乙女の恋争
2月14日・・・・・・バレンタインデー。乙女達が偉大なる聖人に少しの勇気を借りて心に秘めた熱き想いを伝える日。そしてここにまた一人思いの丈をぶつけるべく奮闘する少女がいた・・・・・・
「・・・・・・痛っ!」
チョコを刻んでいたら手元が狂って指を切ってしまいました。今日は2月13日。バレンタインの前日です。今まではお友達のみんなに買ってきたチョコを上げていたんですが・・・・・・今年はどうしても手作りのチョコをあげたい相手が出来てしまいました!
「・・・・・・はぁ・・・伊鈴くん・・・」
彼のことを考えると胸が自然と高鳴って、顔が真っ赤になっちゃいます。彼ともっと一緒にいたい、隣で笑っていたい。そのためにも今回のチョコ作りは絶対に失敗できないのに・・・
炭化したナニカ(試作品1号)
風化したナニカ(試作品2号)
微妙に蠢くナニカ(試作品3号)
「・・・・・・はぁ・・・・・・」
料理作りとお菓子作りは全くの別物でした・・・料理は得意だから大丈夫だと思ったのに!うう、このままじゃ伊鈴くんに告白どころじゃありません・・・それどころかこんなものを食べさせたら、最悪・・・・・・死!?
「い、いやいや!次こそはっ!」
さあ、いざ電子レンジをオープンです!・・・・・・っ!溢れ出るこのいい香り!これは成功間違いなしで・・・
蛍光色に煌めくナニカ(試作品4号)
・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・
「紅音ー?どう?出来た?」
「ひゃあああああ!!?」
「お、お母さん!?もう!入ってこないでって言ったでしょ!?」
「えー、だって全然戻ってこないんだもの。もう3時間はやってるわよ?」
え?
「あ、ホントだ・・・」
うう、もう夜ご飯の準備の時間です・・・・・・片付けないと・・・
「うーん・・・・・・ねぇ、紅音。お母さん、手伝おうか?」
「えぅ・・・それは・・・」
「お母さんもね、お父さんに初めてチョコを上げた時は1人で作ったらそれはもう酷いものだったんだけどねぇ・・・」
「正直お母さんに手伝ってもらえばよかったって思ったわ。それに、自分の娘と一緒にお菓子作りするの憧れてたのよねぇ。」
うう、どうしましょう。私だけの力でやりたいけど・・・このままじゃ伊鈴くんに劇物を渡すことになるし・・・ええい!背に腹は代えられません!!
「お母さん!チョコ作り手伝ってくださいっ!!」
「ふふ、いいわよ〜。でもご飯作りが先ね?紅音も手伝ってちょうだい。」
「うんっ!」
よーし、伊鈴くんのため頑張りましょう!!
◆ 青野家
「お兄ちゃん。夜ご飯の後台所使っていい?」
「?別にいいけど・・・何に使うんだ?」
「・・・えぇ・・・・・・まぁ、明日の準備、かな。」
明日の?明日って2月14日だよな・・・なんかあったっけ?
「まぁ、使ったらちゃんと片しとけよ?」
「はーい!」
うん、いい返事。今日は課題多いしシャンフロできっかな・・・ま、とりあえず飯作るか。
◆ 隠岐家
「で、出来たーっ!!」
「ふふ、おめでとう。紅音。」
「うんっ!お母さんもありがとう!」
目の前には綺麗にラッピングされた小さめのチョコケーキ。ふふふ、伊鈴くんが甘すぎるものが得意じゃないのはリサーチ済みですから!ちゃーんと、ビターチョコレートを使ってます!
