《Pastel✽Palettes》パート②!
とりあえずメンバー全員登場です。
あと、《Pastel✽Palettes》のマネージャーとして、オリキャラを一人登場させてます。イベントに参加するのに、事務所所属の彼女たちが単独で動くのはおかしいので、ちゃんと事務所を通して動いている設定にするためのキャラクターです。
丸山さんの早朝《arrows》来店から1時間。本来約束した時間となって、残る4人のメンバーが《arrows》へと姿を現した。
四方津さんが、まだ機材チェックにスタジオを駆け回り、店員の皆さんも出勤していないため、俺は一応の店員代わりとして受付のカウンター内に詰めていた。
ラウンジの壁にかかったモニターに流れる、流行りのバンドのMVをぼんやりと眺めていると、「カラン」と来客を告げるドアのベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
「あ、すみません。スタジオ《arrows》というのはここで間違いないでしょうか」
店内に入ってきたのは、スラックスに仕立てのいいジャケット姿の若い男だ。緩いウェーブのかかった髪をシチサンのアップバングにして、モードを掴んだルックスをしているのだが、少し垂れ目気味の目と困ったように眉尻が下がっているのが、彫りの浅い顔立ちと相まって少し情けない印象を受ける。
眉に関しては実際に少し困っているのかもしれないが。
「はい、そうです。失礼ですが、ご予約などされていますか」
問いに答えながら、俺が予約の有無を尋ねると、男は安心したように幾分か眉の角度を緩める。
「はい、わたくし、《Pastel✽Palettes》のプロデュースとマネジメントを担当しております、《ムジカエンターテイメント》の
「これはどうも。こちらこそ、お世話になります」
「万里小路」と名乗った男の手から名刺を受け取ると、そこには今しがた男が名乗った通りの情報が記載されていた。《ムジカエンターテイメント》は、アイドル事務所の中では中堅から大手に属する企業だ。モデルやバラドル、アクトレスなどジャンルを選ばない幅広いシーンにアイドルを送り出していることで知られている、らしい。アイドルに詳しくない俺が、軽く勉強した範囲での情報はこんなものだ。
とするならば、そんな事務所でプロジェクトを任されている万里小路さんは、見た目から感じる草食系男子のオーラとは裏腹に中々の遣り手らしい。
……あるいは、縁故採用の線もあるか。確か、「万里小路」っていえば元を辿れば公家系の家柄に行き着く名字だったはずだ。服装のセンスもいいし、いいところの坊っちゃんってところかもな。
万里小路さんが、縁故か実力かどちらで今のポジションを手に入れたのかは分からない。ただ、彼ほどの若さで、ある程度プロジェクトの裁量を任されているということは、社内では完全なお飾りというわけではないらしい。
俺は、彼の名刺をカウンター内のファイルに挟むと、カウンターの外に出る。
「私は、基音鳴瀬です。今回の商店街でのライブイベント《G4SProject》の実質的な運営者です。申し訳ありませんが、名刺は持ち合わせておりませんので、今日はご挨拶だけとなりますが、よろしくお願いいたします」
「あ、運営の方でしたか! この度は、急な申し出を受け入れていただきありがとうございます」
万里小路さんは、慌てたように頭を下げたので、俺もそれに合わせて頭を下げる。
「いえ、こちらとしても面白い申し出と思いましたので。今日はお互いによい結果となればいいですね」
そう言って俺が笑いかけると、万里小路さんも釣られて柔和な笑みを浮かべた。
「お心遣いありがとうございます。あ、そういえば、うちの丸山が先にお伺いしているようで、申し訳ありません。どうやら1時間ほど、時間を勘違いしていたようでして」
再び申し訳無さそうに、ペコペコ頭を下げる万里小路さんを俺は両手で制した。
「いえ、お気になさらないでください。丸山さんでしたら、既にスタジオで練習していただいています。皆さまを会議室にご案内したら、スタジオに呼びに行ってきますね」
「何から何まで、お世話になります。では、外で待たせている《Pastel✽Palettes》の4人を入れても大丈夫でしょうか」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。……おーい、みんな! 入っても大丈夫だよ~!」
許可を出すのと同時に、万里小路さんが外に向かって呼びかける。
「わーい! お邪魔しま〜す!」
すると、万里小路さんの言葉とほぼ同時に、待ちかねたように《arrows》の店内に入ってきたのは、艷やかに緑がかった髪を持つ少女だ。彼女は店内を見回してから「へぇ〜、なんだか落ち着いていい雰囲気のところだね! 『るんっ!』ってきたかも!」と言って、楽しそうに笑った。
「はは、《arrows》は本当にいいスタジオだよ。気に入ってもらえると俺も嬉しいな」
「あっ、お兄さんが今日の審査員さんかな?」
声をかけると、少女はそこで初めて俺に気づいたかのように、くるりとこちらを向いた。
「そうなるね。俺は、基音鳴瀬だ。今日はよろしく」
「鳴瀬くんか〜……うん、なんだか『るんっ!』ってきた! 私は、氷川日菜だよ、よろしくね!」
「はい、どうも」
氷川さんと名乗る少女から差し出された右手を握って軽く握手すると、次の瞬間には彼女はするりと俺の手から離れて、店内に飾られたサインやバンドのステッカーを物珍しげに見回していた。まるで猫のような少女だ。
そんな彼女を眺めながら、俺はある腑に落ちない感覚に囚われていた。
……ん〜? 彼女とは初対面のハズなんだけど、なんか、どこかで見たことあるんだよなぁ。なんでだろ?
