正義の味方を目指すのは間違っているだろうか? 作:Abc
白いだけの空間に、一人の女がいる。
「・・・・ふむ、あの世界に落ちたか。まあ、あの世界なら願いも叶うことだろう。なにせ英雄を求めているのだからな。」
女はそう呟く。その表情には少しの安堵が浮かんでいる。だが、その表情はすぐに消え、女は顎に手を当て首を傾げる。そして、
「む?だが彼が成りたいのは・・・・正義の味方だったか?」
そう、先程聞いた「彼」の願いを呟いた。
このオラリオに住む神ヘスティアは途轍もない負の気を纏いながら街道を歩いていた。
「あの薄情者め!神友であるボクを追い出すなんてぇ・・!」
そう、この女神はつい先程居候していた神ヘファイトスの下から追い出されてしまったのである。だが、追い出された原因は、ヘスティアが働きもせずにヘファイトスに頼りきりの悠々自適な堕落生活を送っていたことなのだから、完全な自業自得である。
しかし、ヘファイトスはなんだかんだいって面倒見がいいため、ヘスティアが一人で生活出来るよう、住居と仕事を与えたのである。まさに女神の慈悲。しかし、それを受け取るのが同じ女神ということを忘れてはならない。
「えっと?この道で合ってたかな?」
地図を片手に新しい住居へ向かうヘスティア。少し道に迷いがちなのはあまり外に出なかったツケというべきだ。
「あー!やっと着いた!地図通りなら此処で合ってるは・・・ず・・・?」
四苦八苦しながらも目的地へとたどり着いたヘスティア。しかし、そこにあったのはボロボロの教会であった。道を間違えたのかと疑い地図を見るも寸分違わず合っている。絶望を感じたヘスティアだったが、ヘファイトスから伝えられたこと思い出した。
「ん?そうだ!中に住める程度の隠し部屋がある、って言われてたんだった!確か中に入って右側の扉だったはず!」
ここに来るまでの疲労で忘れていたその言葉を思い出したヘスティア。希望を取り戻したおかげなのか、負の気が和らいでいる。
意を決し教会へ足を踏み入れようとしたその瞬間、上から降って来た誰かが教会の天井を貫通して落ちてきた。
「・・・・え?」
状況が把握出来ないヘスティアにさらなる不幸が襲う。教会が崩れ始めたのだ。元々ボロボロだったため、天井を貫くほどの衝撃に耐えきれないのも無理はない。
「・・・・・・・・・・」
唖然とするヘスティア。開いた口が塞がらないとはこのことだろう。
だが、そんな状態は意外に早く終わりを告げだ。
「・・・・え?ちょ!大丈夫かい君!」
瓦礫の中から手が生えていた。いや、そう見えるだけで十中八九先程降って来た誰かの手だろう。ヘスティアはその手を見て、女神として下界の人間を助けなくては!という女神らしい思考により誰かの救助に向かう。
「んー!はあ、はあ、ダメだ!一体どうしたら・・・・・」
しかし、ヘスティアの力では手首から下が完全に埋まっている体を引きずり出すことは出来ない。焦燥感に駆られ頭が回らなくなるヘスティア。あたふたしていた彼女だったが、背後から聞こえてきた音によってその動きを止める。
その音は、ガララ、という瓦礫をどかす音だった。この場所にはヘスティア意外には今埋まっている誰かしかいない。つまり、瓦礫をどかしたのは・・・・。確認のため、振り返るヘスティア。
「あー、痛てて。普通死ぬだろ、コレ」
そこにいたのは赤毛でツンツン頭の少年だった。
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