ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

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皆様のアドバイスのお陰でルビの振り方が分かりました。

第17話です。


第17話

答えなど、どこにもない

誰も教えてくれない

だから、探し続けるんだ

 

―〇●〇―

 

球技大会の特訓に精を出す毎日を送っていたある日の昼休みにリアスと朱乃から話があるからオカ研の部室まで来て欲しい、と言われて素直に付いていく。

 

部室に入ると、アーシアや小猫といった他の部員達も既に揃っており、最近様子のおかしかった木場も参加していた。

 

「部長、今日は何で呼ばれたんすか?」

 

兵藤がリアスに集合した理由を聞いており、俺も知りたかった。

 

「もう少ししたら来ると思うから待ってて」

 

誰が?と問い掛けようとした時、部室のドアがノックされ、リアスが返事をすると、蒼那と椿姫、そして匙?が入ってきた。

 

「せ、生徒会長・・・?」

 

蒼那達の登場に驚いて、他の部員達を視線を送る兵藤。

 

「生徒会長である支取蒼那様の真実の名はソーナ・シトリー様。リアス部長と同じ上級悪魔であり、七十二柱の一つ、名門シトリー家の次期当主でもあらせられる御方です」

 

朱乃から蒼那達の正体を聞いた兵藤の絶叫が室内に響き渡る。

 

なんで知らなかったんだよ、気配で分かるだろうし、リアスの結婚式にも居ただろ。

 

それにしても次期当主とは、蒼那が名門一族の出身であることは知っていたが、リアスと同じ立場にあることは知らなかった。

 

蒼那達が部室にやって来た理由は、お互い新しく眷属に加わった兵藤と匙の顔見せが目的のようだ。

 

匙がアーシアに話し掛けると、兵藤が怒り狂って二人で口論を始めるが、リアスと蒼那の両キングによって黙らされていた。

 

肩を落とす二人を尻目に、蒼那と椿姫から生徒会の本当の存在意義と主な活動内容が語られ、俺は納得する。

 

(大雑把なリーアにしては上手く学園運営をしていると思ったが、蒼那が管理していたのか)

 

てっきり朱乃辺りがその大任を担っていると思っていたが、蒼那や椿姫達の生徒会なら適任だろう。

 

管理能力でいえば蒼那はリアスよりも一歩も二歩も先を行っている。

 

(本当にリーアで大丈夫なのかグレモリー家は?)

 

何故か自信満々に胸を張るリアスを見てそう感じてしまった。

 

「ここには来ていない生徒会のメンバー達も悪魔ですので以後お見知りおきを」

 

そう言って頭を下げる椿姫だったが、またしても隣の匙が余計な一言を口走って、それに兵藤が反応していがみ合っていた。

 

そんな匙に蒼那の愛のムチが炸裂して、椿姫が襟を持って引き摺っていく。

 

「次は球技大会で会いましょう、リアス」

 

その表情は自信に満ち溢れていた。

 

「負けないわよ、ソーナ」

 

そう返すリアスにまた地獄の特訓が始まるのかと項垂れる。

 

―●〇●―

 

「これで終わりよソーナ!」

 

リアスが縦78ft×横27ftのテニスコートの半面を縦横無尽に走り回るたびに、彼女の自慢の胸部が揺れ、テニスウエアのスカートの裾が靡き、美しく肉付きの良い太腿がチラチラと見え隠れする。

 

「甘いですよリアス!」

 

対戦相手である蒼那も負けじと対抗して、スカートが揺れるのを気にも掛けずテニスに没頭している。

 

白熱したラリーよりも時折顔を出す彼女達の白磁のような透き通った太腿に大歓声が上がる。

 

「頑張って下さい、部長さん!」

 

一緒に観戦していたアーシアが一生懸命にリアスを応援している。

 

彼女にとっては初めての体験のためその表情はハツラツとしていた。

 

「うふふ、上級悪魔同士の戦いがこんなところで見られるなんて素敵ですわ」

 

朱乃が愉快そうに笑っているが、なにか違う気がする。

 

ギャラリーから大歓声を受けてラリーは激しさを増して行き、完全に二人だけの世界に入ってしまっているため、打ち返す度に恥ずかしい技名を叫んでいた。

 

