ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

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皆さんプランダラという漫画をご存知でしょうか?
筆者はああいう漫画が大好きです。

第14話です。


第14話

単純なことだった

私に足りないものを貴方が持っていた

だから私は貴方に惹かれた

 

―〇●〇―

 

「なにやってんの?」

 

朝、学校に行く準備をしてアーシアと一緒にリビングに入ると、赤と白のギンガムチェックの可愛らしいエプロンを着用したリアスが母ちゃんと二人で朝食の用意を進めていた。

 

「おはよう。ユー、アーシア」

 

笑顔でそう言ってキッチンに消えて行くリアス。

 

(なんでここにリーアが?)

 

俺は訳がわからずに混乱していると、アーシアに制服の袖を引っ張られる。

 

「うぅ~、私だって負けませんから!」

 

頬を膨らませ、リアスに対して対抗心を燃やすアーシアは母ちゃんに呼ばれ、朝食の準備の手伝いをするためキッチンに向かって行った。

 

キッチンには楽しそうに会話をしながら朝食の準備をする三人。

 

テーブルには新聞を広げてはいるが、キッチンにいる三人を楽しそうに眺めている父ちゃん。

 

リアスが家の一員として完全に溶け込んでいることに誰一人として不思議に思っていないことに俺は驚きを感じる。

 

(えっ?・・・俺がおかしいの?)

 

三人があまりにも自然にリアスと接していることに戸惑っていると、黒歌が俺の足にすり寄ってくる。

 

いつもならすぐに母ちゃんに朝食をおねだりする黒歌もリアスを警戒するように俺の後ろからキッチンの様子を窺っていた。

 

俺が茫然としていると、朝食の準備が出来たようで母ちゃんから早く席に座るように言われる。

 

既に四人は席に着いており、手前の三席ある内の左の席にアーシア、右の席にリアスが座っていて俺は真ん中の空いてる席に座る。

 

「とりあえず説明して欲しいんだけど?」

 

対面に座っている両親とリアスを交互に見ながら、彼女がここにいる理由を尋ねる。

 

「せっかくのご飯が冷めるからまず食べな」

 

楽しそうに会話をする四人を横目に俺は言われた通りを食事を始める。

 

(うまっ!なにこれ?)

 

俺が食べたのはレンコンの煮物だった。

 

パリッという食感に砂糖と醤油で甘辛く味付けされ、鷹の爪のピリッとした辛味と胡麻油の風味が絶妙な味わいでなにより白米に合う。

 

(でも母ちゃんの味と違うような?)

 

いつも口にしている味と違うことに気がつく。

 

「それ私が作ったんだけど、どうかしら?」

 

リアスの一言に掴んでいたレンコンを落とす。

 

以前から和食が得意だと聞いていたが、お嬢様である彼女が本当に料理をするとは思っていなかったため、衝撃を受ける。

 

「すごく美味しいです」

 

心の中で謝りながらそう伝えると、彼女は心の底から嬉しそうに笑顔を見せた。

 

父ちゃんや母ちゃんからも絶賛されると、少し照れてたように頬を赤く染めた。

 

「ユーさん!私が作ったお味噌汁はどうですか?」

 

腕を引かれてお椀を口に添えられたので味噌汁を啜り、美味しいよと答えると、アーシアも満面の笑みを溢した。

 

「アーシア。ユーはいま私の作った煮物を食べてるのよ」

 

リアスが静かに箸を置き、立ち上がる。

 

「いいえ部長さん。ユーさんは私が作ったお味噌汁が飲みたいんですよ」

 

アーシアも立ち上がり、リアスと視線を合わせる。すると、両者の視線の間にバチバチと火花が散っていた。

 

俺は面倒になりそうだったので食事を続けることにした。

 

「止さないかい二人共。楽しい食事の時間だよ」

 

その様子を見かねた母ちゃんが仲裁に入る。

 

二人の間に気まずい雰囲気が流れる。

 

「それにユウ。お前も悪いぞ」

 

珍しく父ちゃんが厄介事に口を出してくる。

 

嫌な予感しかしない。

 

「二人を娶るなら些細な争いごとを解決するのは男の役目だ」

 

予想通り。いや、予想以上の爆弾を投下する父ちゃん。

 

俺は危うく口の中のものを吐き出しそうになるがなんとか堪える。

 

リアスとアーシアは顔を真っ赤にして椅子に座る。

 

「二人も些細なことで喧嘩しないの。旦那様が困る姿を見たくないだろ?」

 

