やべぇ。俺の今までの人生経験じゃあこういう手合いに遭遇した時なんて答えればいいのかわからん。そりゃあ、何で紅音を名前呼びしてんだぶっ潰すぞ。とか長谷川グループって別にそこまで大きい会社って訳じゃなくね?とか田舎者ってお前もここら辺に住んでんだろうが。とか思うことはいっぱいあるよ?でもなぁ・・・・・・あまりにもテンプレすぎるっ・・・・・・!!
「あの、伊鈴くん?どうしたんですか、固まっちゃって」
「あ、ああ。ごめんごめん。えーっと、で結局なんの用なんですか。
「誰だよそれ!僕の名前は長谷川忠彦!!全く!これだから愚者は困るんだ・・・・・・まぁいいよ!何の用かだって?簡単な話だよ。君は紅音と仲がいいんだろう?君からも紅音は僕と付き合うのが相応しいって言ってあげてくれないかな。さっき声をかけたら断られちゃってさ。まぁ、照れ隠しなんだろうけど!」
あー、うん。何かお笑い見てる気分になってくるな。いや、ムカつくかそうでないかで言ったら当然ムカつくんだが・・・・・・何だろうな。見てて笑えてくる。ここまで人生楽観視してても人って生きていられるんだなって。いや、しょうがない。彼の望みを叶えてあげよう!
「何言ってんだ、お前と紅音が釣り合うわけないだろ?鏡と性格診断見てから来いよ」
え、望みを叶える?何言ってんだ。そんなわけないだろ。
「・・・・・・は・・・な!?」
「い、いきなりなんなんだ君は!!紅音の友人らしいから下手に出てやったのに!もういい!!君なんかに言うより紅音に直接言う方がよっぽどいい!!紅音!!僕と結婚を前提に付き合ってくれ!!!!」
いや、させねぇよ?そう思い口を開こうとした瞬間
「いい加減にしてください!私は伊鈴くんと付き合ってるんです!貴方みたいな人の都合も考えないような人とはお友達にもなりたくないです!!」
思いっきり俺に抱きつきながら紅音がバッサリと長谷川何某の告白を切り捨てた。・・・・・・卒業式の時から思ってたけど割と紅音って付き合ってることを隠そうとしないよね・・・・・・
「・・・・・・・・!?!?」
ははは、陸に打ち上げられた魚みたいに口パクパクさせてら。きっと今までこんな経験なかったんだろうなぁ・・・・・・
「そ、そうか!!そこのお前が紅音を洗脳しているんだな!?そうに違いない!!」
「だって僕は勉強もできる!運動もできる!!顔もいい!!!何よりお金持ち!!!!こんな素晴らしい選ばれた存在である僕に靡かない女の子がいるはずないんだから!!」
「ああ、可哀想な紅音!きっとそこの卑劣で意地汚い男に無理やり従わされてるんだ!大丈夫!!僕が君を救ってあげるよ!!僕と一緒にいれば君は何もしなくていい!ぜーんぶ周りの人がやってくれるんだ!!頑張るなんて非生産的なことやる必要は無くなるんだ!!!さぁ、僕の元へおいで!!!」
きっつう・・・・・・最早哀れにさえ感じるな。ほら、周りの人の目も面白いものを見る目から可哀想な目を見るものに変わってるもん・・・・・・ただうちの可愛い自慢の彼女サマはそうは思わなかったらしい。無言でプルプル震えてる・・・・・・あ、これヤバいやつだ。
「ふっ・・・・ざけるのも大概に「はーい、紅音ステイー」・・・・・・!!!」
「何で止めるんですか、伊鈴くん!!」
「落ち着けって。あんなやつ相手に怒ったって体力無駄に消費するだけだよ。後で存分に愚痴は聞いてやるから」
まぁ、紅音に対して頑張らなくていいなんて禁句もいいとこだからな・・・・・・とんでもない迄の地雷の踏み抜き方したもんだ。
「だって!あの人伊鈴くんのこと卑劣で意地汚いって!伊鈴くんがとっても優しくて、色んなことができて、私のことをすっごく大切に思ってくれてることも知らないのに!!」
んん゛っ・・・・・・え、待って、そういうことなの?
「伊鈴くんが私のことを思ってた止めてくれるのは嬉しいです!でも私嫌です!!好きな人のことを悪く言われてそのまま引き下がるなんて出来ません!!」
あの、ちょ、まって
「伊鈴くんは優しすぎるんです・・・・・・私のことを優先してくれるのは嬉しいけど、それでももっと自分を大切にしてください!」
ギューっと俺の体に腕を回し頭をグリグリと押し付けてくる紅音。いや、かわいいけどまって・・・・・・
「それに・・」
「あかねさん、あかねさん、まわり、まわりみて」
「え?・・・・・・あ・・・・・・」
そう、ここは学校の昇降口であり今日は入学式。当然新入生だけでなく在校生や教師の目も・・・・・・って教師ぃ!いたなら止めろや!!あー、もう無理。目の前でみるみるうちに紅音の顔が真っ赤に染まっていくのが見えるけど茶化す気力もない。絶対俺の顔も同じかそれ以上に赤いだろうし・・・・・・
「くく、もういいかな?お二人さん」
「んぇ?・・・・・・どちら様で?」
「ああ、私は悠央高校生徒会会長、進藤玲奈だ。いや、新入生代表を迎えに来たんだが・・・・・・まさかこんな熱々のラブストーリーが見られるとはね。朝からいいものを見させてもらったよ」
んぐぅ・・・・・・やめて!追い討ちは良くない!!
「あはは・・・・・・あ、じゃあ私たちはこの辺で・・・・・・ほら、紅音行くよ」
「いやいや、何言ってるんだ。青野伊鈴って君だろう?」
「え?そうですけど、それが何か?」
「さっき言ったろう?新入生代表を迎えに来たって。君のことだよ、青野伊鈴くん。入試成績1位の生徒は新入生代表挨拶を入学式でする。事前配布資料にちゃーんと書いてあったはずだよ?」
確かに書いてはあった。が、どうせ関係ないと思って読み飛ばしていた。・・・・・・うっそでしょ!?マジで!?やだよ、絶対!
「そんな顔をしてるとこ悪いけど拒否権はないんだ。いや、しかし驚いたよ。まさか歴代最高得点・・・・・・全教科満点を達成する人が現れるなんてねぇ・・・・・・というわけで彼女ちゃん!君の彼氏くんは借りてくよ。存分に彼の勇姿を見届けてやってくれ!」
ちくしょう、落ちる訳には行かないと思って頑張りすぎた!!