「にしても、紅音にも好きな人ができたのねー。嬉しいような寂しいような気分だわ〜。」
「え?お母さん、何か言った?」
「ふふ、何でもないわよ〜。ほらほら、明日も学校あるんだから早く寝なさい。」
「はーい!」
いよいよ明日はバレンタインです・・・!ちゃんと渡せるといいなぁ・・・
◆ 紅音就寝後の隠岐家
「・・・いやぁ、紅音に好きな人ができる日が来るなんてなぁ・・・」
「ええ、ほんとにねぇ・・・」
「小さい頃はよく倒れて・・・ようやく元気になったと思ったら・・・・・・子供の成長は早いものだな・・・」
「ふふ、でも嬉しいんでしょう?」
「はは、君には叶わないな。」
「・・・・・・嬉しいさ、嬉しいに決まっている。昔から思っていたんだ。紅音に普通の女の子の幸せな生活を送らせてやることは出来ないんじゃないかって・・・でも、元気になってくれた。友達も大勢できたそうだ。それに好きな人ができたって・・・!」
「ああ、本当に・・・・・・良かったなぁ」
「ええ・・・・・・本当に。」
そして乙女達の決戦が幕を上げる。
◆ 2月14日
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
「うんっ!」
今日はいよいよバレンタインです!昨夜は緊張してなかなか寝れなかったけど、頑張ります!!
「放課後・・・よし、放課後に・・・」
「・・・・・・あれ、紅音?今日は早いじゃん。どしたの?」
「ひゃああああああ!!?」
「うぇっ!?何!?どしたの!?」
い、伊鈴くん!?何で!?
「え、えと伊鈴くん。何でここに?」
「え、何でってここ通学路だし・・・紅音こそ普段もうちょい来るの遅いじゃん。どしたの?」
「え、あー・・・えっと・・・」
あわわわわ・・・ど、どうしましょう!放課後に一緒に帰りながら告白する計画が既に崩壊の危機を見せてます!
「きょ、今日はちょっといつもより早く目が覚めたので!!」
「ふーん?まぁ、いいけど・・・せっかくだから一緒に学校行くか?なんt「えっ、良いんですか!?」あっ、ハイ。」
えへへ、朝から伊鈴くんと一緒に学校に行けるなんて今日はいい日です!
「あっ、そうだ・・・伊鈴くん!」
「んー、何ー?」
「今日一緒に帰りませんか!?」
「・・・まぁ、良いけど。何か今日の紅音はアレだね。いつもよりテンション高い気がする。なんかいいことでもあった?」
「伊鈴くんと一緒に学校に行けるからですよ!」
「んん゛っ・・・・・・そっ、そっかぁ。」
「はいっ!」
よし、ちゃんと約束出来ました!あとは帰り道でチョコを渡して・・・・・・好きだって伝えます!
◆ 放課後―――紅音side
正直、今日の授業の内容はほとんど頭に入ってきませんでした。でもいよいよです!いよいよ伊鈴くんに・・・!
「ごめん、紅音。待たせた!」
「あ、伊鈴くん!大丈夫ですよ!(心の準備に)ちょうど良かったので!」
「?ま、いいか。帰ろ?」
「はいっ!」
しばらく無言で歩きます。伊鈴くんはあんまり自分から話しかけないタイプの人なのでしょうがないですけど。そ、そろそろいいでしょうか・・・?他の生徒の人も居なくなったし・・・
「あの、伊鈴くんっ!」
「ねぇ、紅音。」
あ・・・
「あー、紅音先いいぞ。」
「いえいえ、伊鈴くん、どうぞ!」
「いや・・・ってこれ終わんねぇか・・・っとさ。紅音何か今日変じゃない?どこか心ここに在らずみたいな・・・朝も悲鳴あげてたし、どこか体調でも悪いんじゃ・・・?」
うっ・・・伊鈴くんに心配かけちゃったみたいです・・・
「ぜっ、全然大丈夫ですよ!ほら、とっても元気です!」
恥ずかしさを誤魔化すためにわざとオーバーに腕を振り回して元気さをアピールします。
「そう?ならいいんだけど・・・そういや紅音の言いかけてたことって?」
「あ、えっと・・・」
ちょっとこの流れで言うのは恥ずかしいです!!さ、さっき言えばよかった・・・!ええい、女は度胸です!
