ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

20 / 33
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃です。

第18話です。


第18話

私には成すべきことがある

敬愛する主のためならばこの命惜しくはない

だから主を冒涜する輩は許さない

 

―〇●〇―

 

授業が終わりオカルト研究部に顔を出す。

 

今日はバイトがあり、すぐに帰ろうと思ったが、あの雨の日から学園で木場の姿を見ていないため気になっていた。

 

部室に入ると白装束を纏い、艶のある黒髪を下ろした半裸の朱乃がだらしなく鼻の下を伸ばした兵藤に迫っていた。

 

「・・・すまん」

 

静かにドアを閉めてバイトに向かおうと踵を返す。

 

学校でああいうことをするのはどうかと思ったが、俺がリアスにしたことを思い出して我慢出来なくなったら仕方ないことだと納得した。

 

(しかし朱乃と兵藤がねぇ・・・)

 

以前朱乃に男の趣味を聞いたことがあったが、男があまり得意ではないと前置きした上で、好きになった相手が好みのタイプと笑っており、まさに大和撫子たる朱乃に相応しい答えだと思った。

 

「ユーくん、何を勘違いしておりますの?」

 

気配もなく背後から朱乃に抱き着かれ、寒気を感じた。

 

朱乃の顔を見ると、美しい笑顔だったが目は笑っていなかった。

 

「いや・・・でも、奥の部屋でやるとか、別の部屋でやるとかあると思うぞ」

 

この場合、みんなが集まる場所で堂々と行為に及ぼうとしていた二人が悪い訳で俺に落ち度はなかったはず。

 

「何かとんでもない勘違いをしているようですわね・・・とにかく部室にお戻りください。事情はそこでお話ししますので」

 

ため息を吐いて、俺の腕を引くと彼女の豊満な胸部に腕を挟まれてしまい、身動きが取れなくなってしまう。

 

しかも今の朱乃の格好は薄い白装束を着ているのみで胸元が大きくはだけてしまっている。

 

「ユー・・・貴方何をしているのかしら?」

 

朱乃に腕を引かれて部室に戻る途中に恐ろしく低い声が廊下に響くが、またしても気配を察知することが出来なかった。

 

「・・・またですかユーさん?」

 

恐る恐る振り向くと、般若の如き形相で紅い魔力を纏うリアスと美しい翡翠色の瞳から光の消えたブラックなアーシアが立っていた。

 

「あらあら、リアスにアーシアちゃんではありませんか。これから私達は奥の部屋でやることがありますので失礼しますね」

 

(嘘だろ!)

 

この状況で二人を挑発するなんて自殺行為以外の何物でもない。

 

なんとか二人に事情を説明しようと、多少強引に胸の谷間に挟まれていた腕を引っ張り、朱乃から離れようとするがその行為がまずかった。

 

「うふふ、ユーくんったら奥の部屋まで我慢出来ないのですか?・・・ならこの場で致しましょうか」

 

指が白装束の帯に引っ掛かってしまい、透き通るような白い肌と朱乃自慢の胸部、そして男には存在しない十個目の穴が外気に晒されてしまった。

 

髪を下ろした朱乃は少し幼く見えたが、彼女自慢の肉体は最早十八歳には見えないほど成熟されており、そのアンバランスな対比に無意識に喉を鳴らしてしまう。

 

「ギャッ!」

 

リアスに襟を強引に引っ張られ、喉が締まって変な声を出すと、俺の足をアーシアが持ち上げる。

 

襟と足を掴まれて俺は部室に運ばれていく。

 

(アーシアさん。貴方そんなに力ありましたっけ?)

 

二人に運ばれながら朱乃に視線を送ると、手を合わせて可愛らしく謝っている彼女の姿が見えた。

 

部室へと運び込まれた俺はソファーがあるのに床に正座させられ、眼前に仁王立ちするリアスとアーシアに無言のプレッシャーを与えられ続ける。

 

まるで蛇に睨まれた蛙である。

 

因みに兵藤は部室に入ってきた二人の迫力に耐えられず、ソファーで失神している。

 

俺は二人に何故あのような状況になったか説明して朱乃に同意を求めるが、彼女にそっぽを向かれてしまい、状況が更に悪化してしまった。

 

さっきは可愛らしく両手を合わせて謝っていたのに、ここに来て朱乃のS心が顔を出してしまった。

 

(御愁傷様ということか!謝ってたんじゃなくて御愁傷様ってことで手を合わせてたのか!?)