旦那って。母ちゃんも父ちゃんに便乗して俺達の反応を楽しんでる。

 

「そ、そうね!私が悪かったわ。ごめんなさいアーシア」

 

顔を真っ赤にしながら非を認めるリアスの姿に成長を感じて俺は感動する。

 

「い、いえ。最初の原因を作ったのは私です。すみませんでした」

 

アーシアも素直に謝るが、その顔はリアス同様真っ赤だった。

 

「二人共素直でよろしい!じゃあ、冷めない内に食べようかね」

 

その後は和気藹々と食事が進んでいくが、俺が内心ドキドキしていたのは内緒にしておこう。

 

食事を終え、各々が食器を片付けると、母ちゃんから席に座るように言われる。

 

さっきのやり取りでなんとなくリアスがここにいる理由は分かったが俺は話を聞くことにした。

 

理由は母ちゃんではなくリアスが話してくれた。

 

これまで住んでいた学園の寮が取り壊されることになったこと。

親に実家に帰ってこいと言われたこと。

一人暮らしをしたいと言ったが拒否されたこと。

実家に戻り、親と話し合いをして信頼出来る者の家なら下宿を許されたこと。

そこで両親に相談したこと。

母ちゃんが即了承したこと。

 

「という訳で今日からお世話になります」

 

リアスが深々と頭を下げる。

 

開いた口が塞がらないとこのことだろう。

 

よくもまあ次から次へと思いつくものだと感心した。

 

そもそも学園に寮など存在しないし、彼女の実家は冥界で彼女は街の管理者なのだから帰ってこいとも言われる訳もない。

 

まぁ、婚約騒動で一時的に冥界に戻ってはいたが。

 

それに元々一人暮らしだったのだから反対もなにもないし、信頼出来る者として俺の両親が思い浮かぶ理由も分からない。

 

とはいえ大切な両親のことをそう言ってもらえるのは有り難い限りなのだが。

 

こうしてリアスは家に住むことになった訳だが、俺は内心ホッとしていた。

 

昨日は彼女の泣き顔を見ることが多く、元気がなかった。

 

いま目の前にいる彼女は両親やアーシアど笑顔で接している。

 

彼女がいつも通りに戻ってくれたことに安堵すると共に、しおらしい姿をもっと見ていたいという気持ちにもなった。

 

(昨日のリーア、可愛かったな)

 

苦笑いを浮かべながら俺は昨日のことを思い出していた。

 

―〇●〇―

 

グリフォンの背に乗り、人間界に戻ると既に太陽が昇っていた。

 

眠っていた時間は長くはなかったが、妙に頭がスッキリしていたので目覚めは悪くない。

 

リアスに時間を確認すると、まもなく生徒達が登校する時間だった。

 

アーシアが心配していると思ったので、家まで送ってほしいと言ったが、その前に二人で話がしたいと言われた。

 

旧校舎のオカルト研究部の部室を訪れた俺はソファーに座っていると、リアスが紅茶を淹れてくれた。

 

朱乃が淹れてくれる紅茶も美味しいが、リアスの淹れてくれた紅茶も美味しかった。

 

「ユウ君。ちょっといいかしら?」

 

着替えのため、奥に行っていたリアスから声を掛けられる。

 

「背中のチャックを下ろしてくれないかしら?」

 

俺は言われた通りドレスのチャックを下ろしてあげると、彼女の美しい肌が露になる。

 

無性に抱き締めたくなったが、いま抱き締めてしまっては我慢出来なくなってしまうため、ぐっと耐える。

 

「我慢しなくていいのよ?」

 

まるで彼女に心の内を読まれているかのように、俺の考えてることと彼女の言葉がリンクする。

 

俺は慌てて彼女から離れようとして踵を返す。

 

「行かないで!」

 

逆に後ろから彼女に抱き締められた。

 

「ごめんなさい」

 

謝罪と共に彼女の柔らかい部分が背中に触れる。

 

俺も薄いYシャツ一枚しか着ていないため、その感触をダイレクトに感じる。

 

俺は意識を背中に集中していると、彼女が少しずつ話してくれた。

 

グランデのある土地の一帯を買い取ったことについては疚しい気持ちはなかったこと。

グランデを潰そうだとか、好き勝手しようという気は全くなかったこと。

俺の夢や俺との約束については忘れてしまっていたが、朱乃の言葉で思い出し、自分の行いを後悔したこと。

 