!
「あ、あの伊鈴くん!こ、これ受け取ってください!!」
カバンから取り出したチョコケーキを伊鈴くんに差し出します。受け取ってくれるかな・・・?
「・・・?いいけど・・・・・・」
や、やった!!受け取ってくれまし
「どしたの?急に。今日なんかあったっけ?」
え。・・・ええ!?ひょ、ひょっとして伊鈴くん・・・!バレンタイン知らないんですかぁ!!?
「えーっと、あの伊鈴くん。今日がなんの日だか知ってます?」
「今日?2月14日だよねぇ・・・俺の誕生日は8月だし・・・夢花も5月だし・・・紅音は3月だよね?」
「あっ、はいっ!ってそうじゃないですよ!」
私の誕生日を覚えててくれたのは嬉しいですけど違います!!本当に知らないんでしょうか・・・?
「ええー・・・・・・あっ!そういや今日アレか!そういやスーパーで出てたな!」
「そう、そうですよ!」
「煮干しの日!」
「バレンタインデー!」
・・・・・・・・・
「「え?」」
え?煮干し?・・・・・・何でですか!?え、実は今日バレンタインデーじゃなかったりします!?私の勘違い!!?
「ねぇ、紅音。」
「は、はいっ!何ですか?」
「そのさぁ・・・あのー、非常に申し訳ないんですけど・・・・・・バレンタインデーって具体的にどんなイベントなの?チョコレートが安売りになるイベント?」
・・・ほんとに知らなかったみたいです。バレンタインデー知らない人っているんですね・・・・・・だいぶ驚きました!
「えっと、バレンタインデーは・・・・・・あっ。」
「?紅音?」
これ・・・バレンタインデーの説明をするってことは伊鈴くんが私が渡したチョコの意味を知るってことで、それってすごく遠回しな告白・・・・・・ダメです!!私はもっとちゃんと伊鈴くんに私の好きを伝えたいんです!!うう、でもどうしましょう・・・
「あー、説明しにくいなら別にいいよ?帰って調べるし。」
「あっ、待ってください!えっと、バレンタインデーっていうのは・・・その、女の子が好きな人にチョコを渡す日です・・・」
「ふーん、好きな人にチョコをあげる?そんな日があったんだ・・・」
あ、あれ?気づいてないんでしょうか?
「・・・・・・・・・ふぇ!?あ、そ、そうなんだ・・・ふぅん・・・・・・」
これ、気づいてますね・・・・・・・・あー、もう!こうなったら当たって砕けろです!!
「えいっ!!」
「わっ!・・・っと!どしたの?紅音?」
「私は・・・・・・私は!伊鈴くんのことが好きです!大好きです!!いつも優しくて、でも負けず嫌いで、色んなことに一生懸命な伊鈴くんが大好きです!!私と付き合ってください!!」
◆ 放課後―――伊鈴side
今日の放課後は紅音と帰る約束があったのに、先生に呼び出されて遅れてしまった。チッ、資料の運搬くらい誰でもいいだろが・・・
「ごめん、紅音。待たせた!」
「あ、伊鈴くん!大丈夫ですよ!ちょうど良かったので!」
ちょうど良かった・・・?何が?