 

朱乃に対して目で切実に訴えるも全く通じず、逆に視線を送り続けたことが二人には面白くなかったようで更にプレッシャーが増したことは言うまでもない。

 

(朱乃、覚えてろよ。この恨み晴らさでおくべきか!)

 

結局なにを言っても納得しなかった二人だが、復活した兵藤が事情を説明してくれてその場は収まった。

 

どうやら朱乃が兵藤に迫っていた理由は兵藤の中のドラゴンの力を制御するやり方を教えていたらしく、実戦した方が手っ取り早いということだったようだ。

 

俺はバイトの時間だと言って、逃げるように部室を出ていくが、一番知りたかった木場のことを聞く暇がなかった。

 

―〇●〇―

 

首と足に痛みを感じながらグランデへの道を歩く。

 

あの二人はどうしてああいう風になってしまうのだろうか?

 

自分達は当たり前のようにベッドを占拠したり、風呂に入り込んでくると言うのに、俺に他の女性の影が見えるといつも豹変してしまう。

 

まあ、それだけ好意を寄せられていると言うことだと思うので悪い気はしないのだが、別に疚しいことをしているわけではないので事情くらい聞いてくれてもいいと思う。

 

(あの二人、最近母ちゃんに似てきたか?)

 

母ちゃんが三人など想像したくもないと身震いしながら歩いていると、白いローブを身に纏った二人組が外から店内の様子を忙しなく窺っていた。

 

既にオープンしていると言うのに入店する素振りも見せず、その二人組は看板のメニューを見たり、外からテーブルに運ばれてくる料理を羨ましそうに眺めている。

 

「もう行こう、イリナ」

 

神々しい栗毛のツインテールの女性の手を引き、店の前から去ろうとする深い碧の頭髪に一部緑色のメッシュの入った女性がいた。

 

「だって美味しそうなんだもん、ゼノヴィアもそう思うでしょ?」

 

イリナと呼ばれた女性は駄々を捏ねる子供のように店内で振る舞われる料理に羨望の眼差しを向け、ゼノヴィアと呼ばれた女性も我慢しているようだが、チラチラと店内の様子を窺っていた。

 

(・・・教会の関係者?)

 

二人の会話に耳を傾けながら横を通り過ぎると、胸元に架けられた十字架が目に入り、改めて二人の容姿を伺うと、歳は俺とそう変わらないように見えた。

 

どうやら二人は旅費が底を尽き、何日も食事をしていないらしい。

 

「店の前をうろうろされると営業妨害になるんだけど?」

 

放っておいても良かったのだが、店の窓にずっと張り付かれていると他の客の迷惑にもなるので声を掛ける。

 

素直に頭を下げて謝罪する栗毛の女性とは対照的に碧髪メッシュの女性は鋭い視線を俺に向けてきた。

 

何故俺が睨まれているのかは知らないが、気まずい雰囲気が俺達の間に流れる。

 

一応、注意をしたので店に入っていく。

 

ぐぅぅぅぅ~~

 

店のドアノブに手を掛けようとすると、背後から腹が盛大に鳴る音が聞こえた。

 

振り向いて二人を見ると、俺に鋭い視線を向けてきた女性が顔を真っ赤にして腹を押さえており、隣の素直な女性が驚いていた。

 

俺はため息を吐いて店のドアを開ける。

 

「いらっしゃいませ、シニョリーナ」

 

俺の行動に驚いている二人に早く入れと目で合図を送ると、顔を見合わせて頷いて入店する。

 

二人の姿を見たホールスタッフが仕事をするために近づいて来るが、俺は手で制して二人を席に案内する。

 

「金がないのは知ってる。適当に作るから座って待ってろ」

 

