昔pixivに投稿したみほとエリカが下着を買いに行くお話です。


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ランジェリー・フォー!!

 

黒森峰学園艦

 

「今日も練習、疲れたわね」

「うん、でも明日は久しぶりにお休みだよ」

 

そう更衣室で話しているのは、黒森峰戦車道受講者の逸見エリカと

同じく黒森峰戦車道受講者であり、現副隊長である西住みほである。

2人は本日も戦車道の練習が終わり、先ほどシャワーを浴び終え、これから着替えて帰るところだ。

 

(といっても特に予定もないし、部屋の掃除でもしてようかしら)

 

そんな事を考えながら着替えていると、みほが黙ってエリカを見つめてきた。

 

「…………」

「な、なに……?」

 

そのみほの視線に耐え切れず、エリカはみほに言葉を投げかけた。

 

「あのね、エリカさん。今まで言いづらかったんだけど、言っていいかな?」

「なによ?言いたい事があれば言えばいいじゃない」

「うん、あのね、明日寄港日じゃない?」

「そうね」

「だからね……」

 

みほはすぅっと息を吸ったあと――

 

「下着、買いに行かない?」

 

と口にした。

 

それを聞いたエリカは、

 

「は?」

 

まったくの予想外の言葉に暫し思考が停止した。

 

「え?下着? え?何で?」

「えっとね、エリカさんの下着って、その、あんまり可愛くないから……」

 

みほが言いたくなるのも無理はない。何せエリカはいわゆるスポーツブラに

特に柄などが描かれていない無地のショーツなのだ。

今時の女子高校生にしては、余りに色気が無さ過ぎる。

 

「そ、そんなに可愛くない?これ」

「うん、なんか、子供みたいだし……」

「こ、子供……」

 

その言葉にエリカはショックを受けた。確かに色気や可愛げのある下着ではない。

しかし、「子供みたい」と言われるとは思わなかった。

 

「エリカさんって、いつもどこで下着買ってるの?」

「どこって、通販とかでサイズ合いそうなもの適当に……」

 

するとみほは急にスイッチが入ったように――

 

「駄目だよそんなんじゃ!下着はちゃんとしたやつ選ばないと胸の形とか崩れちゃうんだよ!」

 

と鬼気迫るくらい強気に言いながらエリカに迫った。

 

そのあまりの気迫に、エリカは少したじろいた。

 

「お、落ち着いて、みほ……」

「あ、ごめんなさい、ちょっと熱が入っちゃった……」

 

エリカに言われたからなのか、みほは何時もの冷静さを取り戻していった。

 

そんなみほを見てエリカは――

 

「でも、まぁ、そうね。最近少し胸がキツイって思ってたし、いいわよ。買いにいきましょ」

 

と言った。

 

どうせ明日は予定など何も無いのだ。だったらみほの提案に乗ってみようと考えたのだ。

 

「え?いいの?」

「なんでそこで驚くのよ。あなたから誘ってきたんじゃない」

「ご、ごめん。断られるって思ってたから……」

 

こうして、エリカの翌日の予定は新しい下着を買いに行く事となった。

 

 

 

 

 

翌日――

 

「久しぶりの地元ね」

「うん」

 

みほとエリカの二人は、学園艦を降り、バス停に向かっていた。

 

「ところで、買いに行くって言ってたけど、どこに行くとか決めているの?」

「うん、よく買っているお店があるの。そこに行く予定だよ」

 

みほは嬉しそうにそう言った。

しかしその発言に、エリカは首をかしげながらみほに質問した。

 

「よく買うって……下着ってそんなに沢山買うもの?」

「え?普通それなりに買わない?」

「いや、私は滅多に買わないわよ」

「え?」

 

エリカの発言に、みほは驚きを隠せずにいた。

そして、もしやと思い、エリカに質問をぶつけることにした。

 

「ねぇ、エリカさん?エリカさんって下着どれくらい持ってるの?」

「どれくらいって、上下それぞれ4つくらいだけど……」

 

このエリカの発言にみほは驚愕した。まさかとは思っていたが、よもや本当に数すら殆ど無かったとは、と。

 

「もしかして、その下着も全部昨日みたなやつ?」

「そうだけど……」

 

するとみほは突然立ち止まり、俯いて何やら考え出した。

 

「み、みほ?」

 

不安に思ったエリカが話しかけると突然顔を上げ――

 

「よし決めた、今日はエリカさんの下着は私が決める」

 

と宣言した。

 

そのみほの発言に、エリカは大層驚いた。

エリカの中では、今日は二人でウィンドウショッピングがてらに下着を買うという予定だったのだが

それがよもや、みほに自分が着る下着を選ばれる流れになるとは思ってもみなかったからだ。

流石にそれは恥ずかしい、なので――

 

「いやいや!いいって別に!何か迷惑掛けそうだし!」

 

早めに断りを入れておくことにした。

しかしみほは――

 

「駄目!絶対に私が決める!!何が何でも私が決める!!!」

 

と、一切聴く耳を持とうとはしなかった。

そのみほのあまりに気迫に根負けし――

 

「えっと、じゃぁ、お願いします……」

 

エリカは受け入れる事しか出来なかった。

とうより、みほに折れたのだ。

 

 

 

「ここだよ」

 

港からバスで10分。みほとエリカは目的地であるランジェリーショップに到着した。

しかしその店の外見をみたエリカは――

 

「うわぁ……」

 

思わず声に出すくらいビックリしていた。

その店の外見は、一言でいうならピンクだった。

しかし、いやらしい感じという訳ではなく、可愛い感じのピンクといえば良いのだろうか?

