少し本好きの下剋上? 〜目的の為に全力でいく〜 作:名無し
あれからは何事も無く、無事に目的の南門へ到着する。東西南北に門があり、多少区分けはされているらしい。
外壁は高く、10メートル近くあるのではないだろうか。勿論、厚みもしっかりある。
前方には数人の兵士の姿が見え、父さんを見つけたらしいトゥーリが包みを持ち、大きく手を振りながら駆けだした。
「父さーん!」
「トゥーリ、どうしたんだ!?」
「忘れ物届けに来たの。これ、いるでしょ?」
トゥーリがニッコリと笑って包みを手渡すが、父さんは驚いて目を瞬いている。記憶から分かるが、本当に表情豊かだ。
「あぁ、助かった。……ぅん? マインとラティスを放ってきたのか!?」
父さんはトゥーリに全神経を注いでいるのか、ラルフ達やマインや俺に気付いていないらしい。視野が狭すぎる。
「ううん、一緒に来てる。ほら、マインはラルフが背負ってくれたし、ラティスは後ろから着いてきてる」
「え? あ、そうか」
目に入っておらず、少し取り乱したことが気まずいのか、視線をさまよわせながらラルフの頭にポンっと手を置いた。
「背負ってもらって悪かったな、ラルフ」
「森に行くからついでだよ」
わしゃわしゃと頭を掻き回され、迷惑そうな顔をしつつ、マインを背中から下ろす。そして、フェイとルッツに持たせていた自分の荷物を受け取る。
「ラティスも頑張ったな」
「うん」
返事の仕方がイマイチ分からないので、適当に流しておく。精神年齢23歳なので、5歳児の普通の反応など分からない。元々大人しかったのが有難い。
「ありがと、ラルフ。ルッツとフェイもありがと」
ラルフ達を見送った後、俺達は門内にある待合室へ入れてもらった。
外壁の厚みはそれなりで、一般的な一部屋ぐらいの大きさの部屋なら作れる程にはある。宿直室もあるようで、会議室もあるのではないだろうか。
待合室自体は、簡素なテーブルに椅子が数脚と、戸棚が一つあるだけの部屋だ。
「忘れ物を届けてくれるなんて、いい娘さん達ですね」
父さんの同僚らしい人が水を入れて来てくれた。
家からここまではそれなりの距離があり、トゥーリの足でも20分かかるらしい。
そんな大変さの後でこうして休めるのはとても有難い。一気飲みはせず、少しずつ水を飲む隣でマインが一気飲みして、プハーッと大きく息を吐いた。
誰でもやる事だろうが、なんとなくおっさんくさいのは刷り込みだろうか。
「ハァ。おいしい。生き返るね」
「マインはほとんど自分で歩いてないでしょ?」
そんなトゥーリの言葉を聞き、周りの人が笑いだす。マインは膨れっ面になるが、事実なので反論は出来ない。
少し和やかな雰囲気だったが、一人の兵士が慌てた様子で部屋に入ってきて、棚から木箱を取り出し直ぐに部屋から出ていった。
「父さん、何かあったんじゃない?」
「要注意な奴が門に来ただけだろう。そんなに心配することじゃない」
マインがそれに対して敏感に反応するが、心配するに越したことはない案件な気もするし、他にも兵士はいるので問題ないだろう。
「要注意ってどんな人? わたし、見たことある?」
トゥーリがそう言うが、全く危機感は感じていなさそうな顔をしている。ここら辺では犯罪等で危機を感じることがないのだろうか。
「あー、どっかで犯罪犯してそうな悪人面とか、逆に、領主に先触れを出した方がいいようなお貴族様とかだ」
「へぇ……」
基準が曖昧なのは情報伝達や情報そのものが微妙だからだろうか。
「別の部屋で待ってもらって、街に入れてもいいかどうか、上が判断するんだ」
まあそんなもんだよね。結局最後は上の判断に任せることになる。組織とはそういうものだ。
少し経つと若い兵士が木箱と筒のように丸められた物を持って戻ってきた。
手にした荷物を左手に持ち、父さんの前に立ちって、右手の拳で二回左の胸を叩いた。父さんも立ち上がり、姿勢を正して同じように胸を叩く。この世界での敬礼だ。
「オットー、報告を頼む」
「ロウィンワルト伯爵が城壁の開門を望んでいます」
「割印は?」
「確認済みです」
「よし、通せ」
オットーさんはもう一度敬礼した後、マインの前の席に座る。そして木箱を机の上に置き、丸められていた物をクルクルと開く。
それは羊皮紙のようで、オットーは道具箱からインク壺とペンのようなものを取り出し、羊皮紙に何かを書き始めた。
……このペン、葦ペンだったかなあ。美術で使うことがあるらしかったはず。専門学校とかだとは思うが。
羊皮紙はまだ使ってる所があったはず。工房は極わずかだけど。知らない人もいるんだろうか。
「父さん、父さん。これ、何?」
「あぁ、羊皮紙だよ。ヤギやヒツジの皮で作った紙」
「こっちの黒いのは?」
「インクとペンだ」
前世の記憶を掘り出していると、早速マインが興味津々で聞いている。目も輝いている。
これ、この後のやつ、俺も貰えるか? 二つも持ってるだろうか。
「ねぇ、父さん。これ、ちょ~だい」
「駄目だ。子供のおもちゃじゃない」
さあマインの全身全霊おねだりが始まったが、さすがに無理だろう。高過ぎるし。