二人の意見も聞かずにロッカーで着替えを済ませて厨房へ行き、料理長に事情を話して手早く料理を作って二人のテーブルに運ぶ。

 

通常業務もあるため彼女達だけに時間を掛けている訳にはいかない。

 

「なんのつもりだ?」

 

サーブされた料理を見て腹を鳴らした女性が俺を睨んでくる。

 

なんのつもりってさっき言った通りだし、嫌なら最初から付いて来なければ良かったのに。

 

人からの施しで成り立っている教会の人間とは思えないほど彼女の目はギラついていた。

 

「・・・ただの同情だ」

 

面倒になり、本音を伝えると彼女が激昂したので無視して厨房に戻って料理を作り、また運ぶ。

 

意地を張って食べていないと思ったが、皿の中身が綺麗になくなっていたので料理が無駄にならなかったことに安心した。

 

次々と料理を運ぶと、険しい表情をしていた碧髪メッシュの女性も次第に笑顔になり、皿を平らげる姿を見て、料理の偉大さを改めて認識する。

 

どんな種族でも生きている限り腹は減り、食わねば生きて行けない。

 

生命の進化に伴い、食もまた進化を遂げてきた。

 

太古の世より連綿と受け継がれて来た食の歴史の集大成と言える現代において、食はただ食べるという行為ではなく生命体の三大欲求の一つとまで呼ばれるようになった。

 

そのため食が世界に及ぼす影響も少なくない。

 

世界において重要な決定が成される傍らには豪勢な食事があることも少なくはない。

 

つまり、食には架け橋となる不思議な力がある。

 

雑な言い方をすれば、旨い物を食えば幸せになると言うことだ。

 

少なくとも険悪な雰囲気を纏っていた彼女は、目の前にサーブされる料理に恍惚した表情を浮かべて夢中で口に運んでいる。

 

一体どれだけ食べたのだろうか、一人で五人前は食ったな。

 

ご丁寧に最後のスイーツまで食べて、もう何も食べれないと言わんばかりに椅子に背中を預ける二人。

 

「満足したか?」

 

食後のコーヒーをテーブルに置いて空になった皿を片付ける。

 

「これを飲んだら出てってくれ。待ってる客もいるから」

 

素っ気なく言い残して俺は厨房に消えていく。

 

オーダーの書かれた紙を見て料理の準備に取り掛かろうとしたが、ホールスタッフから俺を呼んでいる客がいると言うので、言われた通りに外へ出てみると先程の二人組が待っていた。

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

忙しいのにこれ以上何の用があるのかと眉間に皺を寄せていると、栗毛の女性がツインテールを揺らしながら頭を下げた。

 

碧髪メッシュの女性も僅かではあるが頭を下げていた。

 

「・・・でも何で私達にご飯をご馳走してくれたんですか?」

 

そう言えば彼女はサーブされた料理に夢中で俺の言ったことを聞いてなかった。

 

「ど・・・食いたい奴には食わせる。ただそれだけ」

 

同情と言おうとしたが、隣にいる女性が怪訝な表情をしていたので、適当に答えた。

 

アーシアの件や木場のこともあり、教会にはあまり良い印象を持っていないため、早めに話を切り上げようとする。

 

「そ、それでも助かりました!・・・私は紫藤イリナと言います」

 

自分から自己紹介が出来るとは教会の人間にしては常識があるようだ。

 

俺が感心していると、イリナと名乗った女性が隣の女性にも挨拶しろと合図を送っている。

 

「・・・ゼノヴィアだ」

 

渋々といった様子で名乗ったゼノヴィアは如何にも教会の人間という感じで、自分の信じる主以外は歯牙にも掛けない様子だった。

 

「菅原ユウ。話がそれだけなら行くから」

 

もう会うこともないだろうが、名乗られた以上此方も名乗らなければ無礼になるので名前だけ伝えて店に戻った。

 

厨房に戻ると、ホールスタッフからさっきの二人組の物だと一枚の紙を渡され、また面倒事かと顔を顰める。

 

「二万七千円。キッチリバイト代から引いとくからな」

 

二人の伝票を見て驚愕していると、背後から料理長に肩を叩かれ、項垂れる。

 

(食い過ぎだあいつら!)