魔力こそ使っていないものの、テニスボールがあり得ない速度でコートに突き刺さったり、不可解な変化をしていた。

 

(二人共、ここが学校ってことを忘れるなよ)

 

最終的に二人の力に耐えられず、ラケットが折れてしまい、両者優勝ということでこの勝負は幕を閉じた。

 

―〇●〇―

 

「・・・なにこれ?」

 

クラス対抗戦が終わり、部活対抗戦が始まると俺は四角いコートの中に立っていた。

 

(野球の練習をしていたのになんでドッジボールのコートに立っているんだ?)

 

現状を把握出来ずにいると、相手チームやギャラリーから物騒な声が聞こえてくる。

 

「ユーさん!頑張りましょう!」

 

いつの間にかブルマに着替えていたアーシアが気合いの入った表情をしている。

 

聞けばクラスメイトからブルマを履けば俺が喜ぶと言われて着替えていたらしい。

 

可愛いよと伝えて上げると、アーシアは喜んでいたが、周りから視線は更にキツくなり、嫉妬ややっかみの声が大きくなった。

 

(おい兵藤。お前は同じチームだろうが)

 

ギャラリーに便乗して文句を言っていた兵藤だったが、リアスから頑張ったらご褒美をあげると言われて目に炎を宿すほど気合いを入れていた。

 

試合は案の定、俺と兵藤が真っ先に標的にされたが、動く度に揺れるアーシアの胸や太腿にギャラリーが湧いていたのを見て、頭にきたので少しだけ力を入れてボールをギャラリーの方に投げ込むと、地面にちょっとしたクレーターが出来た。

 

その様子にギャラリーは静かになったが、リアスからお説教を受けてしまい、わざとボールに当たって外野でしゃがみ込んで不貞腐れていた。

 

木の枝で地面にお絵描きしていると、アーシアもボールに当たってしまったらしく残念そうに隣に立っていた。

 

因みに木場は早々にアウトになって外野でずっと空を眺めていた。

 

コートの中では兵藤が必死にボールを避けていたが、アーシアの声援に気を取られてしまい、股間にボールが直撃して保健室に運び込まれていった。

 

リアスは可愛い下僕がやられたことに闘志を燃やし、朱乃は大変ですわ、と言いながらもいつも通り笑っており、小猫は呆れていた。

 

唯一アーシアだけが心配をしていたが、兵藤から大丈夫と言われたためホッと胸を撫で下ろしていた。

 

こうして試合は少しだけ本気を出したオカルト研究部の勝利に終わった。

 

兵藤の遺伝子というかけがえのないものを犠牲にして。

 

―〇●〇―

 

球技大会はオカルト研究部の優勝で幕を閉じた。

 

結局、リタイヤしていた兵藤も復帰して優勝を決めたところで雨が本降りになってきたため、表彰式は後日となり、その場で解散となった。

 

俺達はオカルト研究部の部室に集まって今日の疲れを癒していた。

 

[パン!]

 

雨が窓を叩く音とは別に、渇いた音が室内に響いた。

 

俺がアーシアに膝枕をしてもらい、ソファーに横になっていると、険しい表情をしたリアスが木場の頬を平手打ちした。

 

「少しは目が覚めたかしら?」

 

そんな二人の険悪な雰囲気にアーシアと兵藤はどうしたらいいか分からずに戸惑っていたが、朱乃と小猫は少し悲しそうな表情を浮かべていた。

 

頬を張られた木場だったが、無表情でまるで自分には関係ないと言わんばかりに無言を貫いていた。

 

(数日前から様子がおかしいとは思っていたが、これは本格的になにかあったな)

 

俺は二人の様子を窺いながら、いつから木場の様子がおかしくなったか思い出していた。

 

「・・・もういいですか?・・・疲れているんです・・・球技大会も終わったのでお先に失礼します」

 

急にニコニコと笑顔を見せ始めたと思ったらそのまま部室を出ていこうとする。

 

「木場、お前は最近変だぞ?」

 

怒鳴るリアスを横目に兵藤が木場に駆け寄る。

 

