ーそんな風に騙されていれば良かったー
石上優が思うに、この生徒会室だけが学校での居場所であるというのは言い過ぎなんてことはなく、むしろ大当たりである。
まぁ、いつか裏切られるだろうけどね。
彼は結局のところ信用しきれていないのが現実である。
利用している自分を認識できているからこそ、申し訳なく思ってしまうことがある。
だがしかし、仕方ないの一言で済まされてしまう。
済ませてしまう。
そうでなければ辛いのだ。
自分に向けられた一生懸命な優しさ。
見てくれているという安心感。
所謂楽しいと思えてしまう。
それが何よりこの男。石上優にとっては辛いものなのである。
「嬉しいのに辛いとか、僕はなんて変な奴なんだろう。」
いつだって彼は後ろを見る。
下を見る。
耳をヘッドフォンでふさぎ。
目はPCに固定される。
そんな生活が当たり前で。
何よりこれからもこうなんだろうと、やれやれとため息をつきながら分かった気になる。
それがどうだ。
僕の視線は彼女に固定されてしまう。
僕はもう恋愛なんてしない。
確かにそう誓ったはずなのだ。
太陽を体現したような自由奔放な彼女により、石上優の青春は始まってしまう。
面倒な人だなぁ。
それが彼女に対する認識であることは間違いないのだ。
そう。それで間違いないはずなのだ。
良く分からないクソゲーを持ってくるし。
四宮先輩に殺されそうになってるし。
関わらないほうが良さそうだなと身勝手だが判断したはずだ。
こんな風に僕が思っていることなんて、彼女はきっと気づかない。
対人関係というのは、長くいるだけで意外と良好になっていくものがあったりする。
今回の場合、僕と生徒会の皆はそれだ。
いつもお世話になっている頼れる先輩の会長と、
面倒見がよくて、今では尊敬している四宮先輩。
そして。
「石上君?」
顔を近づけて聞いてくるこの人。
眩しくて、マイペースで。意味わからない人で。
おっぱい!・・・じゃなくて、温かい藤原先輩。
僕は、最初は3人とこんなにも仲良くなるなんて思わなかったし。
僕が信頼する人ができるなんて知らなかった。
僕の居場所はここで。
ここさえあれば他はどうでも良いって思えてしまった。
そして、貴女がいてくれれば僕はいつだって前を向ける。
そんな風に思っていると。貴女は気づかないだろうけれど。
最近、スキンシップをよくされる。
妙に顔が近かったり。
間接キスをしてはチラチラこちらを見てくる。
気づかないほうが可笑しいだろう。
僕はそんなに鈍感ではないはずだ。
でも。だからこそ思ってしまう。
そんな太陽に触れようとする日陰者。
良いのだろうか。
受け入れてしまって後悔させないだろうか。
いや、これは傲慢な考えだ。
僕はそんなに良い奴じゃないはずだ。
むしろ嫌われ者のはずなんだ。
なのに。
この暖かさを手放すのが怖い。
うずくまって考える。
僕なんか。
そんな言葉捨ててしまえ。
僕はどうしたいんだ。
どうすればこの気持ちを整理できるんだ。
どうすれば。
結局勘違いで済まそうとする。
でも、思考はそうは導かれることは無かった。
考えれば考えるほど
「僕は貴女が好きだ。」
こんな言葉が、彼女を前にすると口から出そうになる。
またキモイって言われてしまうだろうか。
いや、そういうやり取りも僕は好きだ。
四宮先輩に睨まれるのはいまだに慣れないけど。
僕がこんなにも悩んでいることを
貴女は気づかないだろう。