 

―〇●〇―

 

翌日、古文の教師が黒板にミミズのような文字を書きながら、小難しい解説をしている。

 

隣の席のリアスは真面目に黒板の内容と教師の話をノートに書き記していたが、俺は昨日の二人組について考えていた。

 

昨夜、リアスが悪魔稼業を終えて家に帰って来ると、とてもお怒りの様子だったので理由を聞いてみると、兵藤の家に木場が勝手な行動を取り始めた原因となった写真に写っていた幼なじみが押し掛けて来たらしい。

 

別に幼なじみなのだから悪いことではないと思ったが、どうやらその幼なじみは教会の信者になっていたようで兵藤が悪魔になっているとは知らずに会いに来たようだ。

 

悪魔と教会の人間の接触はある種のタブーと言える行為でアーシアのことは例外中の例外であり、以前も兵藤にキツく言っていたらしいが、その事を事後報告にした兵藤にお説教したようだ。

 

家に帰って来ても怒りが収まらない様子だったが、アーシアの手前もあるので説得すると、渋々であるが納得してくれた。

 

アーシアも既に教会を離れてはいるが、未だに神への信仰を忘れられずにいるようで、時折手を合わせて神に祈っている姿を見る。

 

(なんだか、きな臭い感じがする)

 

木場の過去から続く教会との因縁、聖剣エクスカリバーに囚われた彼の豹変、その聖剣を手にして現れた少年神父、遠くに引っ越したはずの幼なじみが教会の神徒となって帰還。

 

もしかしたら俺が飯を奢った二人組もこの件に関係があるのかもしれない。

 

年若い二人の少女が異様な出で立ちで昼間から街を徘徊しているのは俺じゃなくても異常に見えただろう。

 

嘗てアーシアもそうだったように教会の関係者であればそれも納得がいく。

 

この街で再び何かが起ころうとしている。

 

直感か第六感かは分からないが、悪魔となり鋭くなった感覚がそう告げていた。

 

「・・・ユー、どうしたのそんなに怖い顔して?」

 

リアスに声を掛けられ、正気に戻って周りを見渡すと、既に授業が終わっていてクラスメイト達が動き出していた。

 

「リーア・・・古文の先生のミミズのような文字がどうしても分からなくて」

 

考えていたことを彼女に話せば相談に乗ってくれるだろうが、なんの確証もない俺の想像の話をして混乱させたくはなかったので、適当に誤魔化した。

 

彼女も同じことを思っていたようでその時は笑っていたが、昼食の時や他の授業でもボーッとする俺に首を傾げていた。

 

―〇●〇―

 

「先日出してもらった進路調査票のことだが・・・」

 

俺は今、担任教師に呼ばれて進路指導室に来ていた。

 

HRが終わり、リアスからオカ研の部室に客が来るらしく同席してほしいと頼まれたので、朱乃と三人で向かおうとしたところ担任教師に呼び止められた。

 

先生に呼ばれたなら仕方がない、とリアスは朱乃と二人で部室に向かった。

 

後から必ず顔を出すと約束して俺は二人と別れた。

 

「菅原、お前は成績も良い。俺もお前の夢を応援したいが、焦らなくもいいんじゃないか?」

 

俺が進路調査票に書いた卒業後の進路は料理の修行のために海外に行くことだった。

 

第三希望まで記入欄があったが、第一希望のみ記入して提出した。

 

「焦りとかじゃないです。本当にやりたいことなんで他に時間使ってる暇はないです」

 

教師が心配してくれるのも分かるが、この夢だけは譲れない。

 

「ご両親はなんと言ってるんだ?」

 

卒業後の進路に関して父ちゃんと母ちゃんに話したことはなかった。

 

基本的に放任主義の両親なのでダメと言われることはないと思う。

 

「両親にはまだ・・・」

 