「君には関係ないことだよ」

 

心配する兵藤を軽くあしらう木場の表情は俺が目にしたことのない程冷たいものだった。

 

「そんなこと言うなよ、俺達仲間だろ?」

 

ここで引いておけばいいものを、これ以上突っ込むと録なことにはならないと思うが、兵藤にはそれが分からないようだ。

 

「仲間?・・・君は僕の何を知っているって言うんだい?」

 

木場の瞳から光が消え、別の何かが宿るのを感じた。

 

そんな木場の迫力に尻込みする兵藤だったが、なぜか俺にはこちらの木場の方がしっくりきた。

 

二人のやり取りを見かねたリアスが間に入ろうと、一歩前に出ようとするのを俺が止めた。

 

リアスが不思議な表情をしているが、俺はただ首を振る。

 

いま二人を止めてしまえば、二度とこの場所に木場が戻って来ることはないと思ってしまった。

 

「では君は僕がなんのために戦っているか知っているかい?」

 

木場の濁った瞳が兵藤を捉えると、整った彼の顔が醜く歪んでいく。

 

「なんのためって、部長のためじゃないのか?」

 

こんな木場は見たことがない。

 

朱乃や小猫も心配そうに二人を見つめている。

 

アーシアも俺の腕に縋り付き、身体を震わせている。

 

「部長のため?・・・違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー・・・それを破壊することこそ僕の戦う意味だ」

 

そう言い残して木場は部室を出ていった。

 

俺はその時理解した。

 

(憎しみ。木場の瞳に宿っていたのは深い憎しみだ)

 

【聖剣エクスカリバー】

 

約束された勝利の剣の異名を持ち、アーサー王伝説に登場する、アーサー王自らが所持したとされる聖王の象徴とも言われる伝説の剣。

 

そんなものまで存在していることにも驚きだが、木場とどんな関係があると言うのだろうか?

 

あれほど憎しみを宿すとなるとただ事ではない。

 

「ユー!なんで止めたのよ!」

 

リアスが俺に詰め寄ってくる。先程自分が間に入ろうとしたのに止められたのが納得いかなかったようだ。

 

「なんでって、眷属同士の口喧嘩だろ?殴り合いの喧嘩でもあるまいし、わざわざ王であるリーアが口を挟む程のことでもないだろ?」

 

それでも納得がいかないと譲らないリアス。これが彼女の悪いところでもある。

 

公爵家という温室でなに不自由なく育ったが故か、自分の眷属に限ってあり得ないと思い込みたいのか、はたまた彼女の性格がそうさせるのかは知らないが、リアスには王として決定的な弱点がある。

 

それは視野が極端に狭いことだ。

 

古来より人間界では『清濁合わせ呑む者こそ真の王なり』という言葉がある通り、上の立場に立つ者であれば善悪を区別することなく公平に物事を受け入れるだけの度量を持ち合わせなければならない。

 

だが今のリアスにはそれがない。

 

甘言ばかりを受け入れ、苦言には耳を貸そうともしない。

 

故に自分の考えと違う行動を取る木場や自分の意に反することをした俺のことが許せないのだ。

 

「確かに木場は君の眷属、リーアのために全て捧げる立場にあるだろう。でも、彼とて一人の人間・・・いや転生悪魔だ。自分の考えがあっても良いんじゃないのか?」

 

拳を握り締めながら俯くリアス。

 

俺の言葉に想うところがあるようだが、それでもまだ折れることがないようだ。

 

「木場だって自分の立場を理解しているはずだ。それでも譲らないということは彼にとって王である君と同じくらい大事なことがあるんじゃないのか?」

 

リアスが顔を上げると、その美しい蒼玉の瞳から涙を溢していた。

 

「その結果・・・祐斗が死んだとしても貴方は同じことが言えるの?」

 

リアスから発せられた予想外の言葉に俺は目を見開く。

 

つまり木場はそれだけ危険なことに足を突っ込んでいる。

 

そしてリアスには、木場の置かれている状況に心当たりがあるということだ。

 

俺はリアスの頭に優しく手を置き、自分の胸へと引き寄せる。

 