要するに、恋に恋してそうな女の子が好きな感じであった。

が、エリカにとっては全く耐性の無い存在である事に違いはなかった。

 

(ここに入るのかぁ……何だかなぁ……)

 

店に入る前から、エリカは既に逃げ出したくて仕方なかった。しかし――

 

「じゃあ、エリカさん、行こ?」

 

と、みほに腕をがっちり組まれた形ではそれも出来なかった。

エリカはそのまま、みほに店の中へと連れて行かれた。

 

(もうこうなったら、腹をくくるしかないわね……)

 

 

 

そんな感じで店に入ったエリカの目に写ったのは、色取り取りの下着だった。

ランジェリーショップなのだから当然なのだが、普段ネットで買い物をするエリカにとっては新鮮な光景である。

見ると、自分達以外にも何人か女性客がいるようだ。

それこそ自分達の同じ年くらいの子から、年上であろう女性、子供連れの母親と思われる人まで様々な。

 

「ここって、みほの行き着けのお店なのよね?」

「うん、お姉ちゃんもここで買ってるよ」

「え?隊長も?」

「確かこの間は、黒くて、少し……その……エッチな感じやつ買ってたけど……」

 

みほは少し顔を赤らめながら言った。

 

(隊長、下着黒なんだ。てか、エッチな感じのやつって、どんなのよ……?)

 

何気なしにした会話で、予想外の事が聞けたエリカであった。

 

 

 

「じゃあ早速……」

 

みほは上下様々な下着が置かれている棚を物色し始めた。エリカはその少し後ろで待つ事にした。

すると直ぐにみほは下着をひとつ選んできた。

 

「ねぇ、エリカさん。これはどうかな?」

 

みほがエリカに選んで見せたのは上下白をベースにしたものであり、

小さな水玉模様が施されているものだった。

 

「これなら値段もお手ごろだし、サイズも沢山あるよ?」

「う、うーん……」

 

確かにみほの言う通り、値段も悪くない。みればサイズもかなり種類があるようだし――

何よりデザインが可愛らしい。

 

しかしエリカは――

 

「ちょっと、私には可愛すぎじゃない?これ?」

 

と、躊躇してた。

今までこのような可愛い下着など着た事が無かったエリカにとって、いきなりこの様な下着は少々ハードルが高い。

そう思ったのだ。

だがみほは――

 

「そんなことないよ!絶対に似合うって!」

 

と力強くエリカにそう言った。

 

「そ、そう?」

「うん!」

 

そう満面の笑みで言われると、断り辛くもあった。

しかしエリカは――

 

「あー、でも保留で……」

 

やはり、自分には少々可愛すぎると思い、保留という決断を下した。

 

「え、あ、そっか!まだ来たばかりだしね!他にも色々見ないとね!」

 

そしてみほは、他にも色んな下着を見せて選ばせなきゃね!という感じでドンドンテンションが上がっていった。

 

(何か今日のみほ、妙に興奮してるわね……)

 

そんなみほに、エリカは少し恐怖を感じた。

 

 

 

「じゃあ、これは?」

 

次にみほが選んだのは、上下黒と白の縞模様、いわゆる縞パンと言われているものだった。

 

「ちょっと子供っぽいかもしれないけど、絶対に可愛いってこれも!」

「え、えぇ。そうかもね…」

 

エリカは、下着を手に持って迫ってくるみほに再び少なからず恐れを感じていた。

 

「でも、ごめん。これも保留で」

「うん、わかった!じゃあ次は……」

 

みほはまた、やたら高いテンションで次の下着を選びだした。

 

「これはどう!?」

みほが見せた下着に、エリカは驚愕した。明らかに今までの物より布の面積が小さいものだったからだ。

 

「いやいやみほ!これは駄目だって!色々無理!」

「全然無理じゃないよ!私もこういうのひとつは持ってるし!」

「え?持ってるの?こんなもの……?」

 

大人しい顔して何でこんな中々に際どい下着を持っているのだろうかという疑問があったが――

何か聞くのが怖かったので心の中に留めておく事にした。

 

「でもやっぱりこれは無理!絶対に無理だから!」

「そっかぁ……」

 

みほは心底残念そうな顔をして、手に取った下着を元の棚へと戻した。

そしてまた別の下着を選ぼうと探し始めた。

 

「そうだなぁ……じゃあ、これ? いやいや、こっちかな?」

 