「?ま、いいか。帰ろ?」
「はいっ!」
わーい、会話が全然ねぇ。いや、普段なら紅音の方から何かしら話しかけてくれるから会話には困らないんだよな・・・・・・やっぱなんか変だな。今日も一日中上の空だったし。
「ねぇ、紅音。」
「あの、伊鈴くんっ!」
・・・こういうのいちばん嫌いな奴ですわー。話しかけようとしたら被るやつ。
「あー、紅音先いいぞ。」
「いえいえ、伊鈴くん、どうぞ!」
「いや・・・ってこれ終わんねぇか・・・っとさ。紅音何か今日変じゃない?どこか心ここに在らずみたいな・・・朝も悲鳴あげてたし、どこか体調でも悪いんじゃ・・・?」
「ぜっ、全然大丈夫ですよ!ほら、とっても元気です!」
いや、嘘だろ。それ大丈夫じゃない奴がやるやつだし。んー、でも本人が言ってんなら俺から言うことは無いよなぁ・・・
「そう?ならいいんだけど・・・そういや紅音の言いかけてたことって?」
「あ、えっと・・・」
「あ、あの伊鈴くん!こ、これ受け取ってください!!」
紅音がカバンから取り出した何かをこちらに渡してくる。・・・?何だ、これ。お土産?いや、それにしては手作り感があるし・・・
「・・・?いいけど・・・・・・」
「どしたの?急に。今日なんかあったっけ?」
ま、こういう時は聞くに限るよな。マジでわからんし。
「えーっと、あの伊鈴くん。今日がなんの日だか知ってます?」
今日ー?
「今日?2月14日だよねぇ・・俺の誕生日は8月だし・・夢花も5月だし・・紅音は3月だよね?」
「あっ、はいっ!ってそうじゃないですよ!」
誕生日じゃない・・・?ってなるとあとは記念日系か?待て待て、記憶を
「ええー・・・・・・あっ!そういや今日アレか!そういやスーパーで出てたな!」
「そう、そうですよ!」
「煮干しの日!」
「バレンタインデー!」
・・・・・・・・・
「「え?」」
え?バレンタイン?・・・・・・聖バレンタイン?確かローマあたりで殉教したおっさんの記念日だっけ?でも、それでなんでチョコ?・・・・・・そういやお菓子売り場で最近チョコが安売りしてたな。
「ねぇ、紅音。」
「は、はいっ!何ですか?」
「そのさぁ・・・あのー、非常に申し訳ないんですけど・・・・・・バレンタインデーって具体的にどんなイベントなの?チョコレートが安売りになるイベント?」
「えっと、バレンタインデーは・・・・・・あっ。」
「?紅音?」
んー?何か説明しにくいのか?バレンタインにはそんなに深い意味が・・・・!?
「あー、説明しにくいなら別にいいよ?帰って調べるし。」
「あっ、待ってください!えっと、バレンタインデーっていうのは・・・その、女の子が好きな人にチョコを渡す日です・・・」
好きな人にチョコ!へぇー。知らんかった。あれ、じゃあ夢花が昨日台所使ってたのは・・・・・・いや、考えないようにしとこう・・・
「ふーん、好きな人にチョコをあげる?そんな日があったんだ。」
・・・・・・?何か不満そうな顔してんな・・・・えーっと、待て待て?今日はバレンタインで?好きな人にチョコを渡す日でー?紅音がチョコを俺に・・・・・・
「・・・・・・・・・ふぇ!?あ、そ、そうなんだ・・・ふぅん・・・・・・」
んんんんん!?!?!?え、え!?それってそういうことなの!?・・・・・・うう、顔が熱い・・絶対今真っ赤になってる・・・・・・
「えいっ!!」
「わっ!・・・っと!どしたの?紅音?」
正直、既にキャパシティオーバーしかけていた俺に紅音がさらなる爆弾を放り込んできた。・・・・・・もうこの際抱きついて来ていることは気にしないようにする。女の子特有の体の柔らかさとか、いい匂いとか、何か胸の辺りに当たる2つの塊とか・・・・・・気にしてないからぁ!
「私は・・・・・・私は!伊鈴くんのことが好きです!大好きです!!いつも優しくて、でも負けず嫌いで、色んなことに一生懸命な伊鈴くんが大好きです!!私と付き合ってください!!」
このあとの展開はだいたい卒業式編と変わらないので割愛します。作者が照れる伊鈴を書きたかっただけなので。