「・・・そうさせないための王であり、眷属達であり、オカルト研究部だろ?」

 

リアスはハッとして俺の顔を見上げる。

 

俺は彼女の肩を掴み、クルッと180度反転させて他の眷属達の顔が見えるようにしてあげると、力強く頷くみんながいた。

 

「全て一人で抱える必要はない。君にはこんなにも心強い仲間がいる」

 

背中を軽く押して上げると、眷属達を見て頷き、振り返って俺を見る。

 

「ありがとうユー。また間違えるところだったわ」

 

彼女の瞳は先程とは違い、強い決意が窺えた。

 

そのリアスの姿に安堵して一息吐いていると、朱乃が紅茶を淹れてくれたのでソファーに座る。

 

目下の問題は木場が何故あのような態度を取るようになったのかと言うことだ。

 

「それで木場の様子が変わったのはいつからなんだ?」

 

俺の知る限りでは、球技大会の練習を始めた辺りから様子がおかしかった。

 

「おそらく一誠の家でライザー戦の反省会をした時からよ」

 

朱乃と小猫もその言葉に頷くが、アーシアと兵藤は何も変わったことはなかったと首を傾げる。

 

「ところで一誠・・・貴方のお身内にクリスチャンはいるかしら?」

 

兵藤は即座に否定するが、なにかを思い出したように声を出すと、少し考えてから話を始めた。

 

幼少期に隣の家に住んでいた幼馴染の男の子の両親が敬虔なクリスチャンであり、休日によく教会へ連れて行ってもらっていたこと、その家族はすぐに海外へ引っ越してしまったため、それ以来会うこともなかったこと。

 

「・・・そう。だからこんな写真があったのね」

 

リアスがテーブルに一枚の写真を置く。

 

その写真には兵藤と思われる子供と両親、そして兵藤の話に出てきた幼馴染の男の子とその両親が写っていた。

 

兵藤は何故リアスがこの写真を持っているかと狼狽えていたが、俺は幼馴染の少年の手に握られているものを見て眉間に皺を寄せる。

 

「・・・リーア、まさかこれが?」

 

リアスが静かに頷く。なんだか伝説の聖剣にしては作りが雑なような気がする。

 

「聖剣の一つね。エクスカリバー程ではないけれど、紛れもない聖剣だわ」

 

まさかこんなところで伝説の聖・・・ん?

そこまで言ってあることに気がつく。

 

「・・・リーア?・・・聖剣は一振りではないのか?」

 

まるで複数あるような言い方をするリアス。

伝説と謳われる聖剣がそう何本もあってはたまったものではない。

 

リアスの話では、元々一本であった聖剣エクスカリバーは先の三大勢力による三つ巴の大戦で破壊されてしまい、四散したエクスカリバーの破片を拾い集めて、錬金術により新たに七本が作られたらしい。

 

(まるでハリボテの聖剣だな・・・実物を見たことはないが、約束された勝利の剣には遠く及ばないだろうな)

 

それでも悪魔にとっては最大の武器であることは確かで、触れるだけでその身を焦がし、斬り付けられでもすれば一刀の下に消滅させられる。

 

それほどに光と言うのは悪魔には大敵のようだ。

俺は余り実感がないのだが。

 

「聖剣の話は分かったけど、それが木場とどう関係があるんだ?」

 

木場は復讐のために生きていると言った。

 

聖剣エクスカリバーを破壊することこそ自分の戦う意味だと・・・

 

「聖剣計画」

 

リアスが俯きながらボソッと言い放った聞き覚えのない単語に眉間に皺を寄せる。

 

アーシアと兵藤の耳にも届いたようだが、聞いたことがなかったようで、首を傾げていた。

 

「・・・祐斗の現状を知るためには彼の過去の話をしなければならないわ」

 

リアスの言葉に頬に手を当てて考え込む。

 

以前リアスが小猫の過去を話そうとした時、俺は彼女を止めた。

 

理由は二つあり、本人のいない場でその者の過去を聞くことを嫌ったからである。

 

例え眷属であっても個人の尊厳は守られるべきである。

 

もう一つは現状に影響がないと考えたからだ。

 

