「それで、昨日はお前の能力の概要だけ聞いたが、正確には何が出来る?」
「えーとね、本当に色々できるから見せた方が早いかも。」
私は今クラウド・カウベルス率いるクラウド海賊団の船『ホークスワン号』の船長室で本を読み漁っている。昨日この船に乗ってから一応船中回って地図も貰ってだいたいマップは覚えた。で、そのままこの部屋で本を読んでいたら気付けば朝になっていたと言うわけだ。
「なら甲板に行こう。ここで巨大化されても困る。」
「もしかしたら甲板の上で変身しても重すぎて甲板を貫通するかもよ。」
「大丈夫だ、うちの甲板は鉄製だ。海王類の一撃すら通さないほど硬ぇ。いくらお前がデカかろうと潰れはしねぇ。」
マジで?多分3tぐらいありそうなんだけど?
「貫通はしなくても浮力が足りなくて沈むと思うよ。」
「え?マジで?」
「マジマジ。でも数種類だけなら見せられるかな。」
そう言いながら俺は身体をドロドロに溶かして人の形を失い始める。変身イメージはスライム、そう変身するのは第13使徒のバルディエルだ。名前だけじゃ分からない人向けに説明すると参号機に寄生して零号機と弐号機を瞬殺したアイツだ。
「お、おぉ?」
『はい変身完了。』
そういや使徒に変身してる時は言葉が通じないらしい。当たり前だけどもなんか吠えてる様に聞こえるとクラウドが言ってた。ちなみにバルディエルやイロウルなどはそもそも発声器官がないため唸り声すらあげられない。
「これで何が出来るんだ?どう見てもスライムみてぇな…………」
「んしょ、今の姿はバルディエル。物質生物関わらずに寄生して支配する使徒だよ。」
「寄生?」
「実際に見せてあげるよ。」
私はもう一度バルディエルに戻り、ちょうど甲板の上で釣りをしていた漁獲班(サボり)が釣り上げた2m程の魚に引っ付く。そして口や皮膚、エラなどどんな小さな隙間でも侵入できるところから体内に侵入し、やがて全身に私を侵食させた。
「おぉ?完全に同化したのか?」
「船長、こりゃ一体……?」
私は魚の体でビチビチとクラウドの目の前で跳ねまくる。どう?これでわかったかな?
「……………本当に寄生出来てるなら跳ねるのをやめろ、鬱陶しい。」
えぇ………でも信じてくれるならやめてやるよ(謎の上から目線)
「本当に寄生できてるんだな。しかもあんな一瞬で。」
「よいしょっ!うん、こんぐらいの大きさで更に意思も弱い生物なら5秒もあれば。意思すらないモノだったら言葉通り一瞬だね。」
「意思?っつー事は俺たちに寄生するにはある程度時間がかかると?」
「うん。クラウド達の意思の強さがどれぐらいかは知らないけど、流石に魚よりはかかるでしょ。抵抗しようとしなければすぐだけど。」
私のバルディエル形態は本家とは違うのか、相手が本気で拒否すれば寄生するのに時間がかかる。多分ルフィとかに寄生しようとしたら1日ぐらいかかりそう。
「じゃあ次ね。」
流石に機械が無いし、進化と言ってもすぐ分かるものじゃないからイロウルは飛ばす。次はガギエルだ。
「準備のために私をマストの上に乗せて。」
「あ?まぁいいが…………何する気だ?」
「変身。」
「説明が些か足りねぇ気がするが…………おいお前!こいつをマストの上に連れてけ!」
クラウドがさっきの漁獲班にそう叫ぶと、私の体は乱暴に担がれてマストの上に連れてってもらった。
「じゃあ今から変身するねー!」
私はマストの端の方へと全力でダッシュする。足場が太いため滑って落ちることはない。
「アイツ……何する気だ?」
私はマストの端に辿り着くと同時にマストを蹴って宙へと跳ぶ。このルートだと着地点は海だろう。このままでは私は海へと落ち、悪魔の実の能力者は海に飲み込まれ死ぬ。
「おいお前!悪魔の実の能力者だったら海に入ったら死ぬぞ!?」
「まぁ見ててよ!」
しかし私は問題ない。イメージするのは大海を泳ぐ巨大な未確認生物。腕をヒレに変えて足は一つに融合していき、頭は前へ前へと骨格を変えて伸びてゆく。マストから海面までに墜落する約20秒、私は今までの変身よりも圧倒的な早さで110cmというロリボディを全長約100mものデカさの化け物に引き伸ばしてゆく。
海面スレスレでガギエルに変身しきった私は全身にATFを自動的に纏う。ATFは使徒に変身する際に私の意図関係なく張られるバリアだ。カヲル君が作中で「人と人との心の壁」的なこと言ってたし、無意識に張られるのも納得………できるか?
