元一般人現使徒の人類殲滅計画   作:アルパカお兄さん

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HUMAN WORK

海賊『麦わらのルフィ』が鉄壁の大要塞と言われた『ナバロン』に侵入し、まんまと脱出してから約2週間後、海軍本部ではとある海賊についての議論が交わされていた。

 

事の発端は本部の港に傷だらけのベルーガ少将が泳ぎ着いた事だ。少将は2日前に7隻の大艦隊を連れて、シャボンディ諸島に現れた億超の海賊を逮捕しに出港したはずだった。

そんな人がなぜ海軍本部まで泳いで帰ってきたのか。それは未だ意識不明の少将に直接聞かなければ分からないであろう。しかし少将が持ち帰ってきた子電伝虫にはとあるものが写っていたのだ。

 

その体躯は巨人族の平均身長よりも少し高いくらいだろうか?しかし巨人族というにはおかしい部分が幾つもある。巨人族は体躯と寿命以外は人間をそのまま大きくしたかのような見た目をしている。だが子電伝虫に撮影された巨人を見ると明らかに人とは思えぬ姿をしていた。首や足や腕と呼ばれる部位は存在せず、全身には帯のような物が巻き付けられており、極めつけにその巨大な何かは浮遊しているのである。

 

「悪魔の実の能力者か?」

 

「その可能性は高いだろう。巨人族の変異体にしては不可解な点が多い。」

 

「悪魔の実の食べた巨人族という可能性もあるだろう。」

 

「ともかくヤツの能力以前に早く手配書を出すべきだ!」

 

「落ち着け、手配書を出すのは賛成だが、感情のままに高額の懸賞金を掛けるのは人々に不安の種を撒くことになる。」

 

「しかし、こやつは恐らく軍艦7隻を沈めるほどの実力者であろう。実際どの船の電伝虫も無反応だ。」

 

「そんな危険人物ならばそこそこの懸賞金を掛け、周囲の国民に注意を呼び掛けるのが適策だと思うぞ。」

 

 

『海軍本部賞金首対策会議』

 

1週間に1度、将校以上の階級を持ち、就役してから5年以上経過した者が集められて名だたる賞金首から勢力を伸ばし始めた海賊まで様々な賞金首に対しての対策や手配書の設定をする会議である。

今回は少将以下の海兵しかいないが、5年以上も海軍をやっているものとして、的はずれな言動や会議の停止などは一切ない。

 

そして、今この会議での議題は【中将、少将含む734名の殉職、及びその原因となる謎の巨人】である。

殉職の方は殉職者の遺族等に話をつけるという事で会議はすぐ終わった。しかし問題は軍艦7隻とそれに搭乗していた734名の死者を出した巨人の処理についてだ。

無闇に懸賞金を掛けて手配書を出すべきか。それとも極秘に調査して情報が集まったところで叩くか。そもそも巨人は何者なのかなど、謎を挙げればキリがない。

 

「兎にも角にも手配書を出してこの巨人の危険性を周知させるべきである!危険性を知らしめなければ人々が間違って接触してしまう可能性がある!」

 

とある中将のこの一言が会議の方針を変えた。ここにいる全員の頭には様々な思考が渦巻いているが、その根底にあったのは人々の安全だ。人々に不安を撒いてしまうが、人々の命には替えられない。

 

「それもそうだな。ならば懸賞金はいくらにする?」

 

「軍艦7隻を沈めるなんて荒事は万代では足らん。2億だ。」

 

「2億だと?あまりにも高すぎるぞ。余計な額をつけるな。」

 

「しかしかと言って1億に昇ったばかりの海賊ではせいぜい5隻という記録しかない。」

 

彼らの中での会議の方針は決まったが、今度は巨人に掛ける懸賞金額で争い始めた。つくづく意見の合わない奴らである。

 

「黙れ馬鹿者共ッ!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

その時会議室の中で周囲の叫び声にも聞こえる言葉をかき消すほどの巨大な怒声が響いた。この一声で会議室内の全員が圧倒されて押し黙る。

それも仕方ない。この声の主は海軍本部中将の『クロム』、海軍入隊から30年間正義の名のもとに賞金首から懸賞金が掛かっていない海賊の芽まで、厳しく取り締まってきた全海軍の中でも重鎮とも言っていい人物である。彼は海軍入隊から10年で中将まで上り詰め、現在48歳という高年齢にも関わらず、未だに現役で活躍し続けている。その経験と知識は海軍大将や元帥でさえも一目置いている程だ。

 

「今は懸賞金如きで争っている場合か?懸賞金なんぞ1つの目安に過ぎん。正確な強さなど実際に戦ってみなけりゃ分かりゃせんだろう!?」

 

