「魚人忍法【雷纏・黒紫腕】!!」
周囲の闇よりもさらに深い黒に染まり紫電を纏った触手が俺の意思に従って襲撃者を襲う。
「がぁああああああぁ!?」
ふっ、悪いな、見ず知らずの襲撃者(仮)。お前に特に恨みはないが、割とレア臭いクエスト達成のために犠牲になってくれ・・・
「て、天首領さん!?」
「ちっ、こいつ何しやがった!」
おっと、まずい。今の攻撃が秋津茜さんがやったと思われたのか割と殺意マシマシで襲いかかられてる。とはいえ言うほどまずくはない。何故かって?
「刃隠心得【空蝉】!」
リーダーっぽい男を痺らせている間に秋津茜さんに近づいていたからな!この近距離まで来てしまえば守り抜くのなんてそう難しい事じゃない。さてさて、お姫様のお顔を拝見・・・って何これ、狐のお面?めっちゃ欲しいんやが。っていうかちっちゃいな。リアルと同じなら中学生くらいじゃない?ひょっとしたら同い年かもなぁ、何て。おっと、皆さんの視線が痛い。僕は悪い忍者じゃないよ!
「・・・全く、星忍のじーさま達が騒ぐから来てみれば、こんな可愛い子とはね・・・ロリコンなのかな?あの人たち。」
とりあえず適当なことを言ってみる。ちょっと今テンション高いからなー。考えたことがすーぐ口に出る。
「えっと、あなたは?」
んー?なんかどっかで聞いたことあるような声・・・まぁいいや。しかし、見た目と声がここまで一致してるとなると秋津茜中学生説が現実味を帯びてくるな・・・いやいや、リアルを探るのはマナー違反。この思考はストップ!
にしても、「あなたは?」ねぇ・・・バカ正直に答えるのもなんかカッコ悪いし・・・ああ、これでいっか。
「・・・貴方の同類さ、秋津茜さん?」
ちょっと気取ってみたけど、恥ずいな!思ってたより!ほら、ポカンって顔してるもん!見えないけど!
「・・・ゴホン!あー、とにかく味方味方。一時的な共闘関係ということで。」
「なるほど!分かりました、よろしくお願いします!」
めっちゃ元気いいなー。こういう子見てるとこっちまで元気になっちゃう。
「おい!何だてめぇ、横から出てきて。天首領さんをやったのはあんたなのか!?」
あ、忘れてた。ゴメンゴメン。
「フフ、そうだって言ったらどうする?」
なーにを言ってるんですかねぇ、この口は!何がフフだ!こっわ、無意識の自分、こっわ!
「1人増えたところで変わるかよ!くらえ!」
「ははっ、威勢がいいな。やってみろよ。」
いいねぇ、おもしれぇ・・・!
「刃隠心得蛸の巻・奥義【大海・・・!」
刹那、爆音が世界を覆い相対していた集団は吹き飛ばされた。
「ナニゴト!?」
「あ、ノワルリンドさん!?」
だーれ、それ。ワタシ、シリマセーン。現実逃避じみた思考をしている俺を置いて、ノワルリンドとやらは秋津茜さんと戦ってた連中を睨めつける。
『群がる虫どもめ……我が首を求めるなど実に不遜なる奴らめ』
「ノワルリンド……!!」
『だが残念だったな、この首を我が貴様らに差し出すことはない………だが、全てが終わった後に浅ましく骸を刻む事は許してやろう……』
「え?」
『ふん、単なる気分転換……だ!!』
ノワルリンドとやらが翼を大きく広げたかと思うと空へと羽ばたいていく。そのまま宙で一回転。黄金の龍へ向けて一条の黒き流星となって突き進む。誰もが皆、その結末を見届ける中・・・・・・全く話についていけないんですけどー?ノワルリンドis誰。というか、え?新大陸今こんなことになってんの?こんな所に隠居プレイの弊害が出るとは・・・
「ああっ!!」
え、何何?なんかあった?秋津茜さんの悲痛な叫びを聞き、ノワルリンドの方を見る。
黄金の龍が放った閃光に体を貫かれながらも決死の特攻を続ける黒龍。その一撃は黄金の龍を確かによろめかせ、ダメージを与えたかのように見えた。
然れど、その特攻は失敗に終わったと言えるだろう。何せこの距離からでもわかる程に損傷した全身。そして、何より生物の構造的に折れるはずがない方向に折れた首。黒龍の死は確実なものだろう。
「うおっ、首からイった……」
「あれ……首どころか全身の骨が折れてない?」
「自滅?」
プレイヤーたちの声もさもありなんと言ったところだろう。ノワルリンドが行ったのは正しく無意味な特攻。黄金の龍にさしたる痛痒も与えなかった。それが大部分のプレイヤーたちの認識であり、だからこそ彼らは先程まで追い詰めていた獲物を逃がすことになる。
「ノワルリンドさん、随分痩せましたね!」
『たわけが!これは我が究極の秘奥・・・
『ところで秋津茜、そいつは誰だ?不快な匂いがプンプンする。噛み砕いてやろうか。』
お、やんのか?プチドラゴン。お前今大型犬だからな?
「だ、ダメですよ、ノワルリンドさん!この人は一応?味方だそうです!」
そこは断言して欲しかったなぁ・・・
「そーいうことだ。よろしく、ノワリン。髪切ったー?」
『誰がノワリンか!切っとらんわ!』
「えーっと、あの凄い強い剣聖の人追ってきません・・・?」
あっ、もう状態異常治ったんか。もう少し強めのやつ打ち込んどきゃよかった。
『・・・クク、よもや我が欺きを見抜く者がいるとはな・・・』
「まずくないですか!私もノワルリンドさんもワンパンされちゃいますよ!?私今だいぶピンチですよ!?」
「じゃあ、ここは任せてもらおうかな?」
「えーっと、忍者さん?いいんですか?」
「元々君を守るためにここに来たしねぇ・・・存分に頼ってくれたまへ。あ、後葵ね。俺の名前。覚えといてー。」
「・・・分かりました!葵さん、お願いします!」
そう言って秋津茜は、ノワルリンドを連れて走り去っていく。
「・・・さーて、やりますかね。」
相手は多数。正面から向かい打つという忍びとしては最悪の構図。逃げるのが正解かもしれない。そうでなくとも、まともに打ち合おうとするのは悪手でしかないだろう。だけどなぁ・・・!
「ゲームだからなァ!楽しまなきゃ損ってもんよ!」
さぁ、忍聖の力その目に焼き付けてもらおうか!
「刃隠心得蛸の巻・奥義【大海嘯・鯨呑】!!」
はっはははははははははぁ!