小猫の姉である黒歌のことは大事なことであるが、今の時点でそれによって小猫に何らか変化があるわけでは無かったと言うのが理由でもある。

 

小猫に視線を送ると、大きな羊羹を楊枝で丁寧に切り分け、口に運んでいた。

 

少し緊張感に欠けると思ったが、小猫らしいと感じた。

 

話を木場に戻すが、彼の場合は現状差し迫った理由がある。

 

それを考えれば彼の過去を聞かないという選択肢は存在しなかった。

 

「聞かせてくれ」

 

リアスは紅茶で喉を潤すと、カップを置いて話を始めた。

 

【聖剣計画】

 

教会が人工的に後天的な聖剣使いを生み出すことを目的として僅かに聖剣使いの因子を持つ子供たちを集め、因子を抽出してまとめることで十分な量の因子を得ようとして始められた計画。

 

アーシアに視線を送るが、彼女も初耳だったようで首を横に振っていた。

 

「祐斗はその聖剣計画の生き残りなの」

 

小さく息を吐き、目を細めるリアス。

 

木場も聖剣を扱えるのかと思ったが、確か木場の能力は【魔剣創造】だったはず。聖と魔、相反する二つの力を使えるとも思わなかった。

 

「・・・祐斗は聖剣に適応出来なかったの」

 

木場の他にも多くの被験者の子供達がいたようだが、彼と同時期に選定された子供達は誰一人とし聖剣に適応出来なかったらしい。

 

「教会は聖剣に適応出来なかった子供達を不良品と言って殺した。ただ、それだけの理由で!」

 

リアスが声を荒げる。その瞳には怒りの色が滲んでいた。

 

「そ、そんな主に仕える者がそんなことをしていいはずがありません」

 

アーシアとって目を覆いたくなる事実に目元を潤ませる。

 

「アーシア・・・ショックでしょうけど事実よ。教会の者達は悪魔を邪悪な存在と言うけれど、人間の悪意こそこの世で最も邪悪だと思うわ」

 

少し偏った意見だとも思うが、元人間として言い訳出来ない部分もある。

 

人間の業とは深いものだ。持たぬ者は持つ者から奪おうとするし、持つは更に持とうと自分より持つ者から奪おうとする。

 

だがそれは人間に限ったことではない。

 

悪魔だってそうなのだと思う。

 

自然の摂理、弱肉強食と言ってしまえばそれまでなのだ。

 

結局、それぞれだと言うこと。

 

リアスの眷属となり、平穏な日々を送るようになったが、眷属になった当初は復讐心で支配されていたようだ。

 

「あの子は忘れてはいなかったのね」

 

リアスの元で満ち足りた生活を送るなかで、一緒に過ごした子供達の犠牲になってしまったにも関わらず、自分だけが幸せなるわけにはいかないとでも思ったのだろう。

 

復讐かリアスかで揺れ動くなかでこの写真を目にしてしまい、復讐に天秤が傾いてしまった。

 

・・・全くどの眷属も王に似て猪突猛進だ。

 

「でも、この写真一枚で一体どうしようって言うんすか?」

 

兵藤の言うことはもっともであり、十年以上前の写真でどうにかなるとも思えない。

 

「分からない・・・だからこそあの子の主である私が・・・」

 

また一人で肩に力を入れるリアスに咳払いをして合図をすると、彼女も意図に気づいたようで自嘲する。

 

「今は今後に備えて情報を集めるしかない。最悪の事態が起こった時に直ぐに対処出きるように」

 

俺がそう言うと、皆が納得してその場は解散となった。

 

アーシアと兵藤はクラスメイトと約束があると言って部室を後にし、小猫も予定があると出ていった。

 

部室にリアスと朱乃と俺の三人が残る。

 

「・・・私はダメね。すぐに周りが見えなくなってしまう・・・ユー、貴方の方が余程王に向いてるわ」

 

後輩達が居なくなり、弱気な発言するリアスに朱乃も苦笑いを浮かべながら紅茶を用意してくれた。

 

「初めからまともな王なんていない。悩んで、苦しんで、それを乗り越えて一人前の王になっていく。誰かと比べる必要なんでないよ、それにそんな君だから一緒に居てくれる者もいるだろ?」