こんなインパクトのある少女なら、絶対に忘れるはずがないのだが、それでも既視感はあるのに記憶のデータベースと結びつかない。
雰囲気がペグ子に、似てるからかなぁ……。いや、でもなぁ……。
色々なものに興味を引かれて、ちょこちょこと動き回る氷川さんの姿は、確かにペグ子にそっくりだ。
しかし、そんな性質的なものではなく、もっと根本的なところで、俺は氷川さんを知っている気がするのだ。
「失礼します、白鷺千聖と申します。本日はよろしくお願いします」
「どうも、基音鳴瀬です。こちらこそよろしくおねがいします」
氷川さんへの疑問は残るが、来客への応対を止めるわけにはいかない。次のメンバーのために、俺は思考を切り替える。
次に入ってきたのは、白鷺さんという落ち着いた雰囲気の、金髪を長く伸ばした少女だ。彼女の所作には無駄がなく、それが恐ろしいほどの美貌を後押ししている。如何にも業界人といった、丸山さんとは別の落ち着いた風格を感じさせる少女である。
もしかすると、白鷺さんは業界経験が長いのかもしれない。
……丸山さんと一緒に来なくてよかったな。二人揃っていたら間違いなくしどろもどろになってたわ、俺。
白鷺さんに軽く会釈をしながら、俺は丸山さんが先に来てくれた幸運を人知れず噛み締めていた。
「たのもー! 本日はブシドーのほど、よろしくお願いするでゴザル!」
「よ、よろしく武士道?」
白鷺さんの次に入店した少女の挨拶に、俺が思わず戸惑ってしまったのは、その挨拶が頓珍漢なものであったこともさることながら、それ以上に彼女が日本人ではなかったことが大きい。
銀糸のような髪を二房の三編みにして、透き通るような白い肌に、薄く化粧をした姿は、ビスクドールにそのまま命が吹き込まれたようだ。
そんな少女が威勢よく右手を掲げて「たのもー!」などと乗り込んでくるのだから、戸惑うなというのが無理な話だとは思わないだろうか。
「わわわ!? イヴさん、張り切りすぎて敬語がおかしなことになってますよ!」
「オー?
