第10話です。
わかっていてほしかった
忘れないでほしかった
信じていたから
―〇●〇―
もうどのくらい歩いたのだろうか。
学園を出て、閑静な住宅街を進む、街灯の人工的な光が道を照らしていく。
周囲の住宅に一つ、また一つと灯りが灯り始める。
人の通りは疎らでペットを連れて散歩をする者、ジョギングで汗を流す者など目に写るのは数人程度。
住宅街を抜けると、景色が一変する。
多くの店が軒を連ね、人の波が出来上がり、街は活気に溢れている。
見慣れたはずの街の風景が全く別の物に見えた。
普段ならば気にも留めないような些細なことがやけに目に付く。
まるで自分の知る街とは似て非なる街に来てしまったような錯覚を起こす。
周りの喧騒を煩わしく感じながら歩を進めると、この時間であれば多くの人々の笑顔で溢れている筈のグランデの前で立ち止まる。
店のドアにはcloseの看板が掛かったままになっており、店の中には灯りはない。
ドアを押して中に入ろうとするが、当然カギが掛かっており開かなかった。
それからのことはよく覚えていない。
夜通し歩き続けた俺の視界には長閑な田園地帯が広がっていた。
水田に張られた水が東の空から昇る太陽に反射してとても美しかった。
その美しい景色を前に気が付いたら俺は涙を流していた。
その涙の意味は自分自身でも解らなかった。
しばらくその道を歩いて行くと、懐かしい一軒の建物が現れる。
そこは、嘗て俺が一ヶ月間過ごした場所で、一年間通い続けた場所だった。
(夜が明ける訳だ)
いつの間にか駒王町の外に出てしまっていた。
あとから聞いた話だが、俺が治療に通わなくなったあと、アジュカ先生もこの街を出たらしい。
元々、俺以外患者が訪れたことを見たことがなかったため問題は無かったのだろう。
建物の外観は、一年間放置されていた割にはキレイで所々人の手が加えられていた。
(開いた)
入口のドアを押してみると、カギが掛かっておらず、すんなり中に入ることが出来た。
建物の中はガスは使えなかったが、最低限のライフラインである電気や水道は使えるようだ。室内はこまめに清掃された跡があり、物は綺麗に整理されていた。
俺は家の中を進み、ある部屋のドアを開ける。その部屋は俺が一ヶ月過ごした部屋だった。
一年前と全く変わっていない内装に当時の記憶が甦ってくる。
部屋の至るところに当時の生々しい傷痕が遺されている。
辛く苦しい日々だった。日に日に自分が自分でなくなる気がした。
自分を制御することが出来ず、発作を起こす毎日。眠ってしまうと自分が別のなにかになるような気がして夜が来ること恐れていた。
あの頃、自分を眠りに誘う目の前のベッドが恨めしかった。そのベッドはキレイにメイキングされていた。
制服の上着を備え付けてあるハンガーに掛けるとベッドに横になる。
近頃は夜にゆっくり休むことが出来ていなかったため、途端に瞼が重くなる。
俺の意識はそこで途切れた。
窓から差し込む光で目を覚すと、懐かしい天井が目に写る。
ベッドから身体を起こし、窓から外を眺める。
太陽が東から昇っている。
不思議に思い、時間を確認すると8:00を少し回った頃だった。
丸一日以上寝ていたことになる。
俺はすぐに尿意を催し、トイレに駆け込む。
トイレから出て、手を洗いながらこれからどうしようかと考える。
学校に行く気にはならなかった。
いまリアスに逢えば、確実に彼女を傷付けてしまう。
気持ちの整理が付いてからでなければ逢うことは出来ない。
両親が心配していると思い、家に帰ろうかとも思ったが、アーシアが事情を話しているかも知れないので大丈夫だろう。基本的には放任主義のため、事情を知っていれば探されることはない。
喉が渇いたため、水を飲もうとグラスを手にすると、少し埃が被っていた。よく見ると、他のグラスや食器類にも埃が被っていた。周囲を見渡して見ると、所々に埃が被っており、こまめ清掃されていても行き届いていない所も多々あった。
俺は手に取ったグラスを洗い流し、グラス一杯分の水で喉を潤すと、腕捲りをする。
一年分の感謝を込めて掃除することにした。
幸い、掃除用具などは入院していた頃と変わらない場所に仕舞われており、あちこち探すことはなく助かった。
まずは建物内の窓を全て開けて空気を入れ換える。
天気が良く、この時期にしては気温が高い。
気持ちの良い風が頬を叩く。
そこからは一心不乱に掃除に没頭した。
全ての部屋の埃を叩き落とし、掃除機で吸い込んでいく。とても大きな民家を改装して作られたこともあり、一日、二日では終わらない。それでも今は夢中になれるものがあることが有り難かった。
やがて西の空に太陽が沈んでいく。
頭を空っぽにして掃除に打ち込んでいたため、時間が経つのを忘れていた。
(腹が減った)
近くに小さな商店があったことを思い出して出かける。
店にはおにぎりやパンが売っており、適当にいくつか買って帰る。
パンを食べながらグランデのことを考える。
リアスに悪気はなかったのだろう。
初めて逢ったときからそういうところはあった。
此方の意に反して強引に物事を決めてしまうところ。
一度こうと決めると、脇目も振らず突っ走ってしまうこと。
自分は間違っていないと頑ななところ。
いつも朱乃がフォローしていたのを思い出す。
俺自身もそれも彼女の個性の一つだと理解していたはずだ。
だが、今回の話を聞いたときは彼女の言っていることが理解できずに席を立ってしまった。
何故?
