正義の味方を目指すのは間違っているだろうか? 作:Abc
「それでな、ベル。慎重さっていうのは、ダンジョンにいるなら常に意識しなきゃいけないんだ。これを意識していないと仕掛けられた罠にだって引っかかるし、モンスターの奇襲に対応出来ない。それ以外にも・・・・」
恥ずかしい・・・・!
シャワーを済ませダンジョンから出た僕は今、シロウさんから説教を受けながら街の中を歩いている。もちろん、叱られているのは街の人達にも見られている。その証拠にクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「ベル、君に足りないのは・・・・・・・」
そんな恥ずかしさに耐えながら歩いていると、ギルドの近くまでたどり着いていた。ここまでくれば有り難いお説教も止めにしてくれるのではないか、と期待を込めて聞いてみる。
「シロウさん、あの・・・」
「ん?なんだ?反論なら聞くぞ・・・・・って、そうか、もうギルドか」
「はい、ですから、その・・・」
「ああ、いいぞ。後はエイナさんに任せよう」
・・・・・・・・そうだった。まだ終わりじゃなかった。専属アドバイザーであるエイナさんからのお叱りも残っている。
「じゃあほら、行ってこい」
「はい・・・・」
沈んだ気持ちで自分を送り出すシロウさんの言葉に応える。とりあえず、怒られた後でアイズ・ヴァレンシュタインさんについて聞こう!
そう決意して、僕はギルドへ入っていった。
「エイナさん、大好きー!!」
希望が生まれた!違う【ファミリア】同士でのお付き合いは難しいって言われた時は絶望しかけたけど、強くなれば振り向いてくれるかもしれないっても言ってくれた!エイナさんが言うなら間違いない!
「どうしたベル?やけに機嫌が良さそうに見えるぞ」
「あ!シロウさん!待っててくれたんですね!」
ギルドから出てきたら、シロウさんが待っててくれた。そうだ!最近シロウさんホームに帰ってきてないから誘ってみよう!神様も悲しんでたしね!
「シロウさん!今日ホームに来ませんか?神様も会いたがってましたし!」
「ああ、それなら久しぶりに帰ろうかな」
よし!了承も取れたし今日は早く帰ろう!
「じゃあ走りましょう!シロウさん!」
「なにが、じゃあ、なのかは分からないけど、まあ、たまにはいいか。よし!行くぞベル!」
「はい!」
そう言って人ごみの中を駆け抜ける僕達。シロウさんは人の間を見つけてスルスルと抜けていく。もちろん、それについていってる僕も。大勢の人々がいる筈なのに窮屈さを一切感じず走り続けるのはかなりの爽快感がある。
「あっという間だったな」
そうして気付けばホームの前についていた。走っていただけなのに楽しかった。今度シロウさんにどうすればあんなに人ごみの中で走れるか聞いておこう。
それはそうとして、ここが僕達のホーム。とても綺麗な教会だ。その様相は、寂れたこの裏路地の中では一際目立って見える。この教会は一年程前に建て直したらしい。何でも、シロウさんが壊したから、と神様は言っていた。
「少し汚れているな。ベル、壁の汚れを落としてから行く。少し時間がかかるから、先に行っててくれ」
「はい、神様にも遅れるって言っておきますね」
「ああ、頼む」
どこからか布を取り出したシロウさんと言葉を交わし、正面玄関の真上にある純白で傷一つ無い女神様の像に微笑まれながら玄関口をくぐる。
屋内も外見と同様に綺麗だ。汚れ一つ無い美しいタイルが敷き詰められた床。そして窓から入る太陽光に照らされている祭壇。
その祭壇の先にある小部屋へと入る。そこには本棚が連なっており、一番奥にある本棚の裏には、地下への階段がある。その階段を下りきった先にはドアが。このドアを開け、帰ったことを中にいるであろう神様に伝える。
「神様、帰ってきました!ただいま!」
そう伝えてからすぐに聞こえてくる足音。
「お帰りー。今日はいつもより早かったね?」
そうして出てきたのは艶のある黒髪をツインテールにし腰までのばしている僕よりも幼く見える小柄な美少女。ただ、一部分、詳しく言えば胸部の主張がとても激しい。
「ちょっとダンジョンで死にかけちゃって・・・・」
「ええ!大丈夫かいベル君!僕は君に死なれたらショックだよ!」
小さい手で僕の体にペタペタと触り、怪我が無いか確かめてくれる少女。
この少女が僕の所属する【ヘスティアファミリア】の主神、神ヘスティア様だ。
「大丈夫です。神様を悲しませるようなことはしませんから」
「お、言ったな~。じゃあ、心配せずにいるから、無茶だけはしないでおくれよ?」
「はい!わかりました!」
そう言い頷くと、神様は安心したように笑った。
そんな神様の笑顔につられ僕も口が緩んでいると、後ろから声が聞こえてきた。
「それを聞ければ俺も安心だな」
「あ!シロウ君!」
「あ、シロウさん。壁掃除終わったんですね」
そこにいたのは壁掃除を終えたシロウさん。
「ああ、ちゃんと綺麗になった。それよりも、久しぶり、ヘスティア」
「うん、久しぶり、シロウ君」
「突然来て悪いな」
「ううん。別にここは君のホームでもあるんだから、いつでも帰ってきていいんだぜ、シロウ君!」
「ああ、ありがとう、ヘスティア」
そうお礼を言うシロウさんは、かなり嬉しそうに見えた。だが、気のせいか、少し悲しそうにも見えた。
「よし!それじゃあ早いけど夕飯にしよう!今日はちょうどバイト先から露店の売上げに貢献したということで、大量のジャガ丸くんを頂戴したんだ!ジャガ丸くんパーティーさ!ベル君、シロウ君、今夜は君達を寝かさないぜ?」
「神様すごい!」
「おお、流石ヘスティア」
そうして始まったジャガ丸くんパーティーは、ファミリア全員が揃っているからか、とても賑やかだった。