進路調査票を書くとき相談しようと思ったが、最近我が家にはいろいろな出来事がありすぎたためすっかり忘れていた。

 

「高校を卒業すれば世間からは大人と言われることもあるだろう。だがな、親にとってはいくつになっても子供なんだ。子供の将来を心配しない親はいない、卒業後のことはちゃんとご両親と相談しなさい」

 

担任教師の言葉を聞いて俺にも思うところがあった。

 

これまでなに不自由なく過ごしてこれたのは両親のお陰であり、身体のことでも心配も掛けてきた。

 

これまでは自分のことだけを考えて生きてきたが、これからのことは両親にも相談しなければならないと思った。

 

「分かりました、両親に相談してみます」

 

時計を確認するとそんなに時間が経っていなかったので、これから部室に行けば来客とやらに間に合うだろう。

 

「親というのはな・・・」

 

席を立とうとする俺に担任教師が語り始め、部屋を出ていくタイミングを失ってしまった。

 

(嘘だろ)

 

数日前と同じように心の中で呟いた。

 

・・・・・・・・・・

 

一体いつまで続くんだろうか、既に生徒の下校時間を告げるチャイムが室内に鳴り響いた。

 

あれから延々と親について熱く語られていた。

 

時折、髪を耳に掛ける仕草をしながら話をしていた。

 

因みに担任教師の髪は短い。

 

うんざりしながらいつまで続くのかと思っていたが、神は俺を見捨ててはいなかった。

 

校内放送で担任教師が呼び出されたのだ。

 

熱くなっていた話をしていた担任教師が時間を確認して大慌てで進路指導室を出ていった。

 

ようやく解放され、オカ研の部室へ歩き始めたが、あることに気が付いて足を止めた。

 

(・・・あの先生、独身じゃなかったか?)

 

数分考え込んだがそんなはずはないと思い、部室へ急いだ。

 

数時間後、担任教師が独身で子供がいないと知り、発狂したのは言うまでもない。

 

―〇●〇―

 

「ならば神の名の下に断罪しよう」

 

今、私達は駒王学園のオカルト研究部の部室に来ていた。

 

理由はカトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが【神の子を見張る者(グリゴリ)】に奪われ、その連中が日本に逃れたためである。

 

聖剣エクスカリバーが奪われたことを知った教会本部は直ちに多くの信徒達をこの極東の島国に派遣して奪還を命じたが、この街に送り込んだ信徒と悉く連絡が取れなくなり、この駒王町に何かがあると踏んだ上層部は聖剣使いである私とイリナを派遣した。

 

私達は手始めに上級悪魔であり、この街の管理者でもあるリアス・グレモリーに事の次第を話すために彼女が拠点としている駒王学園に来たのだが、このリアス・グレモリーが聞き分けが悪い。

 

聖剣エクスカリバーの奪還は此方で勝手にやるから手出し無用と伝えたのだが、怒りを滲ませて反論して来たため、略奪者である堕天使と手を組んで聖剣をなきものにしようとする可能性があるとハッキリ言ったのだが、それでも引かない。

 

それどころか首謀者が【神の子を見張る者(グリゴリ)】の幹部であるコカビエルだと知った途端、私達二人だけで無理だと言い放った。

 

私達は命を落とす覚悟でこの任務にあたっている。

 

いざとなればあれ(・・)を使う覚悟だ。

 

一応、筋は通したのでこれ以上の問答は不要と、イリナに合図を送って立ち上がったが、ある一人の少女に見覚えがあり視線を止める。

 

そこに居たのは一時期教会内部で噂になっていたアーシア・アルジェントだった。

 

人を癒す奇跡の力の持ち主として『聖女』として担ぎ上げられていたが、その力は悪魔や堕天使さえも癒してしまうという異形の力で『魔女』として教会を追放され、どこかに流れたと聞いていたが、まさか悪魔と関わっているとは思わなかった。

 

悪魔に転生してはいないようだったが、未だに神への信仰を忘れてはいないようで、まるで神に祈るように胸元に手を組んでいた。

 

悪魔と関わりを持ちながら神に祈りを捧げるなど、一体どれだけ堕ちれば気が済むのだろうか。

 