店がなくなると思ったから?
料理長やスタッフ達の落胆する顔が頭に浮かんだから?
自分にとって大切な場所が奪われると思ったから?
冷静になって考えば、リアスがオーナーになってもやることは変わらないのかもしれない。
彼女ならグランデを潰すようなことはしないだろし、料理長やスタッフ達を解雇することもないだろう。
店に出なくていいと言われたが、話をすればバイトを続けることも出来るだろう。
なのに、何故だろう。
こんなにも心がざわつくのは。
(俺はリアスを信じていたんだ)
初めて店に来てくれたあの日、俺の作った料理を食べて笑顔を見せてくれた彼女ことを。
俺の話を聞いてすごいと言ってくれた彼女のことを。
叶うともわからない約束に笑顔で頷いてくれた彼女のことを。
いつも近くに居てくれた彼女なら自分のことを解ってくれてると信じていたんだ。でもそれは思い上がっていたのだろうか。
食事を終え、ベッドに横になりながら自問自答を続ける。
答えは彼女が持っているだろうか?
彼女と話せば解決するのだろうか?
考えが纏まらないまま眠りに就いた。
翌朝も俺は掃除に精を出していた。
リアスとどのように接していいのかまだ解らなかったが掃除を中途半端はする事は出来なかった。
いまの俺があるのは両親に連れられてこの場所を訪れ、アジュカ先生に出逢ったからだ。
その感謝を忘れずに精一杯掃除をした。
結局、全ての部屋の掃除を終えたのは、俺がこの場所を訪れてから九日目の夜だった。
(家に帰ろう。取り敢えずリアスと話をしよう)
今日は休んで明朝に駒王の街に戻ろうと瞼を閉じる。
―〇●〇―
汝、目覚めるときは今
獣の咆哮によって解き放たれた扉を開かん
万物の創物者にして森羅万象の理
全てを太陽の彼方に導きし者よ
―〇●〇―
目が覚めた俺はゴミを片付け、各部屋をもう一度回って戸締まりを確認する。
「おや、誰か居るのかね?」
玄関に老夫婦が立っていた。
老夫婦はリビングから顔を出した俺に首を傾げた。
俺は慌てて自分のこととここにいる理由を説明した。
「そうでしたか。あなたがあの時の」
老夫婦は俺がここに入院していたことを知っていたようだ。
「私達夫婦はアジュカ様よりこの建物の管理を任されている者です」
二人は俺に頭に下げる。俺も釣られて頭を下げた。
「見ての通り歳ですから、管理と言っても行き届かないところが多くてね。掃除をしてくれてありがとう」
周囲を見渡しながら笑顔を見せる老夫婦。
「俺の方こそ勝手に入ってしまって申し訳ありません」
老夫婦の笑顔を見ながらホッと胸を撫で下ろす。
最悪、不法侵入と不法占拠で訴えられてもおかしくなかったからだ。
「貴方様のことはアジュカ様より伺っておりました」
そう言うと、一枚の封筒を俺の前に差し出す。
「アジュカ様よりのお手紙です。もし貴方様がここを訪ねて来ることがあれば渡して欲しいと」
封筒を手に取り、老夫婦と封筒を交互に見る。
驚く俺に老夫婦は穏やかな表情で頷いている。
俺は封筒を開けると、五枚ほどの便箋にびっしり文字が書かれおり、私の最初で最後の患者へという書き出しで始まっていた。
そこにはアジュカ先生の当時の生々しい心情が書かれていた。
初めて俺と逢った日のこと。
発作を起こした俺に消えない傷を負わされたこと。
治療内容に試行錯誤していたこと。
治療を通して俺の症状が改善していく様子。
俺の知らない先生の姿がそこにあった。
俺の知っている先生はいつも飄々としており、何事にも動じず、冷静に物事を考える人だったが、この手紙に書かれている姿は治療方針に悩み、自分の不甲斐なさに絶望して何度も試行錯誤している様子が窺えた。
手紙を読み進めていく。
催眠療法に直ぐに引っ掛かる俺の姿。
猛獣に追い掛け回され、叫ぶ俺の姿。
治療中に悶絶する俺の姿。
途中から俺の恥態を笑う内容になっていた。
(何故急に内容が変わる)
でも、先生は俺のことを良く見てくれていた。
一人で泣いていたことや苦しんでいたことがしっかりと書き記されていた。
