槇寿郎さんから日輪刀を二本も借り受けた
理由としては最終選別は7日ある為
刀が折れると死活問題になるからだという
藤襲山への道中、瑠火さんから頂いた
おにぎりと漬け物を食べている
「…旨いなぁ」
瑠火さんの作る料理は、素朴ながら確かな味
実家で食べていた料理とは違うが飽きることがない
なんというか、愛情を感じる。実家では使用人が作っていたので、自分は家庭の味を知らなかった
トントン
そんなことを考えていると誰かに肩を叩かれた
振り向くと花の絵が描かれた白狐のお面を着けた
女の子が笑顔を浮かべて僕の隣を歩いていた
「君、最終選別?」
「うん。僕は河上雅晃…君は?」
「私は真菰、宜しくね♪」
瑠火さん以外で初めて会った女の子
彼女の自然で楽しそうな笑顔に
見惚れてしまう僕だった
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藤襲山に着いたのは、夕暮れから夜に変わる頃
真菰と話しながらだったので
退屈はしなかったが
「ん~大体、30人は居るかな。まーくんは自信どう?」
真菰は大分、僕に気を許したのか
あだ名を付けて呼び出した
彼女は少し変わった子で、言葉がふわふわした
かわいらしい少女という印象だった
「自信はあるよ。師匠以上の鬼が居れば分からないけど」
「あはは…言えてるねぇ。」
真菰と話しながらも僕だけの型を考えていた
"炎の型を参考に体術を合わせた型"を
しばらくすると二人の子供が音もなく現れた
「遠路はるばるご苦労様です。皆様にはこの藤襲山にて7日の間、生き残って頂きます。ここから一歩、歩みを進めますと鬼殺の隊士達が捕らえた鬼共がおります。」
「この場にいらっしゃる皆様が、数多く生き残る事をお祈り致しております」
「「では、行ってらっしゃいませ」」
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我先にと刀を抜いて走り出す候補者達
見た所、常中も習得していない彼等では
7日間を無傷で終える事は不可能だな
まずは水の確保と安全地帯を見つけないと
「ん~皆どんどん先に行っちゃったね」
「良いさ。さっきの子達の真意も分からない、猪侍なんて先走ると良いよ」
無表情だったけど、あの子達は言っていたじゃないか
この場に居る皆が生き残る事を祈っていると
つまり皆で協力し合って7日間を乗り切る事
それも許されるって事だろうに
「何だかキミと居ると生き残れそうな気がするね」
「ふふふ、危なくなったら助けるよ真菰」
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僕は真菰と協力しながら6日を生き抜いた
というよりも鬼が弱すぎて瞬殺だったのだ
現に型を使わずにここまで来たくらいだ
「う~流石に水浴びしたいなぁ」
一応、川を見つける度に水浴びはしてるんだが
女の子的には2日も入らないとキツいらしい
「そっか…水筒の水じゃ身体を清めるには足りないよね。少し探って見ようか」
「ん~お願い!私は食べられる物を探してくるね」
「このまえみたいに全部毒茸とかやめてね?」
失礼な!とぷりぷり怒りながら別れる真菰
この6日間、真菰が居たから寂しくなかったし
鬼がいつ何処から来るか、分からない不安も
二人で居れば分担できたからね
川が見つかったのは、1人で探索して暫く過ぎた頃
真菰と合流しようと気配を探ると
鬼と交戦している様だ。しかし、相手の気配が強い
全集中の呼吸で速度を上げて真菰の元へ急いだ
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side真菰
雅晃が川を探すと言って別れてから
私は木陰で身体を休めていた
彼と行動を共にしてからというもの
何も出来ていない。彼が全て倒してしまうからだ
私が水の型を使う前に瞬殺してしまう
たまには私も戦いたいのだ
そういう気の緩みが
最悪を呼んだのだろうか
「うぎゃぁぁぁ!!」
「!」
目の前に血塗れの男が飛んできた
既に瀕死の様子、もう助からない
ずりずり、ずしんずしん、バキバキッ
何か大きな音が近付いてくる
私は日輪刀を構えたが
現れたモノに固まってしまった
巨大な鬼だ。手が無数に存在する鬼
「ん~弱い弱い、喰う価値もないわ…そこな娘、その面は鱗滝の弟子だな?ツイてる!お前は無条件で喰うぞ」
「お前が何故、鱗滝さんを知ってる!」
「47年前、俺を捕まえてこんな山に監禁しやがったからだ。その恨みを鱗滝の弟子を喰う事で復讐しているのさ!ところで今の年号は何だ娘よ」
「…大正」
私の言葉を聞いて鬼はピクリと目を見開いて
「アァァァァ!!また、年号が変わったァァァ!!鱗滝めが、いつか必ず殺してやるぅぅ!!」
無数の手が私に襲い掛かって来た
だけど私はスピードには自信がある
【水の呼吸・参ノ型、流流舞い】
水が流れる様な滑らかな足運びで
回避しながら攻撃する型だ
襲い来る手を切り裂きながら間合いを取る
「なるほど、その速さは頬に傷がある珍しい髪色のガキ以上だな。威力は比べるまでもないがなァ」
「錆兎兄さん…お前、錆兎兄さんをどうした!!」
「喰ったよ。今までで一番強かったぞ、刀が折れなかったら俺も危なかったぜ」
その言葉を聞いた瞬間
私は全集中を行いながら
手鬼に斬り掛かっていた
【全集中・水ノ呼吸、弐の型・水車】
パキィィン
その音を聞いたのは遥か遠くの様で
手鬼の首に刃が触れた瞬間に
無数の手を切り裂いてきた日輪刀が折れた
「これだからガキは楽でいいねぇ。すぐ冷静さを欠く」
唖然とする真菰を手鬼の大きな手が捕らえた
圧倒的な力に抜け出すことは出来ない
ミシミシと身体中の骨が軋む
「~~ッアァァァ!!」
ごめん
錆兎兄さん
鱗滝さん
雅晃
【炎の呼吸、壱ノ型・不知火】
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side out
到着した瞬間、すぐに
【炎の呼吸、壱ノ型・不知火】
足を強化して巨大な手を切り落とし
気絶した真菰を救出。安全な所へ安置する
「鬼、てめえはやり過ぎた」
「なんだ小僧、俺様の食事を邪魔しやがって!!」
【炎の呼吸、陸ノ型・焔連撃】
型の中で最も速く威力もある技を放ち
手鬼の身体を細切れの肉塊に変え
直後に激しく燃え上がり灰になった
「悪いな。火葬で勘弁してくれる?」
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真菰は手鬼に捕まれた時に
全身を強く締め付けられていた
部位欠損はないが、如何せん専門外だ
見た目で分かるのは両腕両足の骨折くらいと
このままでは不味い事だ
とりあえず添え木などで処置はした
だが、苦痛に歪む表情から
呼吸が上手く出来ていない様だ
「ちっ…緊急事態だ。許してくれよ」
真菰の唇に唇を合わせ
真菰の息を吸って吐く、吸い込んで送る
医学の本にあった人工呼吸だ
そんなことをしている間に
7日目の朝を迎えていた