龍ノ忍×蛸ノ忍   作:ゆくゆく

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純然たる噛ませ犬

 あー、もうヤダ。入学式早々帰りたい。平穏な日常を送りたいと進学した高校、悠央高校。まさか入学式当日からあんな辱めを受けるとは思わんかった。公衆の面前でイチャつき、そのままの流れで全生徒の前で新入生挨拶。1度もとちらずに言えた俺を誰か褒めて欲しい。

 

 「くくく、随分な名演説だったじゃないか。どうだい?生徒会に興味あったりしないかな?」

 

 「あーー?生徒会っすか。俺は陸上部入るんで無理です」

 

 「我が校は生徒会と他部活の兼部も可能だぜっ・・・・・・とそろそろ君も教室に行きたまえ。クラスで自己紹介やら説明やらがある頃だからね」

 

 行きたくねぇなぁ・・・・・・もう俺自己紹介必要ないでしょ。

 

 

 

 

 

 

 ガラッと教室の扉を開け入った瞬間、教室中の目線がこちらに飛んでくるのがわかる。ようし、落ち着け。俺の足。まだUターンをするには早すぎる。何事も無かったように席に座るんだ。えーっと、俺の席は・・・・・・

 

 「あっ、伊鈴くん!こっちですよ!!」

 

 やーめーてー。俺にトドメを刺すんじゃないよ。つーかまた隣か。出席順的に普通に有り得るとはいえ・・・・・・やはりリアルラックカンスト勢。とんでもねぇな。

 

 「ん、ありがと。ま、改めてこれからもよろしくね紅音」

 

 「はいっ!よろしくお願いしますね、伊鈴くん!」

 

 ところで周りから飛んでくるこの事情聞きたいって言う好奇の視線は無視でいいっすかね。え、ダメ?うるせーっ!俺は無視するぞ!

 

 

 

 

 

 「はーい、皆席ついてるー?今年一年君たちの担任を受け持つ白上優花です。よろしくねー」

 

 よ、ようやく来てくれた・・・・・・もう周りの視線が痛いのよ、ほんと。紅音は特に気にしてるように見えなかったけど・・・・・・メンタルどうなってんだ、こいつ。俺はまだその領域には辿り着けなかったよ・・・・・・

 

 「んー、じゃあとりあえず自己紹介してもらおうかなー言うことは何でもいいよ?じゃあ出席番号一番の人・・・・・・えーっと青野伊鈴・・・・あっ」

 

 おいこら、何だその「あっ」て。

 

 「ゴホン!うん、じゃあ青野くんよろしくっ!」

 

 丸投げやめろや!うう、逃げられない。気分は四方を囲まれたメタルス〇イム・・・・・・もはや俺に残された道は勇者たち(クラスメイト)経験値(情報源)になるのみ・・・・・・

 

 「えっと、青野伊鈴です。第2中から来ました。趣味はゲームしたりランニングしたりすることです。あ、あと一応新入生代表らしいです。っても特に気負わず話しかけてくれると嬉しいです。」

 

 あー、自己紹介とか嫌いだわ!何言っていいかわかんねぇもん!

 

 「はい、ありがとうございましたー。じゃあ何か聞きたいことある人ー」

 

 おい、やめろその質問は。絶対酷いことに・・・・・・

 

 「ちょっと待てよ!何で僕じゃなくてお前が新入生代表なんだよ!僕は選ばれた存在なんだぞ!!」

 

 お前かよ!!呼んでねーんだわ!つーかこのクラスだったの?嘘でしょ?

 

 「はいはーい、長谷川くん、ストップー。あんまり言いたくないけど君、このクラスの中でもほぼ最下位だから頑張らないと来年このクラスにいれないよー?」

 

 「んなっ・・・・・・!」

 

 「はーい、他にある人ー」

 

 お、あのバカが空気読まなかったおかげで何となく上げにくい雰囲気になってる。ナイスだバカ。良くやったぞ、名前は忘れたけど。

 

 「無いかなー?じゃあ次の人・・・・・・えーっと隠岐紅音さん、よろしくねー」

 

 「はいっ!」

 

 入れ替わりで紅音に教壇を譲る。・・・・・・あれ、何かクラス内の雰囲気が変わったような・・・・・・まさか俺の時に質問出さなかったのは紅音の方が答えてくれそうだと思ったから・・・・・・?いやいや、まさか。

 

 「隠岐紅音です!伊鈴くんと同じ第2中から来ました!好きなことは走ることです!高校では陸上部に入ろうと思っています!仲良くしてください!!」

 

 あー、溢れ出るいい子感。俺には出来ないタイプの自己紹介だぁ。

 