それも本人は気づいていないであろうが、独り言を言いながら。

 

「…………」

 

しかし、エリカは少し違和感を感じていた。

下着を選んでくれる事はもちろん嬉しい。だが、みほが余りにも懸命になって探している事に違和感を感じた。

なので――

 

「ねぇ?みほ?どうしてそこまで一生懸命に選んでくれるの?」

「え?」

 

その違和感の正体を知るために、みほに質問をした。

 

「確かに私の下着ってセンスないから、可愛いのを選んでくれるのは嬉しいし助かるんだけど

いくらなんでも真剣に選びすぎじゃない?どうして?」

「えっと、それは……」

「……何かあったの?」

 

みほが一瞬目を逸らしたのをエリカは見逃さなかった。こういう時のみほは、何か隠しているという事をエリカは知っているのだ。

 

「隠さないで教えて。どうしてそこまで一所懸命に選んでくれるのかを」

 

エリカはみほに詰め寄るように聞いた。

 

「えっと、実は……」

 

するとみほは口を開いて、話し始めた。

 

「この前、エリカさんの下着が可愛くないって言ってる子達がいて、私、それを聞いたとき

何だかすごく嫌な気持ちになって、エリカさんにちゃんと可愛い下着を着てもらって、

その子達を見返してやりたいなって……

勿論、その子たちも悪気があって言ったことじゃないのはわかっているし別に影口ってわけでも

無いんだけど、私、どうしても見返してやりたくて……」

 

そう言いきると、みほはスカートの裾を掴んで黙ってしまった。

 

(成る程、そういう事だったのね……)

 

エリカはみほから話を聞いて、事の真相をようやく掴んだ。

みほの言う通り、別にエリカに対する影口という訳ではないだろう。実際下着が可愛くないのは事実である。

恐らく、言った娘たちも本気ではなく、軽い気持ちでそう言ったのだろう。

 

(にしても、たったそれだけでここまで一生懸命になるあたり、この子は本当に優しいわね……)

 

そんな軽口に対して本気になって色々してくれるあたり、みほはもの凄いお人良しである証拠である。

こんなお人よしの気持ちを無碍にはできない。

何より、そう言った娘たちを見返してやりたいという気持ちが、エリカにも芽生えた。

 

そう思ったエリカは覚悟を決めた。

 

「わかった、私の負けよ。もう何も言わない」

「え?」

 

エリカは両手を上げて観念したような顔をしながらそう言って――

 

「その代わり、ちゃんと可愛いやつ選んでよね?」

 

と、付け加える形で言った。

 

「う、うん!わかった!」

 

みほもそれに答えるように、笑顔で新しい下着を選び始めた。

 

(まったく、色々適わないわね……この娘には……)

エリカはそんな事を思いながら、みほは新しい下着を選んでくれるのを待つことにした。

 

 

 

しかし――

 

「じゃあ、これ!」

 

次にみほが選んで持ってきた下着を見た瞬間、エリカは言葉を失った。

その下着には布と思える場所がほぼ無く

ショーツに至っては前のほんの少しの部分しか隠せるところがなかった。

 

それは所謂、セクシー下着という代物であった。

 

「ちょっとおおおおおおお!?何も言わないって言ったけど、これは無理でしょ!?」

「え?でも可愛いよ?」

「全然可愛くないわよ!?上下共に紐みたいなもんだし、下に至ってはお尻もう見えちゃってるじゃないこれ!?」

「でも似合うって!」

「似合ってたまるもんですか!ていうかあんたもしかしてワザと選んでない!?」

 

まるで熟練された夫婦漫才のような感じで、二人は店内で言い合いになっていった。

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

店員にそう言われ、エリカとみほは店から出て行った。

 

「本当にその下着でよかったの?」

「少なくともあの紐みたいなやつよりは全然こっちのほうが良いわよ」

 

あの後余りにテンションが上がったみほだが、店員に注意されようやく落ち着きを取り戻した。

その後、みほが別の下着を選び、店員にサイズを合わせてもらい、ようやく買い物は終了した。

 

「その、今日は色々ありがとね。今度マカロン奢ってあげる」

「え?そんな、別にいいよ。そんなつもりで選んだ訳じゃないし……」

「いや、奢らせて。じゃないと私の気が晴れない」

 

先ほどのみほ程ではないが、エリカはここだけは譲らないと言わんばかりにみほに言った。

そのエリカの気持ちにみほは、

 

「じゃぁ、今度ね」

 

きちんと答えるべく、エリカの願いを了承した。

そんな会話をしながら、二人は学園艦への帰路へついた。

 

 

 

 

その晩――

「まぁ、確かに可愛いわよね」

エリカはみほが選んでくれた、藍色のレースの下着を着て自室の鏡の前に立っていた。

それも、ちょっとモデルっぽいポーズをとったり、色々と見る角度を変えながら。

 

(みほが選んでくれたやつだし、大事にしよう……!)

 

 

 

その後、みほが選んだその下着は、大事な試合等で着るエリカの勝負下着となった。

 


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