「いやいや、『ハラキリ』じゃなくて『張り切って』くださいよ、イヴさん!?」
目の前のイヴという少女の、なんとも言えない自己紹介。それにツッコミを入れるように、大和さんが慌てて入り口から転がり込んでくる。
しかし、それでもなんだか頓珍漢なやり取りを繰り広げながら、再びイヴさんが元気よく右手を挙げた。
「失礼つかまつりました! 私、若宮イヴと申します! 私は、真のブシドーを学ぶため日々努力してます。日本の諺に『袖振り合うも多生の縁』とあります! ですので、今日の出会いが良い縁となるように頑張らせていただきます!」
相変わらず、少し古風な言い回しが残る若宮さんだが、今日の選考にかける熱意は十分に伝わってきた。
最初の衝撃から立ち直った俺は、大きく頷いて彼女たちを迎え入れた。
「こちらこそ、よろしく頼むよ、若宮さん。そして、大和さんもね」
「へへへ……こちらこそよろしくおねがいします。急な申し出を受け入れていただいて、本当に感謝してます」
微笑みを浮かべた大和さんが、その後すぐに大きく頭を下げたのに対して、俺は慌てて首を左右に振った。
「いや、俺としても大和さんのドラムは本気で見たかったからさ、気にしないでいいよ。……それにしても、大和さんもメイクですごく印象が変わったね、モデル顔負けの美少女だよ。というか、実際もうアイドルなんだよね」
俺は、大和さんに声をかけながら、その変貌ぶりに舌を巻いていた。
以前楽器店で出会ったときの大和さんが、キャスケットにレッドリムの眼鏡という大人しめのファッションだったのに対して、今日の彼女はしっかりとメイクを決めて、メガネもコンタクトに変えている。それだけで、かなり華やいだ印象になるのだから、恐らく、元の顔立ちが整っていたのだろう。
「わわわ!? い、いえいえ、私なんか、彩さんや、日菜さん、千聖さんに、イヴさんなんかと比べればもう全然ですよ!」
大和さんは、頬を染めてオロオロしながら両手を左右に振っていたが、その姿すらも愛らしく見えた。
「ははは、謙虚だなぁ。にしても、薫と松原さんから同時に連絡を受けたときは驚いたよ。薫とも知り合いだったんだ?」
「はい、薫さんとは演劇部でご一緒してるんです。私は、照明や音響なんかの裏方でしたけどね」
大和さんの説明に、俺は「なるほど」と頷いた。
「そういう繋がりか……あ、今思えば、薫の希望で羽女でライブしたとき、俺の逆側の照明を担当してくれたのって」
「そうです、私ですよ」
俺の言葉に、大和さんが頷いた。
前に、俺たち《ハロハピ》が羽丘女子高校でライブをさせてもらったとき、ステージのスポットライトを動かす人手が足りず、演劇部からヘルプを頼んだのだ。
今、俺の脳内には、その時体育館の二階で、俺の向こう側でスポットライトを操作してくれていた大和さんの姿がありありと浮かんでいた。
「うわ〜、完璧に忘れてた。楽器店が初対面と思ってたけど、それよりも前に一度会ってたんだなぁ。いや、申し訳ない」
俺は両手を顔の前で合わせて頭を下げ、自分の非礼を詫びた。
一度会ったことのある人物に対して、初対面扱いをしてしまうことほど気まずいことはない。俺は、自分の迂闊さを猛省していた。
「いえいえ、あのときは、さっと打ち合わせしただけですし、当日は体育館が暗かったので仕方ないですよ。楽器店では、私も確証が持てませんでしたし」
「いや、そう言ってもらえると俺もありがたいよ」
俺が頭を下げると、大和さんは「頭を下げるのはこちらの方ですよ」と慌てたように手を振った。
「基音さんには、無理を言ってイベントの選考に参加させてもらってるわけですし」
「ふむ、それにしても松原さんだけでなく、薫まで通じて連絡してくるなんて、よっぽど切羽詰まってたんだな」
「ええ、私としては藁にもすがる思いでして」
「その辺りの経緯については、わたくしから説明させていてもよろしいですか?」
俺と大和さんの会話に入ってきたのは万里小路さんだった。確かに、込み入った話はこの場のトップであろう彼に聞くのが1番早いかもしれない。
「そうですね、では、立ち話もなんですし、スタジオとは別に面接のために会議室を用意しておりますので、続きはそちらで。ご案内しますので、どうぞ奥へ」
俺は万里小路さんの提案に頷くと、店の奥を指し示してから歩き始める。本来、《arrows》には会議室はないのだが、今日は各種打ち合わせもあるだろうということで、スタジオの一つに長机を運び込んで臨時の会議室としていたのだ。
「ありがとうございます、おねがいします」
「よろでーす!」
「あ、失礼ですよ、日菜さん。よろしくおねがいしますね、基音さん」
「よろしくです!」
「お世話になります、鳴瀬さん」
万里小路さんが頭を下げて、俺の後に続く。それに続いて《Pastel✽Palettes》の面々も、思い思いの挨拶をしてその後に続いた。
さて、中々にアクが強いメンバーもいるけど、どうなることやら……。
背中に拭いきれない好奇心の視線を受けながら、俺は会議室へと足を進めるのだった。
《Pastel✽Palettes》のメンバーのトレース難しいですわ……(死)
奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?
-
結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
-
田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。