 「はーい、じゃあしつも「はいっ!!」渡辺さん、どうぞー」

 

 何だ今の。あげた瞬間が全然分かんなかったぞ。こっわ・・・・・・

 

 「青野くんのことを伊鈴くんって呼んでるけど2人はどういう関係なんですか!?」

 

 「あ、えっと・・・・」

 

 チラチラと紅音がこちらを見てくる。さすがに俺の許可を取った方がいいとでも思ったのだろうか。正直今更なんだよなぁ・・・・・・いいよー、言っても。そんな意を込め軽く頷く。

 

 「えっと、私と伊鈴くんは、その・・・・お付き合いをさせて頂いてます!」

 

 「きゃあああああぁぁ!!!」

 

 ちょっと顔を赤らめつつ勢いよく言い切った紅音に対しクラス中の女子が黄色い悲鳴を上げる。分かる、分かるぞ!お前たち!普段あんまり女子を意識させない紅音が急にそういうことをするとギャップで死ねる。そういうことだろう。・・・・・・あ、お坊ちゃま(笑)がプルプル震えてる。・・・・・・煽りてぇなぁ。凄いいい反応しそう。

 

 「はいはいっ!どっちから告白したんですか!」

 

 ・・・・・・そういや俺たちってどっちから告白したことになるんだ?秋津茜&葵の頃を含めるなら俺からだけど・・・・・・いや、でもリアルでも結局俺の方からか?・・・・あー、いいよいいよ答えて。

 

 「最初は私の方から告白したんですけど・・・・俺に言わせて欲しいって・・・・えへへぇ・・・・」

 

 あああ、可愛いぃー!その思い出し笑いは可愛すぎるっ!!・・・・・・あれ、今度は悲鳴が上がんないのな・・・・・・あ、違ぇなこれ。全員心臓を撃ち抜かれてる。満足そうな顔してるからいいか。

 

 「じゃ、じゃあじゃあ」

 

 「はいはーい、先生も気になるけどこれ以上やってると時間足りなくなっちゃうからそれ以降は個人的にねー」

 

 「えーー!」

 

 「あと1個だけ!お願いします!!」

 

 「紅音ちゃん、いいですか!?」

 

 「んー、じゃああと1個だけよ?隠岐さんもそれでいい?」

 

 「はいっ!こういう雰囲気大好きなので大丈夫ですっ!!」

 

 執念が凄い!まぁ、いいけどね。ただ質問が完全に俺と紅音の関係なのはどういうことなの。他のことも聞けよ。

 

 「じゃあ最後に・・・・・・青野くんのどこが一番好きなの?」

 

 まてや!それは非常に俺が恥ずかしいことになる気しかしない。

 

 「・・・・伊鈴くんは色々いい所はあるし全部が大好きですけど・・・・・・やっぱり一番は優しいところです。ちょっと長くなっちゃうんですけど、私が伊鈴くんを好きになった切っ掛けも彼の優しさに救われたからなんです。なんて言うかアイデンティティを失いかけていた私を全肯定してくれて・・絶対に見捨てないって言ってくれて・・・・その時からずっと大好きです・・・・・・えへへ、改めて言うと照れちゃいますね!」

 

 ああああああああ!!!恥ずかしい!可愛い!!恥ずかしい!!!可愛いぃ!!!!・・・・・・・・あ、すげぇ。皆最早倒れるを通り越して泣いてるよ。男女問わず。何か後ろのやつがめっちゃ泣きながらグッジョブしてくるんですけど。何やねん。

 

 

 

 そのあとの自己紹介はもう酷かった。皆名前だけ言ってあとはいかに紅音が可愛いか、どう応援していきたいかなどなど・・・・・・自己を紹介しろぉ!!担任!止めろ!!一緒になって泣いてんな!!

 

 「・・・・・・」

 

 ?あ、あれじゃん。お坊ちゃま(笑)じゃん。そっか、もうそこまで行ったのか。こいつ、この状況でどんな自己紹介するんだろう。逆に気になってるんだけど。

 

 「僕は長谷川忠彦・・・・・・長谷川グループの御曹司で・・・・優秀な人間・・そうだ、僕は選ばれた存在なんだ!そうだよ!!」

 

 「おい、お前!」

 

 何かこっち指さして来た。おいおい、長谷川グループの御曹司サマは人に指をさしちゃいけないってことも教わらなかったのかなぁ?将来が不安だねぇ!

