正義の味方を目指すのは間違っているだろうか? 作:Abc
「・・・・・・はっ!あれ、僕、生きてる?」
頭をぶつけた衝撃で少し気を失っていたんだと思う。ただ、ぶつけたはずの額がジンジンと痛みを訴えているため気を失っていた時間は短いはずだ。
それにしても、顔に何か張り付いているきがする。もう硬直は解けていた。確かめるため、恐る恐る自分の頬を触る。
「・・・・・・え?これ、こんなに血が・・・・・え?」
僕の手にべっとりと血が付く。・・・・・・・死んだ。これはさすがに死んだ。
ああ、すみません神様、団長・・・・・いや、シロウさん。愚かな僕を許してください。
膝をついて手を組み懺悔する。自分の死を待つというのは、こんな気分になるものなのか。あの時、5階層に足を踏み入れた自分を思いっきり殴り飛ばしたい。
最後にそう思い、僕の意識は薄れてい・・・・・薄れて・・・・・・・あれ?薄れていかない?
立ってみるが、ふらつかないし、めまいなんかも起こらない。いたって正常だ。こんなに血が出ているのに、なんで大丈夫なんだ?そういえば、ミノタウロスもいない。どうして?
疑問が湧いてくるが、分からないことは分からない。それよりも今はこの場から離れるのが先だ。また同じようなことになったらたまらない。そう思い歩きだそうとした時、前から声を掛けられた。
「あの、大丈夫ですか?」
その声を掛けてきた女性に、目を奪われた。文字通り、目が彼女しか映さない。それは、何故今まで気づかなかったのか、と思う程近くに居たこともあるだろうが、それよりも、彼女の容姿に、見惚れてしまったからだろう。その黄金の髪と瞳は、この薄暗いダンジョンの中でも輝いて見える。男の理想をそのままにしたかのようなしなやかで美しい肢体。そして、彼女の剣についている血さえも彼女を彩る絵の具のようだ。僕はそんな彼女を知っている。
このオラリオが誇る第一級冒険者、アイズ・ヴァレンシュタイン。
そんなこの世のものだとは思えない美少女を前にして僕は・・・・・・・・
「だあああああ!!」
胸の高鳴りを誤魔化すために、叫びながら逃げてしまった。
「助けてやった相手が逃げ出すなんて、流石だぜアイズ!ハハハハハ!」
「・・・・・・・・・ムス」
可愛かった!可愛かった!可愛かった!
一目惚れだ。僕の心臓がこんなにも速く脈打っているのは今全力疾走していることが原因じゃない。恋だ!原因は恋だ!彼女、アイズ・ヴァレンシュタインと出会えたことで僕の夢は一つ、叶ったと言っても過言ではない!彼女のサーベルについていた血と落ちていた魔石から推測するにミノタウロスは彼女が倒してくれたんだろう。それは、僕が望んだ出会いとは逆のものだったけれど、ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってなんかいなかったんだ!そうと決まったらまずは彼女のことを知りたい。好きな食べ物だったり、趣味だったり、その・・・・・相手がいるかどうか、ということも。もしかしたらギルドで教えてくれるかもしれない!
そう思い、速度を上げようとさらに足に力をいれようとした瞬間、
「ぶべっ」
盛大にずっこけた。ここが足場の悪いところだということを忘れていた。しかし、さっきとは違い頭はぶつけ無かったので、すぐに起きようとしたのだが、見えてしまった。
「キュウウウウウ!!」
僕の頭上から巨大なヤモリ、ダンジョンリザードが飛びかかってきた瞬間を。避けられる体制じゃない。せっかく助けてもらったのにすぐ死ぬのか?それはあまりにひどすぎる。何か、ここを切り抜ける方法は!
頭を回すが何も思いつかない。もう、ここはイチかバチか自分の耐久値に賭けるしかない!
そう思い、ダンジョンリザードの攻撃に対し身構えた時、前方から飛んできた長剣に突き刺され、ダンジョンリザードは灰になった。・・・・・・ここまでくると何か因果的なものを感じるが、とにかく助かって良かった。
「ふう。危機一髪だったな。大丈夫か、ベル?」
そんなことを思っていると、助けてくれたと思われる人物から声を掛けられた。男の人の声だ。それにしても聞いたことがある気がする声だと思う。
「はい!助けてくれてありがとうございま・・・・す・・・・・・?」
そこにいたのは、童顔に黄金の瞳を持ち、特徴的な赤毛の男。
その男は、僕の所属するヘスティアファミリアの団長、シロウさんだった。
「そうか、なら良かった。それよりも、聞きたいことがあるんだ、ベル」
僕の顔は今、真っ青になっていることだろう。その気分を例えるなら、イタズラがバレた子供の気分。それよりも度合いは何段階も上がっているだろうが。
「何故、ダンジョンに潜り始めてから半月程度の君が、5階層にいるんだ?なあ、ベル?」
・・・・・・この日僕は、笑顔は人に恐怖を与えられる、ということが分かった。他ならぬ、僕自身の体験で・・・・・・
やっと主人公出せた・・・・・