ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

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ルビを上部に振る方法を誰か教えて下さい。

第16話です。


月光校舎のエクスカリバー
第16話


君には弱い自分を見せたくなかった

君の前ではカッコいい自分でいたかった

俺を普通で居られなくするのは・・・

 

―●〇●―

 

カーテンの隙間から射し込む太陽の光が、隣で可愛らしく寝息を立てる少女の金色の髪をキラキラと照らす。

 

その美しく輝く髪を撫でてあげると、少女は気持ち良さそうに身を捩る。

 

幸せな夢でも見ているのか口角を上げている。

 

少女の髪が頬にかかり、小さな口で髪を食べている。

 

自身の髪をモグモグと咀嚼する姿はとても愛らしく、いつまでも見ていたかった。小指でその髪を取って耳にかけてあげる。

 

優しく少女の頬に触れると、手を重ねてくる。

 

特別な力を持つとされているが、目の前で眠りに着く姿はあどけなさの残る年相応の少女だった。

 

(俺の全てを賭けて、君に降りかかる悲しみを払ってみせるから)

 

少女の寝顔にそう誓いを立て、少女の手を握る。

 

「アーシアだけ可愛がるのは・・・イヤ」

 

背後から熱の籠った艶かしい声が鼓膜を通して脳内に響き渡り、胸に手を回され、背中から抱き締められる。

 

「おはよう、リーア」

 

リアスが家に住み始めてから一週間。朝の目覚めが刺激的になった。

 

彼女が裸でなければ眠れないとは知っていたが、下宿初日から全裸でベッドに潜り込んでくるとは思わなかった。

 

そんなリアスを見たアーシアが、自分も裸になると言ってパジャマを脱ぎ出した時は大騒ぎになった。

 

なんとかアーシアにパジャマを着るように説得を試みるが、なかなか聞き入れてもらえず、逆にアーシアからこれから毎日一緒に寝てくれるならと条件を出されてしまい、現状を打破するためには承諾するしかなかった。

 

いくら母ちゃんから一緒に寝るように言われていても、俺から直接了解をもらっていないことが不安だったようで、俺の返事を聞くと弾けるような笑顔を見せた。

 

リアスからアーシアには甘いのね、と言われて納得する自分がいた。

 

リアスには積極的になれるのだが、アーシアに対してはどうにも甘くなってしまうことは、前々から感じていた。

 

決してそれが悪いことだとは思わないが、リアスや朱乃の影響を受けて大胆になっていくアーシアにどう対応すれば良いのか分からなくなることがあるのも事実だった。

 

「兵藤のトレーニングに付き合う時間じゃないのか?」

 

以前アーシアと買い出しに出掛けた時に公園でトレーニングするリアスと兵藤を見掛けたが、あの日以降も続けているようだ。

 

「まだ大丈夫よ。それに私が居なくてもあの子はサボったりしないわ」

 

彼女の足が身体に絡み付いてくる。

 

俺も寝るときはTシャツにパンツだけというラフな格好のため、彼女のスベスベとした足がとても気持ち良かった。

 

彼女に手を引かれ、アーシアの方を向いていた身体がリアスと向かい合う。

 

何度目にしても見飽きることのない美しく裸体だが、こう毎日見せられれば慣れてくるというものだ。

 

「信頼してるんだな」

 

俺はリアスの首と背中に腕を回して、彼女を引き寄せるように抱き締める。

 

この行動も日課のようなもので、こうしないとリアスが離してくれないのだ。

 

「可愛い眷属だもの・・・それに」

 

腰に腕を回しながら、胸に頭を預けてくる。

 

彼女の紅の髪から香る清潔感のある匂いが俺の鼻腔を擽る。

 

「・・・それに一誠にも貴方という目標が出来たみたいだし」

 

そう言われて首を傾げる俺にリアスは笑いながら話してくれた。

 

自分の敵わなかったライザーを相手にボロボロになりながらもリアスを救った俺の姿を見て、自分もああいう男になりたいと彼女に宣言したらしい。

 

兵藤も将来は上級悪魔となり、自分の眷属を持つことが夢らしい。

 

学園ではバカでスケベと評判の兵藤も、夢に向かって努力しているんだなと思って嬉しくなった。

 

「可愛い女の子をたくさん眷属にして、ハーレム王になるんだって張り切っていたもの」

 

・・・前言撤回。

 

やっぱりあいつは只のバカでスケベなだけの男だった。

 

「そのバカの夢のために、早くトレーニングに付き合ってやった方がいいんじゃないのか?」

 