「忘れていた私が言っても信じられないかも知れないけれど、貴方の夢を壊そうとかそういう気持ちは一切はなかったの」

 

涙ながらに訴える彼女の言葉が思っていた通りだったため安心した。

 

自分のことを忘れられていたことはショックだったが、自分の行動を悔やんでいる彼女に追い討ちをかけようなことをしたくなかった。

 

「もっと貴方と一緒に居たかっただけなの」

 

やっと本心が聞けたことに満足して腹部に回されていた彼女の手を握り、振り向こうとする。

 

「ダメ!まだこっちを見ないで!」

 

慌てる彼女に驚いたがその言葉に従い、背中から彼女に抱き締められたままだった。

 

握った手はどうしようかと迷ったが彼女から放す様子もなかったので握ったままにした。

 

「いまユウ君の顔を見てしまったらこれ以上話せなくなるから、もう少しこのままでお願い」

 

そう言うと彼女は話しを続ける。

 

謝らなければといなくなった俺を探したが見つからなかったこと。

更に俺を探そうとしたが、ライザーが来たことでやむなく中断したこと。

 

「結果的に貴方を傷つけることになってしまってごめんなさい」

 

結婚式に乗り込んだのは俺の決めたことだから気にしなくていいと言ったが、それも含めて自分の責任だと譲らなかった。

 

その後の会話もお互いに譲らず、平行線を辿る。

 

このままでは埒が明かないと思い、ここで少しリアスで遊ぶことにした。

 

「うーん。じゃあ、今回はリアスに責任をとってもらおうかな?」

 

俺はリアスの手を離して振り向くと、背中のチャックを下ろしたことで着ていたドレスが重力に従い、はだけていた。

 

彼女が胸のところで押さえていたことで脱げることはなかったが、胸の谷間が強調されていた。

 

「せ、責任!」

 

俺の言葉に驚く彼女を無視して一歩、また一歩と前に出ると、彼女は後退りする。

 

「あっ!」

 

後ろを確認せずに下がったため、彼女の足がベッドにぶつかり、バランスを崩す。

 

美しい紅の髪がベッドに散らばり、心許なかったドレスはギリギリで彼女の胸元を隠していた。

 

俺はベッドに倒れた彼女の足の間に膝を入れて頭を挟むよう両手を着いて覆い被さる。

 

「責任・・・取ってくれる?」

 

俺が蒼玉の瞳を見つめると、彼女は顔を真っ赤にして俺の顔を見ている。

 

彼女の瞳にはこれから自分の身に起こるであろう事への不安と覚悟の窺えた。

 

俺の脳裏にあの夜の情景が甦る。

 

「いいよね?」

 

彼女の頬に右手を添えると、目を瞑り、身体を強張られせて俺の言葉にゆっくり頷く。

 

その様子に俺はニヤリと笑みを浮かべ、ゆっくり彼女の耳元に口を寄せる。

 

俺の下で小刻みに震えている彼女を愛おしく思い、ここで欲望のままに抱くことはしたくなかった。

 

そもそも彼女を少し揶揄おうとしただけで、十分に可愛らしい姿が見れたことに満足して彼女の前髪を上げて額にキスをして立ち上がる。

 

「・・・ユウ・・くん?」

 

不意に立ち上がった俺を片眼を薄く開けて見るリアス。

 

(また可愛い顔をしちゃって)

 

狙ってやっているならまだしも、無意識でそんな表情をされたらこっちも我慢出来なくなるな。

 

俺は頭を掻きながらリアスに手を差し出す。

 

彼女は俺の顔と手を交互に見ながら不思議そうな表情をしている。

 

俺が目で合図すると、彼女は差し出した手を取って立ち上がる。

 

揶揄っただけでは責任を取ったとは言えないだろうと考えていると良いことを思いついた。

 

「・・・リーアって呼んでもいい?」

 

彼女のお兄さんがそう呼んでたことを思い出して聞いてみた。

 

彼女は目をパチクリさせながら顔を更に赤くしていく。

 

「だ、ダメよ!それは兄が勝手に!」

 

リアスが俺の腕を両手で掴んだため、ドレスが自然と地面に落ちる。

 

慌てて両手で胸元を隠してしゃがみこむ。

 

「まったくリーアは慌てん坊なんだから」

 

着ていたYシャツを脱いで彼女に着せてあげる。

 

「うぅ~。その呼び方は止めて」

 

涙目になりながらYシャツのボタンを止めようとしているが、動揺しているためうまく出来ていない。

 

