きっと君は気づかない   作:たばねっと

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手が触れる。
体がしびれる。

ふらつけば、支えられてしまう。


笑うしかない。

もう、どれだけ好きなのか分からない。


一歩

・藤原千花は、一歩近づく

 

 

思えば彼と二人っきりというこの状況。

 

彼が傍にいるって分かるだけで安心する。暖かくなる。

 

今日は少し寒い。

でも、彼がコートを貸してくれた。

 

その優しさが愛おしい。

 

 

彼がこちらを見ているのが分かる。

じっと見つめているのが分かる。

 

心が私に向いている。

下を向く目も。

ヘッドフォンで塞ぐ耳さえも、今は私に注意している。

 

彼に興味を持たれていることが嬉しい。

 

 

今にもスキップしそうなほどだ。

 

 

私がこんなにもドギマギしていることを、彼はきっと気づいている。

 

声を聴きたい。

聴かせて欲しい。

 

話題は自然と生徒会の皆の話になる。

 

普段は楽しくて嬉しいはずのまさに会話が弾む内容なのに。

 

 

生徒会の二人に嫉妬している自分に気が付く。

 

私と話しているのに、他の人の話をするの?

 

 

彼の声を聴けて嬉しいはずなのに、なんだか寒い。

体が冷たくなるのを感じる。

 

どこまでも、もう依存しているのだろう。

 

彼が、話題を変えた。

 

 

内容は、私の事だった。

 

 

ピアノをやっていたことを知っているからか、好きな曲はなんだとか。

休日は何しているのかとか。

 

お互いに、少しずつ。

少しずつ雪を解かすように。

 

暗闇に光を差すように。

 

共有して心を通わせる。

 

壁を薄くして、知ろうとする。

 

 

なんて幸せなのだろうか。

 

私は、なんて幸せなのだろう。

 

こんなにも、なんで私は幸せなのだろう。

 

どうして、私はこんなにも幸せなのだろうか。

 

 

好きだからか。

 

きっと、もうそれ以上なのだろう。

 

何度も夢見た。

 

何度も想像した。

 

何度だって。

 

それが、今現実に。

ただ、目の前に存在する。

 

その事に困惑するけれど。

手を伸ばして、実感しても良いですか?

 

貴方を求める私は、間違っていないだろうか。

嫌がられていないだろうか。

 

ふと立ち止まり、背伸びをして彼の前髪を上げてみる。

 

 

ー目が合ったー

 

 

瞬間、取り返しのつかない。

取り返せない。

1からやり直すことなんてできない程の心のありさま。

 

目が離せない。

 

絶対君は気づいている。

 

自分の気持ちも、私の気持ちも。

 

 

ねぇ。私はもう、この関係を壊そうと思う。

先輩後輩。生徒会メンバー。

そんな関係から1つ進む勇気が湧いた。

 

私は彼の横に立ちたい。

正面で見つめたい。

後ろで応援したい。

前に立って道しるべに。

 

許してくれるかな。

踏み込む私は、きっと邪魔だろう。

でも、お邪魔します。

一緒に、居させてください。

 

私は彼に、ゆっくり一歩近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・石上優は、一歩踏み出す

 

 

藤原先輩の横顔は、愛くるしいうえに綺麗だった。

こんなことを正直に言えば、またキモイと言われるだろう。

 

思えば、何度もお世話になっていたことに気がづく。

きっと、彼女がいたから生徒会はうまく回っていたのだろう。

 

片付けの時、

極秘ファイルを見てしまった。

あの筆記体。

 

分からない訳がない。

 

 

 

ため息が出そうになる。

彼女は僕の事を知ってなお近づいてきた。

 

こんなにも変な奴なのを分かっていて歩み寄ってくれた。

それは、生徒会のメンバーもそうだ。

かけがえのない時間を貰えていることに、今更ながらに感謝をする。

居場所を与えてくれた、何よりも嬉しかった。

 

これ以上求めるものなんて無いはずなのに。

 

 

 

それにしても、これまで僕は貴女に好かれるようなことをしてきましたかねぇ。

分からない。

 

そう、全く分からない。

 

こちらを見る貴女の表情は、自惚れでないなら。

 

だから、なんでそこまで。

 

気づけば恋をしていたのだろう。

もう彼女から目を離せない。

 

横に立っているという事実でさえ疑わしい事なのに。

自然といてくれた。

離れなかった貴女を僕は、嫌でも認識する。

認識してしまってからは早かった。

 

見つめる目に気が付いて。

いつもは目をそらす僕は、自分の気持ちに逃げないために

 

ー勇気をもって目を合わせてみたー

 

きっと何かが繋がった。

切れない何かが繋がった。

 

理解できないのに、感じる安心感。

勇気を持つと、今誓った。

逃げないで進むと、今決めた。

 

だから、貴女に一歩踏み出した。




近づくと、踏み出す。
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