもらった。

 半ベソをかきながら「ふぇぇ……ごめんなさい……」と呟く松原さんを見たときには、本当にすまないことをしたと心の底から反省した。

 

 だから、その次に薫が「ホームページかい? ふっ、この私に任せ給え!」と言ってきたときに、俺は彼女に任せることに難色を示したのだ。

 それでも、あまりにも自信満々な薫を見て、「じゃあ、とりあえず任せるぞ」とパソコンを貸したら、なんと翌日にホームページのソースコードを破壊してしまい、公式サイト閉鎖の危機に陥ったことは記憶に新しい。

 薫が、非常にぎこちない笑みを浮べて「Mr.鳴瀬、すまないが、私達のホームページが、何やらとても『儚い』ことになってしまってね……」と、レイアウトがわちゃもちゃになったホーム画面を見せてきたときには本気で頭を抱えた。

 

 ただ、画面上に表示されたリンクボタンをクリックすると、何故かどのリンク先も、薫のなんだかちょっといい感じのプロマイドに飛ぶようになっていたのは少し面白かったけどな……。

 

 それはともかく、他のメンバーにホームページの運営は荷が重いと断じた俺が、結局はその運営を受け持つことになったのだった。

 

「さて、それじゃあサクッと動画を埋め込みますか」

 

 俺は、スマホからマイクロSDカードを取り出すと、ノートパソコンに挿して映像データを取り込む。中身は《ハロハピ》を含めて、今回の《G4SProject》に協力してもらうバンドの練習風景の動画だ。それを動画編集ソフトでいい感じに切り貼りして、2分ぐらいの長さにまとめたものを、既に作ってあったイベントページの動画スペースに貼り付ける。それと合わせて、出演バンド一覧のComing soonの文字のところを4つのバンド名に差し替えて、更新をかけると、いい具合に5つのバンドの名前の下に、PVが収まるレイアウトになった。

 元々、俺は《バックドロップ》時代にホームページを使った広報担当だったので、この辺りの作業はお手の物だ。逆に、スマホやタブレットはあまりイジるタイプではないので、TwitterなどのSNSでの告知はタクやシュンに任せる分業制を敷いていた。《バックドロップ》を離れてからも、当時のスキルが生きることになるとは皮肉なものだ。

 

「まぁ、《ハロハピ》の一員である以上、折角だから身につけたスキルは使っていかないとな……お、もうBBSにコメントが入り出したか」

 

 《ハロハピ》の告知は、奥沢さんが練習に参加する都合上、ホームページが最も早い。特に、ストリートライブ頃からホームページの更新頻度を高めたこともあり、《ハロハピ》に付いた固定ファンの多くはホームページに張り付いて情報を集めてくれている。薫のファンとの兼任もいるようだが、アクセスを解析したところ、現状で100人単位でのファンが《ハロハピ》のことを追いかけてくれている。活動歴の浅いガールズバンドとしては中々の数字だ。

 動画を投稿して一分足らずでコメントが入ることからも、《ハロハピ》の人気が窺える。

 

 

◇◇◇

 

 

82 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:30:47

ID:kum4a5m1on

告知待ってた

 

83 名前:クマさん@こころファン:20XX/10/X/15:30:58

ID:af5R0tNk7

Mr.ハピラキ乙

 

84 名前:薫推しのクマさん:20XX/10/X/15:31:24

ID:J8u9st3Ice1

更新頻度高くて助かる

 

85 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:30:47

ID:sHu10Lo0k

恐ろしく早い更新……俺でも見逃しちゃうね

 

86 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:31:12

ID:9Ro6Ru4lful

>>85

見逃してるじゃねーか、ハゲ

 

87 名前:通りすがりのバンギャ:20XX/10/X/15:31:45

ID:Din0+Gya1

つーか、次の路上、参加バンドがこのメンツってマ?

クッソ豪華なんですけど?

 

88 名前:名無しのウマさん:20XX/10/X/15:32:47

ID:kin564FUne

練習動画公開してるな、やべぇ祭りだぞコレは!

 

89 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:33:07

ID:Me46mc11n

>>88

実際、商店街の祭りですしおすし

 

90 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:34:47

ID:be95yUkI

ライブハウスじゃないけど、このメンツで対バンできるってすごくない?

というか、むしろ路上にこのメンツを集められるのがすごい

 

91 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:35:27

ID:

>>90

それな、このメンツなら金払っても観るレベル

Mr.ハピラキの人脈どうなってんのよ

 

92 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:35:43

ID:bin+booCha3A

今月ライブと物販で散財してたから、無料助かる

 

93 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:35:47

ID:4nMeN634+2.1

うほー! 《Roselia》出るの!? ヤバいヤバい!

 

94 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:36:00

ID:SSk+546o

個人的には《Afterglow》参戦嬉しいな。

参加してるのって、商店街に縁のあるバンドなんだっけ?

 

95 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:30:47

ID:4nMeN634+2.1

>>94

そうそう、中止になった秋祭りの代わりにライブやろうって商店街の子が呼びかけたのよ

 

96 名前:名無しのクマさん:20XX/10/X/15:36:00

ID:SSk+546o

それはありがたい

こういうのがあると地域も盛り上がるからね

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おー、結構期待値高いじゃないか。善き哉、善き哉」

 

 BBSの熱気を見て、俺は心の中でガッツポーズをとる。

 特に嬉しいのは、コメント欄に《ハロハピ》に限らず、他のガールズバンドのファンが混ざっていることだ。彼らは恐らく、他のところなどでもこの情報を喧伝し、集客に一役買ってくれることだろう。

 

 《G4SProject》は、「商店街の活性化」のノルマが達成できないと成功じゃないからな。とにかく、人が集まらないと話にならない状況で、無償で宣伝をしてくれる存在は貴重だ。

 

「他のガールズバンドもこれからどんどんと告知するだろうし、さて、一週間でどれだけの人間を集められるか……」

 

 今回のイベントの最大のネックは、告知期間の短さだ。

 開催まで、数週間前に告知できるならかなりの集客を見込めただろうが、一週間前に、しかも一度中止の発表をした秋祭りの代わりとしての発表だ。既に予定を入れている人や、そもそも告知を見ないで終わるような人もいるだろう。

 

「……それでも、走り出したら止まれないんだよな、俺たちはさ」

 

 俺たちの挑戦は無謀なものだったかもしれない。

 それでも、俺たちは多くの希望を繋ぎ合わせてなんとかここまでこぎ着けた。

 だからこそ、俺たちは走り続けなければならない。

 《ハロー、ハッピーワールド!》という箱の中に、誰かの希望が残っている限りは。

 

 ーーRun! Keep running till we get caught!

 

 そんな期待に応えるかのように、BBSのコメントは加速していく。コメントを眺める俺の頭には、昔、深夜放送で見た古いクライム・サスペンスのセリフがリフレインしていた。




この次、少し山場となるパートが入りますわ!

奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?

  • 結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
  • 田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。
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