その後の手紙には今後の俺を気遣う内容だった。
涙で文字が滲む。
読み進めるほどに目元を手で拭い、鼻を啜る。
天井を見上げながら涙が溢れないように我慢しながら最後の一文まで辿り着く。
その一文に堪えていた涙が溢れ出す。
「もし、人を信じられなくなったら。その人を信じる自分を信じなさい」
その言葉は正にいまの俺の心情を表しているかのような言葉だった。
涙を拭い、手紙を封筒にしまう。
「いいお顔になられましたね。先程までの迷いのようなものが消えてますよ」
老夫婦の言葉に立ち上がり、頭を下げる。
(俺は俺が信じるリアスを信じる)
彼女と過ごしてきた二年間。人によってはたった二年と言う人もいるだろうが、俺がリアスと過ごしてきた時間は唯一無二のもの。それは彼女が悪魔だと知っても変わることのない事実。
(だから俺は彼女を信じる)
老夫婦は笑顔で顔を見合わせると、静かに頷きテーブルの上に長方形の箱を置く。
「これは?」
不思議に思った俺は老夫婦に訪ねる。
「アジュカ様から贈り物だそうです。いつか必要になったときのためにとのことです」
箱を開けると、ボードゲームのチェスで使用される六種十六個の駒が入っていた。
アジュカ先生が何故俺にチェスの駒をプレゼントしてくれたかは解らないが、先生のすることには意味があると思うので受け取る。
「また伺っても宜しいでしょうか?」
玄関で俺を見送る老夫婦に訪ねる。
「是非、いらしてください。いつでもお待ちしております」
老夫婦は笑顔で答えてくれた。
「ありがとうございます。でも、鍵は掛けておいたほうがいいと思いますよ」
頭を下げ、そう言い残し、俺はその家を後にした。
「フォフォフォ、ご心配なく。この建物は人間には見つけられないので」
老夫婦の言葉が俺に届くことはなかった。
―〇●〇―
俺は十日前に歩いた道を再び歩いていく。
太陽の光に照らされた水田は以前と同じように光輝いている。
俺の心も靄のようなものが晴れてすっきりしている。
(とにかくリアスと話そう)
時刻は9:00を回ったところだ。一度、家に戻って身支度を整えてからでも放課後には学校に行けるだろう。
急がねばと思い脚を速めようとした時、一台の車が前方で停車した。
その車に見覚えがあった。
「母ちゃん!?」
車から降りてきた母親は車を指差している。乗れと言ってるようだ。
「全く。一週間以上も帰ってこないと思ったら、やっぱりここに居たんだね」
サングラスをして車を走らせる母ちゃん。
「心配かけてごめんね母ちゃん」
また心配を掛けてしまった、胸が痛む。
「リアスちゃん達から事情は聞いてるし、たぶんここに居るんだろうとは思ってたけど、流石に一週間以上帰ってこないとは思わなかったからね」
連絡くらい入れるのが普通だろうと、頭を乱暴に撫でられる。
「で、何してたんだい?」
俺はこの九日間ずっと建物内の掃除をしていたことを伝える。
「掃除!?自分の部屋の掃除もろくにしないあんたが!」
母ちゃんは爆笑すると、運転中の車が蛇行する。
「部屋の掃除くらいしてるよ。普段は寝るときくらいしか使わないから汚れてないだけ」
実際に寝る以外で部屋に居る時間など一日一時間もないのでそこまで汚れることはない。
「布団のシーツは汚れてたから洗って、新しいものに変えといたよ」
俺は首を傾げる。
シーツを汚した覚えなどない、涎かなにかだろうか。
「真ん中辺りにシミがあったよ」
シーツの真ん中ならば涎ではない。
益々、分からないと頭を働かせる。
「ッ!」
あの日の情景が脳裏を過る。途端に顔に熱が伝わるのを感じ、バレないように窓の外に顔を向ける。
「若いってのはいいね!」
顔を見なくてもニヤニヤしているのがわかる。本当にこういうことには敏感だ。
これ以上余計なことを話すと、墓穴を掘るため敢えてなにも言わない。
「この後はどうする気だい?」
真面目な声で話す母ちゃんに俺は焦る。
「この後って!リアスとはまだそんな!」
