野良ベーシストは運命と出会う   作:なんJお嬢様部

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(どちゃくそ間が開きましたが)続きました。


野良ベーシストは240時間戦える 【6日前・午前③】

They say there's a heaven for those who will wait

Some say it's better but I say it ain't

I'd rather laugh with the sinners than cry with the saints

The sinners are much more fun

You know that only the good die young

Only the good die young――

あいつらは良い子で待ってれば天国に行けるって

それがいいコトなんだって口を揃えて言ってる でも俺はそうは思わないけどね

俺は善人共と泣いてるよりは悪人どもと笑ってる方がいいね

だって奴らのほうが最高にクールだからさ

知ってるかい いいヤツほどさっさとくたばっちまうんだぜ

いつだって早死にするのはいいヤツなんだ――

 

 

◇◇◇

 

 

「よう、待ってたぜ鳴瀬」

 

 俺が話し合いを終えて、四方津さんの待つスタジオに向かうと、彼は既に機材のセッティングを終えてスタジオ最奥のドラムスローンに腰掛けていた。

 

「すみません、遅くなりました親父さん」

 

 俺が話し合いが長引いたことを詫びると、四方津さんはカラカラと笑いながら、気にするなと言わんばかりに手を振った。

 

「こんな時の話はじっくりやっておくもんだ。それに、今俺がここにいるのは自分の趣味みたいなもんだからなっと」

 

 四方津さんが勢いをつけてスローンから立ち上がる。

 

「さて、それじゃあ俺も噂のガールズバンドとご対面といかせてもらおうじゃないか」

「わかりました。それじゃあ《Pastel✽Palette》の皆さん、どうぞこちらに」

 

 俺は四方津さんに頷くと、入り口のドアを引いた。

 

「よ、よろしくおねがいします!」

「よろしくでーす」

「よろしくおねがいします」

「失礼いたします!」

「失礼します」

「失礼します、本日は私ども《Pastel✽Palette》がお世話になります。受付で基音様にもお渡ししていますが、こちら名刺でございます」

 

 ドアが開くと、丸山さんを先頭に《Pastel✽Palette》のメンバーが順番にスタジオに入り、最後に万里小路さんが丁寧に一礼をしてから敷居を跨ぐ。彼はそのまま四方津さんのところへ向かうと、懐から名刺を取り出して差し出す。四方津さんは名刺に軽く目を通すと、作業着の胸ポケットへとそれをしまった。

 

「ご丁寧にどうも。私が《arrows》のオーナーをしている四方津秋人です。今日の私は、あくまでも場所を提供しているだけの人間です。私のことは気にせずに、存分にやってくださいよ」

「ありがとうございます。折角用意してくださったこの場を、無駄にしないためにも最善を尽くさせていただきます。……じゃあ皆、準備させてもらおうか」

「はい!」

 

 万里小路さんが《Pastel✽Palette》の方へと振り返ると、元気よく返事をした丸山さんを筆頭にメンバーがそれぞれのギグケースから楽器を取り出したり、既に設置してある楽器へと向かう。

そんな中で、「うわぁ!」と一際大きな歓声が上がる。視線を動かして声の主を探すと、それは大和さんだった。彼女は、ためつすがめつドラムを見回して目をキラキラと輝かせている。

 

「これ、ラディックのビンテージですよね! こんなの使っていいんですか!」

「お、やっぱりお嬢ちゃんにはこれの価値が分かるか」

 

大和さんの反応に、四方津さんが嬉しそうに応える。

 

「はい、レッグなんかのパーツのデザインやシェルのカバリングを見て一目で分かりました! ビートルズスタイルの、ど定番のやつですよね!」

「おお、まさしくそれだよ。こいつは俺の私物で、今日のために持ってきたんだ。消耗品のヘッド以外は、スネアやシンバルのスタンドまでフルオリジナルだぜ」

 

どうやら、このドラムは大和さんのために、わざわざ四方津さんが入れたらしい。

 

――なるほどね、今日《arrows》が早くから開いてたのは、ドラム(こいつ)を運び込むためか。

 

そう、一人納得する俺の前で、ドラマー二人の話はどんどん盛り上がっていく。

 

「うひゃあ! ふへへへ……いいですねぇ……うっとりします。オリジナルということは、シェルはメイプル・ポプラ・マホガニーの3プライで、60年代のものですよね?」

 

 大和さんがうっとりとした手付きで、スネアドラムのテンションを調節する。会話をしながらだというのに、その手付きに澱みはなく、何度かスティックを打つと、狙ったテンションに整えてしまったようで、すぐにタムの調整に入る。

そんな大和さんの姿を見て、四方津さんも満足そうに頷く。機材を提供した側として、その価値を理解してもらえるのは冥利に尽きるといったところだろう。

 

「その通り! いやぁ、お嬢ちゃん、鳴瀬から聞いてはいたが、かなりの機材オタクだな!」

「え!? そ、そうなんですか……いやぁ、お恥ずかしい……」

 