俺は呆れて、リアスから離れるようにベッドに横になって目を瞑る。

 

「・・・他の男のところに行こうとしてるのに、止めてくれないの?」

 

身体に重みを感じて目を開けると、潤んだ瞳で上から俺の顔を覗き込むリアスが居た。

 

俺は肘で身体を支え、少しだけ背中を浮かして彼女の頬に口付けする。

 

「・・・待ってるから」

 

唇への口付けでなかったことに少し不満に感じているようだが、渋々納得して自室へ戻っていった。

 

リアスを見送ると、片膝を抱えて背中を丸める。

 

彼女が俺に好意を寄せているのは誰が見ても明らかだろう。

 

では、俺のリアスに対する感情はなんなのだろうか?

 

友情?

恋愛感情?

はたまた彼女の婚約を台無しにした罪悪感?

それともただ彼女の身体を求めるだけの欲求?

 

リアスとは始めて逢った時から気の合う友人で、彼女のような美しい女性に好意を持たれていることは男としてとても誇らしく思うし、あの極上の身体を欲望のままに犯し尽くして、俺なしでは生きられない身体にしてやりたいと黒い感情が湧いてくることもある。

 

その一方で彼女の家族に対する罪悪感をいつも感じている自分がいる。

 

俺が彼女を連れ去った後、彼女の家族が今回の騒動を収めるためにどれだけ苦労したかは想像に難しくない。

 

名門と言われる家同士の婚約なら尚更だろう。

 

最悪、リアスの実家が改易されてもおかしくはないほどの事案だろう。

 

リアスと一緒に居ると、どうしてもその事が頭を過る。

 

彼女には大人ぶった態度を取ったり、強気な言葉で揶揄ったりしているが、最後のところで尻込みしているのは俺の方だ。

 

彼女はいつも真っ直ぐに俺への気持ちを伝えてくれるのに、俺は色んなことを言い訳にして逃げているだけではないだろうか。

 

隣で眠る金色の髪の少女を見つめながら、俺は自分を軽蔑する。

 

(結局、どちらにも嫌われたくないってことか。最低だな俺は)

 

二人のうち一人を選べば、当然もう一人は俺から離れていくことになる。

 

いずれ確実に訪れる未来の別れを思い浮かべて、膝に顔を埋める。

 

「・・・ユーさん?」

 

膝を抱えている俺に目を覚ましたアーシアが声を掛けてくる。

 

その声色はまだ眠たそうで、見てはいないが、目を擦っているだろう。

 

「おはよう、アーシア」

 

彼女に向き合い、背中に手を回して、優しく抱き締める。

 

「・・・大丈夫ですよ、ユーさん」

 

突然抱き締めたにも関わらず、驚きもせず、何も聞かず、諭すように抱き締め返してくれるアーシア。

 

彼女の優しさが心に染みる。

 

「ありがとう、ごめんね」

 

ゆっくり彼女から身体を離すと、穏やかな笑みを浮かべながら、首を左右に振っていた。

 

「・・・私がユーさんにしてあげられることは、こんなことくらいしかありませんから」

 

そう言って笑うアーシア。

そんなことはない、俺が君にどれだけ助けられてきたか、君が俺の心をどれだけ癒してくれたか、君は知らないだろう。

 

自然とお互いの視線が交わり、どちらともなく顔を近づけていく。

 

「ニャ~」

 

唇と唇があと僅かで触れるという時に黒歌の鳴き声が広い室内に響く。

 

二人の間に微妙な空気が流れる。

 

なんというタイミングだ、本当に俺達がなにをしようとしていたかわかっていたのではと疑ってしまう。

 

俺は頭を掻きながら黒歌を撫でてあげると、アーシアも苦笑いをして黒歌を抱き上げて自室に戻って行った。

 

俺も時間を確認して着替えを始める。

 

準備を整えてリビングに入ると、リアスが戻ってきており、母ちゃんと一緒に朝食の用意をしていた。

 

キッチンの二人と既にテーブルに座っている父ちゃんに挨拶をすると、黒歌を抱いたアーシアがリビングに入ってきて朝食の準備を手伝い始める。

 

「お義母様、今日は部活動で遅くなりますので申し訳ありませんが、夕食の準備を手伝うことは出来ません」

 

食卓を囲みながら珍しくリアスが母ちゃんにそう告げる。

 

いつもなら授業が終わると、部室に顔を出して眷属達に指示をしてから一緒に帰宅して、夜に再び部室に向かうのだが、今日は帰宅する時間も遅いらしい。

 