俺が慌てて否定すると、車内に沈黙が訪れる。
「えーと、私はいまからのことを聞いたんですけど」
穴があったら入りたい。
俺は両手で顔を覆う。絶対に耳まで真っ赤だ。
「家に向かってください」
もはや進退両難。
ご機嫌でハンドルを握りながら、鼻唄を奏でる母ちゃんを横目に俺は高鳴る鼓動を鎮めるのに必死だった。
久しぶりに家に戻った俺は玄関で迎えてくれた黒歌を存分に撫で回し、風呂に入る。
帰宅中の車内でアーシアがオカルト研究部の合宿に行っていること聞いた。
あの部活の合宿って何すんだと疑問に思ったが、余計なことを聞くと、また墓穴を掘りそうなので詳しくは聞かなかった。
「行くのかい?」
風呂から上がり、身支度を整えてリビングに入ると、黒歌と遊んでいた母ちゃんに声を掛けられる。
「うん」
俺は短く返事をして家を後にする。
学園に着いた俺はまずオカルト研究部の部室に向かうが、母ちゃんの言った通り合宿に行っているようで誰も居なかった。
「菅原君?」
どうしたものかと敷地内を歩いていると、背後から名前を呼ばれ、振り向くと生徒会長の支取蒼那と副会長の真羅椿姫が立っていた。
「リアスから行方が分からないと聞いて、探していたんです。まさか登校しているとは」
蒼那はリアスから事情を聞いていたようだ。俺は適当に濁しながらこれ迄のことを話した。
「・・・そうでしたか。菅原君、これから少しお時間を頂けますか?」
少し疑っているようだが、納得してくれた。俺はリアスを行方を訪ねてみる。
「それも含めてお話しします」
リアスの居所を知っているようなので、蒼那に従うことにした。
蒼那は椿姫になにか指示をすると、椿姫は頭を下げてその場を後にした。
「来て頂いてありがとうございます」
彼女に従い、歩いていくと生徒会室に通される。
「リアスのことをお話をする前に菅原君はオカルト研究部に入部したと聞いてますが、本当ですか?」
そこには既に何人かの生徒がおり、彼女の後ろに控えていた。
俺は彼女の言葉に頷く。
「でしたらリアス達の本当の姿についてもご存知なのですか?」
彼女の表情が険しくなる。
「リアス達が悪魔ということなら知っている」
俺の言葉に蒼那はため息を吐くと、立ち上がる。
「全くリアスは。ならば私達のことも話さなければなりません」
そう言うと、蒼那と後ろに控えていた生徒達の背中から漆黒の翼が伸びる。
「菅原君。私達生徒会もまたオカルト研究部と同じく悪魔で構成されています」
本来なら驚くところなのだろうが、蒼那がリアスの親友であると知っていたのでやっぱりという感じだった。
「あまり驚かないようですね」
彼女は反応の薄い俺に疑問を投げ掛ける。
「驚いたけど、リアスと親友っていうのは知っているし、そーちゃんとつーちゃんの関係性がなんかリアスと朱乃と似ていたからもしかしたらと思ってた」
今度は蒼那のほうが逆に驚いた様子だった。
後ろに控えていた生徒も驚愕していた。
「流石というかなんというか」
蒼那は首を左右に振りながら席に着く。すると、蒼那からの用事を済ませた椿姫が生徒会室に入ってきた。蒼那になにか耳打ちすると、蒼那は小さく頷き、椿姫以外の生徒達に退室するように促す。
生徒会室に蒼那と椿姫と俺の三人だけが残った。
「菅原君。リアスのことを話す前に彼女の現状を話しておかなければなりません」
事の始まりは十日前。つまり俺がみんなの前から姿を消した日まで遡る。
リアスの婚約者という人物がオカルト研究部の部室を訪ねてきたこと。
本来ならリアスが大学を卒業してからの話であったが、家の事情で婚約が早まったこと。
リアスがその婚約話を聞き入れなかったこと。
話し合いでの解決は望めないと判断し、冥界で人気のレーティングゲームで勝敗を決することになったこと。
そのレーティングゲームの準備のため、リアス達オカルト研究部の連中とアーシアが十日前から合宿を始めたこと。
「勝敗次第ではリアスは婚約することになります」
あの日のリアスとグレイフィアの会話からなんとなく想像は出来ていたため、あまり驚きはしなかった。