大和さんは、自分の伺い知らぬところで、自分のことが話題になっていたことに照れて、顔を赤らめて後頭部を掻いた。

 

「恥ずかしいもんか、その歳でこの目利き、大したもんだ。おじさん、専門はドラマーだからね。今日の演奏、期待してるよ」

「は、はい! 精一杯、やらせていただきます!」

 

四方津さんの激励を受けて、大和さんは更にテキパキとシンバルの位置などを整え、持ち込んだシンバルと交換を始めた。

それを眺めて、四方津さんはうんうんと頷いた後、俺の方にやって来て「おい、鳴瀬」と耳打ちした。

 

「なんですか、親父さん?」

「今回の選考、もし《Pastel✽Palette》が外れるようだったら、ドラムのお嬢ちゃん、うちの正社員に誘うぞ。このままなら、多分解散するバンドだろ? だから、引き抜きは構わないよな」

 

四方津さんの口から溢れた大和さんの引き抜き。あまりにも真剣な声のトーンから出た意外な言葉に、思わず俺も「え?」と聞き返していた。

確かに、店員もプロフェッショナルで固めた《arrows》としては、大和さんは喉から手が出るほど欲しい人材に違いない。正直、大和さんもこことの相性はかなり良さそうだとは思う。しかし――

 

「――声をかけるのは構わないですけど、そのあたりは万里小路さんとかと交渉してくださいよ」

 

大和さんは、様々なスタジオなどで、かなりマルチに活躍しているため、しがらみの多い人間でもある。たとえ、万里小路さんを説き伏せたとしても、それ以外にも断りを入れるところがあるかもしれない。

俺はそのことを伝えたが、それでも四方津さんは大和さんの引き抜きに乗り気だった。

 

「もちろんそれも考慮の上だ。いや、お前の言うとおり、あのお嬢ちゃんはめっけ(もん)だな。アイドル系のバンドに入れておくのは惜しいぜ」

「ええ。実際、音響機材全般に詳しいんで、部活やバイトでも引っ張りだこみたいですよ」

「だろうな。これだけ真面目にやれる人間が、果たして何人いるか……」

 

そう呟きながら、四方津さんは相変わらず、熱心な視線を大和さんへと注いでいる。恐らく、頭の中ではもう引き抜いた後のことを考えているのだろう。《arrows》を最高のスタジオにすることにかけて、四方津さんに妥協という考えはないのだから。

 

「でも、引き抜きは《Pastel✽Palette》の選考次第ですからね」

 

俺は、四方津さんに釘を差しておく。

大和さんの、引き抜きはあくまで《Pastel✽Palette》の計画が立ち消えになったときだけだ。

 

「おう、もちろん俺も、選考はフラットな視点で見させてもらうさ」

「よろしくお願いしますよ」

 

四方津さんは、バンドに関してはシビアだ。だからこそ、選考に色眼鏡をつけることはないだろう。

それでも、大和さんへの熱の入れようは明らかに普通とは違っている《Pastel✽Palette》にとっては厳しい選考になるかもしれない。

 

――でも、これから彼女たちが経験するだろう荒波を考えれば、これくらいは乗り越えて貰わなくちゃな。

 

彼女たちは、苦難が待ち受けているとわかって、あえて嵐の日に帆を張ったのだ。ならば、これくらいの苦境は跳ね除けて然るべきだ。

そして、苦境を跳ね除けたその先でこそ、彼女たちは間違いなく輝くのだ。

 

――俺は、その輝きが見てみたいんだ。

 

「……準備、終わりました!」

「ん、そうか。なら、早速始めてもらおうか」

 

そんなことを考えているうちに、音出しなどの確認が終わったようで、《Pastel✽Palette》のメンバーは一様にこちらを見ている。

 

ある者は、緊張感を湛え。

ある者は、決意に満ちて。

ある者は、期待を膨らませ。

ある者は、凪の海のように。

ある者は、使命を帯びて。

 

彼女たちの瞳に宿る色は《Pastel✽Palette》の名に相応しく、それぞれ違う。

でも、その奥底にあるものは同じ。同じ熱を宿した魂が透けて見える。今しか放てない、若者だけが放てる魂の輝き(スメルズ・ライク・ティーン・スピリット)が。

 

丸山さんが、メンバーを振り返る。メンバーは力強く頷いた。

丸山さんがこちらを見る。こちらを射抜く(arrow)のような鋭い眼光。桜色の唇がわずか開き、息を吸い込む。さぁ、開演の時だ。

「……それでは、《Pastel✽Palette》演奏し(うたい)ます」




丸山さんの声優、前島さんが降板されるとのことで、急遽お話を進めましたわ! 声優さんの変更はRoseliaで経験済みでしたが、今回はメインボーカルということで、今後の《Pastel✽Palette》がどうなるか、目が離せませんわ~!

前島さん、今まで素敵な歌声ありがとうございましたわ!

奥沢さんのサイドストーリー、読みたいのはどちら?

  • 結婚式場ルート。着ぐるみで疑似結婚式。
  • 田舎ルート。おばあちゃまの家でお泊まり。
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