私は気がつくと、聖剣の切っ先を彼女に向けていた。

 

せめてもの情けとしてこの聖剣で彼女を斬り捨てて、その心だけでも救ってやろうとしたが、アーシア・アルジェントを守るようにリアス・グレモリーが聖剣の前に立った。

 

その行動に私は目を見開き、驚いた。

 

如何に上級悪魔と言えど向けられているのは聖剣であり、悪魔にとっては最大にして最悪の武器、触れることはおろか、目にしただけでも畏怖し、背筋を凍らせるほどの存在感を放つはず。

 

事実、聖剣を取り出した際の彼女達の反応は心底恐れおののいたものだった。

 

しかし、今はどうだ?

 

リアス・グレモリーにとっては眷属でもないただの人間のために自分の命を省みずに聖剣の前に立っており、他の眷属達も同様に間に入らんと構えていた。

 

特に金髪の男の目は暗く濁っており、直ぐにでも此方に斬り掛からんほどの殺気が込められていた。

 

さすがにこれ以上悪魔側との関係を悪くするわけには行かない、相手は冥界の四大魔王の筆頭であるサーゼクス・ルシファーの妹。

 

下手をすれば、冥界と天界の戦争に発展しかねない。

 

そう思い聖剣を引こうとしたその時、部屋のドアが開けられた。

 

―〇●〇―

 

俺はオカ研の部室へ急いでいた。

 

目的は担任教師が既婚者で子持ちであるか朱乃に確認するためだ。

 

大雑把なリアスではおそらく知らないだろうから、その辺をきちんとしている朱乃なら知っていると確信している。

 

他に目的があった気がするが、その事はもはやどうでもいいと思えるほど気になっていた。

 

部室に近付くと、なにやら口論している声が聞こえてくる。

 

今日の部活は白熱しているな、と思いながらドアを開けると、先日の二人組の一人がリアスに剣の切っ先を向けていた。

 

リアスの後ろには怯えた様子のアーシアがおり、他の部員達もいきり立った様子でまさに一触即発の雰囲気だった。

 

「あっ、貴方は!?」

 

状況が理解出来ずに戸惑っていると、栗毛の女性が俺を見て叫んだ。

 

確かイナリだか、イモリだか呼ばれていた気がする。

 

「むっ?何故貴方がここに?」

 

リアスに剣の切っ先を向けていた女性も俺に気が付いて此方に視線を向ける。

 

「ユー、貴方この二人と知り合いなの?」

 

少し苦しそう表情を見せるリアス。

 

そう言えば彼女から来客があると言われていてが、この二人のことだったのか。

 

成る程、状況を見るに話し合いが拗れてこうなったと言うことだろう。

 

「話し合いにこれは必要ない」

 

ゼロヴィアだったと思うが、彼女に近づいて剣に手を掛けようとする。

 

「先輩聖剣(それ)は!」

 

兵藤がいきなり大声で叫んだことに驚いたが彼女の持つ剣の先端に手を掛けると、素直に引いてくれた。

 

その様子を見ていたオカ研の連中は目を見開いて驚いていた。

 

「兵藤うるさい。それにみんなもどうした?」

 

俺は改めて二人をソファーに座るように促して自分もソファーに座ると、女性陣から激しいボディータッチに合い、物凄く心配された。

 

アーシアなどは涙目になっていた。

 

(一体なんなんだ?)

 

怪訝な表情を浮かべて困惑していると、二人組から咳払いをされ、女性陣も正気に戻って改めて話し合いがなされた。

 

因みに二人の名前は紫藤イリナとゼノヴィアだったらしい。

 

人の名前が覚えられなくなったのは悪魔になったからだ、きっとそうに違いない。

 

二人は再びこの場にいる理由を話してくれた。

 

話を聞きながら木場の様子を伺うと、それはもう大変な表情をしていた。

 

「君達の事情は分かったが、アーシアにしたことは見逃せない」

 

隣に座るアーシアの手を握り、冷静を装いながら二人を見るが、ゼノヴィアの方は納得いってない様子だった。

 