「こういうの書きたい。欲しいの。お願い」
「駄目だ、駄目だっ! だいたいマインは字も知らないだろう?」
なんとか振り切っている様にしか見えない父さんだが、娘に甘いせいで陥落しそうなのだろう。
「じゃあ、覚えるから教えて。覚えたら、これ、ちょうだいね?」
ほんとに全力過ぎてこれが行動力の塊か、と思わなくもないが、自分もあの人のためならこんなもんだろうと思ったので深堀りするのをやめた。
「ハハハ、『教えて』だって……くくっ、班長は字を書くの、苦手でしたよね?」
オットーさんがこの2人のやり取りに堪えきれなかったらしく、笑いながらそう言った。
同時に、マインの顔が一瞬で冷え切った。こちらも父さんに負けず劣らず表情豊かだ。
「え? 父さん、字、書けないの?」
「多少は読めるし、書ける。書類仕事もあるから、字を読める必要があるが、仕事に関する以上の文字なんて全く必要としていない。余所からやってくる人達の名前を聞いて書くくらいだ」
「ふーん……」
父さんを見る目が氷点下に入ったマイン。それを見て、オットーさんが態度を咎める。
「こらこら、お父さんをそんな目で見るんじゃないよ」
識字率が低いと分かったのに何故そこまで失望感を出すのか。平民の中では字が書けるオットーさんの方が珍しいだろう。
「兵士っていうのは、街の治安維持を仕事としているけど、街の中でお貴族様が係わるような大きい事件があった時に調書を取る時は騎士階級がやってくるし、小さな事件なんて口頭で報告も終わりだからね。文字に触れることも少ないんだよ。人の名前が書ければ、十分さ」
父さんの援護と同時に兵士の仕事について説明するオットーさん。それを聞いて父さんが立ち直った辺り、かなり凹んでいたのだろう。
「農民だったら、村長くらいしか字が読めないんだから、父さんは十分すごいんだ」
「じゃあ、すごい父さん。これ、欲しいの。ちょ~だい」
マインの攻撃が入るが、父さんが怯みながら少しだけ絞り出すように言葉を発する。
「……1枚で一月の給料が飛んでいくようなもん、子供にやれるか」
この世界ではそれだけの価値になる羊皮紙。量産出来ないからだろうが、一月分の給料は高い。安めの新品ノーパソより高い。
「そもそも、平民が出入りする店には売ってないよ。紙は貴族や貴族との繋がりが必要な大商人や役人が使う物で、子供が使うようなものじゃないからね。字の勉強がしたいなら、石板を使えば? 昔、俺が使っていたヤツ、あげようか?」
「いいんですか!? 嬉しいです!」
「……俺も貰えませんか?」
ここは出来れば便乗して貰いたい。そこまで覚えるのに時間がかかる訳ではないが、自分用という時点でかなりの価値がうまれる。
メモ帳なんて当分出来ない。最悪覚えればいいが、石版があった方が便利な時があるかもしれない。無いより圧倒的にましだ。貰えるかは別だが。
「まあ、一応二枚目もあったはずだからいいよ」
「ありがとう、オットーさん。ぜひ、わたしに字を教えてください。頼りにしてます」
「ありがとうございます」
ちょっとギリギリなお願いだったが、なんとか貰えた。俺は教師役を頼んでいないが、まあ流れでなんとかなるだろう。
教えて貰えずとも、父さんやマインに教わればいいだろう。教えてくれるかは別だが。
ここら辺でマインが自分で紙を作ろうとし始めるんだっけか? 本当に地道な作業をしていくんだな。執念の強さなら俺と同じくらいはある。
俺も何か内職を始めようか? ただ、目立つ訳にもいかないので悩み所だ。そんな事をしている暇があるなら、筋トレでもなんでもして体力を付けろという話だ。
……筋トレ、するかあ? あんまり小さい内からやると悪影響って言う話もあるが、実際は正しい方法でやれば問題はなかったはず。
自重トレーニング系だった気がする。それ系をやればいいだろう。そもそも道具なんて作らなければないし。
後は体力作りだ。走るのはおそらく止められるので、家の中を歩き回るぐらいはして体力を付けていきたい。ルッツくらいには後1、2年で付けたい。明日からでも始めよう。
羊皮紙ってまだ使う事があるらしいですね。現物は見た事がないですが、1度は見てみたいです(・ω・)
初めの頃はネタバレは何処まであっていいだろう?
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ガッツリあっても大丈夫!
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半々ぐらい?
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分かりづらい程度で……
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ほぼ無しでオナシャス
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勝手にしてもいいのよ?