龍ノ忍×蛸ノ忍   作:ゆくゆく

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書いてて思った。ちょっと冗長な話が続いてますね。


一途なる守護

 ◆ 文化祭1日目

 

 ……今一度うちのクラスの出し物を確認しておこう。店員が男女逆転コスプレをしているという点は特筆すべき点だが、それ以外はさして珍しいものがある訳でもない一般的な喫茶店である。そこまで客が来ることもないだろう、そう思っていた。のに……

 

 「青野ー!次3番テーブルにこれ!」

 

 「はーい!」

 

 なんなのこの混み方!?おかしいでしょ!ただまあ、外部客は少ないな。生徒が多いって感じかな。

 

 「お待たせしました!ブラックコーヒー2つとモナカアイス2つです!ごゆっくりどうぞ♡」

 

 出来ればゆっくりしないでテイクアウトしてくれると助かるけどね!

 

 「あ、あの!写真いいですか!?」

 

 ……なんかこれなのかなぁ、混んでる理由。うちの店はその特性上店員と写真が撮れる。もちろんSNSなんかにあげないことが条件だけど。文化祭が始まってから1時間ほどしか経ってないのに既に10回以上写真撮ってるんだよな……

 

 「もちろんいいですよ☆」

 

 いえーい、ピースピースぅ。……はぁ、仕事に戻ろう。この仕事をする上で必要なのは表面上のにこやさと内面での凪いだ心だ。ビークールビークール。プロ意識を持つんだ……

 

 「すみませーん、こっちも写真いいですかー?」

 

 くぁっ!

 

 

 

 

 

 

 

 「いやいや、青野ちゃんはモテモテだねぇ!よっ!稀代の美少女!」

 

 喧嘩か?お前は喧嘩を売ってるのか?

 

 「うるせー、笑いながら言うな」

 

 「くふふ、まあまあ。存分にデートを楽しんできたまえよ。紅音も楽しんでくるんだよー……あっ、そうそう。なんか不審者が入り込んでるとかいう噂が流れてるから注意してね?」

 

 不審者……?まぁ、悠央の文化祭って割と誰でも入れるからな。そういうこともあるのだろうか。

 

 「うん!ありがとう、透子ちゃん!……行きましょう、伊鈴くん!」

 

 「ん、行こっか。紅音どこか行きたいところある?」

 

 「えっと、お化け屋敷行ってみたいです!」

 

 お化け屋敷か。ちょっと意外だな。紅音って結構怖いの苦手じゃなかったっけ?それに悠央のお化け屋敷って結構本格派なことで有名なんだよな……

 

 「いいけど……紅音大丈夫なの?」

 

 「ちょ、ちょっと怖いですけど大丈夫です!伊鈴くんも怖かったら私にしがみついていいですからね!」

 

 「……?うん、まあその時は頼るね?」

 

 さすがにそんなことはしないと思うけどなー。お化け屋敷で彼女にしがみつくのはちょっとだらしなくない?

 

 「お、あそこだね……○廊?」

 

 なんかどっかで聞いた名前だな。まあ、それはさておきあんまり混んでないかな?これならちょっと待てば入れそう。

 

 「あんまり混んでないみたいですね!良かったです!」

 

 「そだね。のんびり話しながら待ってようか」

 

 うだうだととりとめない話をすること十数分、ついに俺たちの番が回ってきた。

 

 「2名様ですね!こちらの懐中電灯は出口で返却してくださいねー。では行ってらっしゃい!」

 

 「い、行きましょう、伊鈴くん!」

 

 「ん、行こうか」

 

 ……ふうん、さすがに本格的だな。各所に配置されてるフレームライトが雰囲気出してるな。……おい待て、紅音。なぜ先頭を行こうとしてるんだ。大丈夫なの?

 

 ガタンッ!

 

 「ぴゃっ!!」

 

 ダメそうだなぁ…………物音だけでここまでビビってちゃろくに進めないだろう。いよいよもってなんでお化け屋敷選んだんだろ。

 

 「ほら、紅音。掴まりなよ」

 

 多少は怖さも軽減されるだろうと思い手を差し伸べたのだが……

 

 「だ、だだだ大丈夫です!ついてきてくださ『……うぁぁぁぁ……』きゃあああああ!?!?」

 

 なんなの!?何がそこまで紅音を駆り立てるの!?大人しく頼ってくれていいんだけど!?もはやそっちが気になってお化け屋敷の怖さが半減してるよ!

 

 「…………うう、伊鈴くん。手、握っていいですか?」

 

 「いいけど………」

 

 おずおずと差し出された紅音の手を握り返しながら、なんであんなに固辞したのか?そう聞こうとしたがやめた。何故かって?後ろから早く行けやリア充が……的な視線を感じるからだね!

 

 

 

 

 

 

 

 その後紅音が何回も絶叫し、最終的に手を握るどころかコアラか何かのようにピッタリと張り付いてきたのは……まぁ言わなくても良いことだろう。あえて言うなればめちゃくちゃ可愛かったし父性がくすぐられた

 

 

 

 

 

 「ほら、紅音。ドリンク買ってきたよ」

 

 「うう、ありがとうございます。伊鈴くん……」

 

 本格派お化け屋敷の恐怖に存分に打ちのめされた隠岐紅音氏に休息を与えるべく俺たちは休憩所に来ていた。

 

 「にしてもなんであんなに張り切ってたの?紅音、ホラー系苦手じゃん」

 

 「…………笑いませんか?」

 

 「……?うん、笑わないけど……」

 

 え、そんな笑う可能性があるような内容なの?

 

 「……その、なんと言いますか、えっと、伊鈴くんに頼れるところを見せたかったというか……」

 

 目を逸らしながら人差し指をつんつんしてる紅音はそれはもう可愛かったのだが……なんて?頼れるところを見せたい?

 

 「なんでまた急にそんなことを……」

 

 「実は……」

 

 そんな前置きとともに聞かされた話を聞いて……まぁ、とりあえずアイツ(夢花)は一回シメておこうと思った。紅音に余計なこと吹き込むんじゃないよ。この子は優しいんだから絶対気にしすぎるんだよな……

 

 「なるほどね……まあでもそんな気にしなくていいよ。俺は大丈夫だから」

 

 正直こんな言葉をかけても紅音が止まらないだろうってことは分かる。そのくらいの関係にはなってる。……だからってそう簡単に俺の抱えている問題がどうこうなる訳でもない。というか一生治ることはないまである。幼少期の経験ってのはそういうレベルで人生に影響を及ぼすんだ。

 

 「っ!…………はい」

 

 紅音も察したのだろう。何を言っても無駄であると。

 

 「ん……そろそろ教室戻ろっか。シフトの時間だ」

 

 「はい……」

 

 俺の言った言葉は本来なら安心を誘う言葉で、でも彼女(紅音)にとっては拒絶に等しい言葉だったのだろう。そんなことはわかっている、分かってはいるが……それでも言わなければならなかったのだ。俺のために紅音(庇護対象)の心が彷徨うことなどあってはならないのだから。

 

 結局その後教室に戻った俺たちの間に会話はなく文化祭の一日目は全体として見れば盛況で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

裏設定的な何か

 

伊鈴の中では紅音も夢花も本質的には同じカテゴリに分類されている。それはすなわち庇護すべき対象。幼い頃より妹を守り、育て、独り立ちさせたあとは一人で生きていこうとしていた伊鈴の中に共に支え合い助け合うというカテゴリはない。

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