 

俺の言葉に朱乃が優しく微笑む。

 

そんな朱乃にリアスは感謝を述べる。

 

紅茶を飲み干して俺は席を立ち、帰宅する。

 

リアスはまだやることがあると言って、朱乃と一緒に部室に残った。

 

旧校舎から外に出ると、どしゃ降りの雨が地面を叩いていた。

 

―〇●〇―

 

降り注ぐ雨が熱で火照った頭を冷やしていく。

 

恩人であるリアス部長と喧嘩をしてしまった。

 

『木場祐斗』としての第二の生を与えてくれた大恩人である部長と。

 

信頼できる先輩も出来た、仲間と呼んで差し支えない者達もいる、それでも僕は嘗ての同士達を忘れることが出来ない。

 

もう後戻りは出来ない、この復讐を遂げるまでは。

 

前方に人影を確認する、修道服を着ていることから神父のようだ。

 

最悪だ、この世で最も憎悪する人種にいま出会ってしまうとは。

 

悪魔祓い(エクソシスト)ならば牽制しても構わないだろ、溜まりに溜まった鬱憤を少しでも晴らしてやる。

 

警戒をしながら少しづつ神父に近付いていくと、突然その神父の腹部から血が吹き出し、口から血反吐を吐いて地面に崩れ落ちた。

 

(なに!・・・なにが起きた!?)

 

警戒レベルを最大まで引き上げ、視線を忙しなく動かして事態の把握に努める。

 

異常な気配を察して、魔剣を作り出す。

 

<ギィィィイインッッ>

 

金属と金属がぶつかり合う音が周囲に鳴り響き、雨の中で火花が散る。

 

目の前には先程倒れた神父と同じような修道服を着た年若い少年が立っていた。

 

「ありあり?・・・おまえさん、どっかで見たような?」

 

僕はその少年に見覚えがあった。

 

フリード・セルゼン

 

教会では有名な異常者で殺人に快楽を覚え、虐殺を繰り返して教会を追放された異端の聖職者。

 

「先輩に圧倒されて逃げ出した君がまだこの街に居たとは思わなかったよ」

 

僕の全身を舐めるように下から上に視線を移すフリード。

 

「そかそか!ちみはあの化け物と一緒にアーシアちゃんを助けに来た奴だ~」

 

刹那、フリードが斬りかかって来るが、冷静に躱わしていく。

 

「神父狩りも飽きたとこだし~、悪魔狩りしちゃおかな~・・・これの威力も確かめたいし~」

 

そう言って構えたフリードの手に握られていたものに僕は目を見開く。

 

(その輝き!そのオーラ!)

 

全身の毛穴が一気に開くような感覚に陥る。

 

目を見開き、口を半開きにして口角を上げる。

 

口から零れ落ちる涎にさえも気付かないほど、フリードの持つに聖剣(それ)に視線を奪われる。

 

(ようやく見つけた・・・聖剣!)

 

その瞬間、喜びにうち震える。

 

この世で最も忌むべき存在をこの手で破壊することが出来る。

 

・・・僕は聖剣を許さない・・・

 

―〇●〇―

 

傘を叩く雨の音に眉をしかめながら家路へ急ぐ。

 

上半身は傘でなんとか守られているものの、下半身が特に靴がびしょ濡れである。

 

(早く家に帰って靴下を脱ぎたい)

 

そう思うと、足が速くなるが、その分だけ水溜まりを踏んでしまうので同じことだ。

 

こんなことならリアスに魔方陣で送ってもらえば良かったと心底後悔する。

 

なんとか雨を躱して歩けないかと試行錯誤していると、金属が激しく擦れ合う音が聞こえてくる。

 

角を曲がり音のする方へ足を運ぶと、木場といつかの少年神父が鍔迫り合いを繰り広げていた。

 

俺の存在に気が付いた木場が一瞬だけ気を取られたところを見逃さず、少年神父の蹴りが木場の腹に突き刺さり吹っ飛ばされる。

 

少年神父が間髪入れずに木場を目掛けて斬りかかってくる。

 

!!!!!!!!