俺も今日はバイトがあるため部活には出れない。

 

余談だが、週二回だったシフトが週四回になったので、アーシアが休みの日もバイトに入っている。

 

朝食を終えて、母ちゃんと黒歌に見送られながら俺達は家を出て学校へ向かう。

 

登校中にアーシアがリアスに今日の部活の活動について質問すると、先日のライザーとのレーティングゲームの反省会をすると言っていた。

 

アーシアも特に予定がなかったので参加するようだが、部室のある旧校舎が使い魔たちによる月に一度の大掃除のため、兵藤の家に集まるということだった。

 

「出来れば貴方に参加してもらって意見を聞きたかったけど、バイトがあるから仕方ないわね」

 

リアスはそう言うが、ゲームのことはよく知らないので役に立たないだろう。

 

―●〇●―

 

放課後になり、リアスと朱乃に挨拶して俺はバイトに向かった。

 

グランデでは既にディナーの下準備が進められており、俺も着替えて厨房に立つ。

 

店を再開してから一層客足が伸びたようで、俺を含めたスタッフ達は営業が終わると疲れ果てていたが、料理長だけは元気が有り余っており、本当に同じ人間かと疑ってしまう。

 

俺に限っては人間ではないのだが・・・

 

そんな料理長は店を閉めてスタッフ達が帰った後も厨房に立ち、新作メニューの開発や既存のメニューの改良に精を出していたため、店の評判が上がり、常連客の間では近々ミシュランの星を獲るのではないかと噂されている。

 

「料理長は星を獲りたいとか思わないんですか?」

 

店の営業が終わり、着替えを済ませて厨房に行くと、食材を目の前にして考え込む料理長が居たので不躾にそう聞いてみた。

 

「なんだ藪から棒に?」

 

なんとなく聞いたことなので、俺の方が考え込んでしまった。

 

「星か・・・興味ねぇことはねぇかな」

 

食材を洗いながらそう答える料理長の話に耳を傾ける。

 

「料理人の中には星を獲るため生涯を賭ける奴もいる。名誉のためだったり、金のためだったり、夢ってのもあるな」

 

話ながらも食材を切り分けていくが、流石の包丁捌きに目を奪われる。

 

「そのためだけに特別な食材を使ったり、特殊な調理器具を使ったりする料理人も多い」

 

賽の目に切り揃えられた食材がフライパンの中で踊る。

 

「でも俺はやらねぇ・・・勿論、星を獲れば店は今以上に繁盛するだろうが、俺はいま来てくれる常連の客を大事にしてぇ」

 

フライパンの中の食材が塩や胡椒、オリーブオイルなどで味が整えられていく。

 

「気軽に足を運んで、気軽に旨い料理が食える店にしたいから、グランデでは予約も受け付けてねぇ」

 

色鮮やかな食材がフライパンから皿に盛られていき、その皿を俺の前に置く。

 

食ってみろと、目で合図され、俺は料理を口にする。

 

(・・・う、うめぇ!なんだこりゃ!?」

 

味付けは塩と胡椒、オリーブオイルだけの極めてシンプルな品であったが、野菜のシャキシャキとした食感とさっと火の通ったアボカドがねっとりして舌に絡み付いてくる。

 

(・・・こいつは鮪か!?)

 

外はカリっとしていて、噛むとジュワっと口の中に広がる鮪の風味が極上のハーモニーを奏でる。

 

正に至極の一皿であり、とてもフライパン一つで作ったとは思えない一品だった。

 

「・・・その皿に名前はねぇ。だが、その料理が俺の答えだ」

 

俺は夢中になってその皿を平らげる。

 

「どこでも手に入る食材でフライパン一つ、鍋一つで誰でも気軽に真似できる料理で客の舌を唸らせる。また食べに来たいと思わせるために努力する・・・そこに星がついてくるならそれだけのことだ」

 

なんてカッコいいおっさんだと惚れ惚れする。

 

「お前も将来自分の店持ちたいんだろ?」

 

俺は料理長の問いに頷く。

 

「だったらよく食って、よく寝て、よく勉強して、よく遊んで、適当に世間の厳しさを知って、今しか磨けない感性ってやつを磨くんだな。そいつは必ず将来のお前の料理に活かされるだろうよ」

 

カッコいい男の金言を胸にしっかりと刻み込む。

 

「・・・そして俺になれ!」

 

・・・・・・

 

「お疲れ様で~す」

 

自信満々に胸を張る料理長にさっさと挨拶して店を出る。

 