 

 「無視すんな!お前だよ、お前!!紅音の彼氏面してイキってる奴!」

 

 ひょっとして、それは俺の事なのだろうか。彼氏面っていうか彼氏ですね。ははっ、照れるなぁ。

 

 「はいはい、なーにぃー?」

 

 「1万円上げるよ。だから紅音と別れろ」

 

 「は?何言ってんだ、ついに頭沸いたか?嫌だね、御曹司サマは。何でも金で解決できると思ってやがる。いいこと教えてやるよ。金じゃあ欲望は満たせても心は満たせないんだよ、分かるぅー?」

 

 おお、凄い。考えたことが口からそのまま出てくるのは久しぶりだな。しゃあないな、ムカついたし。無言で殴りかかってないだけマシと思え。ここがシャンフロだったら今頃生きたまま解体ショーだわ。

 

 「はぁ!?ふざけんな!!金があれば何でも解決するんだよ!部下も、女も!何でも俺の思いどおりだ!!だから、さぁ!紅音!僕の元へおいで!!」

 

 「なぁ、おい。お前の耳は飾りなのか?それともお金が詰まっちゃってなんにも聞こえなくなってるのかな?紅音、嫌だって言ってたよな?悪いけど彼氏としてあんたに紅音は渡せねーよ」

 

 「お前には言ってない!!紅音、僕とこいつどっちが大事なんだ!!」

 

 それ、もう解決した問題じゃなかったの?思いっきし友達にもなりたくないって言われてたじゃん。やめろよ、繰り返すの。文字数稼ぎだと思われるだろ。

 

 「・・・・・・さっきも言いましたよね。私貴方とは友達にもなりたくないです。もう話しかけてこないでください」

 

 ・・・・ここまで言う紅音とか始めて見たわ。今日は色んな紅音の姿が見れるなあ・・・・・・別に見なくてもいい姿だけど。

 

 「んなっ・・・・・・何でそんなことを言うんだ!僕の方が君にふさわs」

 

 「お前しっつけーんだよ!」

 

 「そうよそうよ!紅音ちゃんが迷惑がってるでしょ!?」

 

 「だいたい何であんなラブラブな二人を見てワンチャンあると思えるんだよ!!」

 

 「「「それな!!!!」」」

 

 何でそれに同調すんの!?止めてくれるのは有難いけども!

 

 「な・・・・・・なんだよお前ら!僕は長谷川グループの御曹司だぞ!?そんな僕になんて口を聞くんだ!!パパに頼めばお前らの親が勤めてる会社なんか直ぐに潰せるんだぞ!!?」

 

 いやー、その脅しはここ(Aクラス)じゃあ効かないんじゃないかなぁ・・・・・・

 

 「やってみろよ、上等だオラァ!!」

 

 「父親の力にばっか頼って恥ずかしくないの!?」

 

 「というかそれは脅迫に当たるのですが?」

 

 ほら、このとおり。悠央高校は入試成績、あるいは学期末試験の結果によってクラスが決められるが・・・・・・それはBクラスまでの話。Aクラスは何と言うか勉強だけではない()()()()()を育てることを主眼に置いているクラスだ。故にそこに入れるのはまぁ、いいとこのご子息やお嬢様。あるいは余程好成績を残した生徒くらいのものである。・・・・・・そう考えると紅音良くAクラスに入れたな。

 

 「はいはーい、皆さんそこまでぇー。一旦落ち着きましょうねぇー?」

 

 遅いわ!今まで教室の後ろで座って状況を傍観していた担任・・・・・・何だっけ白上先生?がようやく仲裁に入ってくる。まぁ、いい加減泣きそうだったからなー、お坊ちゃま(笑)が。頃合と言えば頃合か。

 

 「皆が青野くんと隠岐さんのことを応援する気持ちもそれを邪魔しようとする人を許せない気持ちもわかるけどー、だからって皆して責め立てるのはどうかと思うわー?」

 

 おお、まだ新人感のある先生なのにみんなを上手く沈めてる。Aクラスの担任になるだけはあるってことなのだろうか。

 

 「で、長谷川くんは後で職員室に来ることー。ちゃーんと、お説教してあげるからねー?」

 

 「・・・・・・は、はぁ!?何で僕がそんな」

 

 「長谷川くん・・・・・・?あなたのせいで皆迷惑してるのよ?これ以上迷惑かけるのなら・・・・・・」

 

 ん?何だ?何か一言二言耳元で囁いて・・・・・・あ、お坊ちゃま(笑)が凄い震えながら席に戻った。え、何言ったの、怖っ・・・・・・

 

 「はーい、じゃあ次の人よろしくねー」

 

 まだ続けんの!?

 

 

 

 

 

 

 結局時間が足りなくなって自己紹介は次の日に持ち越された。お坊ちゃま(笑)は職員室に連行されたあと全然絡んでこなくなった。めでたしめでたし。

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