 

「なっ、なにやってくれちゃってるわけ!」

 

少年神父が剣を振りかぶり、木場に振り下ろそうとしたところで俺が間に入り、剣を受け止める。

 

・・・持っていた傘を畳んで・・・

 

それには木場も驚愕していた。

 

「てっ、てめえぇ!これがどんな剣か分かってるのか!?聖剣エクスカリバーだぞ!?」

 

持っていた傘に水の魔力を込めると、降り注ぐ雨や地面の水溜まりといったありとあらゆる水を傘が纏う。

 

(なん・・・だと!)

 

俺はその光景に驚愕する。

 

「ふ、ふざけてんのか!これは何者をも斬り捨てる剣だぞ!そ、それを傘で受け止めるだと!」

 

動揺している少年神父の口調がふだけたものからまともなものに変わっている。

 

だが、俺は自分の持っている傘に衝撃を受けており、いまそれどころではない。

 

その傘を見て怒りにも似た感情を湧き、プルプルと震える。

 

「最初からこれやってれば雨に濡れることもなかっただろうが!!!!!!」

 

自分の無知を恥じて少年神父を目掛けて傘を振り下ろすと、水龍が姿を現して少年神父を襲い掛かる。

 

「なっ、なんなんだてめえぇは!?」

 

水龍が少年神父を喰らうが、手にしていた聖剣エクスカリバーの影響か少年神父の執念かは知らないが、なんとか耐えていた。

 

「ちぃ!てめえぇが関わるといつも録なことがねぇ!」

 

顔を歪ませてそう吐き捨てると、足早に去っていった。

 

木場が少年神父を追い掛けようとするが、蹴られたダメージが思いの外大きかったようで膝を付いて蹲る。

 

「くそっ!」

 

少年神父にやられたことが悔しいのか、聖剣エクスカリバーを目の前にして捕り逃したことが悔しいのかは分からないが、木場は拳を振り上げ、地面を叩く。

 

その衝撃で飛び散った水が彼の端正な顔を濡らしていた。

 

「・・・大丈夫か?」

 

木場に雨が当たらないように傘を開いて頭上に宛がい、声を掛けるが反応がなかった。

 

「・・・部長に頼まれて僕を探していたんですか?」

 

俯いているため表情は分からないが、声色から悔しさが滲み出ている。

 

「いや、帰り道」

 

水を魔力でコントロールしているため傘を木場に宛がっていても濡れることはない。

 

なんと素晴らしい力を手に入れたのだと感動する。

 

「木場、お前のことリーアから聞いた。勝手して済まなかった」

 

木場に謝罪すると、彼の肩がビクッと震えた。

 

「・・・おかしいですよね、僕みたいな死に損ないの半端者がのうのうと生きて部長の騎士(ナイト)だなんて。・・・先輩も笑ってくださいよ」

 

自嘲する木場だったが、声が少し震えていた。

 

「木場!!」

 

自分の名前が叫ばれて顔を上げると、殴られると思ったのか目を固く瞑り、歯を力一杯噛む。

 

「・・・風邪引くなよ」

 

木場に傘を無理矢理押し付けるように渡してその場を後にした。

 

傘を木場に渡したため魔力を込める対象物がなくなってしまったのでびしょ濡れになって家に帰ると、母ちゃんにしこたま怒られた。

 

「くそ!!」

 

後から気付いたことだが、何かに魔力を込めなくても自分の掌に魔力を集めれば水をコントロール出来ることを風呂に入りながら知り、自分の無知を呪った。




第17話更新しました。

主人公が物知り博士のようにならないように気をつけてますが、どうしてもおいしいところを持って行かせたくなります。

木場の聖剣への思いも原作ではもっと強かったと思うんですが、そのまま丸写しするのも違うかなと思ったのでちょっと変えてみました。

あとタグに原作沿いを追加しました。
大丈夫ですよね?

内容のほうはやたらとリアスのダメなところが強調されてしまいましたが、今後に期待と言うことでいいかなと思ってます。

作品を読んでくれた方、コメントをくれた方、誤字・脱字の修正をしたくださる方ありがとうございます。

ではまた次回。
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