追記 タイトル編集しました。
side:秋津茜
今日は良い日になるはずでした。ジークヴルムさんとの戦いの時に知り合った、天首領さんとの戦いで殺されかけた私を助けてくれた命の恩人の葵さん。そんな彼と一緒に新大陸の森に狩りに来ていました。彼はまだレベル上限を解放していないのにとても強い人なんです!戦い方が上手いんでしょうか?なんだかサンラクさんにもちょっと似ている気がします。ノワルリンドさんも何だかんだ言いつつも嫌そうにはしていないので私も嬉しいです!
でも、違いました。モンスターを倒した隙を狙われて何らかの攻撃を受けた私は地面に倒れ込んでしまいました。体は痺れ、視界は暗く塗りつぶされ、合体してるはずのノワルリンドさんの声も聞こえません。ああ、ここで死んでしまうのかとまで思いました。でも、葵さんは私を助けてくれました。目は見えなくても分かります。心の底から私を心配してくれているのだとわかる声。たくさんの攻撃が降り注ぐ音。それが柔らかいものにあたり、同時に聞こえる苦悶の声。
私のせいでした。その後何人かの人達が私たちの周りに出てきたのがわかりました。その頃には体の痺れも弱まってきて、周りの様子も少しですが見えるようになっていました。何とか体を起こそうとしたら葵さんはすぐに近よってきてくれて心配してくれました。優しいな・・・・・・でも、その後に聞いてしまった言葉。私のせいで苦しんでいる人が、シャンフロにもいる・・・・?私はリアルでは陸上をやっています。そこでも勝ち負けはあって、負けた人が泣いていて・・・・でも勝者は勝ち誇ることべきであるはずで・・・・・・
私がいけなかったんでしょうか。走ることが楽しくて、でも、周りは苦しんでいた・・・・・・?楽しんでいたのは私だけだった・・・・・・?新しく始めたゲームでも他人に迷惑を・・・・・・?恩人にも迷惑を・・・・・・?
私は・・・・・・・・・もう他人の笑顔が、私に向けてくる善意が信じられないかもしれません・・・・・・だって・・・全部・・・・・・私が・・・悪いから・・・・・・
どれくらいたったのでしょうか。後悔と自責、恐怖と絶望が心の中で渦巻き、何も考えられなくなっています。気づけばノワルリンドさんとの同化も解けています・・・通じ合えたと思っていたのも私だけだったんでしょうか・・・・・・
また、負の感情のスパイラルに落ちかけていた私の思考を木々の破砕音が引き止めます。そういえば葵さんはどうなったのでしょうか・・・きっと私なんか見捨てて逃げてしまっているのかもしれません・・・今の今まで助けられたことも忘れて、自分のことしか考えていなかった私の事なんか・・・・・・
『Boaaaaaaaaaaaaaa!!!!』
耳に障る、だけど優しく、でもどこか悲しい悲鳴が聞こえてきます。導かれるようにして上を向くと見るだけで心が削られていくような怪物がそこにはいました。(ああ、ちょうどいい。ここで殺してもらえれば、もうシャンフロに来ない言い訳ができる。)普段の諦めることを望まない私からは考えられないような弱音が頭のどこかから私に囁きます。
『A――agi・・・zuaaaga・・・neeeee・・・』
・・・・・・?今、私の名前を呼ばれたような・・・・・・気の所為ですね・・・自意識過剰でしょうか・・・・・・
『g,gugaaaaaaa!!aaaaaaaaaaaa!!!!』
何でしょうか・・・やっぱりどこか苦しんでいるような・・・・・あれ?よく見るとこの怪物、蛸に似ているような・・・タコといえば葵さんが・・・・・・まさか?
「・・・・・・葵さん、ですか・・・?」
『A――aaaaua』
『Aki・・・tu・・・・・・・・・茜・・・・・・』
私が葵さんの名前を呼んだ瞬間、怪物の全身が光を発し、みるみるうちにその巨体が萎んでいきます。そして、光と煙が収まると、そこにはいつも通りの葵さんが疲れきった様子で座っていました。
「・・・・・・っ!葵さ・・・」
ついついいつものように駆け寄ろうとしましたが、体が凍りついたように動きません。拒絶されるんじゃないか、罵倒されるんじゃないか、「お前のせいでこうなった!」そんな言葉を聞くのが怖くて、葵さんの顔を見ることが出来ません。
「・・・・・・秋津茜・・・・・・」
っ!
「・・・・・す、すみません・・・わた、私のせいで・・・こんなことになって・・・・・・葵さんもボロボロで・・・・・・」
拒絶されるのが怖くて、でも何も言わないという選択肢を取るほどの勇気もなくて、泣きそうになりながら必死に言葉を紡ぎます。
「・・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・・」 (・・・助けて・・・)
「・・・あー、」
「・・・め、迷惑ですよね・・・」 (・・・見捨てないで・・・)
「・・・秋津茜」
「・・・もう私には会わない方が・・・・・・」 (・・・一緒にいたい・・・!)
「秋津茜!」
「ひっ!」
あ・・・・・・つい悲鳴を上げちゃいました・・・葵さんは悪くないのに・・・・・・もうダメですね、私・・・・闘病生活の時を思い出します・・・・・・あれから変われたと思えたのに、結局心の根はあの頃から何も変わってないんでしょうか・・・・・・
「・・・あ、えっと、ごめん。」
・・・やめてください・・・葵さんは悪くないのに・・・謝らないで・・・
「とりあえず、助けてくれてありがとう。秋津茜が呼びかけてくれなきゃ、俺は戻って来れなかった。」
「・・・そんなこと言わないでください・・・私は葵さんに感謝されるような人間じゃ・・・・・・」
・・・葵さんが感謝してくれているのに、本当ならとても嬉しいのに、こんな卑屈なことしか言えない自分が嫌になります。・・・ほら、困惑してる。2回も助けてくれた恩人なのに、こんなことを言って困らせることしか出来ない。・・・もう、消えちゃいたいです・・・・・・
「・・・いいや、言う。俺は言うぞ!何回だって言ってやろう!!何を思ってるかは知らんが、秋津茜が自分のことを俺に感謝されるような人間じゃないと言うなら、そんなこともう二度と思えないくらいに感謝し倒してやるよ!」
「つーか、どうした秋津茜。ひょっとしてあのPK野郎が言っていたこと気にしてんのか?」
・・・葵さんにはお見通しみたいです。
「・・・・・・はい。」
・・・葵さんは、私のことをどう思ってるんでしょうか・・・やっぱり迷惑なのかな・・・気になります。気になるけど・・・・・・聞くのが怖い・・・
「あー、秋津茜?何か言いたいことあるなら言え。望む回答はくれてやれないかもしれないが、踏み出さないよりかはマシだろ。」
・・・・・・・・・
「・・・・・・葵さんは、私のことをどう思ってますか・・・?」
「ふぁ!?」