後ろで料理長がなにか叫んでいるが無視した。

 

どうして最後まで我慢出来ないかな、と呆れて帰路に着いた。

 

―●〇●―

 

「なんじゃこりゃ!?」

 

家に帰ると、俺の昔のアルバムやらDVDやらが床に広げられ、リアスとアーシアが盛り上がっていた。

 

二人に迎えられて何事かと聞くと、兵藤の家で幼少期のアルバムを見てきたらしく、リアスが俺の小さい頃が気になると言ったので、母ちゃんがまた引っ張り出したらしい。

 

「本当に可愛いわ~、息子にしたいくらいよ!」

 

リアスが恍惚とした表情でそう言い、DVDに夢中になっている。

 

「本当に何度見ても癒されますぅ~」

 

アーシアもアルバムに写る俺を撫でながらうっとりとしている。

 

「二人共!ユウと一緒になれば、もれなく可愛い子供が付いてくるよ!」

 

一冊のアルバムを手にしながら母ちゃんが奥の部屋から出てくると、爆弾を投下して見事に二人のところで爆発する。

 

なんだか凄く嫌な予感がしたので着替えて来ようと思ったが、母ちゃんの手に握られているアルバムを目にして足を止める。

 

そのアルバムの表紙にはマル秘の文字が大きく書かれていた。

 

「母ちゃん?・・・それは何のアルバムですか?」

 

俺も目にしたことのないアルバムを指差すと、母ちゃんはニヒヒと怪しい笑い声を出してる。

 

「見よ二人共!これがユウの産まれたばかりの姿よ!」

 

・・・どれだけ大層なアルバムかと思えば、赤ん坊の頃の写真かと胸を撫で下ろす。

 

「うおぉ!」

 

安心してテーブルに寄り掛かっていると、椅子に座ってアルバムを見ていたアーシアが物凄い勢いで母ちゃんのところへ駆け出していって、アルバムが開くのを心待ちにしていた。

 

DVDを見ていたはずのリアスもアーシア同様、母ちゃんの隣で目を輝かせていた。

 

母ちゃんがカウントダウンと共にアルバムを開くと、二人から黄色い歓声が響き渡り、目をキラキラさせてアルバムを見ていた。

 

これは当分終わらないと感じて、足に擦り寄る黒歌を抱いて風呂に入り、ベッドに横になった。

 

明日の朝にはいつも通り二人が横に寝ているだろうと思うが、久しぶりにベッドに一人で横になる。

 

俺が意識を手放すまで二人が部屋に来ることはなかった。

 

―●〇●―

 

「オーライ、オーライ」

 

兵藤が手を広げながら、周りに合図をしてグローブでボールをキャッチしている。

 

俺達は数日後に行われる球技大会の練習に勤しんでいる。

 

なにが悲しくてこんな天気の良い日に外に居なければならないのか?

 

そもそも俺達は悪魔なんだから、天気の良い昼間は室内で涼んでいるのが普通だろうと、ベンチに座りながら不貞腐れている。

 

「いいわよ一誠!次、ユーの番よ!」

 

リアスがバットで俺を指すと、そう言って守備に着くように言ってくる。

 

「リーア、トイレに行ってきます」

 

リアスに呼ばれると同時に俺はグランドから出ていく。

 

「ちょ、ちょっとユー!球技大会は部活対抗なんだから!・・・もうっ!」

 

俺は時間を潰すためにブラブラと中庭を歩いていると、見覚えのある生徒達が球技大会の練習に汗を流していた。

 

「そーちゃん、つーちゃん。精が出ますね」

 

中庭のベンチに座り、飲み物を口にしながら彼女達に話し掛ける。

 

「あら、菅原君。オカ研ならグランドで練習していたはずですが?」

 

蒼那が眼鏡を外してタオルで汗を拭きながら、此方に歩いてくる。

 

普段の蒼那も素敵だが、眼鏡を外した彼女もとても魅力的であり、さすが学園の二大お姉様と呼ばれるオカ研の二人に優るとも劣らない人気を誇っていると思う。

 

「部活対抗って聞いたからね。最大のライバルになりそうな生徒会の偵察に来たんだよ」

 

俺の言葉に余裕の笑みを見せて、参考になれば良いですね、と言ってカゴからドリンクを取り出して喉を潤す。

 

「なに!?オカ研のスパイ!?」

 

俺と蒼那が話をしていると、大きな声を出して明らかに喧嘩腰の男子生徒が足早に此方に近付いてくる。

 

「初めましてじゃないすけど先輩は覚えてないと思うんで、生徒会二年の匙 元士郎っす!ソーナ・シトリー様の『兵士』やってます!」

 

ポカンと口を開けて、彼を指差して隣の蒼那を見ると、額に青筋を立てながら、拳骨を握る蒼那がいた。

 

「そーちゃん。こんな所でこんな事言ってますけど、大丈夫?」

 

蒼那は大声で彼の名前を呼ぶと、頭部に愛のムチをお見舞いして、蹲る彼の襟を掴んでズルズルと引き摺って何処かに消えて行った。

 

さらば梶くん・・・咲くんだっけ?