「彼女にだって事情ある、やむを得ない事情がな。それをどうこう言う理由は君達にはないはずだ」

 

極めて冷静に諭すように語り掛けるが、やはり納得しないようだ。

 

「悪魔と接触しながら神に祈るなど、神に対する冒涜に他ならない。それでは『魔女』と呼ばれても仕方ない」

 

身体を震わせるアーシアの背中を擦りながら引かないゼノヴィアにどうしたものかと考える。

 

以前も感じたが、紫藤イリナの方は理解があるようだが、ゼノヴィアの方は自分の信じる主以外の言葉には耳を貸そうとしない。

 

タイプは違うが少しリアスと似ている・・・猪突猛進なところが。

 

「・・・それでも私は幸せです」

 

俺が言葉を選んでいると、アーシアが二人に対して話を始める。

 

自分の出自や【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】のこと、教会を追放された理由やこの街に来て俺やリアス達に出逢ったこと。

 

「辛いこともありましたが、今の私は幸せなんです。例えここにいる皆さんが悪魔だとしても私にとって初めて心を許すことの出来る方々に出逢うことが出来ました」

 

そう言って幸せそうに微笑むアーシアをリアスは抱き締め、朱乃も頭を撫でてあげ、小猫も頷いていた。

 

どさくさ紛れて兵藤がアーシアに抱き着こうしたが、小猫によって阻止されていた。

 

「・・・ところで貴方も悪魔なのか?」

 

幸せそうにアーシアを囲む連中を一瞥して俺に対して疑いの目を向けるゼノヴィア。

 

「一応。つい最近悪魔になったばかりだけど」

 

転生悪魔なのかと問われたが、首を振る。

 

実際自分でもよく分かっていないので立ち上がり、背中に悪魔の羽を展開すると、ゼノヴィアは小さく頷いた。

 

「では何故聖剣エクスカリバーに触れることが出来る?」

 

彼女が手にしていたのは聖剣エクスカリバーだったようで、切っ先を向けられたリアスが苦しそうにしている理由が分かった。

 

それについても分からないと答えると、眉間に皺を寄せて不機嫌になる。

 

「ここまで来てまだ何かを隠すか・・・これだから悪魔は信用できない!イリナ帰るぞ!」

 

勢いよく立ち上がり、部室を出ていこうとするゼノヴィアを慌てて追い掛けるイリナ。

 

事情を説明しようにも俺自身にも分からないことだらけのため、なにも言えずに二人を見送るしかなかった。

 

「アーシアさんを侮辱されてこのまま帰すわけには行かない」

 

二人がドアに手を掛けようとした時、それまで一言も発していなかった木場がそう言って二人に近付いていく。

 

「コカビエルを相手にすると言うのならそれなりに腕に自信があるんだろう?僕とも手合わせをしてくれないかい?」

 

コカビエル?・・・知らない者の名前に首を傾げたが、今は木場の方を優先しなければならない。

 

おそらく木場の目にはゼノヴィアとイリナは映っていないだろう。

 

聖剣エクスカリバー・・・木場の目にはそれしか映っていない。

 

「誰だ、キミは?」

 

ゼノヴィアの問い掛けに不適に笑う木場。

 

リアスも心配そうにその様子を見ているが、拳を握り締めて堪えている。

 

木場の足下に魔方陣が展開され、無数の魔剣が姿を現す。

 

「キミたちの先輩だよ・・・失敗作だけどね」




第18話更新しました。

いや~、一週間って早いですね。
順調に進んでると思っていても気づいたら一週間経ってて驚くことがあります。
これではストックなど夢のまた夢です。
皆様にお見せ出来るように頑張ってはいますが、矛盾だったり、同じ事を繰り返してる場合があるのでその時はご指摘ください。

内容の方は教会コンビが出てきましたね。
原作ではアーシアも加えてトリオで呼ばれてるようですが筆者はこの二人のことはよく知りません。
なのでこの二人の今後の扱いを非常に悩んでおります。

読んでくださった方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。

ではまた次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。