『って、こんな巨体が海に叩きつけられたら……』
そう頭によぎった頃には私の体は既に海面に着水していた。もちろん空母を遥かに超えるデカさの物体が海に着水すれば、発生するのは巨大な波。ホークスワン号は大きな波に揺られて乗員の三半規管を激しくシェイクする。
「ゴホッゲホッ!てめぇ!何しやがる!」
『えへへー、ごめんね?』
言葉は通じてないはずだが、海面から頭だけ出して頭を下げる姿を見れば謝ってるって分かるはずだよね。
この姿になるとATFが自動的に体表を覆うように張られる形になる。ちなみに口内にはATFが張られていないため、口を開けると口内は確実に弱点となりうる。コアだってここにあるからね。
「とりあえず戻ってこい…………ロープは下げてやる。」
『あはは、ありがとー。』
私は全身にATFを纏ったまま人間形態に戻る。こうすれば海水には触らないからね。そしてロープを掴んで船の上に戻った。
「で、どう?強そうでしょ?」
「悪魔の実の能力者のくせに海の中を泳いじまうのか…………こりゃ海賊からしたら天敵もいいとこだぞ?」
「まぁまぁ、クラウドは敵じゃないんだし。確かに海賊は海中への攻撃手段は乏しいけど、私は一方的に攻撃できるからね。」
「とりあえずはこんなもんにしておこう。あとは適当な島で見る。」
「おっけー、確かに楽しみはとっといた方がいいしね。」
「俺は巻き込まれて死なねぇか心配だ…………」
そうだね、クラウドは巻き込まれたらどんな攻撃でも死ぬだろう。多分体当たりでも死ぬ。
そんな事をしていると、マストの上の監視係がこちらに向かって叫んできた。
「船長ォー!」
「あ、なんだ?」
「後ろ!5時の方向に海軍の軍艦7隻です!」
「7隻ィ!?」
「ちょっと多くない?」
「多いも何も…………こんな大艦隊の出撃なんて億超の賞金首でも追ってやがったのか!?」
「てことはちょうど進路にいたんだね私たち。」
「いや多分お前が起こした波が原因だろ。」
「あっそっかぁ…………ごめんね?」
「このガキィィィイイイイ!!」
私のせいかよ。でもやれって言ったのはクラウドだしぃ?私半分ぐらいしか悪くないしぃ?
まぁこのままだと私以外皆捕まっちゃうだろうから、私はガギエルから戻ったばかりの身体をもう一度変形させる。
「今度は何に変身する気だ。」
「クラウドに1番最初にみせた姿。ゼルエルって言うんだけどね?浮遊してるから船にダメージはないよ。」
喋り終わった瞬間に足が太く、手が平たく引き伸ばされていく。手は根元から幾重にも枝分かれして、巨大化していく私の体に巻きついていく。完成したのは一見手のない浮遊する巨人。相変わらず首はない。
『よーし、頑張っちゃうぞー!』
原作ではゼルエルは18枚もある特殊装甲を一瞬のうちに一撃で破る程に強い不可視の光線を放つ。死ぬ時は割とあっさり死んだが、遠距離から銃撃していた弐号機の両腕と首を瞬く間に切断する圧倒的なまでの射程と攻撃速度、零号機のN2爆弾による特攻さえもものともしない堅牢という言葉すら生ぬるい防御力。それはゼルエルを最強の使徒として君臨させる証拠としては十分であろう。実は攻撃力のみ見た場合サハクィエルという超強力な質量爆弾がいるのだが、あいつは捨て身アタックしかできないからカウント外。
更に悪魔の実補正かは知らないが、攻撃力も速度も防御力も何もかもが強化されている。今なら特殊装甲を50枚は破れる気がする。
まぁ何が言いたいかと言うと
『軍艦7隻なんてマトリエルを殺すより楽な作業よ!』
私は変身後、私の肉眼では見えなかった軍艦7隻をしっかり視界に捉えて、目から不可視の光線で全ての軍艦を薙ぎ払う。奴らは何をされたか分からないだろうが、不可視の光線が着弾すると十字架型の爆破痕が天へと向かいそびえ立つ。もちろん軍艦なんぞが耐えきれるはずもなく、爆発四散して周囲に破片を散らばらせた。
「Foo↑気持ちいぃー!!」
「なっ………………!?」
やっぱりクラウドは驚いてますね。それどころか軍艦の接近を聞きつけて甲板に出てきた船員達も唖然としている。まぁ3隻沈めたぐらいで自慢げだったし、倍以上の7隻が目の前でものの無残に沈んでいったのを見たらそうなるか。
「さーて、護衛完了♪こんぐらいできれば護衛としては申し分ないでしょ?」
「……………あ、あぁ。こんな簡単に軍艦を沈めちまう護衛ならたとえ海軍大将だろうと怖くねぇな………」
「流石にそれは………どうだろうね?」
「否定しねぇのかよ……」
「だって怖いのって言ったら青キジぐらいだし?マグマだろうと光だろうと、私のATFは破れない。」
「前から思っていたが、そのATFってのはなんだ?話を聞く限り無敵のバリアみたいに聞こえるんだが。」