「嫌だ。今回のことはそれでチャラってことで。・・・それに」

 

俺はリアスのYシャツのボタンを下から上へ止めながら話を続ける。

 

「可愛いし、特別って感じがするからね」

 

特別という言葉を聞いて赤く染まった頬に両手を添えながら拒否するが、最早その姿は肯定と取って問題ないだろう。

 

「な、なにをしているんですか?」

 

Yシャツのボタンを胸の辺りまで止めたところで聞き慣れた女の子の声が聞こえる。

 

そちらに視線を向けると、翡翠色の瞳を大きく見開いた金色の髪の少女が持っていた鞄を落として立ち尽くしていた。

 

「ア、アーシア!?なんでここに!?」

 

アーシアが現れたことにも驚いたが、この状況は勘違いされかねない。

 

「・・・ユウさん。私は心配していたんですよ。もしかしたら怪我をして帰ってくるかもしれないと思ってずっと待っていたんです。だから連絡をもらって急いで駆け付けたんです。・・・なのにユウさんは部長さんに何をしようとしてるんですか?」

 

アーシアの冷たい視線が俺を捉え、聞いたことのない低い声が耳に届く。

 

一歩一歩と近付いて来るアーシアに俺は冷や汗が止まらない。

 

(く、黒アーシア!?やべぇ・・・ライザーどころかリアスのお兄さんクラスにヤバい!)

 

完全に勘違いしているアーシアの瞳から光が失われており、信じられない程の威圧感が俺を襲う。

 

「・・・無事で良かったですぅ」

 

背中からそっと抱きついてくるアーシア。

 

その雰囲気はいつもの彼女に戻っていた。

 

その瞬間、俺の心に深く刻まれたのはアーシアを怒らせてはいけないということだった。

 

俺はリアスに視線を送ると、彼女が頷いてくれたのでアーシアを連れて奥の部屋を出て、ソファーに腰掛ける。

 

俺はアーシアに心配をかけたことを謝ると、彼女は何度も頷いた。

 

着替えを終えたリアスが奥の部屋から出て来てソファーに座る。

 

俺はリアスから渡されたYシャツを着ると、アーシアに結婚式での出来事をこと細かく話した。

 

アーシアは驚いたり、戸惑ったり、心配したりとコロコロと表情を変えながら俺とリアスを見ていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。えっと、部長さんの婚約は解消されて、ユウさんは悪魔になってしまったということですか?」

 

あまりの情報の多さに頭が混乱しているアーシアだったが大事なところは押さえているようだ。

 

「・・・ユウさんが悪魔に・・・」

 

アーシアにしてみればショックな出来事だろう。

 

彼女の信仰する神と悪魔は対極の存在である。

 

その悪魔と一緒に暮らしているのだから大変な事態だ。

 

俺も最後までこのことアーシアに伝えるか迷ったが、彼女に隠して一緒に暮らして行くことは出来ないと思い、打ち明けた。

 

最悪アーシアが家を出て行ってしまう可能性もある。

 

寂しいがその時は彼女の意思を尊重しようと思った。

 

「ユウさんはユウさんですし、なにも変わりませんよ」

 

そう言って笑った彼女は毎度のことながら聖母だと思った。

 

俺は心の底からアーシアに感謝した。

 

自分が何者になろうとも変わらないと言ってくれた彼女に。

 

俺はアーシアを抱き締めて何度もありがとうと伝えた。

 

リアスもその様子に安堵の表情を浮かべていた。

 

俺はアーシアに全てを伝えたので立ち上がり、次の行動を取ろうとしたが、アーシアに腕を引っ張られ、再びソファーに座らせられる。

 

「冥界での出来事は聞きましたが、先程の部長さんとのやり取りの説明がまだですよ・・・ユウさん?」

 

黒アーシア再誕!!!!

