きっと君は気づかない   作:たばねっと

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幸せ

視界に広がるのはピンク色の綺麗な髪だ。

優しい匂いにつられて思わず顔を近づけてしまった。

 

もう一度と匂いをかぐと、彼女は少しだけ呻く。

その声が、僕の心をざわつかせる。

 

彼女が顔を赤らめているのを知った時思わず抱きしめてしまった僕の行動は、

そこらのケダモノと大差ないのだろうなと自覚する。

 

可愛いからというのもあるが、もしこの顔を他の誰かに見られたらと思うと、

変に意識してしまい独占欲が湧いて出る。

 

最低のクズ野郎だが、そこら辺はやはり男なのだろうか。

 

 

さて、こんな感じで石上優と藤原千花は甘酸っぱい学生生活を謳歌していた。

 

リア充へのステップを彼らは順調以上で駆け上がり、そろそろ頃合いなのではないかと会長は四宮かぐやと話し合う。

 

最近付き合い始めた2人は、石上と藤原関係の会話が主な内容だった。

 

「会長。あの子たちはもうつっ付き合っているのでは?」

 

若干上ずった声で、自分と彼の恋愛事情を思い出し頬を染めながら言う彼女を美しいと思いながら

 

「さぁな、だがお互いが好き合っていると分かってはいるんじゃないのか?」

 

少しばかり男女交際について慣れてきた彼は冷静を装いながら言うのだった。

 

 

 

目の前で、お弁当を食べさせ合う2人を見ながら、灰になる会長副会長がそこにいたのだった。

 

 

 

 

 

「千花先輩、このゲーム面白そうですよね」

 

ん・・・

 

「優君、それ怖いゲームですよ!」

 

ん・・

 

「今度家で遊びません?絶対楽しいですって」

 

ん・

 

「えぇぇぇ!?嫌ですよ!明るくてハッピーなゲームが良いです!」

 

んんんん!?

 

「ちょ、ちょっと待てお前ら、いつから名前で呼び合ってるんだ?」

 

そうよ、と2人してあたふたしながら問いかけた。

 

 

ーだって、私(僕)たちの仲ですからー

 

 

そうハモる2人を見て

 

「「えぇぇぇ!?」」

 

と、叫びながら生徒会室を飛び出し、お互いに名前で呼ぶことになんとか成功した会長と副会長は、手を繋ぎながら帰ったそうな。

 

 

 

藤原千花は、隣に座る彼の横顔をじっと見つめる。

若干赤らんでいる横顔を見れば、私が見つめていることに気づいているんだろうなとイタズラ心が出てきてしまう。

 

耳に唇をあてて、キスを1つ。

そのまま口に含み、食べる。

 

こうも自分が女だと意識したのは人生で初めてなのではないだろうか。

 

匂いから始まり、髪の毛や体温、彼を感じるものが愛おしく思える。

好きなのだと体が自覚する。

 

思えば今この瞬間に、自分が彼を好いていると自覚した。

なんとなく好意を抱いているようなフワフワとした思いから、

好きだと明確になった今。

 

 

体を彼から離し、彼の目に私だけが写るように移動する。

 

目標はロックオンされ、彼女から逃れることはできないのだろう。

 

優しく目を細めながら石上優は目の前に立つ少女を一切目から逸らすことなく見つめ返す。

 

頬を赤らめ目元が潤んでいる、いつからか好意を抱いていた対象である彼女が、今からきっと、と若干期待を持ってしまった。

 

 

 

この想いに私は何も後悔なんて無くて、この感情が今は一番愛おしい。

彼とそれを共有したい。

優しく見つめる彼を見て、改めて好きだと自覚する。

 

傷つきやすく優しい彼に、私は随分前から好意を抱いていたのだろう。

 

心がいっぱいに。想いが溢れたその瞬間。

 

「好きです。」

 

そんなシンプルな一言が、彼の心を打ち抜いた。

 

「僕も好きですよ。」

 

それは、条件反射のように。

しかしながらその言葉には心がこもっていた。

 

殆どタイムラグが発生しない会話の応答。

 

見つめ合うこと数分、気恥ずかしくなりながらも生徒会室を後にし、

放課後デートに向かう2人はとても幸せそうだ。


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