「まさか知っていたんですか?」
先程と同じように反応の薄い俺に蒼那は目を丸くする。
「そもそもなぜリアスはこの話を突っぱねてるんだ?」
俺の疑問に蒼那は首を傾げるが、俺は話を続ける。
「リアスの家は冥界でも公爵の爵位を戴く名家と聞いた。公爵家の姫として生まれたなら家のために嫁ぐのは当然のことじゃないのか?」
俺の言葉に蒼那の表情は固くなっていく。
「だからこそリアスはこれまでグレモリーという巨大な傘の下で良質な環境で生きてきたんじゃないのか?」
蒼那の鋭い視線が俺に突き刺さる。
「では貴方は女が政治の道具になっても仕方ないと言うのですか?」
室内の温度が急激に下がっていく。蒼那から発せられるプレッシャーの影響だろう。
「そうは言ってない。だが、リアスにだって家のためにという考えがあったはず。頭が良い彼女がそれを覆すということはそれ以上に大切なことあると言うことだろう。俺はそれが何なのかは知りたい」
室内の温度が元に戻っていく。蒼那から発せられていたプレッシャーが引いていく。
「そーちゃん。君だって同じゃないのか?リアスの親友ということは同等の家柄の持つ家の姫なんだろ?」
目を細める蒼那は悲哀の表情を窺わせる。
「リアスは夢があると言ってました」
蒼那の小さな声が俺の耳に届く。
「夢。それは大切だな」
リアスの夢が何なのかは俺は知らない。でも、自分にとってそれが生き甲斐であるように彼女にも同じものがあると知り、嬉しくなった。
「それでゲームっていうのはいつなんだ?」
俺の質問に珍しく視線を泳がせる蒼那。
「今日の深夜です」
俺は驚き、椅子から滑り落ちる。
「き、今日!?」
てっきり一ヶ月くらい先だと思っていたため、驚きを隠せない。リアスの一生が今日決まってしまう。
「菅原君。貴方はどうするんですか?」
蒼那が呟くように聞いてくる。
「俺はリアスと話がしたいだけだよ」
立ち上がり、生徒会室の出口へ踵を返す。
「もし、リアスが敗北すれば、彼女はもうここへは戻りません。貴方と話をする機会も訪れないでしょう」
蒼那の言葉にドアを開きながら振り返る。
「その時は婚約者からリアスを奪い去ってでも話をする」
そう言って生徒会室を後にする。ドアから射し込む夕日で蒼那と椿姫の顔が少し赤くなっていた。
―〇●〇―
生徒会室に残された私と椿姫は彼の出ていったドアを見つめてる。
彼はリアスを奪い去ると言った。彼はバカではない。それがどれだけ困難なことか理解してるだろう。
なのに何故だろう。
振り返る彼の表情を見た瞬間、それも可能だと思ってしまったのは。
その表情に思わず胸が高鳴り、顔が熱を帯びる。
隣に控えていた椿姫も頬を染めている。
少し動揺してしまったが、一度咳払いをしていつもの調子を取り戻す。
「これで満足ですか?」
私は生徒会室に併設されているもう一つの部屋のドアに向かって声をかける。
「リアス」
そのドアが開かれ、中から親友が姿を現す。
瞳には涙を溜め、頬は紅く染まっていた。
嫁ぐのは仕方ないと言われて泣きそうになったり、自分を奪い去ると宣言され、胸が高鳴ったりと忙しい親友だ。
「次は貴方の番ですよリアス」
涙を拭うと、その瞳に光が宿る。
願わくば彼女の想いが届きますように。
友の行く末に幸多からんことを。
第10話更新しました。
書いてる途中で前話要らなかったのではと思う内容になってしまいました。
今話に至ってはストーリーが全く進まず、こんなことになるなら眷属してたらどんなに楽だったか。
内容のほうも結局なにがしたいのかわからない内容になってしまいました。掃除に九日はやり過ぎました。反省してます。
最後は無理矢理次に繋げやすい展開にして終わりました。
次話はもっとわかりやすくしたいです。
作品を読んでくれる方、感想をくれる方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。
ではまた次回。バイバイ