 

俺は慌てて先程のことを説明する。

 

その途中でリアスが余計な説明までしようとしたので目で合図を送ると、人差し指を一本立てて笑っていた。

 

どうやら貸し一つという意味のようだ。

 

なんとかアーシアの誤解が解いて一息ついていると、リアスから料理長にも土地買収の件をもう一度説明したいので一緒に来てほしいと頼まれたので了承した。

 

俺は家に帰って休もうとしたが、リアスからここのベッドを使えばいいと言われ、アーシアからも休み時間に様子を見に来れるのでそうしてほしいと言われた。

 

リアスはどうするのかと聞くと、彼女はやることがあるらしくアーシアと一緒に部室を出ていった。

 

二人が去った部室で俺は考えていた。

 

悪魔になったというのにあまり驚いていない自分がいる。

思えば二年前の身体の異変はその兆候だったのではとさえ思えてくる。

初めて訪れたはずの冥界が妙に懐かしく思えた。

自分の中に感じた自分とは別の存在に戸惑いこそあったがあまり驚かなかった。

きっと前世も悪魔だったんだろうと軽く考えて俺は瞼を閉じた。

 

(父ちゃんと母ちゃんになんて説明しよう)

 

最愛の両親のことを考えていると意識が途切れた。

 

―●〇●―

 

(どうしてこうなった?)

 

俺が目を覚ますと柔らかい感触がしたので確認すると、朱乃が俺の右半身を抱き枕のようにしながら眠っていた。

 

何故かシャツのボタンが外れていて俺の肘が彼女の胸の谷間にスッポリと収まっており、右足には両足を絡められていた。

 

(ベッドで寝ていただけなのに)

 

抜け出そうと動いてみるが、少し動くと朱乃の制服が大変な事になったので諦めた。

 

朱乃が起きるまで待つしかないと思っていると部屋のドアが開けられ、リアスとアーシアが入って来たので俺は寝たふりをすることにした。

 

「なっ!?朱乃!?」

 

目に飛び込んで来た光景に言葉を失うリアス。

 

俺は起きていることを悟られないように息を潜める。

 

「起きなさい朱乃!教室にいないと思ったらこんなところに!しかもユーに抱きついて!」

 

リアスの俺の呼び方が変だったので少しだけ眉が動いてしまった。

 

リアスの声に朱乃が目を覚まして起き上がる。

 

問い詰められる朱乃だったが、良い抱き枕があったので、などとうまく躱わしている。

 

リアスと朱乃が言い合っている声が部屋中に響くが、俺はあることに気がつく。

 

(何故アーシアがなにも言わない?)

 

リアスと一緒に朱乃に詰め寄ってもおかしくない状況でアーシアの声が聞こえないことに疑問を感じていた。

 

「ユーさん・・・起きてますよね?」

 

内心ドキッとしたが、なんとか耐えて寝たふりを継続する。

 

「眉が動いたのを見ましたよ?」

 

アーシアの声のトーンが下がって来たのでまずいと感じて謝罪と共に上半身を起こす。

 

リアスからは呆れられ、朱乃はあらあらと口癖を口にし、アーシアの笑顔は少し怖かった。

 

その後、二人に引き摺られるように奥の部屋から出て行くと、集まっていた小猫達が不思議そうに首を傾げていた。

 

小猫からまた何かやったのかと聞かれたので、不可抗力とだけ答えて俺達は部室を後にした。

 

グランデに向かう途中もリアスとアーシアから脇が甘いだの隙があるだの散々言われたが、寝てただけなのにそんな事言われても困ると反論したかったが、一つ言うと百返ってきそうなので大人しく聞いていた。

 

グランデに着くとまだ開店時間ではないため入り口にはcloseの看板が立っていたので裏口に回り、ドアを開けようとするが鍵が掛かっており開かなかった。

 

いつもならこの時間はみんな出勤しており、開店の準備で忙しいはずなのだ。

 

店の前で考え込んでいると、常連客の一人から声を掛けられ、もう十日以上も店が閉まったままらしい。

 

リアスが不安そうな表情をしており、ずっと店が閉まっている責任は自分にあるのではないかと考えているようで、リアスに声を掛けるも先程までの元気がない。

 

アーシアも店の窓から店内を覗いているが、やはり人は居らず首を振りながら戻ってくる。

 

俺達は相談し、また後日来よう決めて学園に戻ろうとする。

 

「ユウにアーシアちゃんじゃねーか。どうしたんだ?」

 

背後からゴロゴロとキャリーバックを引く音と料理長の声が聞こえた。

 

俺とアーシアは料理長に駆け寄るが、リアスはその場から動かなかった。

 

「料理長こそ店も開けずにどこ行ってたんですか?」

 

料理長に理由を聞くと、料理長のお師匠さんが腰を痛めてしまい、ヘルプでスタッフ何人かとイタリアに行っていたようだ。

 

急なことだったため、常連客などにも事前に連絡出来なかったとのことだった。

 

「つーか、お前の携帯何回鳴らしたと思ってんだ!出ねぇし、しまいにゃ電源入ってねぇし!」

 