会議の中でクロム中将が叫んだ一言は確かに正論だった。だから先程まで馬鹿みたいに言い争いをしていた彼らは答える事ができない。

 

「この巨人の懸賞金額は2億7800万ベリーだ。名前は『UNKNOWN』にしておけ」

 

そう言い残すとクロム中将は椅子から立ち上がると足早に会議室から出ていってしまった。彼は彼で信念に基づき行動しているのだが、海軍という社会人として会議中に出ていくのはどうなのだろうか。

 

「………それでは次の議題だ。この巨人と共に写っている海賊『クラウド・カウベルス』についてだが。」

 

「この写真1枚では巨人とカウベルスの関係は分からん。まずはカウベルスに接触してあの巨人との関係性を調査するべきだ。」

 

「そうだな。では最近急激に戦果を挙げ続けている『例の彼』に………」

 

「『彼』か。『彼』ならきっとやってくれるはずだな。」

 

「ではその方針で…………」

 

 

こうして謎の巨人及びクラウド・カウベルスに関する会議は終了。結果は巨人の懸賞金を2億7800万、カウベルスの懸賞金を1億2000万に上げ、新たに懸賞金を掛けるべき海賊についての、食い違った意見の言い合いで終わったのであった。

 

 

 

 

 

その会議が終わり、全員がそれぞれの持ち場に戻った頃、とある男の元に先程会議にいた中佐が入室する。

 

「失礼します、グラム少将。」

 

「んあ、誰だてめェは?」

 

中佐が部屋に入室した途端に感じたのは圧倒的なまでの威圧感だ。身体を切られたかのように感じるほど鋭い圧が中佐の神経をすり減らす。

 

「わ、わたしは…………」

 

口を開けば体内に喉から直接刃物を突っ込まれたかのような痛みを感じる。幻肢痛なのか知らないうちに体内を傷つけられているのか分からないほどリアルな痛み。中佐はそれによって喋ることすら出来なくなる。

 

「あァ……すまねぇな。つい癖で威圧しちまった。」

 

仲間でさえも威圧していた男━グラム・タスカード━は天才だ。

と言っても特段計算が早かったり、難解な文字を読めるわけでもない。その天賦の才は全て戦闘において真価を発揮する。

 

例えば1000人を越える大艦隊の海賊を1人で殲滅したとか。

 

例えば世界政府に反逆した城塞国家一の騎士をねじ伏せたとか。

 

例を挙げればキリがないほど出てくるが、とにかく戦闘面に関しては海軍にかなりの利益をもたらしている有能株なのである。その戦闘力は海軍大将には劣るものの戦えるレベルには高く、現在海軍内で彼に勝てる者は30にも満たないと思われている。

 

「それで、何の用だ?海賊の駆除か?反逆国家の抹殺か?」

 

「いえ、どちらでもありません…………あなたには最近勢力を伸ばし始めたクラウド・カウベルスの調査に赴いてほしいと会議で決まりまして。」

 

「カウベルス?聞いたことねぇな。」

 

「カウベルスは北の海出身の懸賞金1億2000万のルーキー海賊です。」

 

「チッ、また億超か。前の億超はカスだったからな。今度は楽しみだ。」

 

「それだけではありません。全海軍の耳に届いていると思いますが、軍艦7隻が沈められ生存者1名という事件がありました。原因と思われるのがこちらの写真の……」

 

「あ?なんだこいつァ?」

 

「あなたの任務はこの巨人の正体とカウベルスとの関係性を探ることになります。」

 

「へェ…………面白そうじゃねぇか。要はこの巨人と海賊をここまで引きずってくりゃいいんだろ?」

 

「そうですが……今回の海賊、と言うより巨人は恐らく数億の海賊とはレベルが違うかと思われます。」

 

「安心しろ、巨人族だか能力者だか知らねェが、俺の王道に邪魔は入れさせねェ。」

 

グラムは部屋の隅に置かれた2つの金属手甲を腕にはめ込む。そしてグラムが力んだ瞬間、手甲の先から三本の鉤爪が飛び出した。

 

「………相変わらず痛そうな武器ですね。」

 

「そうだろう、さらに力を込めりゃあ爪の先から反しが飛び出す。武装色を纏えば自然系の能力者だろうと、一撃で瀕死に持って行ける。」

 

グラムは更に力を込めて鉤爪の先から反しを実演してみせる。その形は釣り針の反しとは比にならないほど凄惨な形をしており、急所に当たらずともその傷口だけで人を殺す事ができそうだ。

 

「そろそろ出発の時間です。行きましょう。」

 

「あァ、今行く。」

 

グラムは、ソファに投げ出していた海軍将校のコートを掴み、背中に羽織る。その姿は、先程までダラケていたグラムとは思えない程に威厳を醸し出し、並々ならぬ強者の雰囲気を出していた。

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