 

俺は彼のその姿に静かに合掌する。

 

「すみません菅原君。うちの匙が失礼な態度を取ってしまって、会長に代わって謝罪します」

 

椿姫がそう言って頭を下げて来たので、気にしてない、と言って頭を上げさせる。

 

「うちの偵察と言うことですが、オカ研の方は順調なのですか?」

 

椿姫は俺を気使いながら、オカ研の情報を聞き出そうとしてくる。

 

さすがあの蒼那の右腕だ、と目を細めて感心する。

 

「順調も順調だから覚悟してたほうがいいよ」

 

俺以外はね、と言って中庭を後にしてグランドに戻る。

 

グランドでは相変わらずオカ研の連中が練習に励んでいた。

 

「おーい木場!行ったぞー!」

 

兵藤が木場の心配をしていたが、お前の百倍しっかりしている木場の心配をするのは百年早いのではないかと思う。

 

だが、予想に反して木場のところに飛んだボールは彼のグローブに収まることはなく、頭部に直撃して後方に転がっていく。

 

俺はその様子を見て首を傾げる。

 

「祐斗!練習だからって気を抜かないの!」

 

木場はそのままグランドを出ていってしまい、リアスが大声で呼び掛けるも聞こえていないようだった。

 

木場のことは心配だが、それよりもリアスの気合いが凄まじく、あのアーシアにさえ容赦がない。

 

「ふふふ、ライザー様との一戦以来、リアスの勝負事に対する熱の入れようは凄いですわね」

 

ベンチに座りながら、空いている席をポンポンと叩いて手招きする朱乃。

 

成る程、余程ゲームとやらでライザーに負けたのが悔しかったらしく、今後行われる勝負事はどんな些細なものでも全て勝つつもりのようだ。

 

その鬼気迫る姿に苦笑いを浮かべる。

 

「でも・・・リアスが熱を入れているのは勝負事だけではありませんわよ」

 

朱乃が妖しく微笑むと、俺の肩に手を置き、耳に口を寄せて囁くように話す。

 

「最近リアスったら恋愛のマニュアル本を読んでいるんですのよ・・・誰かさんのために」

 

俺を揶揄かうようにSっ気のある笑みを見せる朱乃。

 

このまま朱乃のおもちゃになるのは癪なので、彼女の対抗心を煽ってみる。

 

「それは楽しみ。リーアとの仲がより一層深まってしまう」

 

朱乃はなにかとリアスに対抗心を燃やしており、朱乃を煽るにはリアスを引き合いに出すのが一番なのだ。

 

俺がそう言うと、彼女は思い通りの展開にならなかったのが悔しかったようで、プゥッと頬を膨らませる。

 

(悔しがってる、悔しがってる。可愛いね~)

 

それでも諦めない朱乃は、どうしても俺を動揺させたいらしく更に俺に詰め寄ってくる。

 

「では、私がマニュアル本を読んだら相手をして頂けますか?」

 

リアス以上と噂される豊満な胸部を惜しげもなく俺の腕に押し付けながら、物欲しそうな表情をしている。

 

「それはその時に考えるよ」

 

俺は立ち上がって朱乃の頭をポンポンと撫でて、リアスの声を掛けて練習に参加する。

 

グラウンドではリアスの地獄の扱きを受けたアーシアが涙目になっていた。

 

意気揚々と練習に参加した俺だったが、五分と持たずに逃げ出して、リアスの指示を受けた小猫から学園中を追いかけ回されることになる。




第16話更新しました。

投稿を始めた頃の更新頻度を見て驚きました。
週に二回更新してた時期もあったんですねビックリです。
やはり原作を読んでいるのと読んでいないのとでは全然違いますね。
という訳で今後も原作を読みながら更新していきたいと思います。

内容のほうは最後に少しだけストーリーが進んだ感じですかね。
次話からはサクサク進んで行きたいと思います。

読んでくださる方、コメントをくれた方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。

ではまた次回。
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