「だいたいその認識で間違ってないよ。細かく説明したら多分理解できないと思うし。一つ間違ってるのが決して無敵ではないって事。」
「流石にバリアと言えど破れるのか。でも海軍大将の攻撃を防げると豪語できるほどには強いという事は分かった。」
まぁ海軍大将って今のところ強っ!?って思ったのが青キジと藤虎ぐらいしかいないしなぁ………赤犬と黄猿は新世界じゃあんま活躍してないし。緑牛はまだわからん。
「そうだ、聞き忘れてたんだけど、この船ってどこに進んでるの?」
「このまま進めばいずれウォーターセブンだ。なんでも海賊だろうが何だろうが、船の修理依頼なら差別しないらしい。」
「へぇ、つまり争いさえ起こさなければ、平和的に通過できるボーナスステージみたいなもんか。」
「ボーナスステージか。確かにそんなイメージで間違いねぇな。それにそこの船大工達は異常に強いらしいしな。」
ウォーターセブンか。確かその船大工達の一部が海軍直属のスパイで、別の島に移動してから麦わらの一味と決闘したはず。
「時期が良ければ麦わらの一味と会えるか………?」
「ん?何か言ったか?」
「あーえっと、麦わらのルフィって海賊知ってる?」
「麦わら?麦わらのルフィと言えば最近物凄い勢いで懸賞金が伸びてるっつールーキーだな。最近じゃ懸賞金が1億になって、どっかの海軍基地に侵入したとか…………」
「へー、そうなんだ。」
「お前から聞いたのに興味なしかよ!?」
てことはもうすぐロングリングロングランドかな。ウォーターセブンに着いてもかなり待たんといかんなぁ。
ルフィに着いてって海軍と戦うのも面白そうだなー。
時は数分遡り、不可視の光線で殲滅された海軍side
「少将殿!前方に海賊『クラウド・カウベルス』の船を確認!どう致しますか?」
「まずは包囲だ。やつは軍艦3隻を沈めるほどの手練である。心してかかれ。」
「はっ!」
命令を下された海兵が指令室から退室する。そしてすぐに軍艦全体に通信が届いた。命令をくだしていたのは海軍本部少将の『ベルーガ』。彼は悪魔の実の能力者であり、ホエホエの実モデルベルーガのベルーガ人間であり、条件付きとは言え海中を泳ぐことの出来る非常に稀な能力の持ち主だ。
海の中を泳ぐことができる悪魔の実は確認されているだけでも4種類しか確認されておらず、そのうち3種類は海軍の手中にあり、残る1つはとある億超の海賊が手にしている。
「やつは市民にも海軍にも被害を出している凶悪犯罪者、もし捕らえればオレの昇進はほぼ確実なものとなるだろう……!」
こんな感じでクラウドの船をニヤケながら見つめていたが、次の瞬間には彼も変顔三人衆のエネルやシュガー達の仲間入りを果たすこととなる。
「あ?ありゃなん………は?」
ベルーガは自身の目を疑った。実際瞬きしながら目を擦った。なんと目の前の海賊船の上に謎の巨人が浮遊しているのだ。まるで膨らむような様子で一瞬のうちに出現したそいつは、ベルーガ達の方を見る。その時ベルーガは、謎の巨人の目と言える部分と目が合った気がした。
その目からは明らかにこちらを殺そうとする殺意とも違う何かを感じた。
「っ!!総員!カメラでヤツの姿を捉えろ!即座に海軍本部に送れ!」
「りょ、了解致しました!」
なんだアレは?なぜ急に現れた?何が目的だ?果たして敵なのか?
頭の中で様々な事が回るベルーガだったが、砲撃を命じようとした瞬間に全身に衝撃が走る。
「は?」
ベルーガは気がつくと空中へと投げ出され、波に揺られる船の残骸に叩きつけられる。
「うぐぅ!?ああああああああぁぁぁ!!?」
叩きつけられたことをようやく理解した瞬間ベルーガの全身の鋭い痛みを文字通り痛感する。乗っていた軍艦や周囲の船も全滅している事にも気づかず、ベルーガはどこの破片かも分からない木の板の上で体をのたうち回らせる。
「ぐっ………はァ…はァ……」
しかし流石海軍本部少将、未だ全身を蝕む痛みにも負けずに腰のポーチから撮影用子電伝虫を取り出した。子電伝虫のシャッターに指を乗せて前方に見える謎の巨人にレンズを向ける。
「何が起きたかは分からんが………ヤツが主犯か……!」
シャッターを押して巨人の全身と顔面と思われる部分を撮影すると、ベルーガは能力を使って獣形態に変化して海へと飛び込む。
「これを本部に届けなければっ……!」
この時、ベルーガの変身に智与は気づいていたが、『別に殺す程でもないか』というイキっていた。これが原因で智与の姿(ゼルエル)が海軍にバレるのだが、それはまた別の話。
はい、オリジナル悪魔の実ですね。悪魔の実の能力者でも泳げるようにしてみました。二次創作だから別にいいダルォ!?(批判は聞きます)