正義の味方を目指すのは間違っているだろうか?   作:Abc

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第5話

「・・・・ん」

 

 早朝、田舎生活で体内時計が鍛えられているベルは、5時ぴったりに目を覚ました。自身の身体の表面に感じる謎の圧迫感とともに。あのジャガ丸くんパーティーの後、ステータス更新を終えたベルは、シロウと共にそのままソファーで眠りについたのだ。

 

「ん?」

 

 だから、この圧迫感はシロウがのしかかってきているのだろうと思った。シロウの寝相が悪かったことに驚きつつも、起き上がろうとしたベルだったが、何故か違和感を感じた。なんというか、柔らかさを感じていたのだ。それは、引き締まった肉体を持ったシロウからは感じられぬ柔らかさ。

 

「なっ!?」

 

その柔らかさの正体を確かめるため、自分の腹のあたりを確認したベルの口から、驚きの声が出た。はたしてベルが見たものとは.........

「ハア...ハア...まさか神様に殺されそうになるなんて.....」

 

 どうやらヘスティアだったらしい。ちなみに、どう殺されかけたかはご想像にお任せするが、ベルの心臓が羞恥で破裂しそうになった、とだけ言っておこう。

 それはそうと、今ベルがいる場所は教会前。ヘスティアから逃げた後、すぐに着替え、ダンジョン探索用のバッグも用意したため、準備は万端だ。

 

「....よし!確認終わり!」

 

 持ち物の確認も済ませ、ダンジョンへ行こう、と足を踏み出したとき、

 

 カンッ

 

 ガラス容器を軽くぶつけ合った音がベルの耳へ入ってきた。

 

(教会の裏から?)

 

 この教会の裏には、小さいが空いているスペースがある。音はそこから鳴ってきたようにベルは感じた。

 

(少し見に行ってみよう)

 

 その音が鳴ってきた場所へと、足音が鳴らないように進むベル。

 そうして、裏のスペースが見えるところまで進んできたとき、声が聞こえた。

 

「......ふう。これなら大丈夫だろう。よし、始めるか」

 

(....シロウさん?)

 

 そこにいたのは、朝起きた時にはソファーでヘスティアと入れ替わっていたシロウが、上半身は何も纏わず立っていた。

 シロウは、教会の壁を2、3度右手の甲で軽く叩いた後、そこへ背を向けた。

 そして、右手を前へと突き出し、右の瞼を落として、こう唱えた。

 

「―――体は剣で出来ている」

 

(!)

 

 その瞬間、呪文に呼応するかのようにシロウの右腕に青緑に光る線が走る。

 

「血潮は鉄で、心は硝子」

 

(これって、いったい....)

 

 更に呪文を紡ぐ度、その光は強くなる。

 

「幾たびの戦場を越えて不敗」

 

(何か、すごく重く感じる.....シロウさんは何をしているんだ?)

 

 ベルは、シロウが発する異様な気配に硬直し、喋ることも出来なくなっている。

 

「ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もな、し」

 

 しかし、次の呪文を唱えた瞬間、シロウの顔は苦悶の表情になった。額には汗が浮かび、眉間を顰め、下唇を血がでるほど強く噛んでいる。そして、青緑に光っていたはずの線は、危険性を示しているのか、赤色で強く光り始めている。

 

「担い手、は、ここ、に、孤り!」

 

 そんな状態になっていても、シロウは詠唱を止めない。無理矢理にでも口を動かす。

 

(何かまずい気がする.....止めないと....!)

 

 しかし、ベルは逆に止めるため、動き出そうとしている。

 

「剣の、お、かで、鉄を、鍛つ!」

 

(動けよ.....!)

 

 更に強く赤く光る線。

 その光を見て、まだ体が硬直して動かず焦りを覚えるベル。

 

「な、らば」

 

(動けって.....!)

 

 バチバチと音まで鳴る赤い線。

 ベルの心臓も焦りで同じように波打っている。

 

「我が、生涯、に、意味はい、らず!」

 

(動け....動けよおおおおお!!)

 

 ブチッ、という音が鳴る。遂に腕の血管も切れ始めたシロウ。

 その光景を見ているベルは、まだプレッシャーに体が抑えつけられている。しかし、指はほんの少しだが動き始めている。

 

「この、か、らだ、は!)

 

(動けえええええ!!)

 

 腕どころか、遂に体全体の血管が切れ始め、血まみれになっているシロウ。このままでは、ベルの予想通り生命が尽きてしまうだろう。

 しかし、

 

 ザッ!

 

(や、やった!いや、早く止めないと!)

 

 遂に、ベルが足を踏み出した。

 シロウの下へと向かうベル。しかし、その足取りはまだ上手く力が入らないのか、不安定なものになっていて走れてはいない。

 

「むげ、んの」

 

(シロウさん....)

 

 膝をつきながらも歩く。赤い光りはまだ強くなる。

 

「つ、るぎで」

 

(シロウさん....)

 

 後三歩という所まで来た。しかし、尋常ではないほど集中しているシロウは気付かない。赤い光りは既に稲妻と同じと言ってもおかしくないほど強くなっている。

 

「でき、て」

 

(シロウさん....!)

 

 そして、

 

「い――――

 

「シロウさん!!!」

 

――――た!?」

 

 ザシュッ!

 

 ベルがシロウの右腕を抱え込むように掴んだ瞬間、その腕の手の平から、鮮血と共に、歪んだ刀身を持つ短剣が射出された。

 

 




 ただ一言....更新が遅れ申し訳ありません.......と。
 次回は来週中に更新します、必ず!
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