あっ!と声に上げて携帯の存在を思い出す。

 

ここ数日間携帯どころではなかったため、机の上に置きっぱなしだったことを伝える。

 

「全くお前は。んで、アーシアちゃんはいいとしてお前は何しに来たんだ?」

 

今とても酷い扱いを受けた気がするが、俺は本題に入るためリアスを呼び、土地の買収の件を話した。

 

「そのことか。立ち話もなんだし店に入るぞ」

 

料理長が鍵を開けて俺達も店内に入ると、十日以上放置されていたにも関わらず店内はキレイだったので聞いてみると、日本に残ったスタッフ達に清掃をお願いしていたようだ。

 

四人が席に着き、リアスが土地を買収したのは自分の一族であることを伝え、謝罪した。

 

リアスは俺に伝えたことと同じことを料理長に話し、すぐに土地買収を止めると言ってくれた。

 

腕組みをして固く目を閉じる料理長に俺達は固唾を飲む。

 

料理長が大きく息を吐く。

 

「俺もその話が来たときバタバタしてたから軽く流したが、そういう話だったのか」

 

料理長はウーンと唸りながら何かを考えている。

 

「いや、この店のオーナーは俺じゃなくていい」

 

予想外の答えに俺は驚く。

 

あれだけ店に情熱を燃やしていた料理長が店を手放すということだ。

 

俺は料理長の返答が不満で理由を問いただす。

 

「店の営業はこのまま続けていいんだろ?スタッフ達もそのままでいいって言うしよ。それによ、俺は根っからの料理人なんだよ。料理を作ることが楽しいし、考えるのが楽しい。その料理を食った客の笑顔を見るのが好きなんだ。そのためのグランデなんだよ。逆に金勘定してる時間が苦痛で仕方なくてよ、それを変わりにやってくれるんだったら此方からお願いしてぇよ」

 

開いた口が塞がらない、なんて頭の悪い考えなのかと呆れたが、料理に対する熱意だけは誰にも負けないことが伝わってきた。

 

「ただし、条件がある」

 

少し照れながら話していた料理長が真剣な表情でリアスに向き合う。

 

「店はこれまで通り俺の好きにやらせてもらう。損はさせねぇことを約束する。それから・・・オーナーはリアスちゃんにやってもらいてぇ」

 

料理長の返答に驚くリアス、もちろん俺とアーシアも驚いた。

 

「この店のこと考えて悩んでくれたリアスちゃんになら任せられる。この店の常連でもあるしな。この条件が飲めねぇなら俺は店を畳む」

 

こういう目をしたときの料理長は本気だ。

 

「・・・分かりました。私が責任を持って勤めさせて頂きます」

 

リアスの言葉を聞いた料理長は立ち上がり、リアスに手を差し出す。

 

「交渉成立だな!これからよろしくお願いしますオーナー!」

 

リアスも料理長と固く握手を交わす。

 

不安で一杯だった表情はいつも通り自信に満ち溢れていた。

 

(雇われ店長がオーナーに条件つけるっていいのか?)

 

俺は握手を交わす二人に一抹の不安を覚えるが、おそらくなにも考えてない二人だと苦笑いする。

 

話が纏まったことにアーシアも喜んでいた。

 

こうして俺達は店を出て歩き出した、去り際に料理長に二日後から店を再開するからよろしくと言われた。

 

「良かったですねユーさん!」

 

アーシアが満面の笑みを浮かべている。

 

「本当だよ、一時はどうなるかと思ったけど?」

 

隣を歩くリアスに意地悪してみる。

 

「だから何度も謝ったでしょ!・・・それともなにオーナー権限でクビにするわよ」

 

リアスも嬉しそうに笑っている。

 

「またユーの料理食べに行くわね」

 

俺も笑顔で頷くが、呼び方が変なので聞いてみると、特別って感じがするでしょ、と同じことを言われてしまい、項垂れるしかなかった。

 

並んで歩く三人の背中を夕日が照らしていた。




第14話更新しました。

いつの間にか前回の更新から一週間以上経ってました。
やることが多くて本当に少しずつしか書けませんが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

内容は完全な繋ぎの回でした。
フラグをバンバン立てて回収していこうと思うですが、次は誰ですかね?
こうなるとあの黒猫をどこで出すか迷いますね。
我慢出来なくなってしれっと出すかもしれません。

読んでくれた方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくれる方ありがとうございます。

ではまた次回。
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